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明日の株式相場に向けて=“猛獣使い”ベッセント発言に揺れる市場
配信日時:2025/08/14 17:30
配信元:MINKABU
きょう(14日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比625円安の4万2649円と7日ぶり反落。ようやくというべきか、強烈な上昇波にストップがかかった。日経平均が6日続伸すること自体はそれほど珍しいことではないが、この間に3000円近い上昇をみせていたことを考えると、やはり尋常ではないレベルで一方通行に買われていた印象が強い。明確な買い材料があれば別だが、それも見当たらない中での急騰劇であった。
外国人による日本株買い攻勢に伴う株高効果を挙げる声は多かったものの、その外国人買いの理由自体が定かではなく、特に直近は短期筋の戦略的な買いが主体だった可能性もある。ということは、初押しを買ったつもりが逆回転した歯車に乗せられてそのまま持っていかれてしまうケースも考えなければならない。きょうの下げは待ち望んでいた買い場が提供されたという見方はできるものの、押し目を買うにせよ打診にとどめ、全力で買い向かうような蛮勇は避けるところ。過去の例をみても分かるように、上にも下にも相場は行き過ぎるのが常だが、近年はAIトレードの影響もあってその苛烈さが増している。いったん方向性が変わると短期間で元のトレンドには戻らないケースが多い。
『メディア論』で知られる文学者マクルーハンは「人は前を見ているつもりで、実はバックミラーを見ている」という言葉を残している。分かってはいても、未来を覗くことができない株式投資の世界で過去の事象にとらわれるのは仕方ないが、あまりにも強い相場を見せつけられて、株高シナリオを肯定する理屈が大手を振るようになると、そこが目先の天井だったというのは相場の「あるある」といえる。前日までを振り返ると、日経平均が高値圏で三空を形成し、騰落レシオは155%まで上昇、ボリンジャーバンドはプラス3σの領域に足を踏み入れていた。そして、ネット証券大手の信用評価損益率がマイナス0.4%というのは2018年以来の過熱水準で、これらすべてが天井圏を示唆するものであった。
今回の相場反転のトリガーとなったのはベッセント米財務長官の発言であり、もし下げが尾を引くようであれば“ベッセント・ショック”と命名されることになるかもしれない。ベッセント氏は9月のFOMCでFRBが通常の2倍となる0.5%の政策金利引き下げに踏み切る可能性が非常に高いという見解を示し、マーケット関係者の耳目を驚かせた。9月の利下げについては米国株市場も概ね織り込んでいたが、仮に0.25%ではなく、0.5%利下げが実施されるとすればパウエルFRB議長の面目丸潰れである。ベッセント氏は金利が現在より1.5~1.75%低くあるべきとも主張している。米国のインフレ率との兼ね合いで法外な主張ではないとはいっても、FRBの金融政策に対しあからさまに圧をかけてきていることは明白だ。
もっとも、この発言自体は米国株市場にとってはフレンドリーだが、問題はベッセント氏が返す刀で日銀の金融引き締めを誘導するような発言を行ったことだ。これは日本株にネガティブなインパクトを与えた。米国同様にインフレ率をメルクマールとすれば、3%台半ばまで政策金利を引き上げてもおかしくはないが、実際一気にそこまで持っていけば日本経済は瓦解してしまう。ただし今のインフレ環境を考慮した場合、ハトではなくチキンと化していると揶揄される植田日銀総裁も、利上げのカードを遅かれ早かれ切るよりないのは自明である。これについては極めて現実的な話にベッセント氏は言及した。きょうは、外国為替市場で前日比1円以上ドル安・円高に振れる場面があったが、「日米の金融政策が同時進行的に真逆の方向に動くことになれば、為替はもっと劇的なドル安・円高局面が演出される公算が大きい」(中堅証券ストラテジスト)という指摘もあった。
ただ、ベッセント氏がどこまで本気で言っているのかは疑問な点も多い。トランプ米政権の閣僚の中では最も良識ある人物とみなす向きもいるが、「実際はトランプ米大統領に対しては完全なるイエスマン」(ネット証券アナリスト)であり、トランプ氏の考えをそのままメディアに拡声する役割を演じている可能性がある。かつてジョージ・ソロス氏の側近としてヘッジファンドマネージャーを務めたことはあまりにも有名だが、「(ベッセント氏は)左翼の虎(ソロス氏)と右翼のライオン(トランプ氏)どちらにも対応できる希代の猛獣使いとも言われている」(同)とし、そうした思惑をマーケットはしたたかに織り込みながら、ベッセント発言との距離感を探っている部分もあるようだ。
あすのスケジュールでは、4~6月期国内総生産(GDP)速報値、週間の対外・対内証券売買契約が朝方取引開始前に開示される。前場取引時間中に3カ月物国庫短期証券の入札及び10年物物価連動国債の入札が行われる。また、後場取引時間中には6月の鉱工業生産(確報値)が発表される。海外では7月の中国70都市新築住宅価格、7月の中国小売売上高、7月の中国工業生産高、1~7月の中国固定資産投資、1~7月の中国不動産開発投資が注目されるほか、7月の米小売売上高、7月の米輸出入物価指数、8月のNY連銀製造業景況指数、7月の米鉱工業生産・設備稼働率、6月の企業在庫、8月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)、6月の対米証券投資などにマーケットの関心が高い。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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