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富士紡HD Research Memo(5):研磨材事業と化学工業品事業がともに堅調に推移
配信日時:2025/12/16 12:05
配信元:FISCO
*12:05JST 富士紡HD Research Memo(5):研磨材事業と化学工業品事業がともに堅調に推移
■業績動向
1. 2026年3月期中間期の業績概要
富士紡ホールディングス<3104>の2026年3月期中間期の連結業績は、売上高が前年同期比7.0%増の22,528百万円、営業利益が同26.0%増の3,771百万円、経常利益が同27.1%増の3,904百万円、親会社株主に帰属する中間純利益が同30.3%増の2,730百万円と、売上高・各利益ともに大幅増となった。また、期初計画(売上高22,700百万円、営業利益3,380百万円、経常利益3,480百万円、親会社株主に帰属する中間純利益2,270百万円)との比較では、売上高で0.8%減、営業利益で11.6%増、経常利益で12.2%増、親会社株主に帰属する中間純利益で20.3%増と、各利益で計画値を上回った。
利益が大きく上昇した要因として、AI関連向け先端半導体の需要増加による研磨材事業の受注増及び半導体を含む電子材料市場の需要を中心に化学工業品事業の業績拡大が挙げられる。また、研磨材事業は限界利益率が高く、受注数量が増大すればするほど利益が増幅する高収益構造となっている。一方、生活衣料事業では、国内のネット販売が好調で日本製品の海外評価も高まっているものの、人件費や各種コストの上昇、円安の影響により依然として厳しい状況が続いている。また、店頭販売については消費者の節約志向が強まる中で苦戦を強いられている。
2. セグメント別業績概要
(1) 研磨材事業
主力の超精密加工用研磨材(ソフトパッド)は、半導体デバイス向けのCMP用途は大幅な受注増となった。CMP用途では、生成AIブームを背景にHBMなどのメモリや最先端ロジック系半導体の需要の急増とそれに伴う一部ユーザーの在庫水準の引き上げにより受注が増加し、23%の増収となった。同社のソフトパッドは、微細化や高精細化(半導体回路の線幅が7nmから5nmさらに3nmへ進展)が進む半導体の研磨工程、特に最終工程の仕上げ工程で必要不可欠であり、CMP用途では高付加価値製品として収益貢献している。
シリコンウエハー用途市場では“まだら模様”で、汎用品用途の需要は弱いものの、先端品(特に生成AI搭載)用途の需要は好調で一定水準の売上を確保し、前年同期並みとなった。液晶ガラス用途では、中国の補助金政策により、液晶パネル需要が好調に推移し、56%の増収となった。ハードディスク用途では、AI関連の需要増加を背景としたデータセンター建設ラッシュにより、データ保存用ハードディスクドライブであるニアラインHDD(Nearline HDD)の需要が急増しており、7%の増収となった。一方、SiCウエハー用途の受注は依然として厳しい状況が続いている。これは、電気自動車(EV)や太陽光関連の需要が停滞しているためであり、市場ではSiCウエハーが供給過剰となって在庫調整が進んでいないことに起因する。この結果、売上高は前年同期比16.7%増の10,744百万円、営業利益は同37.3%増の2,918百万円(営業利益率27.2%)の増収増益となった。
(2) 化学工業品事業
機能性材料、医薬中間体及び農薬中間体などの受託製造は、半導体を含む電子材料市場の拡大が継続していることに加え、在庫調整が続いていた農薬市況においても緩やかな回復傾向が見られ、受注が堅調に推移した。また、柳井・武生両工場の稼働も総じて高い水準を維持している。この結果、売上高は前年同期比5.7%増の7,212百万円、営業利益は同22.1%増の726百万円(営業利益10.1%)の増収増益となった。
(3) 生活衣料事業
生活衣料事業の売上・利益構造には徐々に変化が見られる。主力ブランドであるB.V.D.(インナーウエア)への依存度が高まる一方で、量販店での販売は漸減傾向が続いている。この減少分については、EC販売の拡大や、中国を中心としたアジア富裕層向け高級肌着「アングル」の開拓によって補う方針だが、2026年3月期中間期においては量販店向けの減少を打ち返すまでには至らなかったようだ。また、利益・コスト面では、円安の進行に伴い原材料や資材の価格高騰が続いており、利益率は低下した。この結果、売上高は前年同期比11.2%減の3,146百万円、営業利益は同30.5%減の223百万円(営業利益率7.1%)の減収減益となった。同社は繊維事業領域で営業利益率7%を上げている稀有な存在である。また、同社にとっては創業事業でもあり、引き続き、構造改革を進め利益率の向上を図る。
