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三菱総研 Research Memo(7):VCP経営・連結経営のもと、社会実装機能強化に注力(1)
配信日時:2022/12/08 15:27
配信元:FISCO
■三菱総合研究所<3636>の中長期の成長戦略
1. 中期経営計画の概要
2020年11月に発表した中期経営計画において、同社グループは「VCP経営」「連結経営」「新常態経営」の3つを基本的方針として設定し、「A:研究・提言」「D:社会実装」機能の強化とDX事業をはじめとする新事業の創出・拡大により持続的成長企業への土台を構築することを目指している。そのうえで財務価値の具体的目標として、2023年9月期に経常利益100億円(年平均成長率12%)、ROE10%を掲げている。なお、前述のとおり経常利益及びROE目標は2022年9月期に前倒しで達成した。経常利益に関しては、さらに高い目標を目指す構えである。
基本方針の1つとして掲げた「VCP経営」において、同社グループのバリューチェーンを「A:研究・提言」「B:分析・構想」「C:設計・実証」「D:社会実装」と定義付けた。従来強みとしてきた「B:分析・構想」「C:設計・実証」機能の強化に加えて、世の中に存在する社会課題を起点に「D:社会実装」までを意識した現実性の高い「A:研究・提言」を行うなど各機能のつながりを意識した事業活動を展開することによって課題解決と事業機会の拡大を目指す。また、「D:社会実装」まで主体的に関与することで社会に変革を根付かせることを目的としている。重点分野として、ヘルスケア、人財、都市・モビリティ、エネルギー、情報通信、食農、循環、レジリエンスを設定した。例えば、エネルギー分野においては、将来のあるべきエネルギー政策の研究・提言からメガソーラー事業の運営まで手掛けており、AからDまでを一気通貫で提供するVCP経営を実行している。これらの重点分野を中心にVCP経営を推進することにより、社会価値(社会課題の解決)、非財務価値(人と組織の持続的成長)、財務価値(事業の成長)の3つの価値の拡大化を目指す考えだ。
「連結経営」に関しては、「D:社会実装」機能を強化することで「VCP経営」の実効性をさらに高めるために重要となる。「VCP経営」の実効性を高めることを目的にグループの中核企業であるDCS、JBS、INESとの協業をより一層推進し、グループ内の資産を有効活用する方針だ。また、DXなどの新規事業創出においては、グループ企業に留まらず、ベンチャー企業、海外企業、大手企業など、外部企業・機関との連携も積極的に模索していく。
「新常態経営」とは、ポストコロナ社会に伴う様々な変革を同社グループが先駆けて行うもので、働き方改革を社内でも加速していくものである。これにより、従業員のワーク・ライフ・バランスの最適化・企業パフォーマンスの最大化を実現するとともに、変革を先導するなかから得た知見をVCP経営の「A:研究・提言」、「D:社会実装」へとつなげ、新たな事業機会を創出することも狙っている。
同社グループは、これらの3つの基本方針のもと、さらに5つの改革戦略「成長事業改革」「基盤事業改革」「シンクタンク事業改革」「人財・風土改革」「経営システム改革」を策定し、具体的な活動に落とし込んでいる。
2. 5つの改革路線
(1) 成長事業改革
同社グループは持続的成長に向けて、「DX事業」「ストック型事業」「海外事業」を成長事業として設定した。これらの事業を軸に新収益基盤の構築を実行し、事業モデル及び事業ポートフォリオの転換を実行する構えだ。「DX事業」においては、「DXジャーニー」「ニューノーマル」「データ駆動経営」「自治体DX」を重点テーマとして設定した。2020年10月に同社内に新設したデジタル・トランスフォーメーション部門を中心にDCS、JBS、INESとの連携を加速し、DX事業の強化に取り組んでいる。2022年9月期においては、デジタル地域通貨「Region Ring」の提供開始、卸電力取引情報の「MPX」の提供開始、MD連携による海運会社向けGHG排出量管理・削減ツールの提供開始をはじめとして着実に実績が積み上がった。同社決算説明資料によると、DX事業の順調な拡大を受けて2022年9月期の売上高に占めるDX事業の割合は約3割(約32,000百万円)まで高まっている状況だ。2020年9月期のDX関連事業の売上高約27,000百万円と比較すると約1.2倍に拡大している。また、中長期的にDX事業の対連結売上高シェアを5割超にするという目標に向けて順調に前進している(M&Aによるノンオーガニックの成長も想定)。
「ストック型事業」は、同社グループのノウハウ・知的資産を活用して効率的かつ継続的に安定した収益を上げることを意図している。具体的には、ICTソリューションの提供を通じた社会課題解決の実装と社会課題解決サービスの提供という2タイプのストック型事業に取り組んでいる。既に卸電力取引のためのオンライン情報サービス「MPX」、地域課題解決型デジタル地域通貨サービス「Region Ring」、エントリーシート優先度診断サービス「PRaiO」、タレントマネジメントシステム「crexta」、住民からの問い合わせにAIチャットボットが対応する「AIスタッフ総合案内サービス」、ジョブマッチングシステム「JOBMINEs」、人事給与BPOサービス「PROSRV」、インターネット出願サービス「miraicompass」など、多くのサービスを市場に投入している。今後は、既にローンチした事業の規模拡大と新サービスの継続的な投入を計画している。
「海外事業」に関しては、課題先進国日本で培ったノウハウを生かし、アジア、中東諸国を中心に展開している。ハノイにおいては、少子高齢化に伴うシンポジウムを開催するなど、問題意識の醸成と日本型システムの有用性に対する理解を促進中である。中東のドバイにおいては、同社の環境・エネルギー分野における実績とノウハウを武器に、政府の課題解決パートナーとしての地位を確立していく。他国の社会問題に対して日本の経験を応用できる余地は大きく、今後、売上高に占める海外事業の割合が高まっていくものと弊社は推察している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
