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品川リフラ Research Memo(5):2022年3月期の経常利益は前期比30.4%増の過去最高に
配信日時:2022/06/30 15:25
配信元:FISCO
■業績動向
1. 2022年3月期の連結業績概要
(1) 2022年3月期の業績概況
品川リフラクトリーズ<5351>の2022年3月期の連結業績は、売上高が前期比10.8%増の110,784百万円、営業利益が同38.7%増の10,107百万円、経常利益が同30.4%増の10,716百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同151.1%増の5,308百万円となった。第2四半期決算発表時点の通期予想との比較では、売上高が1.6%増、営業利益が6.4%増、経常利益が7.2%増であったが、親会社株主に帰属する当期純利益は18.3%減となった。親会社株主に帰属する当期純利益が、通期予想を未達となったのは、特別損失として環境対策引当金繰入額(1,410百万円)を計上したことに起因する。特別損失が前期の賃貸用固定資産の減損損失(3,276百万円)よりも減少したため、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比で大幅に増加した。
2022年3月期より「収益認識に関する会計基準」等を期首から適用している。新たな会計基準の適用により、売上高と売上原価はそれぞれ6,524百万円と6,558百万円減少し、営業利益が34百万円増加した。売上高が減少した反面、利益が微増となったため、利益率が上昇する一因となった。耐火物等の販売のうち、一部取引については収益の認識を従来の出荷時から検収時に変更した。また顧客からの有償支給取引において、従来は支給されたものを売上高と売上原価に計上していたが、加工代相当のみを純額で収益として認識することに改めた。エンジニアリング事業は、工事完成基準を適用していた契約のうち、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができないが発生する費用を回収することが見込まれる場合は、原価回収基準を適用することとした。
営業利益が前期比25億円強増加した。増益要因は耐火物の販売数量増(前期比19億円増)、エンジニアリング(同9億円増)、グループ会社(同19億円増)であり、減益要因はコストアップ(同19億円減)であった。運送費や販売費などの費用が増加した。前期はコロナ禍のため低調であった営業活動が、活発になった。2022年3月期下期から、原材料価格が上昇したが、販売価格への転嫁にタイムラグが生じた。期中の平均為替レートが、前期の1ドル当たり106円から112円の円安となったこと等が減益要因になった。
(2) 事業別動向
a) 耐火物及び関連製品
事業別では、全体の8割弱を占める耐火物及び関連製品事業の売上高が前期比10.8%増の84,901百万円、セグメント利益が同40.8%増の9,451百万円であった。売上高セグメント利益率は、コロナ禍の影響を受けた前期の8.8%から11.1%へ改善した。増収増益の最大要因は、粗鋼生産に使用される耐火物の販売数量増である。当年度の国内粗鋼生産量は9,564万トンと前年度比15.5%増加した。
国内外のグループ企業のパフォーマンスが予想以上に好調であった。連結子会社のイソライト工業は、通期で11億円の増益要因をもたらした。同子会社は、期末に完全子会社化された。主力の断熱関連事業は、各種工業炉向けを中心とした断熱関連製品及び自動車・半導体関連向けのセラミックファイバー製品が伸びた。同社の中国子会社をはじめとする海外子会社が、鉄鋼メーカーの操業率回復を受け業績を伸した。また、円安が連結決算集計の売上高と利益を増加させた。
b) エンジニアリング事業
エンジニアリング事業は、売上高が前期比15.8%増の24,898百万円、セグメント利益が同97.5%増の1,825百万円と計画以上の業績をあげた。売上高セグメント利益率は、前期の4.3%から7.3%へ向上した。高炉改修の大型案件とそれに関連する追加工事が、売上高及び利益を増加した。2021年12月に改修工事を終了させ火入れを行ったJFEスチールの西日本製鉄所(倉敷地区)第4高炉に関連した工事となる。また、メンテナンスなど製鉄所構内工事も活発であった。
c) 不動産事業
不動産事業は、売上高が前期比45.8%減の984百万円、セグメント利益が同55.2%減の439百万円と落ち込んだ。同社が土地と建物を所有する名古屋市港区品川町に所在するショッピングセンターが、2021年4月に賃貸契約を解除され、2022年3月期は、1ヵ月のみの収益寄与にとどまった。同物件は最寄駅から徒歩3分の好立地にあり、敷地面積も74,168m2と大きく、再開発が予定されている。既存の建物などを取り壊し、土地を整備する際に、地中に埋設された一般廃棄物が発見されたことから、環境対策引当金繰入額(1,410百万円)を計上した。なお、土壌汚染物質は発見されていない。再開発では、借主側が新規建屋を建設することになる。建設規模により採掘範囲と深度が定まるが、追加の環境対策費の発生余地がある。
