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コラム【アナリスト夜話】ロシアのウクライナ侵攻:「ブロック経済化」への備え(マネックス証券 大槻奈那)
配信日時:2022/03/16 09:24
配信元:FISCO
ロシアのウクライナ侵攻の痛ましい報道が続いています。過去の紛争と異なり、生の映像がSNSを通じて世界に届けられることで、市場マインドにより大きな影響を与えていると感じます。 戦況の行方はわかりませんが、金融の最終兵器ともいえるSWIFT排除を早々に決めたこと等を見ると、ロシア対西側の経済対立は、どう転んでも簡単には修復できないと考えられます。
これによる第一の懸念は、中央アジア諸国への影響です。
カザフスタンの通貨テンゲは、2015年にドルペグを放棄して以来の最低水準に下落しています。中央銀行が為替介入を繰り返してきましたが、先週末、ついに為替変動を制限すると宣言しました。金融機関の流動性不足も心配されており、政府はテンゲ預金に対して10%の金利上乗せを発表しています。一方、キルギスタンの通貨ソムもロシア侵攻以降ドルに対して2割以上減価しており、先週、国外への米ドルの持ち出しが禁じられました。
また、案外大きいのはロシアが中央アジアから受け入れている移民への影響です。ロシアは、世界第4位の移民受け入れ国で、2020年で1200万人もの人々が、特に中央アジアから訪れ自国に送金しています。タジキスタンやキルギスタンでは、移民からの送金がGDPの3割を占めています。ロシアの景気鈍化や金融の滞りの影響は大きな打撃となるでしょう。
そして最大の懸念は、なんといってもインフレの進行です。直近のデータは取れませんが、JETROによれば、カザフスタンの家電量販店では輸入家電製品がウクライナ侵攻前から3月初旬までで30%値上がりし、スーパーマーケットでは一時的に駆け込み需要による混雑もみられたとされています。高インフレは生活を脅かし、内政不安を高めます。今年1月のカザフスタンの動乱も燃料価格の急騰が原因でした。その後ロシアを中心とする部隊の介入後約5日間で沈静化しました。
こうした中央アジアの経済的な混乱に手を差し伸べることで、ロシアは図らずも中央アジアの旧ソ連諸国を手中に収め、更に他の周辺諸国にも働きかけを強めるかもしれません。
仮にそうしたブロック経済化が進んだ場合、日本は一次エネルギー自給率が1割強と極めて低いのが気がかりです。人は、「WYSIATIバイアス(what you see is all there is- 見える物が全て)」といって、見えているものに心が奪われてしまう傾向があります。しかし、そろそろ中長期的な経済の形に目を移し、生活の変化のヘッジとして、米国等他国の資産に分散を図る手段も考えておくべきかもしれません。
マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:3/14配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)
<FA>
これによる第一の懸念は、中央アジア諸国への影響です。
カザフスタンの通貨テンゲは、2015年にドルペグを放棄して以来の最低水準に下落しています。中央銀行が為替介入を繰り返してきましたが、先週末、ついに為替変動を制限すると宣言しました。金融機関の流動性不足も心配されており、政府はテンゲ預金に対して10%の金利上乗せを発表しています。一方、キルギスタンの通貨ソムもロシア侵攻以降ドルに対して2割以上減価しており、先週、国外への米ドルの持ち出しが禁じられました。
また、案外大きいのはロシアが中央アジアから受け入れている移民への影響です。ロシアは、世界第4位の移民受け入れ国で、2020年で1200万人もの人々が、特に中央アジアから訪れ自国に送金しています。タジキスタンやキルギスタンでは、移民からの送金がGDPの3割を占めています。ロシアの景気鈍化や金融の滞りの影響は大きな打撃となるでしょう。
そして最大の懸念は、なんといってもインフレの進行です。直近のデータは取れませんが、JETROによれば、カザフスタンの家電量販店では輸入家電製品がウクライナ侵攻前から3月初旬までで30%値上がりし、スーパーマーケットでは一時的に駆け込み需要による混雑もみられたとされています。高インフレは生活を脅かし、内政不安を高めます。今年1月のカザフスタンの動乱も燃料価格の急騰が原因でした。その後ロシアを中心とする部隊の介入後約5日間で沈静化しました。
こうした中央アジアの経済的な混乱に手を差し伸べることで、ロシアは図らずも中央アジアの旧ソ連諸国を手中に収め、更に他の周辺諸国にも働きかけを強めるかもしれません。
仮にそうしたブロック経済化が進んだ場合、日本は一次エネルギー自給率が1割強と極めて低いのが気がかりです。人は、「WYSIATIバイアス(what you see is all there is- 見える物が全て)」といって、見えているものに心が奪われてしまう傾向があります。しかし、そろそろ中長期的な経済の形に目を移し、生活の変化のヘッジとして、米国等他国の資産に分散を図る手段も考えておくべきかもしれません。
マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:3/14配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)
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