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飯野海運 Research Memo(9):中期経営計画の進捗は順調(1)
配信日時:2024/06/13 14:49
配信元:FISCO
*14:49JST 飯野海運 Research Memo(9):中期経営計画の進捗は順調(1)
■成長戦略
1. 中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」
飯野海運<9119>は長期ビジョン「IINO VISION for 2030」の実現に向けて、2023年5月に策定した中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」(2023年4月〜2026年3月末)において、「ポートフォリオ経営とカーボンニュートラルへの挑戦」をテーマに掲げた。中期経営計画策定に際し、理念体系を整理し、企業理念(IINO PURPOSE)を「安全の確保を最優先に、人々の想いを繋ぎ、より豊かな未来を築きます」と定めた。
重視する財務指標と数値目標については、2024年3月期に経常利益111億円、EBITDA(営業利益+減価償却費+主たる事業投資に係る受取配当金及び持分法投資損益)255億円、ROE9%、ROIC4.5%など、2025年3月期に経常利益115〜125億円、EBITDA270〜280億円、ROE9〜10%など、2026年3月期に経常利益130〜140億円、EBITDA280〜290億円、ROE9〜10%、ROIC4〜5%などを掲げた。これに対して中期経営計画1年目の2024年3月期は経常利益218億円、EBITDA333億円、ROE16.3%、ROIC8.6%など、ほとんどの項目で計画値を上回る形で着地した。そして中期経営計画2年目の2025年3月期も経常利益145億円、EBITDA300億円、ROE10%など、ほとんどの項目で目標を上回る見込みである。市況や為替も後押し要因となり、中期経営計画の進捗は極めて順調と言える。
2. 安定収益源を積み上げるための重点戦略
同社の海運業は市況変動の影響が避けられないものの、市況変動リスクを軽減するため、安定収益源の積み上げを推進し盤石な事業基盤の構築を目指している。重点戦略としては、「経済的価値の創造」として事業ポートフォリオ経営(成長事業への経営資源配分、グローバル事業の拡張、環境配慮への取り組みと投資推進)と、「社会的価値の創造」としてマテリアリティの克服(脱炭素社会の実現に向けた計画策定と実行、人的資本の強化、人権尊重への対応)を推進している。キャッシュ・アロケーションとしては、3期間合計で前中期経営計画比2倍超となる1,000億円の投資(うち環境関連投資に600億円)と130億円の株主還元を計画している。投資の内訳は、成長・新規事業(外航ガス船、戦略投資)に500億円、主力事業(ケミカル船、ドライバルク船)に200億円、安定・成熟事業(油槽船、内航・近海ガス船、不動産)に300億円としている。
事業ポートフォリオ経営については、成長事業への経営資源配分では、脱炭素化の加速で成長が見込まれるガス船事業の強化・拡充、競争力向上やシナジー創出につながる戦略投資の実行を推進する。グローバル事業の拡張では、各事業の既存ネットワークを生かした横断的な営業展開、成長の見込めるエリア(特にアジア~中東~欧州)での事業拡張を推進する。環境配慮への取り組みと投資推進では、サステナブルな貨物輸送への対応を継続し、環境負荷軽減に資する船舶や不動産への投資とその管理ノウハウの蓄積を推進する。
これにより、現在は成長事業領域に位置付けている外航ガス船を主力事業にシフトさせ、ケミカル船に並ぶ柱とする方針だ。戦略投資では、本業の競争優位性を向上させるため、事業間シナジーが見込める未参入の船種や不動産物件のほか、再生可能エネルギー関連事業やスタートアップへの投資などにも取り組む方針である。なおスタートアップへの投資としては2023年6月に、海外2社の海事ベンチャーキャピタル(VC)に出資した。主力事業のケミカルタンカーは、強みを持つステンレス船隊による差別化営業の強化やインフレ・環境対応コストを適切に反映したCOAの更改など、ドライバルク船は中長期契約獲得や独自性・差別化強化など、安定・成熟事業領域の油槽船は既存船の環境負荷軽減への対応とサービス強化など、内海・近海ガス船はアンモニア輸送やLNGバンカリング等の新たな需要への対応など、不動産は築古ビルのバリューアップや海外不動産への戦略的な取り組みなどを推進する。
マテリアリティの克服については、2050年までにカーボンニュートラル(CN)を達成するためのロードマップを新たに策定し、2030年についても従来の削減率目標を引き上げた。脱炭素への取り組みを一段と強化する方針だ。
海運業においては、ゼロエミッション燃料(水素、アンモニア)を含めた次世代燃料への本格転換を推進するほか、風力を含む推進性向上・燃費改善設備およびシステムの搭載、バイオ燃料の安定的確保と段階的導入、船上CO2回収・貯留の導入、AIを活用した運航効率改善などにも取り組む。2030年までの次世代燃料船への投資額は、自主運航船(主に中小型のケミカルタンカー・ドライバルク船・内航ガス船)ベースで約650億円、定期貸船(主に大型の油槽船・外航ガス船)ベースで1,500億円の計画である。不動産業においては、再生可能エネルギー利用の拡大、築古ビルの改修や高効率機器への更新、非化石証書付電力の調達拡大、次世代オフィスビルの知見獲得・保有などにより、脱炭素化を推進するともに、競争力強化にもつなげる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<HH>
