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日本製鉄:割安成長株、配当4%、PBR1倍割れ、U. S. Steelへの設備投資で膨大な米国需要を取り込む(1)
配信日時:2025/11/13 11:14
配信元:FISCO
*11:14JST 日本製鉄:割安成長株、配当4%、PBR1倍割れ、U. S. Steelへの設備投資で膨大な米国需要を取り込む(1)
日本製鉄<5401>の割安感が強まっている。コスト低減を中心にさらなる収益改善を進め、U. S. Steelを除く実力ベース事業利益は6,800億円(対前回公表+300億円)を確保したものの、米国市場の不透明感が強いことを踏まえた業績下方修正が影響しているのだろう。ただ、U. S. Steelへの最先端の技術・経営リソース投入、品質・コスト競争力の向上、設備の新鋭化、供給製品メニューの拡充による付加価値向上など、2028年末までに米国において110億ドルの設備投資を実行、全ての改善効果が発現すれば30億ドル(減価償却前)の投資効果/シナジーが見込める予定だ。投資による効率化のみならず、米国の膨大な需要を取り込める。「実力ベース連結事業利益6,000億円超の確保」のみならず「事業利益1兆円」も視野に入る状況であり、税引き後の15倍まで買われた場合、現状の時価総額3.2兆円は数倍となる。PBRは0.62倍であり、かつ配当利回りも4%に近い。
同社は、国内最大手かつ世界有数の鉄鋼メーカーとして、グローバルなサプライチェーンと圧倒的な技術力を基盤に、高機能鋼材を中核とした高付加価値製品を多様な業界に供給している。同社の事業は「製鉄」「エンジニアリング」「ケミカル・マテリアル」「システムソリューション」の4セグメントに大別されるが、その中でも「製鉄」がグループ売上収益の約9割を占める。鉄鋼事業では、国内製鉄所(東日本、名古屋、関西、九州など)を中心に、原料から製品までの一貫生産体制を構築しているほか、タイ、インド、米国など海外拠点も強化。用途別では、自動車・建設・産業機械向けなど、強度・耐久性・成形性を求められる分野への製品供給を担っている。
同社の競争優位性は大きく三点に集約される。第一に、他社に先駆けた高機能鋼材の製品開発力と製造技術である。特に電磁鋼板や自動車用高張力鋼板(ハイテン)などは、自動車・電機・インフラ分野など、品質や性能が厳しく求められる用途に数多く採用されており、こうした分野における需要の拡大に対応する形で供給体制の強化が進められている。第二に、海外展開においては、インドのAM/NS India、米国のU. S. Steel買収、タイ薄板市場シェア拡大などを通じ、成長市場におけるプレゼンスを着実に高めている。第三に、世界的な環境規制強化に対応するため、COURSE50やSuper COURSE50といった水素還元製鉄技術の開発をリードしており、脱炭素社会への貢献と将来的なコスト競争力の確保を両立する姿勢が評価されている。これらにより、価格競争に陥らず、技術・供給・環境の三軸での優位性を確立している。
2025年3月期の売上収益は8兆6955億円(前期比1.9%減)、事業利益は6,832億円(同21.4%減)と減収減益で着地した。国内外鉄鋼事業環境は未曾有の危機的状況の中でも、実力ベース連結事業利益は見通しを上回る7,937億円と見通しを上回る利益を計上。世界の鉄鋼メーカーの中で際立つ収益力を発揮した。東日本製鉄所鹿島地区の高炉休止による固定費削減に加え、電磁鋼板など高付加価値製品の構成比拡大が収益改善に寄与しているほか、販売価格の適正化や生産体制の最適化が収益力を支えた。他方、鋼材市況の悪化や為替変動の影響、外部コスト上昇によるマージン圧縮、さらには輸入材との競争激化により利益面には一定の圧力がかかったが、過去の構造改革の成果と現場力が着実に業績に表れた。
2026年3月期は事業利益4,500億円(前期比34.1%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は600億円の赤字(前期は3,502億円の黒字)を見込んでいる。環境面では、世界鉄鋼需要は一段と厳しさを増し、製品・原料価格が大幅下落。米国関税政策の動向が現時点では見通せないなか、国内外の多方面の顧客に供給している同社への間接影響は甚大だが、現時点で定量化は困難となっている。ただ、いかなる環境下でも実力ベース事業利益6,000億円以上の確保を図る方針であり、着実にコストコントロールが行われている。在庫評価差等を含む事業利益の4,800億円からの下方修正は、主にU. S. Steelによるものだ。今後については国内製鉄の構造改革に加え、米国U. S. Steel買収による統合効果、インドやタイでの需要地型生産拡大といった戦略施策が着実に進んでおり、今後の収益力回復に期待が持てる。高付加価値製品の拡販、グローバルな最適供給網の整備、脱炭素対応に向けた技術開発など、長期的な競争力強化に向けた布石も進んでいる。製造拠点の再編やサプライチェーンの強靭化、国内外の多様な販売チャネルによって、高い参入障壁を築いている点は引き続き注目される。
