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日本の小型衛星による観測網構築を急げ【実業之日本フォーラム】
配信日時:2021/11/25 10:21
配信元:FISCO
2021年11月22日、「日本政府は、小型衛星による観測網構築のため、2020年代半ばまでに衛星3基を打ち上げ、実証実験を行う方針を固めた」と各紙が報じた。
令和3年版防衛白書は、「近年、米国などを中心に多数の小型人工衛星が一体となって様々な機能を担う、『衛星コンステレーション計画』が進められており、宇宙からの情報収集能力の強化や人工衛星に被害が生じた際の機能維持への寄与が期待されている」としている。
さらに、「一部の国において、低空を高速かつ変則的な軌道で飛翔するHGV(Hypersonic Glide Vehicle:極超音速滑空兵器)の開発が指摘されていることから、米国との連携も念頭に置きつつHGV探知・追尾システムの概念検討や先進的な赤外線センサーの研究を行う」と表明している。
新聞報道によると、「小型衛星は、1基の重量が100~500キログラム程度で、高度400キロメートル前後の低高度周回軌道に投入され、センサーやカメラなどを搭載し、地上や海上の情報を収集する」とのことである。米国防総省のNDSA(National Defense Space Architecture:国家防衛宇宙体系)構想では、「米国は、2022年に実証機20基を打ち上げ、実証実験を行い、将来的には1000基程度を配備する計画だ」とされている。通常、衛星1基当たり数百億かかる費用を、小型衛星は5億円程度に抑え、総額は1兆円以内に抑えることを目指しているという。わが国の内閣府宇宙開発戦略推進事務局は、小型衛星コンステレーションを活用した「極超音速ミサイル防衛」のほかに、「世界をカバーするブロードバンド通信網の構築」や多数の衛星の配備による「常続的な被害状況把握やインフラ管理」に活用する構想を打ち出している。
2021年11月21日、英フィナンシャル・タイムズ紙は、「中国が7月に行った極超音速兵器の実験で、極超音速兵器から別のミサイルが発射されていたことが分かった」と報じた。
HGVから発射された別のミサイルが、囮(おとり)なのか他のもう一つの打撃力となるのかは現時点で分かっていないが、米国防省の関係者は、「中国の極超音速兵器開発が米国より進んでいる」と述べている。さらに、ロシアはすでにAvangard及びZirconという極超音速ミサイルの実戦配備を開始していると見られており、北朝鮮も今年9月に極超音速ミサイルの試験を実施したとみられている。
このように、わが国を取り巻くミサイル開発に関わる軍事情勢は厳しさを増している。
にもかかわらず、2020年6月、河野太郎防衛大臣(当時)は、地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画の中止を発表し、6月25日の安全保障会議において配備断念が正式に決定された。その年の12月18日、国家安全保障会議および閣議において「イージス・アショア」に替えて「イージス・システム搭載艦」2隻の整備と抑止力強化およびスタンド・オフ防衛能力強化のためのミサイル開発を決定した。安倍政権が、2017年末、「我が国を1年365日、切れ目なく弾道ミサイルから守るためBMD(Ballistic Missile Defense :弾道ミサイル防衛)能力の向上を図る」として導入を決定した防衛システムが3年でとん挫し、計画的な防衛力の整備がもたついたとの印象は否めない。
切れ目のないミサイル防衛態勢を構築するためには、発射の兆候や弾道を監視する眼とそれを防護する楯が必要である。低軌道コンステレーションを活用した抗たん性(航空基地やレーダーサイトなどの軍事施設が、敵の攻撃に耐えてその機能を維持する能力。抗堪力)、早期探知能力および広域追尾能力に優れたミサイル防衛システムの導入はその眼を保有するものであり、整備は急務であろう。もはや、BMDでの失態を繰り返す猶予はない。
米国NDSAへの参加や友好国との情報共有体制の構築など、我が国における小型衛星観測網の早期構築を期待したい。
サンタフェ総研上席研究員 將司 覚
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。
写真:Britt Griswold/NASA/アフロ
■実業之日本フォーラムの3大特色
実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。
1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム
・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する
・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う
2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア
・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く
・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える
3)「ほめる」メディア
