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明日の株式相場に向けて=「仕手株大乱舞」相場のリスクと妙味

配信日時:2025/08/25 17:30 配信元:MINKABU
 週明け25日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比174円高の4万2807円と続伸。続伸とはいえ、想定以上に日経平均の上値は重かったといえる。前週末22日はジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演内容に、米国だけでなく世界の耳目が集まった。日本時間の夜11時に行われたが、欧州株市場ではまだ場が立っており、この影響はドイツやフランスなどにも少なからぬ浮揚力をもたらした。パウエル発言を要約する限りでは決してハト派傾斜を強く示唆するものではなかったが、事前にタカ派発言が警戒されているというメディア報道の流れからすれば、ポジティブに捉えられる要素があったようだ。米国株市場ではNYダウが満を持して大幅高となり、約8カ月半ぶりに史上最高値を更新した。ここ調整色が強かったナスダック総合株価指数も大きく切り返し、ダウとほぼ同じ上昇率で25日移動平均線の上に再浮上している。  パウエル氏の講演で注目すべきポイントは大きく分けて2つある。一つは労働市場で失業率は歴史的な低水準にあるものの、労働の需給と需要いずれも顕著な鈍化が認められていることに言及。いわゆる縮小均衡型の中で労働市場がバランスを保っているという比較的稀有なケースで、下振れリスクが大きいという点に触れており、これを利下げの拠りどころとしている。同時に労働市場がシュリンクしている要因として、あからさまではないが、トランプ米大統領が前面に押し出している移民制限を間接的に批判している。  そして、市場関係者からはもう一つ「金融政策に関してデータ重視に凝り固まらず、先回り的な措置を選択する余地があるということにパウエル氏は言及しており、今後の政策に反映されそうだ」(ネット証券アナリスト)という指摘が聞かれた。9月の利下げの可能性はかなり高まったとみてよさそうだが、年内に残された10月以降のあと2回のFOMCで連続利下げに動くケースは、冷静にみて現状はメインシナリオとはいえず、利下げ幅は年内0.5%どまりというところであろう。そもそも、9月会合で一気に0.5%利下げをマーケットはいったん織り込んだ場面もあったくらいで、今回のパウエル発言がどの時点から見てハト派的と判断されるのか、直近のメディア報道は玉虫色の部分も目立つ。  今週は現地時間27日に発表予定のエヌビディア<NVDA>の5~7月期決算が次のビッグイベントとして立ちはだかる。決算内容についてはトップライン・利益ともに前年同期比1.5倍化がコンセンサスであり、極めて好調が予想されている。他方、中国事業の先行きに対するジェンスン・ファンCEOのコメントがどうなるかにマーケットの注目度が高い。トランプ政権下での対中半導体規制が緩和方向となった途端、今度は中国側がエヌビディアのAI半導体「H20」に対し安全保障の観点で利用を拒むという皮肉な展開となっている。とはいえ、投資家サイドは最先端AI半導体の動向に対する関心の方がより強いはずで、中国向け案件でエヌビディアが売り叩かれる展開は想定しにくい。「ハイスペックのAI半導体に対する需要減退懸念も、ディープシーク・ショックを過大に警戒視していた可能性が高いということが最近分かってきた」(生保系アナリスト)という声もある。つまり、やはりハイスペックの半導体はAIインフラ構築(AIデータセンター建設)に必須という見方である。エヌビディアに対する風向きは思ったほど悪くない感触がある。  東京市場では半導体関連が買われたにもかかわらず、日経平均の上値は重かったが、スタンダードやグロース市場を含めて個別材料株に対する物色意欲は加速している。今の時代かつての仕手株という概念は化石化しているが、それでもここ最近の市場は“仕手株乱舞”という表現がシックリくるような地合いである。ステーブルコイン関連ではアステリア<3853.T>が6日連続ストップ高と、もはや理屈ではない。低位株にもアステリア効果が波及しストップ高の嵐となっているが、ステーブルコインというテーマ買いの軌道から外れている銘柄も目立つ。これを、相場の転機を暗示する危険な兆候とみなす市場関係者は少なくないが、局地的バブルを承知のうえで乗っている熟練トレーダーもまた少なくないようだ。  この材料株に対する貪欲なマネーの潮流を目の当たりにしても、どこに照準を合わせるかが難しい。しかし、「株は需給」と言いながらもやはり実態で評価できる銘柄が、需給相場においても総合的に優位性を有する。その観点では、例えばDX関連事業が売上構成の100%を占める情報戦略テクノロジー<155A.T>。業績成長路線をひた走っており、もみ合い上放れについてみたいところ。また、7月下旬に当欄でも取り上げた児玉化学工業<4222.T>の業績変化は強烈なものがあり、0.6倍のPERは置くとして、PBRの割安さなどに着目すれば3ケタ台は依然買い場と判断される。このほか前週紹介した銘柄だが、データセンター関連の穴株で業績が急改善途上にあるアエリア<3758.T>を改めてマークしてみたい。  あすのスケジュールでは、日銀が7月の企業向けサービス価格指数を朝方取引開始前に開示するほか、午後取引時間中には「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」を発表する。海外では7月の米耐久財受注額のほか、6月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、8月の米消費者信頼感指数などにマーケットの関心が高い。なお、米国では2年物国債の入札も行われる。(銀) 出所:MINKABU PRESS

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