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コラム【新潮流2.0】:記憶力(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)

配信日時:2023/06/07 09:30 配信元:FISCO
*09:30JST コラム【新潮流2.0】:記憶力(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆) ◆最近僕の周りで禁句になっている台詞がある。「33年前、何してた?」である。「やだ~、33年前なんて、まだ生まれてませんよ~!」とあっけらかんと笑って答えられるのはアラサーまで。妙齢の女性はほぼ例外なく、きつい眼で僕を睨んで「内緒!」と怒ったように返すのである。

◆日経平均が33年ぶりの高値にある。33年前の1990年と言えば、世の中はバブルの真っ只中である。ホイチョイ・プロダクションズの映画『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』は1990年にタイムトラベルする話だ。「内緒」と言って答えてくれなかった女性たちも密かに「あの頃はジュリアナで扇子を振って踊っていたわね~」と当時を懐かしんでいるかもしれない。しかし、だとしたらそれは記憶違いだ。

◆バブルの象徴としてよく取り上げられるディスコ、ジュリアナ東京。だが、ジュリアナがオープンしたのは1991年5月。33年前ではなく32年前だ。たった1年の違いとは言え、その差は大きい。その時すでにバブルは崩壊していたのだから。いつがバブルのピークかは諸説あるが、内閣府の景気基準日付によれば景気の山は1991年の2月(第11循環)、バブル崩壊の引き金を引いたとされる大蔵省の総量規制が通達されたのが1990年の3月、そして日経平均が史上最高値をつけたのが1989年12月末だから、どう見てもジュリアナのオープン時にはバブルは弾けていたのであった。

◆ひとの記憶は曖昧で頼りない。もっと言えば、ひとは簡単に過去を忘れる。だからこそ愚かにもバブルとその崩壊が繰り返されるのだ。ひとたびバブルが崩壊すれば社会に甚大な影響を及ぼす。その悲劇を繰り返さぬためにも、当時の記憶をまだ維持している我々中高年がバブルの兆しを嗅ぎ取ったなら、すかさず警鐘を鳴らすようにしたいものだ。しかし、この年齢になると日々記憶力が衰えていくのが問題だ。まあ、それほど深刻に考えなくてもいいか。記憶力が悪いことにも美点がある。「気の利く男とは常に女性の誕生日を覚えてはいるが、その女性の年齢は決して覚えていない男のことである。(ロバート・フロスト)」


マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆
(出所:6/5配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)


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