・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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令和3年版防衛白書は、「近年、米国などを中心に多数の小型人工衛星が一体となって様々な機能を担う、『衛星コンステレーション計画』が進められており、宇宙からの情報収集能力の強化や人工衛星に被害が生じた際の機能維持への寄与が期待されている」としている。
さらに、「一部の国において、低空を高速かつ変則的な軌道で飛翔するHGV(Hypersonic Glide Vehicle:極超音速滑空兵器)の開発が指摘されていることから、米国との連携も念頭に置きつつHGV探知・追尾システムの概念検討や先進的な赤外線センサーの研究を行う」と表明している。
新聞報道によると、「小型衛星は、1基の重量が100~500キログラム程度で、高度400キロメートル前後の低高度周回軌道に投入され、センサーやカメラなどを搭載し、地上や海上の情報を収集する」とのことである。米国防総省のNDSA(National Defense Space Architecture:国家防衛宇宙体系)構想では、「米国は、2022年に実証機20基を打ち上げ、実証実験を行い、将来的には1000基程度を配備する計画だ」とされている。通常、衛星1基当たり数百億かかる費用を、小型衛星は5億円程度に抑え、総額は1兆円以内に抑えることを目指しているという。わが国の内閣府宇宙開発戦略推進事務局は、小型衛星コンステレーションを活用した「極超音速ミサイル防衛」のほかに、「世界をカバーするブロードバンド通信網の構築」や多数の衛星の配備による「常続的な被害状況把握やインフラ管理」に活用する構想を打ち出している。
2021年11月21日、英フィナンシャル・タイムズ紙は、「中国が7月に行った極超音速兵器の実験で、極超音速兵器から別のミサイルが発射されていたことが分かった」と報じた。
HGVから発射された別のミサイルが、囮(おとり)なのか他のもう一つの打撃力となるのかは現時点で分かっていないが、米国防省の関係者は、「中国の極超音速兵器開発が米国より進んでいる」と述べている。さらに、ロシアはすでにAvangard及びZirconという極超音速ミサイルの実戦配備を開始していると見られており、北朝鮮も今年9月に極超音速ミサイルの試験を実施したとみられている。
このように、わが国を取り巻くミサイル開発に関わる軍事情勢は厳しさを増している。
にもかかわらず、2020年6月、河野太郎防衛大臣(当時)は、地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画の中止を発表し、6月25日の安全保障会議において配備断念が正式に決定された。その年の12月18日、国家安全保障会議および閣議において「イージス・アショア」に替えて「イージス・システム搭載艦」2隻の整備と抑止力強化およびスタンド・オフ防衛能力強化のためのミサイル開発を決定した。安倍政権が、2017年末、「我が国を1年365日、切れ目なく弾道ミサイルから守るためBMD(Ballistic Missile Defense :弾道ミサイル防衛)能力の向上を図る」として導入を決定した防衛システムが3年でとん挫し、計画的な防衛力の整備がもたついたとの印象は否めない。
切れ目のないミサイル防衛態勢を構築するためには、発射の兆候や弾道を監視する眼とそれを防護する楯が必要である。低軌道コンステレーションを活用した抗たん性(航空基地やレーダーサイトなどの軍事施設が、敵の攻撃に耐えてその機能を維持する能力。抗堪力)、早期探知能力および広域追尾能力に優れたミサイル防衛システムの導入はその眼を保有するものであり、整備は急務であろう。もはや、BMDでの失態を繰り返す猶予はない。
米国NDSAへの参加や友好国との情報共有体制の構築など、我が国における小型衛星観測網の早期構築を期待したい。
サンタフェ総研上席研究員 將司 覚
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。
写真:Britt Griswold/NASA/アフロ
■実業之日本フォーラムの3大特色
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1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム
・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する
・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う
2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア
・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く
・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える
3)「ほめる」メディア
・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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