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明日の株式相場に向けて=「ミスター」不在の日本とアニマルスピリット

配信日時:2025/06/03 18:03 配信元:MINKABU
 3日の東京株式市場で日経平均株価は小幅に3日続落した。米半導体株の上昇や円高一服を受けた買い戻しが一巡した後は、断続的な売り物に押され、大引けで下げ転換。安値引けとなった。金融市場では「TACO」(トランプ大統領は常に怖気づいて物事を止める、の英文の頭文字を取ったもの)という造語が浸透しつつある。トランプ氏が関税政策などで強硬姿勢をみせた後、マーケットが被るダメージを恐れ、それまでの言動を修正するといったサイクルを見越し、ポジションを構築する姿勢が広がっている。  その意味で、米ホワイトハウスのレビット報道官が週内の米中トップ会談の可能性に言及し、米株式相場がいったん好反応を示した局面は、ショートを振る絶好の好機と捉えられる。トランプ劇場の予定調和的な筋書きを前提にしたTACOトレードが幅を利かす限り、レンジ相場を脱却することは難しい。  日本に関して言えば、5回目となる閣僚級の日米関税交渉に向け、赤沢亮正経済財政・再生相が5日から再び訪米する。また石破茂首相が今月中旬に訪米し、トランプ大統領との会談に臨む方向で検討が進んでいるという。日米交渉を巡る不透明感は株買いを手控える要因となっており、大手証券会社のレーティングアクションが追撃材料となったIHI<7013.T>など防衛関連の一角が頑強な動きを見せたとはいえ、売買代金トップの三菱重工業<7011.T>は伸び悩み、陰線を形成している。  上値の重い相場展開自体は致し方ない面があり、取り立てて騒ぐような話題でもない。こうしたなかで、プロ野球・巨人軍の長嶋茂雄・終身名誉監督が逝去したとの一報が入った。昭和の高度経済成長期において、巨人ファンはもちろん、多くの日本人の精神的支柱となった人物だ。40~50代のミドル世代においても、巨人軍の監督として勝利に対する執念を示したその生き様に、感銘を受けた人は多いはずだ。  ミスターが巨人軍の監督時代に残した言葉に「メークドラマ」がある。ビジネスの文脈に即して言えば、不確実性の強い世界において主体的に進化を遂げて結果を残し、その過程において、ステークホルダーを魅了するというプロセスと言えるかもしれない。アクティビストによる外圧を受けて資本効率の向上に動く企業が相次いでいるが、自社の価値向上にこだわり抜き、結果を残すには、ミスターが示したアニマルスピリットが不可欠となる。  ミスターが逝去した6月3日の読売333指数は前日比5円04銭安の3万5366円47銭。公表初日の3月24日(3万5507円74銭)から0.4%安だ。値がさハイテク株のウエートの大きい同期間の日経平均のパフォーマンスとほぼ同水準となっているが、日本企業のアニマルスピリットが回復し、各株価指数が一段と水準を切り上げる未来を期待したいところである。週内には5日に任天堂<7974.T>が新型ゲーム機「ニンテンドースイッチ2」を発売する予定であり、目先のところでは同社とともに関連銘柄でカスタムLSIを供給するメガチップス<6875.T>や、コネクターなどを手掛けるホシデン<6804.T>などの株価動向が注目される局面ではある。「マリオ」は日本が誇るべき存在だが、次の世代の精神的支柱になるのはバーチャルの世界の存在ではなく、生身の人間であり続けてほしい。  あすのスケジュールでは、国内では主だった経済指標の発表は予定されていない。海外では米5月ADP雇用統計や、米5月ISM非製造業景気指数が発表される。また米地区連銀経済報告(ベージュブック)の公表も控えている。 出所:MINKABU PRESS

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