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シンバイオ製薬 Research Memo(3):BCVは難治性腫瘍等で治療効果が期待できゲームチェンジャーとなる可能性
配信日時:2025/10/28 12:03
配信元:FISCO
*12:03JST シンバイオ製薬 Research Memo(3):BCVは難治性腫瘍等で治療効果が期待できゲームチェンジャーとなる可能性
■シンバイオ製薬<4582>のBCVの開発戦略
1. BCVの特徴とライセンス契約
(1) BCVの特徴
BCVは、広範なDNAウイルスに対して高い抗ウイルス活性を持つほか、アカデミアの研究により抗腫瘍活性を持つことも明らかとなってきており、移植後のウイルス感染症だけでなく、ウイルス感染によって引き起こされる様々な合併症(血液腫瘍や膠芽腫、多発性硬化症など)のように未だ有効な治療法が確立されていない「空白の治療領域」を充足する治療薬として注目度が高まっている。
抗ウイルス活性の強さを示す指標の1つである「抗ウイルス活性IC50」の値を見ると、AdVやCMVをはじめ多くのウイルスに対して、BCVは他の薬剤と比較して高い抗ウイルス活性を持つことが明らかとなっており、これは多くのウイルス性疾患や合併症において治療効果が期待できることを示唆している。1つの化合物で幅広い疾患をカバーする治療薬候補品は稀有であり、BCVの潜在的なポテンシャルの大きさを示している。
BCVが高い抗ウイルス活性を持つ理由の1つとして、分子構造が挙げられる。BCVはCMV感染による網膜炎治療薬等で知られるシドフォビル(CDV)に脂肪鎖を結合した構造となっている。脂肪鎖を結合することで、CDVよりも細胞内に侵入しやすくなり、また侵入後は脂肪鎖が切り離されCDVと二リン酸が結合することで、DNAウイルスの複製を阻害する働きをする(=高い抗ウイルス活性)。さらに、安全性という点においても経口剤BCVはキメリックスが2021年にFDA(米国食品医薬品局)から天然痘治療薬として承認を取得しており、重篤な副作用が発生するリスクは極めて低いことが確認されている。
2019年に同社がキメリックスとBCVのライセンス契約を締結するに至った経緯については、当時、キメリックスがBCVの経口剤タイプで開発を目指していたが、第3相臨床試験で下痢等の副作用が発生したほか、統計的に有意な結果が得られなかったことで開発を中断し、ライセンスアウト先を探しており、開発成功の可能性があると判断した同社が契約交渉を申し込んだことにある。同社は、BCVが優れた安全性と機能性(広域かつ高い抗ウイルス活性)を持ち、対象疾患が「希少疾患」で「空白の治療領域」を充足するという同社の事業方針と合致するだけでなく、「トレアキシン(R)」と同じ血液腫瘍も対象領域として含まれていたことから、営業面でのシナジー効果も得やすいと判断し、導入を決断した。
キメリックスが経口剤の開発に失敗した原因は、消化器官からの薬剤の吸収率が低いため、多量の薬剤を服用せざるを得なかったことにあると同社では見ている。注射剤であれば経口剤の1割の投与量で同じ効果が期待できるため、副作用リスクも低く成功確率は高くなる。また、同契約では注射剤だけでなく経口剤についても契約内容に含まれており、将来的に経口剤の開発も進めていく可能性がある。なお、天然痘だけ契約の対象外となっているのは、バイオテロ対策として天然痘治療薬を米国政府が自国で製造、備蓄しておく必要があるためだ。
(2) ライセンス契約について
BCVのライセンス契約ではグローバルライセンスであること、また、製造権も含めた契約となっている点が注目される。製造も含めて自社でコントロールし、事業リスクを極力抑える体制を構築していくことが、患者も含めたすべてのステークホルダーのためとなり、かつグローバル・スペシャリティファーマとして成長するためには重要であるとの認識だ。なお、BCVはFDAから造血幹細胞移植後のAdV感染症を対象としたファストトラック(優先審査)指定を受けているほか、2024年3月にはEUでも免疫不全患者におけるAdV感染症及びCMV感染症予防に対するオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定※を取得済みであることを発表している。本指定によりEUでは上市後10年間の排他的先発販売権が付与される。
※ EUでは人口1万人あたり5人以下の患者数であり、生命に危険を及ぼす重篤な慢性疾患であること等がオーファンドラッグの指定要件となる。
BCVのライセンス契約に関しては開発元のキメリックスに対して契約一時金5百万米ドル(約540百万円)を2019年12月期に支払っており、将来的なマイルストーンとして最大180百万米ドル、製品売上高に応じて2ケタ台のロイヤルティを支払う契約となっている。なお、2022年9月にキメリックスがBCVのライセンスをエマージェント・バイオソリューションズに譲渡したことを発表したが、同社が持つ全世界での独占的開発・製造・販売権についての影響はない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. BCVの特徴とライセンス契約
