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兵機海運 Research Memo(3):主力は内航事業、豊富なサービスにより適時配船サービスを実現
配信日時:2025/06/09 12:03
配信元:FISCO
*12:03JST 兵機海運 Research Memo(3):主力は内航事業、豊富なサービスにより適時配船サービスを実現
■兵機海運<9362>の事業概要
1. セグメント別の概要
同社の事業セグメントは、海運事業と港運・倉庫事業の2つである。海運事業は、内航事業と外航事業で構成されており、港運・倉庫事業は、港運事業と倉庫事業で構成される。2025年3月期のセグメント別売上高構成比は、海運事業が60.8%(内航事業が49.9%、外航事業が10.9%)、港運・倉庫事業が39.2%(港運事業が27.1%、倉庫事業が12.1%)である。
(1) 海運事業
a) 内航事業
内航事業は、国内の港を結ぶ内航船を使った海上輸送事業である。同社における主力事業であり、鉄鋼メーカーが生産する鋼材(H鋼、厚板、コイル等)の海陸一貫輸送の取扱いが中心である。主な顧客は、大和工業グループやJFE物流(株)グループである。
同社の自社保有船並びに傭船が船団を組み、瀬戸内から全国の港へ向けた海上輸送ルートを運航している。「集荷・配船・船積・配達」を同社が一元管理しており、船舶は港湾艀や内航艀にいたるまで様々なタイプを揃えている。総合的なサービス提供力と多様な船舶によって、適時適船を可能にし、顧客の多様なニーズに応えている。重要な管理指標は、航海数と取扱輸送量である。なお、業容拡大には安全で安定した配船サービスの提供が重要となる。そのため、老朽船の代替建造(リプレイス)等継続的な設備投資や、高齢化する船主の廃業などに応じた船団の組み換えが必要となる。
同社は、傭船船主との良好な関係の構築と船主の経営強化を目指して新たな体制(共同管理)に着手している。同社と船主によって七洋船舶管理(株)を設立し、内航船員の高齢化・担い手不足といった問題に向き合い、船員の確保・育成を進めている。新人船員の早期育成を目的とした船員育成船への投資や女性船員の育成に注力し、将来の海運業界を担う人材の輩出を目指している。
b) 外航事業
外航事業は、外航船を利用し、国をまたいだ輸送を行う事業である。同社は中国・韓国・台湾・東南アジアなどの日本近海を主体に、多目的貨物船を運航し、航空機では運べない鋼材・建設機械・大型のプロジェクトカーゴといった製品を輸送している。極東ロシア向け航路からは撤退したものの、代替航路として中央アジア向け貨物の獲得に注力し、一定の成果を上げている。また、複数年度に及ぶ社会インフラ整備でのプロジェクト輸送も収益基盤となっている。世界経済の発展とともに全世界で物の移動が活発になっており、業界全体の海上輸送量は年平均で約6%増加と拡大基調にある。なお、運賃の大半はドル建て・外貨建てで支払われるため、運賃収入は円高よりも円安のほうがプラスに働く。
外航事業においても重要な管理指標は、航海数と取扱輸送量である。定期傭船の効率的な配船に加えて委託船のスポット配船により輸送効率の向上に注力している。
(2) 港運・倉庫事業
a) 港運事業
港運事業は、海と陸との狭間の運送を担う事業、つまり輸出入にかかる港湾における物流事業である。具体的には、船舶への貨物積み込み・卸し・荷さばき・諸官庁への各種手続きの代行などを行っている。また、輸出入貨物取扱業として、倉庫・港運・通関・外航・陸運と連携し、国際物流貨物をスムーズに輸送させるトータルサポートを担っている。顧客に目立った偏りはなくバランスがとれており、同社の重要な収益基盤の1つとなっている。
同社はAEO通関業者※に認定されており、通関業も手掛けている。通関士は、輸出入者に代わって国際物流の正しい手続きを行う専門家である。日本と外国の境界線を守る役割を担い、「輸出入に問題のない貨物かどうか」「関税・消費税等を徴収すべきかどうか」などの判断を行い、安全で公正な貿易活動を支えている。また、食品衛生法や薬機法、植物検疫法、家畜伝染病予防法、外為法、化審法など、各種法令が適用される高付加価値貨物の取扱実績も豊富で、高度な専門性を要する貨物にも対応可能である。
