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アンジェス Research Memo(6):新型コロナDNAワクチンは経鼻投与製剤での開発を目指し共同研究を開始
配信日時:2022/12/07 15:46
配信元:FISCO
■主要開発パイプラインの動向
2. 新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン及び治療薬
(1) 新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン
アンジェス<4563>は2022年9月7日付で新型コロナウイルス感染症(武漢型)向けDNAワクチンの開発中止と合わせて、変異株(オミクロンBA.5等)に対する改良型DNAワクチンの経鼻投与製剤についての研究開始を発表した。
新型コロナウイルス感染症(武漢型)向けDNAワクチンについては、高用量製剤での臨床試験を2021年より行ってきたものの主要評価項目である、12週後のSARS-CoV-2のシュードウイルスに対する中和活性及び12週後のSARS-CoV-2スパイク(S)糖タンパク質特異的抗体価が期待する水準に達しなかったため中止を決定した。なお、初期のワクチンの開発中止により、これまで共同研究に参画してきた大阪大学及びタカラバイオ、ダイセル、EPSグループ、ファンペップ、新日本科学等との初期のワクチンに関する共同研究も終了している。
一方で、これまでの研究開発の知見を生かして、プラスミド※の発現効率や導入効率の向上等、プラットフォームの見直しを行い、将来発生する可能性のある新たな変異株への対応も視野に入れ、安全でより効果の高い改良型DNAワクチンの経鼻投与製剤の開発を進めるべく、スタンフォード大学と共同研究契約を締結した。同大学が開発した「Gold-Nanostar Octopod」技術を活用して開発を進めていく。同技術を用いて作製した経鼻投与ワクチン(武漢型の遺伝子配列を持つプラスミドDNA)でマウス実験を実施したところ、ワクチン投与後に血清中の抗体(IgG、IgA、IgM)上昇が確認されたほか、β株等の変異株に対しても中和活性を示したこと、組織学的な検討によりリンパ節・脾臓においてスパイクタンパク質に対する細胞性免疫反応、液性免疫反応が確認されたことなどから、同技術を用いて研究開発を行う価値があると判断した。共同研究の期間としてはおおむね3年程度、研究費は約3百万ドルを見込んでいる。コロナワクチンの主流となっているmRNAワクチンは保存温度の条件がマイナス70℃以下だが、DNAワクチンはマイナス20℃以下でよく、また凍結乾燥剤にすれば室温での保存も可能となる。このため、冷蔵設備や低温物流等のインフラが整備されていない発展途上国で需要があると同社では見ており、順調に開発が進めばライセンス契約も視野に入れ海外で臨床試験を行うことを想定している。
※プラスミド(plasmid)とは、大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子の総称。一般的に環状の2本鎖構造を取り、染色体のDNAからは独立して複製を行う。その独立した遺伝子複製機構から、遺伝子組み換え操作のベクターとして創薬などで利用されている。このプラスミドを大腸菌に導入し、大腸菌の大量培養により目的のDNAを増幅する。プラスミド製法では、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン(R)」が上市済みであり、製法そのものについての安全性は確認されている。
なお、今まで実施してきた新型コロナウイルス感染症(武漢型)向けワクチンの研究開発費用は国の補助金等で賄われており、入金された補助金は監査が完了した分を営業外収益として計上する格好となっている。2021年12月期に1,399百万円を計上し、2022年12月期第3四半期累計では118百万円を計上した。残りの金額については前受金として流動負債に計上しており、2022年12月期第3四半期末時点で5,764百万円となっている。今後、開発プロジェクトの実績報告書を関係当局に提出し、監査・承認を経て補助金等の金額が確定(補助金収入として計上)することになる。関係当局の年度末が3月のため、残額分の一部は計上時期が2023年12月期にずれ込む可能性もある。
(2) 新型コロナウイルス感染症治療薬「AV-001」の開発状況
カナダのVasomuneとの共同開発品である「AV-001」(Tie2受容体アゴニスト化合物)※は、もともと2018年より全世界を対象に急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした治療薬として共同開発を進めてきたものだが、中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者向けの治療薬としても効果があると判断し、2020年より米国で臨床試験を開始した。開発状況は、2022年1月より米国で前期第2相臨床試験を開始し、今のところ順調に登録が進んでいる(目標症例数は約120例)。ただ、新型コロナウイルス感染症の変異株に関しては重篤な肺炎を発症する感染者が急減している状況を鑑み、今後は急性呼吸窮迫症候群を含めた肺疾患への対応を検討する方針である。
※同社は2018年7月にVasomuneと、急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした「AV-001」の全世界を対象とした共同開発契約を締結した。開発費用と将来の収益を折半し、また、同社がVasomuneに対して契約一時金及び開発の進捗に応じたマイルストーンを支払う契約となっている。急性呼吸窮迫症候群の患者数は米国だけで26万人いる。
なお、「AV-001」の開発にあたっては、米国及びカナダの政府関係機関からVasomuneが助成金を獲得しており、開発費負担分に応じて同社もVasomuneから補助金の一部を受領している。2022年12月期第3四半期累計では補助金収入として251百万円(2021年12月期は100百万円)を営業外収益として計上した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SI>
