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ウォール街を知るハッチの独り言 伊勢海老相場とバフェットさんの格言の話(マネックス証券 岡元 兵八郎)
配信日時:2022/07/27 09:22
配信元:FISCO
さて、マネックス証券の「メールマガジン新潮流」が、7月25日に配信されました。
そのなかから今回は、同証券のチーフ・外国株コンサルタント、『ハッチ』こと岡元兵八郎氏のコラム「ウォール街を知るハッチの独り言」の内容をご紹介いたします。
数週間前、私は故郷の宮崎へ帰省しました。目的は、旧友二人と私の故郷を旅することでした。コロナ禍前は恒例の行事だったのですが、コロナ禍でそれが実現できずにいたので、今回は実に3年ぶりの旅です。
私の生まれ故郷は、宮崎市から日南海岸を車で2時間ほど南下、日南市南郷町という田舎町です。私はそこで生まれて小学4年生の頃まで住んでいました。今ではもう親戚も亡くなり、地元へ帰る時は祖先のお墓参りをするときくらいです。
今から遡ること8年前、私は初めての著書「新興国の株式投資の本」の執筆をするべく生まれ故郷へ帰省しました。
地元にある民宿を探して予約を入れた目井津港のホテルは、偶然にも私の小学1年生の時の同級生の鉄ちゃんのご家族が経営するホテルだったのです。ここは地元で創業100年以上続く老舗、料理が美味しいこぢんまりとしたホテルです。
その晩、日南の焼酎と地元の新鮮な料理の数々に舌鼓を打ちながら、旅の理由やら何やら談笑していました。すると、ここから船で15分程の沖合に「大島」という島があり、さらにはその島に鉄ちゃんの家族が所有する古い一軒家があるとのこと。そこに寝泊まりして原稿を書けばいいじゃないかと勧めてくれたのです。 以前大島は小学校もあるほど多くの家族が住んでいたのですが、現在は過疎化して誰も住むことの無い無人島となっていました。
鉄ちゃんのオファーをきっかけに、早速、私は翌日から5日間の渡航を決行。大島にある彼の家を借りての執筆活動を始めたのです。日の暮れる前には、鉄ちゃんが様々な地元の新鮮食材を船で届けてくれ、夕食は1人でバーベキュー。朝食はその残りをいただきました。翌朝、鉄ちゃんはまた船でお弁当を届けてくれ、夕方になるとまた晩ごはんの食材を持ってきてくれるのです。
船の発着場と波打ち際は境目が無く、十数歩歩くとそのまま家屋に到着です。まるで海と一体化しているようなこの島の彼の家にいると、朝は起きたい時に波の音で目覚めます。日中は原稿書きに精を出し、飽きると島中をあてどなく歩いてトム・ソーヤさながら探検隊。お腹が空くと火を焚べて新鮮な野菜と魚介でバーベキュー。
さながら老人と海!? これってヘミングウェイ!?