※ AEOはAuthorized Economic Operatorの略。貨物のセキュリティ管理とコンプライアンスの体制が整備されていると税関長の認定を受けた通関業者のこと。
b) 倉庫事業
倉庫事業は、神戸物流センター・兵庫埠頭物流センター・大阪物流センター・姫路倉庫で事業を展開している。いわゆる保税蔵置場・保税倉庫※を保有している。貨物を預かるだけでなく、輸出入海上コンテナ詰出・保管・簡易梱包・流通加工・検品等のサービスも手掛けている。
※ 税関長から許可を受けた場所で、輸出入申告を行うために貨物を搬入する場所。保税蔵置場での蔵置期間は原則3ヶ月、蔵入れ承認を受けると承認後2年間、関税未納のまま保管が可能である。
同社は、一般貨物の取扱いに加え、将来的に需要が見込める貨物の取扱いを進めている。具体的には、引火性液体を含む危険品等の高付加価値貨物を新たな収益源と位置付けている。2018年9月に開設した姫路地区の危険品倉庫に次いで、2020年1月にも兵庫埠頭物流センターに危険品倉庫を2棟、さらに2022年11月に1棟(兵庫埠頭物流センターの危険品倉庫は合計3棟)を開設した。近年の企業のコンプライアンス重視の流れを受け、安全に危険品貨物を取り扱える倉庫への需要が高まっている。一方で、競合企業の新規参入も見られる。同社は、高付加価値であり収益性の高い危険品に注力するという方向性に変わりはないものの、競争の高まりを受け、今後は重量貨物・長尺貨物などの特殊貨物とその付帯作業の獲得にも併せて注力する方針である。2025年3月期においては、競争環境の激化などを受け受注が伸び悩んだものの、営業活動にも注力しており、中期的には危険品や特殊貨物の受注実績が積み上がっていくことが予想される。こうしたなかで、同社全体の収益性も改善していくと弊社は見ている。なお、倉庫事業においても自社倉庫の建設・機能強化等のために設備投資は継続して行われる。
港運事業と倉庫事業は両輪関係にある。同社は両事業を一体で展開し、顧客にきめ細かなサービスを提供することで、さらなる優位性の発揮を目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林拓馬)
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1. セグメント別の概要
同社の事業セグメントは、海運事業と港運・倉庫事業の2つである。海運事業は、内航事業と外航事業で構成されており、港運・倉庫事業は、港運事業と倉庫事業で構成される。2025年3月期のセグメント別売上高構成比は、海運事業が60.8%(内航事業が49.9%、外航事業が10.9%)、港運・倉庫事業が39.2%(港運事業が27.1%、倉庫事業が12.1%)である。
(1) 海運事業
a) 内航事業
内航事業は、国内の港を結ぶ内航船を使った海上輸送事業である。同社における主力事業であり、鉄鋼メーカーが生産する鋼材(H鋼、厚板、コイル等)の海陸一貫輸送の取扱いが中心である。主な顧客は、大和工業グループやJFE物流(株)グループである。
同社の自社保有船並びに傭船が船団を組み、瀬戸内から全国の港へ向けた海上輸送ルートを運航している。「集荷・配船・船積・配達」を同社が一元管理しており、船舶は港湾艀や内航艀にいたるまで様々なタイプを揃えている。総合的なサービス提供力と多様な船舶によって、適時適船を可能にし、顧客の多様なニーズに応えている。重要な管理指標は、航海数と取扱輸送量である。なお、業容拡大には安全で安定した配船サービスの提供が重要となる。そのため、老朽船の代替建造(リプレイス)等継続的な設備投資や、高齢化する船主の廃業などに応じた船団の組み換えが必要となる。
同社は、傭船船主との良好な関係の構築と船主の経営強化を目指して新たな体制(共同管理)に着手している。同社と船主によって七洋船舶管理(株)を設立し、内航船員の高齢化・担い手不足といった問題に向き合い、船員の確保・育成を進めている。新人船員の早期育成を目的とした船員育成船への投資や女性船員の育成に注力し、将来の海運業界を担う人材の輩出を目指している。
b) 外航事業
