みんかぶニュース コラム
明日の株式相場に向けて=上か下か、金利動向と地政学の狭間で惑う
配信日時:2025/03/05 17:30
配信元:MINKABU
きょう(5日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比87円高の3万7418円と反発。一歩進むごとに周りの風景が目まぐるしく変わる正体不明の相場が続いている。今週は欧州でECB理事会が行われ、米国ではISM製造業・非製造業景況感指数や週末の米雇用統計発表と注目イベントが相次ぐが、きょうは取引時間中の要人発言にマーケットが耳を澄ませる日であった。国内では内田日銀副総裁の金融経済懇談会での発言にスポットが当たり、海外ではトランプ米大統領の施政方針演説に世界中の耳目が集まった。
内田副総裁の発言については、言質を取られないように注意を払っているのがありありと窺われたが、市場では「タカでもハトでもない中庸な印象ながら、これまで通り日銀は粛々と利上げを進めていく方針を否定しなかった点で、少なくともハト派寄りではなかった」(中堅証券ストラテジスト)という声が聞かれた。なお、新発10年債利回りは一時1.450%と上昇傾向を強めた。「徐々に外堀が埋まってきた。金利が次第高の局面で機関投資家の立場では株式に強気姿勢は維持できない」(中堅証券ストラテジスト)とする。
一方、為替市場ではドル・円相場がむしろ円安方向に振れたのだが、直近の円高にいったん歯止めがかかったという程度でインパクトは薄い。これは今週3日のトランプ氏の円安牽制発言の時も、騒がれた割には大して円高に振れなかったのと同様で、円高に振れた分が元に戻った程度の微動であった。
きょうの市場は内田発言の後は、トランプ氏の演説におのずと材料を求める雰囲気となったが、こちらも想定通りの内容で相場に与える影響は限定的だったといえる。ただし、演説中にインパクトの強い“毒舌”が出ないとも限らなかったため、ここをほぼ無風で通過できたことは安心材料となったようで、後場に入り東京市場ではショートポジションの解消によって上げ幅を広げる場面があった。そして、これまでであれば、AIアルゴリズムが作動して大引けにかけて全体指数はどんどん上げ幅を広げていく、という流れが想定されるところだった。だが、きょうは違った。その後も日経平均は方向性を見出せず、3万7000円台前半から半ばで彷徨を続けた。ここから下値を売り込むような展開は想定しにくいが、かといって売り方が手仕舞いを急ぐような気配もない。個人投資家の信用買い残が高水準に積み上がっていることで、需給面の重さを見透かされているような感もある。
ネット証券大手の店内では個人による先物買い越し比率が非常に高く、「今の状態は昨年7月26日と同じ水準」(マーケットアナリスト)という。言うに及ばず昨年7月26日というのは7月の第4週末であり、翌週木曜日の8月1日に日経平均は975円安、そして8月第1週末の2日に2216円安、更に週を跨いだ8月5日には4451円安という雪崩を連想させるような歴史的暴落局面に遭遇した。今の状況もこれと符合する部分がある。逆張りに全体重をかけた個人の買いが空売りファンドの標的になる可能性はゼロではなく、悲観に偏る必要はないものの、ここは用心するに越したことはない。
この時期にひとつ目が離せないのは、ウクライナ情勢である。関税政策の行方や金利動向は重要だが、仮に株価が上放れるとすればそれはファンダメンタルズではなく地政学的な要因だ。トランプ氏は演説の中でウクライナのゼレンスキー大統領からの手紙に「感謝する」と述べた。決して突っぱねたわけではない。ウクライナとすれば、いずれにせよ「停戦」というカードを選ぶよりない立場になりつつある。ウクライナに不利な形であっても、戦争が終結した場合、マーケットは“一度は”急速にリスクオンに振れる可能性がある。投資家とすれば、この「停戦」のカードとの距離感を常に意識しておく必要がありそうだ。また、物色対象として世界的な防衛関連株人気が一過性で終わるのか、それとも今後テーマ買いのポールポジションを確保するのかが併せて注目される。
あすのスケジュールでは、対外対内証券売買契約、6カ月物国庫短期証券の入札及び30年物国債の入札、2月の輸入車販売、2月の車名別新車販売、2月の軽自動車販売、2月のオフィス空室率など。海外では1月の豪貿易収支、トルコ金融政策決定会合、ECB理事会の結果発表とラガルドECB総裁の記者会見、1月のユーロ圏小売売上高、1月の米貿易収支、1月の米卸売在庫・売上高、週間の米新規失業保険申請件数など。なお、この日はウォラーFRB理事が経済イベントの討論会で発言機会がある。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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