こんな素晴らしい環境を提供してくれた幼馴染みの親切心には感謝しかありません。すっかり偉大な作家気分に浸りつつ、こうして無事に一冊の本を書き上げることができたのです。
東京に戻り友人にこの話をしたところ、どうしても行きたいという熱烈なリクエストが入り、いつの間にやら中年男部隊3人が結集。大島の鉄ちゃんの家に泊まって、魚釣りやバーベキューで地元の味三昧というのが年に一度の恒例行事、一大イベントとなりました。
そして今年7月、コロナ禍をすり抜けて3年ぶりに訪れた鉄ちゃんのホテルに到着。ロビーで久々の再会を果たし積もる話をしていた時のことです。
一人のマスクをした若者が私の方へやってきて挨拶をしてくれたのです。「この本を書かれた岡元さんですね。」 彼は右手に、私が2年前に著した「初心者向け米国株の本」を持っていました。よくよく聞いてみると彼は鉄ちゃんの甥で、数年前に株式投資に興味を持ち始めて、たまたま私の動画をYouTubeで見つけ、私の本も買っていたというのです。YouTubeで米国株の話をしていて、更には購入した米国株の著者だったのが、たまたま叔父の鉄ちゃんの幼なじみの私だったというわけです。
実はマネックス証券でオンラインセミナーを行う度に、一つ気になっている事がありました。
関東や名阪神圏在住視聴者の方はとても多い一方、東や西の地方へ行けば行くほど視聴者数が減っていくのです。ネットの世界になっても、どうしても都会は色々な意味で情報はいっぱいあるのです。私が地方出身者なので事情はよくわかるのです。ですから、私は常々、地方に住んでいる方々にも是非、米国株投資の魅力を知って欲しいと思い続けてきました。
同郷の宮崎の若者が、米国株投資に興味を持ってくれていたという事を大変嬉しく思いました。そしてその彼はウォーレン・バフェットの有名な言葉、「他人が貪欲になっているときに恐れ、他人が恐れているときにだけ貪欲になれ」について語り出したのです。「今まさにそういう局面ですよね」と。しっかり勉強しているなと思ったのですが、凄いのはここからです。
彼は毎朝、近くの魚市場へ行って競りで魚を買い付ける事が重要な仕事の一つです。彼はコロナ禍で伊勢海老の卸値が安かった時に、このバフェットの言葉を思い出し、誰も買わなかった伊勢海老の値段が安くなったのをチャンスと捉え、誰も欲しがらない伊勢海老を大量に買い付けて大型冷凍庫に保存したというのです。 もちろんその後伊勢海老価格は戻っていき、彼は利益を得ることができたのです。
この発想は私にとっても目に鱗でした。このようにバフェットの考え方を自身の仕事に落とし込んで実行したというのは素晴らしい発想だなと思いました。私はこの若者の着眼点の素晴らしさに敬意を覚えると同時に、彼は優秀な投資家にもなるのではないかと思いました。
私も投資の世界の格言は、投資の世界のものだと思ってきましたが、今回の件で改めて投資の格言は私たちの身近な世界でも役に立ち、世の中で何が起きているか見極めチャンスを逃さないことが大切だと考えさせられた次第です。
マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント 岡元 兵八郎
(出所:7/25配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)
<FA>
そのなかから今回は、同証券のチーフ・外国株コンサルタント、『ハッチ』こと岡元兵八郎氏のコラム「ウォール街を知るハッチの独り言」の内容をご紹介いたします。
数週間前、私は故郷の宮崎へ帰省しました。目的は、旧友二人と私の故郷を旅することでした。コロナ禍前は恒例の行事だったのですが、コロナ禍でそれが実現できずにいたので、今回は実に3年ぶりの旅です。
私の生まれ故郷は、宮崎市から日南海岸を車で2時間ほど南下、日南市南郷町という田舎町です。私はそこで生まれて小学4年生の頃まで住んでいました。今ではもう親戚も亡くなり、地元へ帰る時は祖先のお墓参りをするときくらいです。
今から遡ること8年前、私は初めての著書「新興国の株式投資の本」の執筆をするべく生まれ故郷へ帰省しました。
地元にある民宿を探して予約を入れた目井津港のホテルは、偶然にも私の小学1年生の時の同級生の鉄ちゃんのご家族が経営するホテルだったのです。ここは地元で創業100年以上続く老舗、料理が美味しいこぢんまりとしたホテルです。
その晩、日南の焼酎と地元の新鮮な料理の数々に舌鼓を打ちながら、旅の理由やら何やら談笑していました。すると、ここから船で15分程の沖合に「大島」という島があり、さらにはその島に鉄ちゃんの家族が所有する古い一軒家があるとのこと。そこに寝泊まりして原稿を書けばいいじゃないかと勧めてくれたのです。 以前大島は小学校もあるほど多くの家族が住んでいたのですが、現在は過疎化して誰も住むことの無い無人島となっていました。
鉄ちゃんのオファーをきっかけに、早速、私は翌日から5日間の渡航を決行。大島にある彼の家を借りての執筆活動を始めたのです。日の暮れる前には、鉄ちゃんが様々な地元の新鮮食材を船で届けてくれ、夕食は1人でバーベキュー。朝食はその残りをいただきました。翌朝、鉄ちゃんはまた船でお弁当を届けてくれ、夕方になるとまた晩ごはんの食材を持ってきてくれるのです。
船の発着場と波打ち際は境目が無く、十数歩歩くとそのまま家屋に到着です。まるで海と一体化しているようなこの島の彼の家にいると、朝は起きたい時に波の音で目覚めます。日中は原稿書きに精を出し、飽きると島中をあてどなく歩いてトム・ソーヤさながら探検隊。お腹が空くと火を焚べて新鮮な野菜と魚介でバーベキュー。
さながら老人と海!? これってヘミングウェイ!?