(4) その他(化成品)事業
化成品部門は、医療機器用及びデジタルカメラ用部品の受注が堅調で、前年同期比で増収増益となった。金型部門では、自動車用途について、自動車メーカーの品質不正問題やEVシフトの遅れ、対米向け関税の影響などにより、依然として不透明な状況が続いている。ただし、2027年3月期に向けて案件の引き合いが増加しており、回復の兆しも見えてきている。一方で、事務機器用途については、開発案件の端境期にあることに加え、車載コネクターやスマートフォン向けホットランナーの需要が低調で、厳しい状況が続いた。利益面では、次世代事業の開発費増加やのれん償却費などの影響を受けた。この結果、売上高は前年同期比4.0%減の1,426百万円、営業損失は97百万円(前期は50百万円の損失)の減収減益となった。
成長戦略を推進するうえでの健全な財務体質は盤石
3. 財務状況と経営指標
(1) 財務状況
2026年3月期中間期末の財務状況は、資産合計が前期末比2,174百万円増加の68,783百万円となった。これは主に債権回収サイトの短縮により売上債権が減少し現金及び預金が増加したためである。増加した資金については、今後の研究開発、能力増強投資などに充当予定である。また、固定資産は同1,739百万円増加の43,296百万円となった。これは化学工業品事業における設備投資により有形固定資産が増加したことなどによる。負債合計は同323百万円増加の19,472百万円となった。流動負債は同298百万円増加の12,798百万円、固定負債は同24百万円増加の6,674百万円となった。これは、仕入債務や未払法人税等が減少したが、設備関係などのその他流動負債が増加したことなどによる。純資産合計は同1,850百万円増加し、49,311百万円となった。これは、剰余金の配当による減少が794百万円あった一方で、親会社株主に帰属する中間純利益の計上による増加が2,730百万円あったことなどによる。
(2) 経営指標
有利子負債は349百万円と低水準で安定しており、財務状況も改善している。財務の健全性指標である流動比率199.1%、自己資本比率71.7%、有利子負債比率0.7%からも、財務体質は強固であり、中長期的な成長戦略を推進するうえでの経営基盤は盤石であると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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1. 2026年3月期中間期の業績概要
富士紡ホールディングス<3104>の2026年3月期中間期の連結業績は、売上高が前年同期比7.0%増の22,528百万円、営業利益が同26.0%増の3,771百万円、経常利益が同27.1%増の3,904百万円、親会社株主に帰属する中間純利益が同30.3%増の2,730百万円と、売上高・各利益ともに大幅増となった。また、期初計画(売上高22,700百万円、営業利益3,380百万円、経常利益3,480百万円、親会社株主に帰属する中間純利益2,270百万円)との比較では、売上高で0.8%減、営業利益で11.6%増、経常利益で12.2%増、親会社株主に帰属する中間純利益で20.3%増と、各利益で計画値を上回った。
利益が大きく上昇した要因として、AI関連向け先端半導体の需要増加による研磨材事業の受注増及び半導体を含む電子材料市場の需要を中心に化学工業品事業の業績拡大が挙げられる。また、研磨材事業は限界利益率が高く、受注数量が増大すればするほど利益が増幅する高収益構造となっている。一方、生活衣料事業では、国内のネット販売が好調で日本製品の海外評価も高まっているものの、人件費や各種コストの上昇、円安の影響により依然として厳しい状況が続いている。また、店頭販売については消費者の節約志向が強まる中で苦戦を強いられている。
2. セグメント別業績概要
(1) 研磨材事業
主力の超精密加工用研磨材(ソフトパッド)は、半導体デバイス向けのCMP用途は大幅な受注増となった。CMP用途では、生成AIブームを背景にHBMなどのメモリや最先端ロジック系半導体の需要の急増とそれに伴う一部ユーザーの在庫水準の引き上げにより受注が増加し、23%の増収となった。同社のソフトパッドは、微細化や高精細化(半導体回路の線幅が7nmから5nmさらに3nmへ進展)が進む半導体の研磨工程、特に最終工程の仕上げ工程で必要不可欠であり、CMP用途では高付加価値製品として収益貢献している。
