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シンバイオ製薬 Research Memo(5):2030年までに2~3本のパイプラインで承認取得を目指す(2)
配信日時:2025/10/28 12:05
配信元:FISCO
*12:05JST シンバイオ製薬 Research Memo(5):2030年までに2~3本のパイプラインで承認取得を目指す(2)
■シンバイオ製薬<4582>のBCVの開発戦略
(3) 造血幹細胞移植後のCMV感染症
造血幹細胞移植後のCMV感染症※を対象とした第2相臨床試験を米国で2024年5月に開始している。CMV感染症の抗ウイルス薬としては、ガンシクロビルやホスカルネット、CDVが既に使用されているほか、2021年以降に難治性・抵抗性を示すCMV感染症に対して武田薬品工業<4502>の「LIVTENCITY」(一般名:マリバビル)が欧米及び中国、オーストラリアなどで承認されている(日本は2023年11月に承認申請)。ただ、臨床試験の結果ではマリバビルに対して44.3%の患者が効果を示さなかったほか、治療効果があったとしても再発し耐性を持つケースがあるなど課題があり、より有効性の高い治療薬が求められている。
※ 症状は、発熱(38度以上)、倦怠感、関節痛などの全身症状のほか、CMVの侵襲部位によって肺炎や胃腸炎、網膜炎、皮膚潰瘍など局所症状がある。推定患者数は全世界で年間約2.5万人。
BCVは過去にキメリックスが実施した経口剤による臨床試験において、CMV感染症に対して有効性の高いことが確認されていること、今回は安全性の高い注射剤で臨床試験を実施することから、良好な結果が得られる可能性は高いと弊社では見ている。現在の進捗状況は19例の登録を完了しており、至適用量及び奏功患者の特性解析を進めている段階にある。2025年内には第2相臨床試験を完了する予定にしており、試験結果を見て今後の開発方針を策定する方針だ。武田薬品工業では、マリバビルのピーク時売上高を7~8億米ドルと予想していることから、BCVで開発に成功すれば同等程度の売上が期待できることになり、今後の展開が注目される。
(4) 進行性多巣性白質脳症(PML)
米ペンシルベニア州立大学との共同研究によって、指定難病に指定されている進行性多巣性白質脳症(以下、PML)の治療薬としてBCVが有力候補となりうることが判明した。PMLとは多くの人が潜伏感染または持続感染しているJCウイルスが、免疫力の低下した状況で再活性化し脳内に多発性の病巣をきたす病気のことだ。初期症状としては、四肢麻痺や認知機能障害、視覚異常などが現れ、症状が進行すると不随意運動や脳神経麻痺、寝たきり状態となるなど命に関わる脳疾患である。同大学で実施した動物実験で、BCVがポリオーマウイルス(JCウイルスはポリオーマウイルスの一種)に対して増殖抑制効果を示したことが確認されており、PMLの予防または症状の進行を抑制する効果が期待される。同社では今回の研究成果を受けて、2026年にも第1b相臨床試験を開始し、2029年の承認申請を目指す。
(5) 膠芽腫(GBM)
5つ目のパイプラインとして膠芽腫(GBM)がある。GBMは脳腫瘍のなかでも悪性度の高い疾患で年間約2.2万人が発症している。GBMの標準的治療法は外科手術、放射線治療及び化学療法(テモゾロミド)となるが、平均生存期間が15~20ヶ月で5年生存率は5%以下と極めて低く、有効な治療薬の開発が強く望まれている領域となっている。カリフォルニア大学サンフランシスコ校との共同研究の成果として、BCV単剤でGBMに対する抗腫瘍活性が確認されたことや、BCVの治療効果を予測しうる2つの遺伝子バイオマーカー候補を特定したこと、動物実験によりBCV単剤療法で腫瘍増殖を抑制し、生存期間を有意に延長したことを2025年4月に開催された米国がん学会において発表した。
