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巴コーポレーション:鉄構建設事業と不動産事業を展開、無柱大張間建築の第一人者
配信日時:2025/12/17 16:25
配信元:FISCO
*16:25JST 巴コーポレーション:鉄構建設事業と不動産事業を展開、無柱大張間建築の第一人者
巴コーポレーション<1921>は、建築構造物向け鋼構造物の設計・製作・施工を主力とする老舗の鉄構建設会社である。1917年に創業、事業の源流は送電鉄塔にある。構造計算が極めて難しい鉄塔分野で技術を磨いてきた歴史を背景に、現在では建築鉄骨、大空間構造、橋梁といった高難度の鋼構造物を幅広く手掛けている。事業セグメントは鉄構建設事業と不動産事業の二つに区分される。鉄構建設事業では、立体構造物・橋梁・鉄骨・鉄塔の設計、製作、施工並びに総合建設工事の企画、設計、施工している。不動産事業では、社有地の有効利用を中心に不動産の売買、管理及び賃貸借を通して地域の再開発や発展に貢献している。同社の開発した技術の1つである「ダイヤモンドトラス」の立体構造は、広く、且つ変化に富む美しい大空間の創造を可能にし、体育館、各種の博覧会・大展示会場等で数多く採用され、無柱大張間建築の第一人者として内外より絶大な信頼と評価を受けている。また、都市と都市を結び付け地域社会の発展に不可欠な道路建設分野の橋梁では、ジャッキアップ回転架設工法という世界で初の試みとなる画期的な工法を開発した。
鉄構建設事業は一様な事業ではなく、製品・用途ごとに性格が異なる点が特徴である。建築鉄骨分野では、物流倉庫やメーカー工場、学校関連施設などを対象に、ゼネコンと同様の立場で元請として受注する案件も多い。送電鉄塔分野、橋梁分野などでは、案件を選別しながら対応しているという位置付けにある。ただ、鉄構建設事業は典型的な受注産業であり、年ごとの繁閑が避けられない性質を持つ。ある年は特定分野の受注が低調でも、別の分野で補完されることで事業全体としての水準を保ってきた経緯がある。足元では、建設業界全体における工期遅延や人手不足、コスト上昇といった環境悪化の影響を受け、想定していた受注の積み上げが進まなかった。取材においても、予定していた大型工事の計画見直しや延期が生じ、生産供給量が不足したことが業績下振れの主因であるとの説明がなされている。
不動産事業の主な収益源は賃料収入であり、分譲や大規模な売却を前提とした事業ではない。長年保有してきた土地や建物の有効活用が中心で、投下資本が相対的に小さいことから、安定した収益を確保できている。減価償却や管理費を織り込んだうえでも一定の利益率を維持できる構造にあり、鉄構建設事業のように工期や原価変動の影響を受けにくい点が特徴である。その結果、売上規模は限定的であるものの、全社利益に占める不動産事業の存在感は大きく、業績の下支え役として機能している。
これら複数の分野に共通する同社の競争力の源泉は、「構造」に対する強みである。創業期から鉄塔事業を手掛けてきたことで、緻密な構造計算や荷重解析といった技術を長年にわたり蓄積してきた。大空間構造物においては、屋根や骨組みそのものが高度な構造設計を必要とし、同社が培ってきた技術がそのまま付加価値として発揮される。ドームや大屋根といった分野では、構造計算能力そのものが差別化要因となりやすく、価格競争に陥りにくい領域でもある。
足元の業績については、上期累計の売上高は12,724百万円(前年同期比24.1減)、営業利益は1,180百万円(同35.9%減)で着地した。売上高は日本を取り巻く経済情勢の変化等から受注を予定していた大型工事の計画見直し、延期等による生産供給量不足により、鉄構建設事業が前回予想を下回った。利益面でも、鉄構建設事業の売上減少に伴い建築鉄骨需要が最低限とされる水準を下回り、鋼橋の発注量も低迷するなど、市場環境は厳しさを増している。同社自身も、思ったような受注が取れていない状況を率直に認めており、足元は調整局面と位置付けられる。通期計画は、売上高32,000百万円(前期比7.7%減)、営業利益3,000百万円(同23.7%減)を見込んでいる。
中期経営計画では、完工高400億円、完工営業利益42億円を目標に掲げている。鉄塔、建築鉄骨、大空間構造、橋梁といった既存領域を軸に、市場環境の回復を取り込みながら段階的に積み上げていく方針である。非連続的な成長については、これまでM&Aの実績は多くなかったものの、昨年に令和建設株式会社を初めて実施した。令和建設は茨城県を中心に関東一円で事業を展開する総合建設会社で、官公庁案件を主体に、近年は民間取引も強化し、茨城県南地区を中心に施工実績を重ねている。北関東エリア官公庁案件に強みを持つ同社を傘下に置くことにより、既存建設事業とのシナジーを創出していく。今後も同領域でシナジー効果が図れる可能性がある企業はM&Aに対象となる可能性もある。