2. 新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン及び治療薬
(1) 新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン
アンジェス<4563>は2022年9月7日付で新型コロナウイルス感染症(武漢型)向けDNAワクチンの開発中止と合わせて、変異株(オミクロンBA.5等)に対する改良型DNAワクチンの経鼻投与製剤についての研究開始を発表した。
新型コロナウイルス感染症(武漢型)向けDNAワクチンについては、高用量製剤での臨床試験を2021年より行ってきたものの主要評価項目である、12週後のSARS-CoV-2のシュードウイルスに対する中和活性及び12週後のSARS-CoV-2スパイク(S)糖タンパク質特異的抗体価が期待する水準に達しなかったため中止を決定した。なお、初期のワクチンの開発中止により、これまで共同研究に参画してきた大阪大学及びタカラバイオ、ダイセル、EPSグループ、ファンペップ、新日本科学等との初期のワクチンに関する共同研究も終了している。
一方で、これまでの研究開発の知見を生かして、プラスミド※の発現効率や導入効率の向上等、プラットフォームの見直しを行い、将来発生する可能性のある新たな変異株への対応も視野に入れ、安全でより効果の高い改良型DNAワクチンの経鼻投与製剤の開発を進めるべく、スタンフォード大学と共同研究契約を締結した。同大学が開発した「Gold-Nanostar Octopod」技術を活用して開発を進めていく。同技術を用いて作製した経鼻投与ワクチン(武漢型の遺伝子配列を持つプラスミドDNA)でマウス実験を実施したところ、ワクチン投与後に血清中の抗体(IgG、IgA、IgM)上昇が確認されたほか、β株等の変異株に対しても中和活性を示したこと、組織学的な検討によりリンパ節・脾臓においてスパイクタンパク質に対する細胞性免疫反応、液性免疫反応が確認されたことなどから、同技術を用いて研究開発を行う価値があると判断した。共同研究の期間としてはおおむね3年程度、研究費は約3百万ドルを見込んでいる。コロナワクチンの主流となっているmRNAワクチンは保存温度の条件がマイナス70℃以下だが、DNAワクチンはマイナス20℃以下でよく、また凍結乾燥剤にすれば室温での保存も可能となる。このため、冷蔵設備や低温物流等のインフラが整備されていない発展途上国で需要があると同社では見ており、順調に開発が進めばライセンス契約も視野に入れ海外で臨床試験を行うことを想定している。
※プラスミド(plasmid)とは、大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子の総称。一般的に環状の2本鎖構造を取り、染色体のDNAからは独立して複製を行う。その独立した遺伝子複製機構から、遺伝子組み換え操作のベクターとして創薬などで利用されている。このプラスミドを大腸菌に導入し、大腸菌の大量培養により目的のDNAを増幅する。プラスミド製法では、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン(R)」が上市済みであり、製法そのものについての安全性は確認されている。
なお、今まで実施してきた新型コロナウイルス感染症(武漢型)向けワクチンの研究開発費用は国の補助金等で賄われており、入金された補助金は監査が完了した分を営業外収益として計上する格好となっている。2021年12月期に1,399百万円を計上し、2022年12月期第3四半期累計では118百万円を計上した。残りの金額については前受金として流動負債に計上しており、2022年12月期第3四半期末時点で5,764百万円となっている。今後、開発プロジェクトの実績報告書を関係当局に提出し、監査・承認を経て補助金等の金額が確定(補助金収入として計上)することになる。関係当局の年度末が3月のため、残額分の一部は計上時期が2023年12月期にずれ込む可能性もある。
(2) 新型コロナウイルス感染症治療薬「AV-001」の開発状況
カナダのVasomuneとの共同開発品である「AV-001」(Tie2受容体アゴニスト化合物)※は、もともと2018年より全世界を対象に急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした治療薬として共同開発を進めてきたものだが、中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者向けの治療薬としても効果があると判断し、2020年より米国で臨床試験を開始した。開発状況は、2022年1月より米国で前期第2相臨床試験を開始し、今のところ順調に登録が進んでいる(目標症例数は約120例)。ただ、新型コロナウイルス感染症の変異株に関しては重篤な肺炎を発症する感染者が急減している状況を鑑み、今後は急性呼吸窮迫症候群を含めた肺疾患への対応を検討する方針である。
※同社は2018年7月にVasomuneと、急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした「AV-001」の全世界を対象とした共同開発契約を締結した。開発費用と将来の収益を折半し、また、同社がVasomuneに対して契約一時金及び開発の進捗に応じたマイルストーンを支払う契約となっている。急性呼吸窮迫症候群の患者数は米国だけで26万人いる。
なお、「AV-001」の開発にあたっては、米国及びカナダの政府関係機関からVasomuneが助成金を獲得しており、開発費負担分に応じて同社もVasomuneから補助金の一部を受領している。2022年12月期第3四半期累計では補助金収入として251百万円(2021年12月期は100百万円)を営業外収益として計上した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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