(1) BCVの特徴
BCVは、広範なDNAウイルスに対して高い抗ウイルス活性を持つほか、アカデミアの研究により抗腫瘍活性を持つことも明らかとなってきており、移植後のウイルス感染症だけでなく、ウイルス感染によって引き起こされる様々な合併症(血液腫瘍や膠芽腫、多発性硬化症など)のように未だ有効な治療法が確立されていない「空白の治療領域」を充足する治療薬として注目度が高まっている。
抗ウイルス活性の強さを示す指標の1つである「抗ウイルス活性IC50」の値を見ると、AdVやCMVをはじめ多くのウイルスに対して、BCVは他の薬剤と比較して高い抗ウイルス活性を持つことが明らかとなっており、これは多くのウイルス性疾患や合併症において治療効果が期待できることを示唆している。1つの化合物で幅広い疾患をカバーする治療薬候補品は稀有であり、BCVの潜在的なポテンシャルの大きさを示している。
BCVが高い抗ウイルス活性を持つ理由の1つとして、分子構造が挙げられる。BCVはCMV感染による網膜炎治療薬等で知られるシドフォビル(CDV)に脂肪鎖を結合した構造となっている。脂肪鎖を結合することで、CDVよりも細胞内に侵入しやすくなり、また侵入後は脂肪鎖が切り離されCDVと二リン酸が結合することで、DNAウイルスの複製を阻害する働きをする(=高い抗ウイルス活性)。さらに、安全性という点においても経口剤BCVはキメリックスが2021年にFDA(米国食品医薬品局)から天然痘治療薬として承認を取得しており、重篤な副作用が発生するリスクは極めて低いことが確認されている。
2019年に同社がキメリックスとBCVのライセンス契約を締結するに至った経緯については、当時、キメリックスがBCVの経口剤タイプで開発を目指していたが、第3相臨床試験で下痢等の副作用が発生したほか、統計的に有意な結果が得られなかったことで開発を中断し、ライセンスアウト先を探しており、開発成功の可能性があると判断した同社が契約交渉を申し込んだことにある。同社は、BCVが優れた安全性と機能性(広域かつ高い抗ウイルス活性)を持ち、対象疾患が「希少疾患」で「空白の治療領域」を充足するという同社の事業方針と合致するだけでなく、「トレアキシン(R)」と同じ血液腫瘍も対象領域として含まれていたことから、営業面でのシナジー効果も得やすいと判断し、導入を決断した。
キメリックスが経口剤の開発に失敗した原因は、消化器官からの薬剤の吸収率が低いため、多量の薬剤を服用せざるを得なかったことにあると同社では見ている。注射剤であれば経口剤の1割の投与量で同じ効果が期待できるため、副作用リスクも低く成功確率は高くなる。また、同契約では注射剤だけでなく経口剤についても契約内容に含まれており、将来的に経口剤の開発も進めていく可能性がある。なお、天然痘だけ契約の対象外となっているのは、バイオテロ対策として天然痘治療薬を米国政府が自国で製造、備蓄しておく必要があるためだ。
(2) ライセンス契約について
BCVのライセンス契約ではグローバルライセンスであること、また、製造権も含めた契約となっている点が注目される。製造も含めて自社でコントロールし、事業リスクを極力抑える体制を構築していくことが、患者も含めたすべてのステークホルダーのためとなり、かつグローバル・スペシャリティファーマとして成長するためには重要であるとの認識だ。なお、BCVはFDAから造血幹細胞移植後のAdV感染症を対象としたファストトラック(優先審査)指定を受けているほか、2024年3月にはEUでも免疫不全患者におけるAdV感染症及びCMV感染症予防に対するオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定※を取得済みであることを発表している。本指定によりEUでは上市後10年間の排他的先発販売権が付与される。
※ EUでは人口1万人あたり5人以下の患者数であり、生命に危険を及ぼす重篤な慢性疾患であること等がオーファンドラッグの指定要件となる。
BCVのライセンス契約に関しては開発元のキメリックスに対して契約一時金5百万米ドル(約540百万円)を2019年12月期に支払っており、将来的なマイルストーンとして最大180百万米ドル、製品売上高に応じて2ケタ台のロイヤルティを支払う契約となっている。なお、2022年9月にキメリックスがBCVのライセンスをエマージェント・バイオソリューションズに譲渡したことを発表したが、同社が持つ全世界での独占的開発・製造・販売権についての影響はない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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