こうした研究成果を踏まえて同社では開発戦略として、標準治療法(放射線+テモゾロミド)に抵抗性のある難治性GBMに対する新たな治療法の開発をBCVで目指している。また、バイオマーカーを活用することでBCVに効く患者をあらかじめ選別し、臨床試験における有効性の向上と開発時間の短縮を図る戦略だ。さらには直近の研究成果として、標準療法との併用療法で、治療効果がより向上する可能性が示されたとしており、同内容は2025年11月開催予定の国際的がん学会(Society of Neuro-Oncology)で発表する予定である。2026年後半には第1b相臨床試験を開始する予定で、生存予後の極めて悪いGBMで開発に成功すれば、BCVの価値も一気に高まるものと思われる。
(6) 頭頚部がん
同社はBCVの固形がんにたいする治療の可能性を探る前臨床研究を実施するなかで、頭頚部がんに対する有望な知見を獲得し、その研究成果が2025年10月開催予定の欧州臨床腫瘍学会に発表演題として採択された。頭頸部とは、頭蓋底(頭の下部)から鎖骨までの間にある顔や首の範囲を指し(鼻、副鼻腔、口腔、咽頭、喉頭、唾液腺、甲状腺などを含む)、これらの部位に発生するがんを総称して「頭頸部がん」と呼ぶ。推定罹患患者数は、世界全体で約90万人以上、日本国内では約3万5千人となり、上咽頭がんや中咽頭がんでは、EBウイルス(EBV)やヒトパピローマウイルス(HPV)といったウイルスがそれぞれの発がんに関与していることが知られている。BCVの抗ウイルス活性と言った特性を生かして効果の高い治療法を開発したものと推察される。同社では2027年頃に第1b相臨床試験の開始を目指している。
(7) パートナリング戦略とBCVの潜在的事業価値
これら複数のパイプラインの開発を同社単独で行うのは困難であり、グローバルに展開している大手製薬企業とパートナー契約を締結して資金負担を軽減しながら開発を進める戦略だ。パートナー交渉については水面下でパイプラインごとに最適なパートナーと契約交渉を活発に進めているものと推察される。
1つの薬剤で複数の疾患を対象領域とする化合物は珍しく、これらパイプラインの開発にすべて成功すればBCVの事業価値も1,000億円を大きく超えるブロックバスターとなる可能性があると弊社では見ている。同社では2030年までに少なくとも2つの対象疾患で承認取得及び上市を目指しており、BCVプラットフォームの事業価値最大化に取り組むことで、グローバルファーマとして大きく飛躍していくことが期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<HN>
(3) 造血幹細胞移植後のCMV感染症
造血幹細胞移植後のCMV感染症※を対象とした第2相臨床試験を米国で2024年5月に開始している。CMV感染症の抗ウイルス薬としては、ガンシクロビルやホスカルネット、CDVが既に使用されているほか、2021年以降に難治性・抵抗性を示すCMV感染症に対して武田薬品工業<4502>の「LIVTENCITY」(一般名:マリバビル)が欧米及び中国、オーストラリアなどで承認されている(日本は2023年11月に承認申請)。ただ、臨床試験の結果ではマリバビルに対して44.3%の患者が効果を示さなかったほか、治療効果があったとしても再発し耐性を持つケースがあるなど課題があり、より有効性の高い治療薬が求められている。
※ 症状は、発熱(38度以上)、倦怠感、関節痛などの全身症状のほか、CMVの侵襲部位によって肺炎や胃腸炎、網膜炎、皮膚潰瘍など局所症状がある。推定患者数は全世界で年間約2.5万人。
BCVは過去にキメリックスが実施した経口剤による臨床試験において、CMV感染症に対して有効性の高いことが確認されていること、今回は安全性の高い注射剤で臨床試験を実施することから、良好な結果が得られる可能性は高いと弊社では見ている。現在の進捗状況は19例の登録を完了しており、至適用量及び奏功患者の特性解析を進めている段階にある。2025年内には第2相臨床試験を完了する予定にしており、試験結果を見て今後の開発方針を策定する方針だ。武田薬品工業では、マリバビルのピーク時売上高を7~8億米ドルと予想していることから、BCVで開発に成功すれば同等程度の売上が期待できることになり、今後の展開が注目される。
(4) 進行性多巣性白質脳症(PML)