株主還元については、企業価値の持続的向上を重視する姿勢が示されている。一方で、株主構成は分散しており、過去には株主提案が行われた経緯もある。東証からの要請も踏まえ、今後はIR活動の強化が課題として認識されている。ただ、株価は2024年からすでに4倍を超える11月高値2270円まで大きく上昇している。
総じて、巴コーポレーションは鉄塔に源流を持つ構造技術を核に、複数の鋼構造分野を横断的に展開してきた企業である。足元では業界環境の逆風を受けているものの、分野分散された鉄構建設事業と、不動産事業による安定的な利益基盤を併せ持つ点は同社の大きな特徴である。今後は市場環境の回復をどこまで業績に結び付けられるかに加え、目に見えにくい構造技術の価値を資本市場にどう訴求していくかが、中長期的な評価を左右することになろう。
<NH>
鉄構建設事業は一様な事業ではなく、製品・用途ごとに性格が異なる点が特徴である。建築鉄骨分野では、物流倉庫やメーカー工場、学校関連施設などを対象に、ゼネコンと同様の立場で元請として受注する案件も多い。送電鉄塔分野、橋梁分野などでは、案件を選別しながら対応しているという位置付けにある。ただ、鉄構建設事業は典型的な受注産業であり、年ごとの繁閑が避けられない性質を持つ。ある年は特定分野の受注が低調でも、別の分野で補完されることで事業全体としての水準を保ってきた経緯がある。足元では、建設業界全体における工期遅延や人手不足、コスト上昇といった環境悪化の影響を受け、想定していた受注の積み上げが進まなかった。取材においても、予定していた大型工事の計画見直しや延期が生じ、生産供給量が不足したことが業績下振れの主因であるとの説明がなされている。
不動産事業の主な収益源は賃料収入であり、分譲や大規模な売却を前提とした事業ではない。長年保有してきた土地や建物の有効活用が中心で、投下資本が相対的に小さいことから、安定した収益を確保できている。減価償却や管理費を織り込んだうえでも一定の利益率を維持できる構造にあり、鉄構建設事業のように工期や原価変動の影響を受けにくい点が特徴である。その結果、売上規模は限定的であるものの、全社利益に占める不動産事業の存在感は大きく、業績の下支え役として機能している。
これら複数の分野に共通する同社の競争力の源泉は、「構造」に対する強みである。創業期から鉄塔事業を手掛けてきたことで、緻密な構造計算や荷重解析といった技術を長年にわたり蓄積してきた。大空間構造物においては、屋根や骨組みそのものが高度な構造設計を必要とし、同社が培ってきた技術がそのまま付加価値として発揮される。ドームや大屋根といった分野では、構造計算能力そのものが差別化要因となりやすく、価格競争に陥りにくい領域でもある。
足元の業績については、上期累計の売上高は12,724百万円(前年同期比24.1減)、営業利益は1,180百万円(同35.9%減)で着地した。売上高は日本を取り巻く経済情勢の変化等から受注を予定していた大型工事の計画見直し、延期等による生産供給量不足により、鉄構建設事業が前回予想を下回った。利益面でも、鉄構建設事業の売上減少に伴い建築鉄骨需要が最低限とされる水準を下回り、鋼橋の発注量も低迷するなど、市場環境は厳しさを増している。同社自身も、思ったような受注が取れていない状況を率直に認めており、足元は調整局面と位置付けられる。通期計画は、売上高32,000百万円(前期比7.7%減)、営業利益3,000百万円(同23.7%減)を見込んでいる。
中期経営計画では、完工高400億円、完工営業利益42億円を目標に掲げている。鉄塔、建築鉄骨、大空間構造、橋梁といった既存領域を軸に、市場環境の回復を取り込みながら段階的に積み上げていく方針である。非連続的な成長については、これまでM&Aの実績は多くなかったものの、昨年に令和建設株式会社を初めて実施した。令和建設は茨城県を中心に関東一円で事業を展開する総合建設会社で、官公庁案件を主体に、近年は民間取引も強化し、茨城県南地区を中心に施工実績を重ねている。北関東エリア官公庁案件に強みを持つ同社を傘下に置くことにより、既存建設事業とのシナジーを創出していく。今後も同領域でシナジー効果が図れる可能性がある企業はM&Aに対象となる可能性もある。
株主還元については、企業価値の持続的向上を重視する姿勢が示されている。一方で、株主構成は分散しており、過去には株主提案が行われた経緯もある。東証からの要請も踏まえ、今後はIR活動の強化が課題として認識されている。ただ、株価は2024年からすでに4倍を超える11月高値2270円まで大きく上昇している。
総じて、巴コーポレーションは鉄塔に源流を持つ構造技術を核に、複数の鋼構造分野を横断的に展開してきた企業である。足元では業界環境の逆風を受けているものの、分野分散された鉄構建設事業と、不動産事業による安定的な利益基盤を併せ持つ点は同社の大きな特徴である。今後は市場環境の回復をどこまで業績に結び付けられるかに加え、目に見えにくい構造技術の価値を資本市場にどう訴求していくかが、中長期的な評価を左右することになろう。
<NH>
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