こんな素晴らしい環境を提供してくれた幼馴染みの親切心には感謝しかありません。すっかり偉大な作家気分に浸りつつ、こうして無事に一冊の本を書き上げることができたのです。
東京に戻り友人にこの話をしたところ、どうしても行きたいという熱烈なリクエストが入り、いつの間にやら中年男部隊3人が結集。大島の鉄ちゃんの家に泊まって、魚釣りやバーベキューで地元の味三昧というのが年に一度の恒例行事、一大イベントとなりました。
そして今年7月、コロナ禍をすり抜けて3年ぶりに訪れた鉄ちゃんのホテルに到着。ロビーで久々の再会を果たし積もる話をしていた時のことです。
一人のマスクをした若者が私の方へやってきて挨拶をしてくれたのです。「この本を書かれた岡元さんですね。」 彼は右手に、私が2年前に著した「初心者向け米国株の本」を持っていました。よくよく聞いてみると彼は鉄ちゃんの甥で、数年前に株式投資に興味を持ち始めて、たまたま私の動画をYouTubeで見つけ、私の本も買っていたというのです。YouTubeで米国株の話をしていて、更には購入した米国株の著者だったのが、たまたま叔父の鉄ちゃんの幼なじみの私だったというわけです。
実はマネックス証券でオンラインセミナーを行う度に、一つ気になっている事がありました。
関東や名阪神圏在住視聴者の方はとても多い一方、東や西の地方へ行けば行くほど視聴者数が減っていくのです。ネットの世界になっても、どうしても都会は色々な意味で情報はいっぱいあるのです。私が地方出身者なので事情はよくわかるのです。ですから、私は常々、地方に住んでいる方々にも是非、米国株投資の魅力を知って欲しいと思い続けてきました。
同郷の宮崎の若者が、米国株投資に興味を持ってくれていたという事を大変嬉しく思いました。そしてその彼はウォーレン・バフェットの有名な言葉、「他人が貪欲になっているときに恐れ、他人が恐れているときにだけ貪欲になれ」について語り出したのです。「今まさにそういう局面ですよね」と。しっかり勉強しているなと思ったのですが、凄いのはここからです。
彼は毎朝、近くの魚市場へ行って競りで魚を買い付ける事が重要な仕事の一つです。彼はコロナ禍で伊勢海老の卸値が安かった時に、このバフェットの言葉を思い出し、誰も買わなかった伊勢海老の値段が安くなったのをチャンスと捉え、誰も欲しがらない伊勢海老を大量に買い付けて大型冷凍庫に保存したというのです。 もちろんその後伊勢海老価格は戻っていき、彼は利益を得ることができたのです。
この発想は私にとっても目に鱗でした。このようにバフェットの考え方を自身の仕事に落とし込んで実行したというのは素晴らしい発想だなと思いました。私はこの若者の着眼点の素晴らしさに敬意を覚えると同時に、彼は優秀な投資家にもなるのではないかと思いました。
私も投資の世界の格言は、投資の世界のものだと思ってきましたが、今回の件で改めて投資の格言は私たちの身近な世界でも役に立ち、世の中で何が起きているか見極めチャンスを逃さないことが大切だと考えさせられた次第です。
マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント 岡元 兵八郎
(出所:7/25配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)
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