米ペンシルベニア州立大学との共同研究によって、指定難病に指定されている進行性多巣性白質脳症(以下、PML)の治療薬としてBCVが有力候補となりうることが判明した。PMLとは多くの人が潜伏感染または持続感染しているJCウイルスが、免疫力の低下した状況で再活性化し脳内に多発性の病巣をきたす病気のことだ。初期症状としては、四肢麻痺や認知機能障害、視覚異常などが現れ、症状が進行すると不随意運動や脳神経麻痺、寝たきり状態となるなど命に関わる脳疾患である。同大学で実施した動物実験で、BCVがポリオーマウイルス(JCウイルスはポリオーマウイルスの一種)に対して増殖抑制効果を示したことが確認されており、PMLの予防または症状の進行を抑制する効果が期待される。同社では今回の研究成果を受けて、2026年にも第1b相臨床試験を開始し、2029年の承認申請を目指す。
(5) 膠芽腫(GBM)
5つ目のパイプラインとして膠芽腫(GBM)がある。GBMは脳腫瘍のなかでも悪性度の高い疾患で年間約2.2万人が発症している。GBMの標準的治療法は外科手術、放射線治療及び化学療法(テモゾロミド)となるが、平均生存期間が15~20ヶ月で5年生存率は5%以下と極めて低く、有効な治療薬の開発が強く望まれている領域となっている。カリフォルニア大学サンフランシスコ校との共同研究の成果として、BCV単剤でGBMに対する抗腫瘍活性が確認されたことや、BCVの治療効果を予測しうる2つの遺伝子バイオマーカー候補を特定したこと、動物実験によりBCV単剤療法で腫瘍増殖を抑制し、生存期間を有意に延長したことを2025年4月に開催された米国がん学会において発表した。
こうした研究成果を踏まえて同社では開発戦略として、標準治療法(放射線+テモゾロミド)に抵抗性のある難治性GBMに対する新たな治療法の開発をBCVで目指している。また、バイオマーカーを活用することでBCVに効く患者をあらかじめ選別し、臨床試験における有効性の向上と開発時間の短縮を図る戦略だ。さらには直近の研究成果として、標準療法との併用療法で、治療効果がより向上する可能性が示されたとしており、同内容は2025年11月開催予定の国際的がん学会(Society of Neuro-Oncology)で発表する予定である。2026年後半には第1b相臨床試験を開始する予定で、生存予後の極めて悪いGBMで開発に成功すれば、BCVの価値も一気に高まるものと思われる。
(6) 頭頚部がん
同社はBCVの固形がんにたいする治療の可能性を探る前臨床研究を実施するなかで、頭頚部がんに対する有望な知見を獲得し、その研究成果が2025年10月開催予定の欧州臨床腫瘍学会に発表演題として採択された。頭頸部とは、頭蓋底(頭の下部)から鎖骨までの間にある顔や首の範囲を指し(鼻、副鼻腔、口腔、咽頭、喉頭、唾液腺、甲状腺などを含む)、これらの部位に発生するがんを総称して「頭頸部がん」と呼ぶ。推定罹患患者数は、世界全体で約90万人以上、日本国内では約3万5千人となり、上咽頭がんや中咽頭がんでは、EBウイルス(EBV)やヒトパピローマウイルス(HPV)といったウイルスがそれぞれの発がんに関与していることが知られている。BCVの抗ウイルス活性と言った特性を生かして効果の高い治療法を開発したものと推察される。同社では2027年頃に第1b相臨床試験の開始を目指している。
(7) パートナリング戦略とBCVの潜在的事業価値
これら複数のパイプラインの開発を同社単独で行うのは困難であり、グローバルに展開している大手製薬企業とパートナー契約を締結して資金負担を軽減しながら開発を進める戦略だ。パートナー交渉については水面下でパイプラインごとに最適なパートナーと契約交渉を活発に進めているものと推察される。
1つの薬剤で複数の疾患を対象領域とする化合物は珍しく、これらパイプラインの開発にすべて成功すればBCVの事業価値も1,000億円を大きく超えるブロックバスターとなる可能性があると弊社では見ている。同社では2030年までに少なくとも2つの対象疾患で承認取得及び上市を目指しており、BCVプラットフォームの事業価値最大化に取り組むことで、グローバルファーマとして大きく飛躍していくことが期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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