2. 財務状況、経営指標及びキャッシュ・フロー計算書
(1) 財務の状況
2022年3月期末の総資産は、前期末比9,504百万円増加の119,710百万円となった。流動資産は、同7,086百万円増加78,740百万円であった。現金及び預金が前期比3,173百万円増加した。増収により、受取手形・売掛金等が4,372百万円増加した。たな卸資産は、同1,571百万円の増加にとどまったが、内訳は商品及び製品が1,314百万円増、仕掛品が建設工事の売上計上で2,074百万円減、原材料及び貯蔵品が2,331百万円増であった。原材料価格が上昇していたため、原材料の在庫を積み増した。負債の部では、短期借入金が同2,804百万円減少し、長期借入金が11,948百万円増加した。
(2) 経営指標
2022年3月期のROE(自己資本当期純利益率)は、前期比5.2ポイント増の8.8%、ROA(総資産経常利益率)が同1.8ポイント増の9.3%となった。特別損失が減少し当期純利益が大きく伸びたことで、ROEが大きく上昇した。財務の安全性を見る財務比率は、流動比率が199.8%、自己資本比率が50.3%といずれも良好な水準を保った。
(3) キャッシュ・フロー計算書
2022年3月期末の現金及び現金同等物残高は16,763百万円、前期末比1,198百万円増加した。営業活動によるキャッシュ・フローは9,494百万円の入超であった。税金等調整前当期純利益(9,413百万円)が主たる要因となる。投資活動によるキャッシュ・フローは、前期比5,166百万円減の出超であった。有形固定資産の取得による支出が同3,208百万円減と不動産賃貸契約の終了に伴う預り保証金の返還による支出が同1,509百万円減であった。財務活動によるキャッシュ・フローは、同3,348百万円減の支出となった。イソライト工業の完全子会社化に関連して連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出(同10,408百万円減)が発生した。長期借入金による収入でまかなった。増配により、配当金の支払額が同1,495百万円減に増加した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<SI>
1. 2022年3月期の連結業績概要
(1) 2022年3月期の業績概況
品川リフラクトリーズ<5351>の2022年3月期の連結業績は、売上高が前期比10.8%増の110,784百万円、営業利益が同38.7%増の10,107百万円、経常利益が同30.4%増の10,716百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同151.1%増の5,308百万円となった。第2四半期決算発表時点の通期予想との比較では、売上高が1.6%増、営業利益が6.4%増、経常利益が7.2%増であったが、親会社株主に帰属する当期純利益は18.3%減となった。親会社株主に帰属する当期純利益が、通期予想を未達となったのは、特別損失として環境対策引当金繰入額(1,410百万円)を計上したことに起因する。特別損失が前期の賃貸用固定資産の減損損失(3,276百万円)よりも減少したため、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比で大幅に増加した。
2022年3月期より「収益認識に関する会計基準」等を期首から適用している。新たな会計基準の適用により、売上高と売上原価はそれぞれ6,524百万円と6,558百万円減少し、営業利益が34百万円増加した。売上高が減少した反面、利益が微増となったため、利益率が上昇する一因となった。耐火物等の販売のうち、一部取引については収益の認識を従来の出荷時から検収時に変更した。また顧客からの有償支給取引において、従来は支給されたものを売上高と売上原価に計上していたが、加工代相当のみを純額で収益として認識することに改めた。エンジニアリング事業は、工事完成基準を適用していた契約のうち、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができないが発生する費用を回収することが見込まれる場合は、原価回収基準を適用することとした。
営業利益が前期比25億円強増加した。増益要因は耐火物の販売数量増(前期比19億円増)、エンジニアリング(同9億円増)、グループ会社(同19億円増)であり、減益要因はコストアップ(同19億円減)であった。運送費や販売費などの費用が増加した。前期はコロナ禍のため低調であった営業活動が、活発になった。2022年3月期下期から、原材料価格が上昇したが、販売価格への転嫁にタイムラグが生じた。期中の平均為替レートが、前期の1ドル当たり106円から112円の円安となったこと等が減益要因になった。