「日本製鉄:割安成長株、配当4%、PBR1倍割れ、U. S. Steelへの設備投資で膨大な米国需要を取り込む(2)」へ続く
<HM>
同社は、国内最大手かつ世界有数の鉄鋼メーカーとして、グローバルなサプライチェーンと圧倒的な技術力を基盤に、高機能鋼材を中核とした高付加価値製品を多様な業界に供給している。同社の事業は「製鉄」「エンジニアリング」「ケミカル・マテリアル」「システムソリューション」の4セグメントに大別されるが、その中でも「製鉄」がグループ売上収益の約9割を占める。鉄鋼事業では、国内製鉄所(東日本、名古屋、関西、九州など)を中心に、原料から製品までの一貫生産体制を構築しているほか、タイ、インド、米国など海外拠点も強化。用途別では、自動車・建設・産業機械向けなど、強度・耐久性・成形性を求められる分野への製品供給を担っている。
同社の競争優位性は大きく三点に集約される。第一に、他社に先駆けた高機能鋼材の製品開発力と製造技術である。特に電磁鋼板や自動車用高張力鋼板(ハイテン)などは、自動車・電機・インフラ分野など、品質や性能が厳しく求められる用途に数多く採用されており、こうした分野における需要の拡大に対応する形で供給体制の強化が進められている。第二に、海外展開においては、インドのAM/NS India、米国のU. S. Steel買収、タイ薄板市場シェア拡大などを通じ、成長市場におけるプレゼンスを着実に高めている。第三に、世界的な環境規制強化に対応するため、COURSE50やSuper COURSE50といった水素還元製鉄技術の開発をリードしており、脱炭素社会への貢献と将来的なコスト競争力の確保を両立する姿勢が評価されている。これらにより、価格競争に陥らず、技術・供給・環境の三軸での優位性を確立している。
2025年3月期の売上収益は8兆6955億円(前期比1.9%減)、事業利益は6,832億円(同21.4%減)と減収減益で着地した。国内外鉄鋼事業環境は未曾有の危機的状況の中でも、実力ベース連結事業利益は見通しを上回る7,937億円と見通しを上回る利益を計上。世界の鉄鋼メーカーの中で際立つ収益力を発揮した。東日本製鉄所鹿島地区の高炉休止による固定費削減に加え、電磁鋼板など高付加価値製品の構成比拡大が収益改善に寄与しているほか、販売価格の適正化や生産体制の最適化が収益力を支えた。他方、鋼材市況の悪化や為替変動の影響、外部コスト上昇によるマージン圧縮、さらには輸入材との競争激化により利益面には一定の圧力がかかったが、過去の構造改革の成果と現場力が着実に業績に表れた。
2026年3月期は事業利益4,500億円(前期比34.1%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は600億円の赤字(前期は3,502億円の黒字)を見込んでいる。環境面では、世界鉄鋼需要は一段と厳しさを増し、製品・原料価格が大幅下落。米国関税政策の動向が現時点では見通せないなか、国内外の多方面の顧客に供給している同社への間接影響は甚大だが、現時点で定量化は困難となっている。ただ、いかなる環境下でも実力ベース事業利益6,000億円以上の確保を図る方針であり、着実にコストコントロールが行われている。在庫評価差等を含む事業利益の4,800億円からの下方修正は、主にU. S. Steelによるものだ。今後については国内製鉄の構造改革に加え、米国U. S. Steel買収による統合効果、インドやタイでの需要地型生産拡大といった戦略施策が着実に進んでおり、今後の収益力回復に期待が持てる。高付加価値製品の拡販、グローバルな最適供給網の整備、脱炭素対応に向けた技術開発など、長期的な競争力強化に向けた布石も進んでいる。製造拠点の再編やサプライチェーンの強靭化、国内外の多様な販売チャネルによって、高い参入障壁を築いている点は引き続き注目される。
「日本製鉄:割安成長株、配当4%、PBR1倍割れ、U. S. Steelへの設備投資で膨大な米国需要を取り込む(2)」へ続く
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