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イリソ電子工業:可動BtoBコネクタを中心に展開、配当利回り3.4%超え
配信日時:2025/10/28 18:26
配信元:FISCO
*18:26JST イリソ電子工業:可動BtoBコネクタを中心に展開、配当利回り3.4%超え
イリソ電子工業<6908>は、プリント基板同士を電気的に接続する「可動(フローティング)BtoBコネクタ」を中心に展開するコネクタ専業メーカーである。フローティング機構を備えた高信頼コネクタに強みを持ち、自動車の電子制御ユニット(ECU)や電動パワートレイン、インフォテインメント、センサーなどに広く採用されている。世界の生産・販売・開発拠点を早期に整備したことで、モビリティ需要の世界的拡大を先取りしてきた。世界中のほぼすべてのティア1(自動車部品メーカー)企業と取引しており、ティア1企業を通して世界中の自動車メーカーの車に同社のコネクタが搭載されている。世界にまたがる顧客に対して「顧客第一」で製品の提案・供給を行うために、販売12カ国・生産4カ国・開発2カ国に展開している。
2024年度の市場別売上高構成比は、モビリティ86.2%、コンシューマ8.2%、インダストリアル5.6%。地域別売上構成比は日本16%、中華・韓国圏44.2%、アメリカ10.3%、欧州16.3%、ASEAN13.2%。地域別生産構成比は茨城18.9%、上海32%、南通17.1%、フィリピン10.8%、ベトナム20.9%。生産の約90%は海外、売上の約80%は海外と、積極的に海外での事業展開を進めている。
同社の製品は多くの種類があり、その組み合わせは1,000通りを超えており、フローティングBtoB技術をコアとした接続ソリューション提案が可能。製品群はフローティングコネクタ、Z-Move構造、2点接点構造、Auto I-Lock構造など独自機構を備えている。また、「組立作業性」「品質信頼性」「高速伝送」といった3つの強みを持っており、特にX・Y方向に加えてZ方向の可動性を持たせた3次元フローティング構造は特許技術で他社が模倣できない高い信頼性を誇る。コネクタが自動でカチッと嵌合するAuto I-Lock構造は組立自動化に適し、ロボットによる実装にも対応する。これにより、車載用として求められる耐熱・耐振動・高伝送速度といった厳しい要件を満たすのみならず、量産現場の歩留まりと生産性を高めている。
2026年3月期第1四半期業績は、売上高15,163百万円(前年同期比21.0%増)、営業利益1,069百万円(同5.6倍)で着地した。新製品の寄与が顕著で、特にパワートレイン領域や高速伝送対応のBtoBコネクタが伸長している。地域別では、中国市場が想定を上回る堅調さを示した一方、欧米では車両生産の停滞が続いている。一部顧客においてアメリカの関税政策を見据えた前倒し発注の一過性影響あったようだ。また、利益面では、新ERP関連費用が発生した前期1Q比で大幅増益となっており、材料費高騰や秋田新工場への先行投資を経費削減と構造改革効果でカバーした。通期の売上高は55,000百万円(前期比2.4%減)、営業利益5,500百万円(同3.6%増)を見込んでおり、アメリカ関税政策の直接影響は軽微。間接影響は、北米での自動車需要減による通期売上減リスクを想定しているが、1Qは想定比で上振れて推移した。
市場環境として、自動車1台あたりのコネクタ使用数は電動化により増加傾向が続く。一方、統合ECU化が進むと使用個数が減少するとの見方もあるが、同社は統合ECU化でECU内に機能ごとの基板が搭載されるようになり、基板同士を接続するBtoBコネクタの需要は増えると見込んでいるようだ。また、同社の「スケーラブルコネクタ」は、端子数や通信速度を共通設計のまま拡張できるプラットフォーム型コネクタであり、ECUの統合や車種間の設計共通化を可能にする。単価は従来品より高く、数量減少を価格で補えることに加え、長期的な採用継続性も期待できる。さらに車内のコックピット化が進展し、ナビ・オーディオ領域が統合ディスプレイ化する中で、信号伝送速度の高速化需要が高まっている。同社はこの分野で高速伝送対応のBtoB製品を投入しており、車両生産台数とは独立した構造的成長ドライバーを得つつある。