外航事業は、外航船を利用し、国をまたいだ輸送を行う事業である。同社は中国・韓国・台湾・東南アジアなどの日本近海を主体に、多目的貨物船を運航し、航空機では運べない鋼材・建設機械・大型のプロジェクトカーゴといった製品を輸送している。極東ロシア向け航路からは撤退したものの、代替航路として中央アジア向け貨物の獲得に注力し、一定の成果を上げている。また、複数年度に及ぶ社会インフラ整備でのプロジェクト輸送も収益基盤となっている。世界経済の発展とともに全世界で物の移動が活発になっており、業界全体の海上輸送量は年平均で約6%増加と拡大基調にある。なお、運賃の大半はドル建て・外貨建てで支払われるため、運賃収入は円高よりも円安のほうがプラスに働く。
外航事業においても重要な管理指標は、航海数と取扱輸送量である。定期傭船の効率的な配船に加えて委託船のスポット配船により輸送効率の向上に注力している。
(2) 港運・倉庫事業
a) 港運事業
港運事業は、海と陸との狭間の運送を担う事業、つまり輸出入にかかる港湾における物流事業である。具体的には、船舶への貨物積み込み・卸し・荷さばき・諸官庁への各種手続きの代行などを行っている。また、輸出入貨物取扱業として、倉庫・港運・通関・外航・陸運と連携し、国際物流貨物をスムーズに輸送させるトータルサポートを担っている。顧客に目立った偏りはなくバランスがとれており、同社の重要な収益基盤の1つとなっている。
同社はAEO通関業者※に認定されており、通関業も手掛けている。通関士は、輸出入者に代わって国際物流の正しい手続きを行う専門家である。日本と外国の境界線を守る役割を担い、「輸出入に問題のない貨物かどうか」「関税・消費税等を徴収すべきかどうか」などの判断を行い、安全で公正な貿易活動を支えている。また、食品衛生法や薬機法、植物検疫法、家畜伝染病予防法、外為法、化審法など、各種法令が適用される高付加価値貨物の取扱実績も豊富で、高度な専門性を要する貨物にも対応可能である。
※ AEOはAuthorized Economic Operatorの略。貨物のセキュリティ管理とコンプライアンスの体制が整備されていると税関長の認定を受けた通関業者のこと。
b) 倉庫事業
倉庫事業は、神戸物流センター・兵庫埠頭物流センター・大阪物流センター・姫路倉庫で事業を展開している。いわゆる保税蔵置場・保税倉庫※を保有している。貨物を預かるだけでなく、輸出入海上コンテナ詰出・保管・簡易梱包・流通加工・検品等のサービスも手掛けている。
※ 税関長から許可を受けた場所で、輸出入申告を行うために貨物を搬入する場所。保税蔵置場での蔵置期間は原則3ヶ月、蔵入れ承認を受けると承認後2年間、関税未納のまま保管が可能である。
同社は、一般貨物の取扱いに加え、将来的に需要が見込める貨物の取扱いを進めている。具体的には、引火性液体を含む危険品等の高付加価値貨物を新たな収益源と位置付けている。2018年9月に開設した姫路地区の危険品倉庫に次いで、2020年1月にも兵庫埠頭物流センターに危険品倉庫を2棟、さらに2022年11月に1棟(兵庫埠頭物流センターの危険品倉庫は合計3棟)を開設した。近年の企業のコンプライアンス重視の流れを受け、安全に危険品貨物を取り扱える倉庫への需要が高まっている。一方で、競合企業の新規参入も見られる。同社は、高付加価値であり収益性の高い危険品に注力するという方向性に変わりはないものの、競争の高まりを受け、今後は重量貨物・長尺貨物などの特殊貨物とその付帯作業の獲得にも併せて注力する方針である。2025年3月期においては、競争環境の激化などを受け受注が伸び悩んだものの、営業活動にも注力しており、中期的には危険品や特殊貨物の受注実績が積み上がっていくことが予想される。こうしたなかで、同社全体の収益性も改善していくと弊社は見ている。なお、倉庫事業においても自社倉庫の建設・機能強化等のために設備投資は継続して行われる。
港運事業と倉庫事業は両輪関係にある。同社は両事業を一体で展開し、顧客にきめ細かなサービスを提供することで、さらなる優位性の発揮を目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林拓馬)
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