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明日の株式相場に向けて=ダンスホールの音楽は未だ止まず

配信日時:2025/09/16 17:30 配信元:MINKABU
 3連休明けとなった16日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比134円高の4万4902円と4連騰を記録し、連日の最高値更新とリスクオン相場に拍車がかかっている。9月相場は要警戒ムードを逆手にとる形で4日以降に加速装置のスイッチが入った状態となり、きょうまで直近8営業日で7勝1敗、この間に3000円近くも水準を切り上げる超強気相場の様相を呈している。  株式市場では企業サイド、つまり一個人の財布より経営者マインドの方を反映しやすく、いわば家計格差が広がる中で、名目でも企業業績が押し上げられれば株価は上昇するという理屈が大手を振る。例えば、足もとのインフレによって消費者の財布の紐が締まり数量ベースで減少しているにもかかわらず、それを上回る物価上昇率によって売り上げが伸びるという構図。これは株高の根拠としては一片のピースに過ぎないが、スタグフレーションの毒が回る直前までユーフォリアを堪能するのが相場元来の特性であり、今はそういう時間帯といえそうだ。ファンダメンタルズ面からのアプローチが機能していないことは承知のうえで、ダンスホールに音楽が流れているうちは「踊らにゃ損」というノリである。  実際問題、国内ではどうやら物価高が止まらないというムードが動かし難くなってきた。日銀の政策が後手を引いていることは明らかで、「植田日銀総裁は本音としてタカ派に転換したいのはヤマヤマだが、踏ん切りがつかずハト派路線をズルズルと引きずっている。鷹でも鳩でもなく鶏(チキン)と揶揄されてしまう状況で、これが近い将来のインフレ観測を一段と強める背景となっている」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。いわゆるトルコ型といわれるインフレ進行下での低金利政策によって、株価は巨大な浮き輪を脇に抱えているような状態となっており容易に沈まない。どこかでこの浮き輪に穴が開くときが来るはずだが、それはまだもう少し先となりそうだ。今週は日米の中央銀行が政策金利を発表するが、FRBは0.25%の利下げがほぼ確実視される一方、日銀は利上げ見送りが濃厚である。仮に植田総裁が記者会見で年内利上げの可能性に言及したとして、株式市場はいったん怯(ひる)むかもしれないが、すぐにピラニアのごとく押し目買い注文が押し寄せ、何事もなかったかのように上値追いを再開するケースが目に浮かぶ。  個別株でも好業績であれば、例外なく高値圏を舞い上がり、ここに慌てて飛び乗るくらいなら様子をみたいと考えるのが人情だが、欲を出して空売りから入ると踏み上げ相場の餌食となる。1990年代に経験した暗く長いデフレのトンネルからは想像がつかない全く異なる世界にレールが敷かれている。かつてのデフレマインドに左右されたショート戦略は、おそらく今は通用しない。  現実的な目線で株式市場の先行きを考えた場合、カギを握るのはやはり株価への寄与度が高い半導体関連ということになる。ここしばらくアドバンテスト<6857.T>が主役を務めていたが、目先は後工程の半導体製造装置でもうひとつのシンボルストックに位置付けられるディスコ<6146.T>の大立回りが、マーケットの視線を釘付けにした。モルガン・スタンレーMUFG証券が同社株の目標株価を7万300円に引き上げる超強気レポートをリリースしており、これに反応した。半導体は後工程を担う銘柄群が相対的に少ないこともあり、投資資金の持ち高調整(買い戻し)の対象として株価の変動幅にも拍車がかかりやすい。市場では「(ディスコの)目標株価7万円というラインもベタな感じで、ざっくり言えば昨年7月の最高値6万8850円でつかんだ投資家が助かる水準。信用買い残が再び積み上がるなか株高の持続性には疑問もあるが、アドバンストパッケージ分野の成長性は肯定できるだけに、信憑性に乏しいとも言えない」(中堅証券ストラテジスト)という声が聞かれた。  このAI・半導体株人気を背景にディスコに続く銘柄を考えた場合、後工程のニッチトップ銘柄として存在感が浮き彫りとなりそうな銘柄がTOWA<6315.T>だ。樹脂封止装置(モールディング装置)を主力とし、高技術力を武器に半導体製造用の精密金型などでも実力は折り紙付きだ。特に独自の圧縮方式によって摩擦を起こさず空気も残さずにHBMを封止する装置でニッチトップの座を不動としている。このほか、半導体関連ではパワーデバイス分野で抜群の技術を有する旭ダイヤモンド工業<6140.T>やワイエイシイホールディングス<6298.T>などを改めてマークしたい。これ以外に、データセンター関連で注目しておきたいのが7月下旬にも取り上げた日本電波工業<6779.T>や、新たに正興電機製作所<6653.T>にも目を配っておきたい。  あすのスケジュールでは、8月の貿易統計が朝方取引開始前に財務省から開示される。前場取引時間中に1年物国庫短期証券の入札、20年物国債の入札が行われるほか、後場取引時間中には日銀が実質輸出入の動向を発表する。また、日比野日証協会長の会見も予定されている。大引け後に発表される8月の訪日外国人客数にもマーケットの関心が向いている。海外では、インドネシア中銀、カナダ中銀、ブラジル中銀などが政策金利を決定。8月の英消費者物価指数(CPI)、8月の米住宅着工件数が開示される。また、この日発表されるFOMCの結果に投資家の視線が集中するほか、会合後のパウエルFRB議長の記者会見に対する注目度も高い。(銀) 出所:MINKABU PRESS

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