中期的には、2026年度に売上高650億円・営業利益率15%・ROE10%・ROIC10%を掲げている。パワートレイン分野、センサー分野及びインフォテインメント分野で飛躍的に成長が見込まれるコックピットや統合ECUを注力分野として推進するほか、センサー分野は成長に向けた土台づくり、車載で培った耐振・耐熱、高速伝送を武器に建機・農機・eVTOL等のモビリティ市場への事業ポートフォリオ拡大していく。また、インダストリアル分野では、制御機器向けのW/W展開、ロボット・AI関連向けの品揃えを強化のほか、半導体製造装置、通信(データセンター)、エネルギーマネジメント(充電器、蓄電器)分野への参入強化を行っている。
そのほか、全生産拠点の体制・役割を見直し、生産効率15%改善していく。地政学リスクや需給変動への備えとして、グローバルサプライチェーンの再構築を進めるなか、中国拠点では生産・販売・R&Dを完結させることで、物流コスト削減とリードタイム短縮を図るとともに、米中摩擦などの貿易リスクを最小化。日本では秋田工場を北米輸出拠点として位置付け、国内消費への対応とBCPの両立を目指す。さらに北米市場では、これまで営業・開発面で出遅れがあったが、xEV拡大を背景にパワートレイン関連製品の採用余地を見込む。加えて、日系FAメーカーで実績を持つインダストリアル分野で、海外への展開余地があると認識しており、中国や東南アジアの産業機器メーカーへのアプローチを強化する考えだ。
財務面では、自己資本比率74.5%と健全な財務体質を維持しつつ、ネットキャッシュを確保。研究開発と設備投資を主要投資領域とするが、弱い領域の補完を目的としたM&Aも視野に入れている。株主還元方針は「配当性向40%以上、DOE5%以上」を掲げ、ROE向上とPBR1倍超を意識した資本政策を継続する。
総括すると、イリソ電子工業は車載電子化・電動化・自動運転の三大潮流を背景に安定成長を続けるコネクタ専業メーカーである。特許技術による信頼性の高さと、自動化・地産地消対応の生産体制を兼ね備え、構造的に模倣されにくい強みを有する。課題は中国依存度と北米での営業展開の遅れだが、秋田新工場の稼働と新製品拡販により克服の道筋は明確である。中長期的には、売上1,000億円・世界シェアTOP10というビジョンの実現に向けて、ニッチだが極めて信頼性が求められる「見えない部品」で存在感を高めていく局面にある。
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2024年度の市場別売上高構成比は、モビリティ86.2%、コンシューマ8.2%、インダストリアル5.6%。地域別売上構成比は日本16%、中華・韓国圏44.2%、アメリカ10.3%、欧州16.3%、ASEAN13.2%。地域別生産構成比は茨城18.9%、上海32%、南通17.1%、フィリピン10.8%、ベトナム20.9%。生産の約90%は海外、売上の約80%は海外と、積極的に海外での事業展開を進めている。
同社の製品は多くの種類があり、その組み合わせは1,000通りを超えており、フローティングBtoB技術をコアとした接続ソリューション提案が可能。製品群はフローティングコネクタ、Z-Move構造、2点接点構造、Auto I-Lock構造など独自機構を備えている。また、「組立作業性」「品質信頼性」「高速伝送」といった3つの強みを持っており、特にX・Y方向に加えてZ方向の可動性を持たせた3次元フローティング構造は特許技術で他社が模倣できない高い信頼性を誇る。コネクタが自動でカチッと嵌合するAuto I-Lock構造は組立自動化に適し、ロボットによる実装にも対応する。これにより、車載用として求められる耐熱・耐振動・高伝送速度といった厳しい要件を満たすのみならず、量産現場の歩留まりと生産性を高めている。