1. 中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」
飯野海運<9119>は長期ビジョン「IINO VISION for 2030」の実現に向けて、2023年5月に策定した中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」(2023年4月〜2026年3月末)において、「ポートフォリオ経営とカーボンニュートラルへの挑戦」をテーマに掲げた。中期経営計画策定に際し、理念体系を整理し、企業理念(IINO PURPOSE)を「安全の確保を最優先に、人々の想いを繋ぎ、より豊かな未来を築きます」と定めた。
重視する財務指標と数値目標については、2024年3月期に経常利益111億円、EBITDA(営業利益+減価償却費+主たる事業投資に係る受取配当金及び持分法投資損益)255億円、ROE9%、ROIC4.5%など、2025年3月期に経常利益115〜125億円、EBITDA270〜280億円、ROE9〜10%など、2026年3月期に経常利益130〜140億円、EBITDA280〜290億円、ROE9〜10%、ROIC4〜5%などを掲げた。これに対して中期経営計画1年目の2024年3月期は経常利益218億円、EBITDA333億円、ROE16.3%、ROIC8.6%など、ほとんどの項目で計画値を上回る形で着地した。そして中期経営計画2年目の2025年3月期も経常利益145億円、EBITDA300億円、ROE10%など、ほとんどの項目で目標を上回る見込みである。市況や為替も後押し要因となり、中期経営計画の進捗は極めて順調と言える。
2. 安定収益源を積み上げるための重点戦略
同社の海運業は市況変動の影響が避けられないものの、市況変動リスクを軽減するため、安定収益源の積み上げを推進し盤石な事業基盤の構築を目指している。重点戦略としては、「経済的価値の創造」として事業ポートフォリオ経営(成長事業への経営資源配分、グローバル事業の拡張、環境配慮への取り組みと投資推進)と、「社会的価値の創造」としてマテリアリティの克服(脱炭素社会の実現に向けた計画策定と実行、人的資本の強化、人権尊重への対応)を推進している。キャッシュ・アロケーションとしては、3期間合計で前中期経営計画比2倍超となる1,000億円の投資(うち環境関連投資に600億円)と130億円の株主還元を計画している。投資の内訳は、成長・新規事業(外航ガス船、戦略投資)に500億円、主力事業(ケミカル船、ドライバルク船)に200億円、安定・成熟事業(油槽船、内航・近海ガス船、不動産)に300億円としている。
事業ポートフォリオ経営については、成長事業への経営資源配分では、脱炭素化の加速で成長が見込まれるガス船事業の強化・拡充、競争力向上やシナジー創出につながる戦略投資の実行を推進する。グローバル事業の拡張では、各事業の既存ネットワークを生かした横断的な営業展開、成長の見込めるエリア(特にアジア~中東~欧州)での事業拡張を推進する。環境配慮への取り組みと投資推進では、サステナブルな貨物輸送への対応を継続し、環境負荷軽減に資する船舶や不動産への投資とその管理ノウハウの蓄積を推進する。
これにより、現在は成長事業領域に位置付けている外航ガス船を主力事業にシフトさせ、ケミカル船に並ぶ柱とする方針だ。戦略投資では、本業の競争優位性を向上させるため、事業間シナジーが見込める未参入の船種や不動産物件のほか、再生可能エネルギー関連事業やスタートアップへの投資などにも取り組む方針である。なおスタートアップへの投資としては2023年6月に、海外2社の海事ベンチャーキャピタル(VC)に出資した。主力事業のケミカルタンカーは、強みを持つステンレス船隊による差別化営業の強化やインフレ・環境対応コストを適切に反映したCOAの更改など、ドライバルク船は中長期契約獲得や独自性・差別化強化など、安定・成熟事業領域の油槽船は既存船の環境負荷軽減への対応とサービス強化など、内海・近海ガス船はアンモニア輸送やLNGバンカリング等の新たな需要への対応など、不動産は築古ビルのバリューアップや海外不動産への戦略的な取り組みなどを推進する。
マテリアリティの克服については、2050年までにカーボンニュートラル(CN)を達成するためのロードマップを新たに策定し、2030年についても従来の削減率目標を引き上げた。脱炭素への取り組みを一段と強化する方針だ。
海運業においては、ゼロエミッション燃料(水素、アンモニア)を含めた次世代燃料への本格転換を推進するほか、風力を含む推進性向上・燃費改善設備およびシステムの搭載、バイオ燃料の安定的確保と段階的導入、船上CO2回収・貯留の導入、AIを活用した運航効率改善などにも取り組む。2030年までの次世代燃料船への投資額は、自主運航船(主に中小型のケミカルタンカー・ドライバルク船・内航ガス船)ベースで約650億円、定期貸船(主に大型の油槽船・外航ガス船)ベースで1,500億円の計画である。不動産業においては、再生可能エネルギー利用の拡大、築古ビルの改修や高効率機器への更新、非化石証書付電力の調達拡大、次世代オフィスビルの知見獲得・保有などにより、脱炭素化を推進するともに、競争力強化にもつなげる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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