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欧州で火花を散らす中台外交【実業之日本フォーラム】
配信日時:2021/11/02 16:12
配信元:FISCO
2021年10月30日、イタリアの首都ローマでG20サミット(主要20カ国首脳会議)が開催され、気候変動対策などについて意見が交わされた。11月1日と2日は、国連の気候変動対策会議「COP26」がイギリスのグラスゴーで開催される。各国首脳が一堂に会する重要会議に先駆け、中国と台湾が東欧、南欧で外交攻勢を繰り広げている。
台湾外交部(外務省)は、「呉ジャオ燮(ウー・ジャオシエ)外交部長が10月26日にスロバキアとチェコを、10月28日にはベルギーを訪問する」と発表した。蔡英文政権は、自由と民主主義という共通の価値観を有する欧州諸国との関係強化に力を入れている。
10月26日、呉外交部長は、スロバキアの政策研究機関が主催するシンポジウムで「台湾とスロバキアは自由や人権と言った価値観を共有しており、貿易、投資、産業面で協力を強化すべきだ」と演説した。また同日、呉外交部長は、プラハで、昨年訪台したミロシュ・ビストルチル上院議長と会談し、チェコ科学アカデミーにおいて、「民主主義体制は世界中で脅かされており、民主主義国は互いに団結し、助け合わなければならない」と演説した。
10月29日、呉外交部長は、英仏やリトアニア、スウェーデンなどの対中強硬派議員の会合に参加し、民主主義陣営に南シナ海での航行の自由作戦の頻繁な実施を要請し、中国の拡張主義けん制の重要性を訴えた。また、呉外交部長はローマで開かれた対中政策に関する列国議会連盟(IPAC:Inter-Parliamentary Alliance on China 、日米英独仏加など自由主義陣営の19カ国の議員が参加)にオンラインで参加し、「台湾は、民主主義を巡る戦いの最前線にいる。台湾の民主主義が破壊されてならない」と主張した。呉外交部長に先立ち、台湾国家発展委員会のキョー明キン(キョー・メイキン)主任委員らの経済視察団が、10月21日からリトアニアと東欧を訪問し、10月25日にはチェコと経済、貿易分野での協力に向けた覚書を締結している。
一方、中国外務省は、「王毅国務委員兼外相が10月27日から30日にかけてギリシャ、セルビア、アルバニア、イタリアを訪問する」、と発表した。王毅外相は、10月28日、セルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領と会談し、台湾問題に関し「内政不干渉」の原則を守ることで一致した。また、同大統領は、「中国は最も頼もしく偉大な友人だ。中国の一帯一路の関連プロジェクトをしっかり実行する」と約束した。王毅外相も「セルビアとは鉄のような友情があり、お互いに内政不干渉の原則を堅持する」と協調した。
10月29日、王毅外相は、アルバニアでイリール・メタ大統領と会談し、「アルバニア決議(1971年10月25日、第26回国連総会第2758号決議:国連における中華人民共和国の合法的権利の回復決議)を正義の勝利」と称賛し、メタ大統領も「中国を支持したことを誇に思う」と両国のゆるぎない絆を強調した。また、中国外務省は、同日、「王毅外相がイタリアのローマで、ルイージ・ディ・マイオ外相と会談し、両国は、互いの核心的利益に関する問題において相互理解、相互信頼を増進することを確認した。中国は台湾問題を核心的利益と位置づけている」と発表した。イタリアは、これまで、先進7カ国で唯一「一帯一路構想」への参画を表明し、中国と親密な外交関係を維持している。
中国外務省は、10月26日、台湾の一連の欧州での動きに対し、「真の目的は台湾独立の主張をあおりたて、中国と各国との関係を崩すことだ」と非難し、さらに「中国は関係国が台湾独立分子を容認することに断固反対する」、と不快感を露にした。東欧、南欧諸国の多くは、中国の巨大経済圏「一帯一路構想」による投資拡大や経済発展を望んだが、期待した成果が得られず、さらに、中国の香港や新疆ウイグル自治区での人権問題などへの対応で中国と距離を置き、台湾との交流を深める国も出てきている。中国政府は、2021年8月、台湾がリトアニアに事実上の大使館となる代表機関を設置する動きを受けて、リトアニアに対し、駐中国大使召還を要求している。
10月30日、中国外務省は、「G20サミットに習氏の特別代表としてローマを訪れた王毅外相が、台湾の未来は大陸との統一実現以外に前途はない、国際法上、台湾は中国の一部分であると述べた」と発表した。欧米各国の台湾支援が強まることをけん制した形だ。習政権は、台湾の欧州における外交攻勢に強い警戒感を抱いており、今後どのような対応をとるのか、どのように圧力をかけてくるか注視する必要があるだろう。
サンタフェ総研上席研究員 將司 覚
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。
写真:AP/アフロ
■実業之日本フォーラムの3大特色
実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。
1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム
・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する
・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う
2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア
・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く