2026年3月期第1四半期業績は、売上高15,163百万円(前年同期比21.0%増)、営業利益1,069百万円(同5.6倍)で着地した。新製品の寄与が顕著で、特にパワートレイン領域や高速伝送対応のBtoBコネクタが伸長している。地域別では、中国市場が想定を上回る堅調さを示した一方、欧米では車両生産の停滞が続いている。一部顧客においてアメリカの関税政策を見据えた前倒し発注の一過性影響あったようだ。また、利益面では、新ERP関連費用が発生した前期1Q比で大幅増益となっており、材料費高騰や秋田新工場への先行投資を経費削減と構造改革効果でカバーした。通期の売上高は55,000百万円(前期比2.4%減)、営業利益5,500百万円(同3.6%増)を見込んでおり、アメリカ関税政策の直接影響は軽微。間接影響は、北米での自動車需要減による通期売上減リスクを想定しているが、1Qは想定比で上振れて推移した。
市場環境として、自動車1台あたりのコネクタ使用数は電動化により増加傾向が続く。一方、統合ECU化が進むと使用個数が減少するとの見方もあるが、同社は統合ECU化でECU内に機能ごとの基板が搭載されるようになり、基板同士を接続するBtoBコネクタの需要は増えると見込んでいるようだ。また、同社の「スケーラブルコネクタ」は、端子数や通信速度を共通設計のまま拡張できるプラットフォーム型コネクタであり、ECUの統合や車種間の設計共通化を可能にする。単価は従来品より高く、数量減少を価格で補えることに加え、長期的な採用継続性も期待できる。さらに車内のコックピット化が進展し、ナビ・オーディオ領域が統合ディスプレイ化する中で、信号伝送速度の高速化需要が高まっている。同社はこの分野で高速伝送対応のBtoB製品を投入しており、車両生産台数とは独立した構造的成長ドライバーを得つつある。
中期的には、2026年度に売上高650億円・営業利益率15%・ROE10%・ROIC10%を掲げている。パワートレイン分野、センサー分野及びインフォテインメント分野で飛躍的に成長が見込まれるコックピットや統合ECUを注力分野として推進するほか、センサー分野は成長に向けた土台づくり、車載で培った耐振・耐熱、高速伝送を武器に建機・農機・eVTOL等のモビリティ市場への事業ポートフォリオ拡大していく。また、インダストリアル分野では、制御機器向けのW/W展開、ロボット・AI関連向けの品揃えを強化のほか、半導体製造装置、通信(データセンター)、エネルギーマネジメント(充電器、蓄電器)分野への参入強化を行っている。
そのほか、全生産拠点の体制・役割を見直し、生産効率15%改善していく。地政学リスクや需給変動への備えとして、グローバルサプライチェーンの再構築を進めるなか、中国拠点では生産・販売・R&Dを完結させることで、物流コスト削減とリードタイム短縮を図るとともに、米中摩擦などの貿易リスクを最小化。日本では秋田工場を北米輸出拠点として位置付け、国内消費への対応とBCPの両立を目指す。さらに北米市場では、これまで営業・開発面で出遅れがあったが、xEV拡大を背景にパワートレイン関連製品の採用余地を見込む。加えて、日系FAメーカーで実績を持つインダストリアル分野で、海外への展開余地があると認識しており、中国や東南アジアの産業機器メーカーへのアプローチを強化する考えだ。
財務面では、自己資本比率74.5%と健全な財務体質を維持しつつ、ネットキャッシュを確保。研究開発と設備投資を主要投資領域とするが、弱い領域の補完を目的としたM&Aも視野に入れている。株主還元方針は「配当性向40%以上、DOE5%以上」を掲げ、ROE向上とPBR1倍超を意識した資本政策を継続する。
総括すると、イリソ電子工業は車載電子化・電動化・自動運転の三大潮流を背景に安定成長を続けるコネクタ専業メーカーである。特許技術による信頼性の高さと、自動化・地産地消対応の生産体制を兼ね備え、構造的に模倣されにくい強みを有する。課題は中国依存度と北米での営業展開の遅れだが、秋田新工場の稼働と新製品拡販により克服の道筋は明確である。中長期的には、売上1,000億円・世界シェアTOP10というビジョンの実現に向けて、ニッチだが極めて信頼性が求められる「見えない部品」で存在感を高めていく局面にある。
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