<SI>
1. 中期経営計画の概要
2020年11月に発表した中期経営計画において、同社グループは「VCP経営」「連結経営」「新常態経営」の3つを基本的方針として設定し、「A:研究・提言」「D:社会実装」機能の強化とDX事業をはじめとする新事業の創出・拡大により持続的成長企業への土台を構築することを目指している。そのうえで財務価値の具体的目標として、2023年9月期に経常利益100億円(年平均成長率12%)、ROE10%を掲げている。なお、前述のとおり経常利益及びROE目標は2022年9月期に前倒しで達成した。経常利益に関しては、さらに高い目標を目指す構えである。
基本方針の1つとして掲げた「VCP経営」において、同社グループのバリューチェーンを「A:研究・提言」「B:分析・構想」「C:設計・実証」「D:社会実装」と定義付けた。従来強みとしてきた「B:分析・構想」「C:設計・実証」機能の強化に加えて、世の中に存在する社会課題を起点に「D:社会実装」までを意識した現実性の高い「A:研究・提言」を行うなど各機能のつながりを意識した事業活動を展開することによって課題解決と事業機会の拡大を目指す。また、「D:社会実装」まで主体的に関与することで社会に変革を根付かせることを目的としている。重点分野として、ヘルスケア、人財、都市・モビリティ、エネルギー、情報通信、食農、循環、レジリエンスを設定した。例えば、エネルギー分野においては、将来のあるべきエネルギー政策の研究・提言からメガソーラー事業の運営まで手掛けており、AからDまでを一気通貫で提供するVCP経営を実行している。これらの重点分野を中心にVCP経営を推進することにより、社会価値(社会課題の解決)、非財務価値(人と組織の持続的成長)、財務価値(事業の成長)の3つの価値の拡大化を目指す考えだ。
「連結経営」に関しては、「D:社会実装」機能を強化することで「VCP経営」の実効性をさらに高めるために重要となる。「VCP経営」の実効性を高めることを目的にグループの中核企業であるDCS、JBS、INESとの協業をより一層推進し、グループ内の資産を有効活用する方針だ。また、DXなどの新規事業創出においては、グループ企業に留まらず、ベンチャー企業、海外企業、大手企業など、外部企業・機関との連携も積極的に模索していく。
「新常態経営」とは、ポストコロナ社会に伴う様々な変革を同社グループが先駆けて行うもので、働き方改革を社内でも加速していくものである。これにより、従業員のワーク・ライフ・バランスの最適化・企業パフォーマンスの最大化を実現するとともに、変革を先導するなかから得た知見をVCP経営の「A:研究・提言」、「D:社会実装」へとつなげ、新たな事業機会を創出することも狙っている。
同社グループは、これらの3つの基本方針のもと、さらに5つの改革戦略「成長事業改革」「基盤事業改革」「シンクタンク事業改革」「人財・風土改革」「経営システム改革」を策定し、具体的な活動に落とし込んでいる。
2. 5つの改革路線
(1) 成長事業改革
同社グループは持続的成長に向けて、「DX事業」「ストック型事業」「海外事業」を成長事業として設定した。これらの事業を軸に新収益基盤の構築を実行し、事業モデル及び事業ポートフォリオの転換を実行する構えだ。「DX事業」においては、「DXジャーニー」「ニューノーマル」「データ駆動経営」「自治体DX」を重点テーマとして設定した。2020年10月に同社内に新設したデジタル・トランスフォーメーション部門を中心にDCS、JBS、INESとの連携を加速し、DX事業の強化に取り組んでいる。2022年9月期においては、デジタル地域通貨「Region Ring」の提供開始、卸電力取引情報の「MPX」の提供開始、MD連携による海運会社向けGHG排出量管理・削減ツールの提供開始をはじめとして着実に実績が積み上がった。同社決算説明資料によると、DX事業の順調な拡大を受けて2022年9月期の売上高に占めるDX事業の割合は約3割(約32,000百万円)まで高まっている状況だ。2020年9月期のDX関連事業の売上高約27,000百万円と比較すると約1.2倍に拡大している。また、中長期的にDX事業の対連結売上高シェアを5割超にするという目標に向けて順調に前進している(M&Aによるノンオーガニックの成長も想定)。
「ストック型事業」は、同社グループのノウハウ・知的資産を活用して効率的かつ継続的に安定した収益を上げることを意図している。具体的には、ICTソリューションの提供を通じた社会課題解決の実装と社会課題解決サービスの提供という2タイプのストック型事業に取り組んでいる。既に卸電力取引のためのオンライン情報サービス「MPX」、地域課題解決型デジタル地域通貨サービス「Region Ring」、エントリーシート優先度診断サービス「PRaiO」、タレントマネジメントシステム「crexta」、住民からの問い合わせにAIチャットボットが対応する「AIスタッフ総合案内サービス」、ジョブマッチングシステム「JOBMINEs」、人事給与BPOサービス「PROSRV」、インターネット出願サービス「miraicompass」など、多くのサービスを市場に投入している。今後は、既にローンチした事業の規模拡大と新サービスの継続的な投入を計画している。
「海外事業」に関しては、課題先進国日本で培ったノウハウを生かし、アジア、中東諸国を中心に展開している。ハノイにおいては、少子高齢化に伴うシンポジウムを開催するなど、問題意識の醸成と日本型システムの有用性に対する理解を促進中である。中東のドバイにおいては、同社の環境・エネルギー分野における実績とノウハウを武器に、政府の課題解決パートナーとしての地位を確立していく。他国の社会問題に対して日本の経験を応用できる余地は大きく、今後、売上高に占める海外事業の割合が高まっていくものと弊社は推察している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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