・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える
3)「ほめる」メディア
・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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台湾外交部(外務省)は、「呉ジャオ燮(ウー・ジャオシエ)外交部長が10月26日にスロバキアとチェコを、10月28日にはベルギーを訪問する」と発表した。蔡英文政権は、自由と民主主義という共通の価値観を有する欧州諸国との関係強化に力を入れている。
10月26日、呉外交部長は、スロバキアの政策研究機関が主催するシンポジウムで「台湾とスロバキアは自由や人権と言った価値観を共有しており、貿易、投資、産業面で協力を強化すべきだ」と演説した。また同日、呉外交部長は、プラハで、昨年訪台したミロシュ・ビストルチル上院議長と会談し、チェコ科学アカデミーにおいて、「民主主義体制は世界中で脅かされており、民主主義国は互いに団結し、助け合わなければならない」と演説した。
10月29日、呉外交部長は、英仏やリトアニア、スウェーデンなどの対中強硬派議員の会合に参加し、民主主義陣営に南シナ海での航行の自由作戦の頻繁な実施を要請し、中国の拡張主義けん制の重要性を訴えた。また、呉外交部長はローマで開かれた対中政策に関する列国議会連盟(IPAC:Inter-Parliamentary Alliance on China 、日米英独仏加など自由主義陣営の19カ国の議員が参加)にオンラインで参加し、「台湾は、民主主義を巡る戦いの最前線にいる。台湾の民主主義が破壊されてならない」と主張した。呉外交部長に先立ち、台湾国家発展委員会のキョー明キン(キョー・メイキン)主任委員らの経済視察団が、10月21日からリトアニアと東欧を訪問し、10月25日にはチェコと経済、貿易分野での協力に向けた覚書を締結している。
一方、中国外務省は、「王毅国務委員兼外相が10月27日から30日にかけてギリシャ、セルビア、アルバニア、イタリアを訪問する」、と発表した。王毅外相は、10月28日、セルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領と会談し、台湾問題に関し「内政不干渉」の原則を守ることで一致した。また、同大統領は、「中国は最も頼もしく偉大な友人だ。中国の一帯一路の関連プロジェクトをしっかり実行する」と約束した。王毅外相も「セルビアとは鉄のような友情があり、お互いに内政不干渉の原則を堅持する」と協調した。
10月29日、王毅外相は、アルバニアでイリール・メタ大統領と会談し、「アルバニア決議(1971年10月25日、第26回国連総会第2758号決議:国連における中華人民共和国の合法的権利の回復決議)を正義の勝利」と称賛し、メタ大統領も「中国を支持したことを誇に思う」と両国のゆるぎない絆を強調した。また、中国外務省は、同日、「王毅外相がイタリアのローマで、ルイージ・ディ・マイオ外相と会談し、両国は、互いの核心的利益に関する問題において相互理解、相互信頼を増進することを確認した。中国は台湾問題を核心的利益と位置づけている」と発表した。イタリアは、これまで、先進7カ国で唯一「一帯一路構想」への参画を表明し、中国と親密な外交関係を維持している。
中国外務省は、10月26日、台湾の一連の欧州での動きに対し、「真の目的は台湾独立の主張をあおりたて、中国と各国との関係を崩すことだ」と非難し、さらに「中国は関係国が台湾独立分子を容認することに断固反対する」、と不快感を露にした。東欧、南欧諸国の多くは、中国の巨大経済圏「一帯一路構想」による投資拡大や経済発展を望んだが、期待した成果が得られず、さらに、中国の香港や新疆ウイグル自治区での人権問題などへの対応で中国と距離を置き、台湾との交流を深める国も出てきている。中国政府は、2021年8月、台湾がリトアニアに事実上の大使館となる代表機関を設置する動きを受けて、リトアニアに対し、駐中国大使召還を要求している。
10月30日、中国外務省は、「G20サミットに習氏の特別代表としてローマを訪れた王毅外相が、台湾の未来は大陸との統一実現以外に前途はない、国際法上、台湾は中国の一部分であると述べた」と発表した。欧米各国の台湾支援が強まることをけん制した形だ。習政権は、台湾の欧州における外交攻勢に強い警戒感を抱いており、今後どのような対応をとるのか、どのように圧力をかけてくるか注視する必要があるだろう。
サンタフェ総研上席研究員 將司 覚
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。
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1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム
・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する
・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う
2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア
・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く
・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える
3)「ほめる」メディア
・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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