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明日の株式相場に向けて=トランプ劇場の舞台裏で進む金利上昇

配信日時:2025/05/13 17:30 配信元:MINKABU
 きょう(13日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比539円高の3万8183円と大幅に4日続伸。トランプ劇場で繰り広げられた前日の米国株市場の急騰劇、これに為替の円安進行がリスクオンのBGMとして加わり、日経平均は大きなフシと見られていた3万8000円大台ラインを突破した。一部の証券系マーケットアナリストのところには一般メディアからも取材が入り、今の株高の理由を不思議そうに聞いてくるという。答える側も言葉に詰まってしまうはずである。株式市場と至近距離で対峙する市場関係者ほど、ここ最近の急反騰相場に懐疑的であった。世界的に株式市場を取り巻く環境は濃霧に包まれており、機関投資家などの大口が、値ごろ感だけでは実需の買いを入れることができないという鉄壁に近いコンセンサスがあったからだ。  振り返れば、今回の4月初旬の相場崩落は立ち直るまでに全治数カ月クラスの下げという認識が蔓延していた。日経平均がどこかでいったんリバウンドに転じても、その実態はショート筋の手仕舞いによるもので、業界用語で“ケツ入れ”といわれる買い戻しによって利益を確定させる動きを反映したに過ぎないという見方である。自律反発というよりも更に否定的なニュアンスで、俗に「デッドキャットバウンス」という言葉も飛び交った。今回の暴落局面からの戻り初動ではしきりに耳にした言葉である。ところが、戻り足にブレーキは一向にかかる気配がなく、遂にボックス上限ラインとみられた3万8000円台までほぼノンストップで浮上した。  この風景には既視感がある。昨年の8月上旬に遭遇した歴史的な暴落で、この時はわずか3営業日で7600円あまり下落した。「植田ショック」と呼ばれ、日銀の利上げが波乱相場の引き金となったという見解が支配的だった。しかし、後で振り返ればそうとも言い切れず、実際はそれ以外に複合的な要素が絡み合ったもので、明確な悪材料は完全には把握されていない。したがって、その後に訪れた急激なV字リバウンド相場も、想定されたパターンの一つとして、驚きはあったもののそれほどの違和感は生じなかった。だが今回はトランプ関税や輸出入規制など、度を超えたアメリカ・ファースト政策が紛れもなく強烈な悪材料として立ちはだかっていた。一朝一夕には片付かない問題で、株式市場が戻りに転じたとしても、急落時のスピードとは異なる緩やかなペースにとどまるとの見方で一致していた。ところがそうではなかった。昨年8月の急騰急落の再現で、日米ともに株価は驚異的なリバウンドを演じた。トランプ米大統領の二枚舌に振り回されたとはいえ、ここまで朝令暮改が繰り返されることにマーケットは慣れていなかった。急速に積み上がったショートポジションの巻き戻し。極端な値動きの背景はこれに尽きる。  「トランプ政策とは関係なく、マーケットを取り巻く過剰流動性が相場を押し上げる背景になっている」という声も一部で聞かれた。4月に開催された直近の理事会までECBは6会合連続の利下げを決定し、財政政策発動が見込まれるドイツ株市場などは米国からの資金逃避先の一番手に挙げられていた。しかし、欧州各国の10年債利回りの動向などを見る限り、最近の金利動向はむしろ上昇基調にある。日本の新発10年債利回りも1.440%まで上昇、米長期金利もあっという間に4.47%まで上昇している。FRBは量的引き締めも続けている状況にあり、金融環境がジャブジャブだから株が高いという理屈には無理がある。  とりわけ超長期金利の上昇が顕著となってきた。米30年債利回りは4.9%台に乗せ、年初以来となる高水準に達した。日本も40年債利回りが2015年以降の過去最高で、30年債利回りも4月から急上昇しており、既にリーマン・ショック前の水準を上回った。この金利上昇局面で同時進行する株高に危うさがないとはいえない。今はまだ買い戻し切れていないショートが残存し相場に浮揚力を与えているが、早晩トレンドを反転させる時限爆弾となる可能性も念頭に置いておく必要はありそうだ。  個別株では好調な決算発表を終えた量子コンピューター関連に目を向けてみたい。前日に取り上げたテラスカイ<3915.T>やインテリジェント ウェイブ<4847.T>はその一角に含まれるが、これ以外で、日本航空電子工業<6807.T>は量子コンピューターなどの最先端装置向け非磁性対応SMPM同軸コネクター及び超低温非磁性同軸ケーブルのアッセンブリー品試作開発に成功したという経緯があり、今後改めて頭角を現す可能性がある。光学系分野の製品技術を量子分野にも横軸展開しているオキサイド<6521.T>も週足でみると株価が底離れの初動にあり、中期スタンスでマークしてみたい。  あすのスケジュールでは、4月の企業物価指数が朝方取引開始前に開示される。海外では、FRB高官の発言機会が相次ぐ。ウォラーFRB理事がモロッコ中銀主催のイベントで、ジェファーソンFRB副議長はNY連銀主催のイベントでそれぞれ講演を行う見通し。(銀) 出所:MINKABU PRESS

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