(2) 事業別動向
a) 耐火物及び関連製品
事業別では、全体の8割弱を占める耐火物及び関連製品事業の売上高が前期比10.8%増の84,901百万円、セグメント利益が同40.8%増の9,451百万円であった。売上高セグメント利益率は、コロナ禍の影響を受けた前期の8.8%から11.1%へ改善した。増収増益の最大要因は、粗鋼生産に使用される耐火物の販売数量増である。当年度の国内粗鋼生産量は9,564万トンと前年度比15.5%増加した。
国内外のグループ企業のパフォーマンスが予想以上に好調であった。連結子会社のイソライト工業は、通期で11億円の増益要因をもたらした。同子会社は、期末に完全子会社化された。主力の断熱関連事業は、各種工業炉向けを中心とした断熱関連製品及び自動車・半導体関連向けのセラミックファイバー製品が伸びた。同社の中国子会社をはじめとする海外子会社が、鉄鋼メーカーの操業率回復を受け業績を伸した。また、円安が連結決算集計の売上高と利益を増加させた。
b) エンジニアリング事業
エンジニアリング事業は、売上高が前期比15.8%増の24,898百万円、セグメント利益が同97.5%増の1,825百万円と計画以上の業績をあげた。売上高セグメント利益率は、前期の4.3%から7.3%へ向上した。高炉改修の大型案件とそれに関連する追加工事が、売上高及び利益を増加した。2021年12月に改修工事を終了させ火入れを行ったJFEスチールの西日本製鉄所(倉敷地区)第4高炉に関連した工事となる。また、メンテナンスなど製鉄所構内工事も活発であった。
c) 不動産事業
不動産事業は、売上高が前期比45.8%減の984百万円、セグメント利益が同55.2%減の439百万円と落ち込んだ。同社が土地と建物を所有する名古屋市港区品川町に所在するショッピングセンターが、2021年4月に賃貸契約を解除され、2022年3月期は、1ヵ月のみの収益寄与にとどまった。同物件は最寄駅から徒歩3分の好立地にあり、敷地面積も74,168m2と大きく、再開発が予定されている。既存の建物などを取り壊し、土地を整備する際に、地中に埋設された一般廃棄物が発見されたことから、環境対策引当金繰入額(1,410百万円)を計上した。なお、土壌汚染物質は発見されていない。再開発では、借主側が新規建屋を建設することになる。建設規模により採掘範囲と深度が定まるが、追加の環境対策費の発生余地がある。
2. 財務状況、経営指標及びキャッシュ・フロー計算書
(1) 財務の状況
2022年3月期末の総資産は、前期末比9,504百万円増加の119,710百万円となった。流動資産は、同7,086百万円増加78,740百万円であった。現金及び預金が前期比3,173百万円増加した。増収により、受取手形・売掛金等が4,372百万円増加した。たな卸資産は、同1,571百万円の増加にとどまったが、内訳は商品及び製品が1,314百万円増、仕掛品が建設工事の売上計上で2,074百万円減、原材料及び貯蔵品が2,331百万円増であった。原材料価格が上昇していたため、原材料の在庫を積み増した。負債の部では、短期借入金が同2,804百万円減少し、長期借入金が11,948百万円増加した。
(2) 経営指標
2022年3月期のROE(自己資本当期純利益率)は、前期比5.2ポイント増の8.8%、ROA(総資産経常利益率)が同1.8ポイント増の9.3%となった。特別損失が減少し当期純利益が大きく伸びたことで、ROEが大きく上昇した。財務の安全性を見る財務比率は、流動比率が199.8%、自己資本比率が50.3%といずれも良好な水準を保った。
(3) キャッシュ・フロー計算書
2022年3月期末の現金及び現金同等物残高は16,763百万円、前期末比1,198百万円増加した。営業活動によるキャッシュ・フローは9,494百万円の入超であった。税金等調整前当期純利益(9,413百万円)が主たる要因となる。投資活動によるキャッシュ・フローは、前期比5,166百万円減の出超であった。有形固定資産の取得による支出が同3,208百万円減と不動産賃貸契約の終了に伴う預り保証金の返還による支出が同1,509百万円減であった。財務活動によるキャッシュ・フローは、同3,348百万円減の支出となった。イソライト工業の完全子会社化に関連して連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出(同10,408百万円減)が発生した。長期借入金による収入でまかなった。増配により、配当金の支払額が同1,495百万円減に増加した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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