シリコンウエハー用途市場では“まだら模様”で、汎用品用途の需要は弱いものの、先端品(特に生成AI搭載)用途の需要は好調で一定水準の売上を確保し、前年同期並みとなった。液晶ガラス用途では、中国の補助金政策により、液晶パネル需要が好調に推移し、56%の増収となった。ハードディスク用途では、AI関連の需要増加を背景としたデータセンター建設ラッシュにより、データ保存用ハードディスクドライブであるニアラインHDD(Nearline HDD)の需要が急増しており、7%の増収となった。一方、SiCウエハー用途の受注は依然として厳しい状況が続いている。これは、電気自動車(EV)や太陽光関連の需要が停滞しているためであり、市場ではSiCウエハーが供給過剰となって在庫調整が進んでいないことに起因する。この結果、売上高は前年同期比16.7%増の10,744百万円、営業利益は同37.3%増の2,918百万円(営業利益率27.2%)の増収増益となった。
(2) 化学工業品事業
機能性材料、医薬中間体及び農薬中間体などの受託製造は、半導体を含む電子材料市場の拡大が継続していることに加え、在庫調整が続いていた農薬市況においても緩やかな回復傾向が見られ、受注が堅調に推移した。また、柳井・武生両工場の稼働も総じて高い水準を維持している。この結果、売上高は前年同期比5.7%増の7,212百万円、営業利益は同22.1%増の726百万円(営業利益10.1%)の増収増益となった。
(3) 生活衣料事業
生活衣料事業の売上・利益構造には徐々に変化が見られる。主力ブランドであるB.V.D.(インナーウエア)への依存度が高まる一方で、量販店での販売は漸減傾向が続いている。この減少分については、EC販売の拡大や、中国を中心としたアジア富裕層向け高級肌着「アングル」の開拓によって補う方針だが、2026年3月期中間期においては量販店向けの減少を打ち返すまでには至らなかったようだ。また、利益・コスト面では、円安の進行に伴い原材料や資材の価格高騰が続いており、利益率は低下した。この結果、売上高は前年同期比11.2%減の3,146百万円、営業利益は同30.5%減の223百万円(営業利益率7.1%)の減収減益となった。同社は繊維事業領域で営業利益率7%を上げている稀有な存在である。また、同社にとっては創業事業でもあり、引き続き、構造改革を進め利益率の向上を図る。
(4) その他(化成品)事業
化成品部門は、医療機器用及びデジタルカメラ用部品の受注が堅調で、前年同期比で増収増益となった。金型部門では、自動車用途について、自動車メーカーの品質不正問題やEVシフトの遅れ、対米向け関税の影響などにより、依然として不透明な状況が続いている。ただし、2027年3月期に向けて案件の引き合いが増加しており、回復の兆しも見えてきている。一方で、事務機器用途については、開発案件の端境期にあることに加え、車載コネクターやスマートフォン向けホットランナーの需要が低調で、厳しい状況が続いた。利益面では、次世代事業の開発費増加やのれん償却費などの影響を受けた。この結果、売上高は前年同期比4.0%減の1,426百万円、営業損失は97百万円(前期は50百万円の損失)の減収減益となった。
成長戦略を推進するうえでの健全な財務体質は盤石
3. 財務状況と経営指標
(1) 財務状況
2026年3月期中間期末の財務状況は、資産合計が前期末比2,174百万円増加の68,783百万円となった。これは主に債権回収サイトの短縮により売上債権が減少し現金及び預金が増加したためである。増加した資金については、今後の研究開発、能力増強投資などに充当予定である。また、固定資産は同1,739百万円増加の43,296百万円となった。これは化学工業品事業における設備投資により有形固定資産が増加したことなどによる。負債合計は同323百万円増加の19,472百万円となった。流動負債は同298百万円増加の12,798百万円、固定負債は同24百万円増加の6,674百万円となった。これは、仕入債務や未払法人税等が減少したが、設備関係などのその他流動負債が増加したことなどによる。純資産合計は同1,850百万円増加し、49,311百万円となった。これは、剰余金の配当による減少が794百万円あった一方で、親会社株主に帰属する中間純利益の計上による増加が2,730百万円あったことなどによる。
(2) 経営指標
有利子負債は349百万円と低水準で安定しており、財務状況も改善している。財務の健全性指標である流動比率199.1%、自己資本比率71.7%、有利子負債比率0.7%からも、財務体質は強固であり、中長期的な成長戦略を推進するうえでの経営基盤は盤石であると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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