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エヌ・シー・エヌ Research Memo(7):事業領域を拡大し「木構造のトータルソリューションカンパニー」へ(1)
配信日時:2025/01/23 12:07
配信元:FISCO
*12:07JST エヌ・シー・エヌ Research Memo(7):事業領域を拡大し「木構造のトータルソリューションカンパニー」へ(1)
■エヌ・シー・エヌ<7057>の強み
同社は、日本の木造建築の耐震性や、木造中古住宅の再販価値といった社会的課題を、全国の工務店・ハウスメーカーと解決していくため、木造建築業者のビジネスプラットフォームを展開している。構造設計を起点とした資材調達・施工までの一貫したサプライチェーンマネジメントによって正確な資材調達を可能にしており、この同社独自のサプライチェーンは最大の強みと言える。
同社は2020年3月期までは約500社の既存登録店の活性化に注力していたが、同社のシステム及び体制が整ってきたことから、耐震性の高い木造住宅のさらなる普及に向けて新規登録店の獲得強化を図っており、2025年3月期中間期末には615社に拡大した。引き続き施工店ネットワークを拡大するとともに、木構造デザイン、MAKE HOUSEによる構造計算、省エネルギー計算、BIMといったテクノロジー分野、SE住宅ローンサービスによるアセット分野、MUJI HOUSE、YADOKARI、一宮リアライズ、N&S開発によるライフスタイル分野を融合したビジネスプラットフォームをより強固なものにする方針だ。さらに大断面集成材加工や木材の特殊加工、大規模木造建築の施工力に強みを持つ翠豊の子会社化によって、大型化・特殊化する大規模木造建築事業への体制強化と、事業領域の拡大が図られた。2021年の法改正により、木材利用を促進する対象が公共建築物だけでなく民間建築物にも拡大され、構造計算が必要となる大規模木造建築の建設需要が高まるなか、「木構造のトータルソリューションカンパニー」としての成長が見込まれると弊社では考えている。
1. SE構法
既述のとおりSE構法とは、鉄骨造やRC造で主流だったラーメン構法を木造住宅に取り入れた同社独自の建築システムである。圧倒的な強度を持つSE構法は、現在に至るまで同社の強みであり、これまでの施工・建築経験の蓄積により、他社には追随できない知的財産となっている。同構法は、すべての建物に構造計算を行うほか、構造品質の高い集成材を採用し、接合部に独自開発したSE金物を使用することにより、高い耐震性と大空間を同時に実現する。構造計算から部材供給・施工・検査・性能保証まで一括管理できるシステムである。
2. 木構造デザイン
同社は2020年2月、木造プレカットCAD開発トップシェア(60%以上)のネットイーグルとSE構法以外の構法も扱う大規模木造建築(非住宅)分野の構造設計事業について業務提携し、合弁会社である木構造デザインを設立した。「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が2010年10月に施行されたが、これは、木造率が低く今後の需要が期待できる公共建築物への木材利用を促進すること、地方公共団体や民間事業者にも主体的な取り組みを促し、住宅など一般建築物への波及効果を含め、木材全体の需要を拡大することを狙いとしている。一方で「建築基準法」では、構造計算によって安全性を確かめる必要がある建築物として、以下のように定めている。
「建築基準法第20条(4号特例)」確認申請に構造計算が必要な建物
木造の規模(階数または延べ床面積)
(1) 住宅などの木造建築物で階数が3以上のもの
(2) 住宅などの木造建築物で延べ床が500m2超のもの
(3) 住宅などの木造建築物で建物の高さが13m超のもの
(4) 軒の高さが9m超のもの
※ 上記に該当しない木造建築物は4号建築物とされ、建築確認申請内容が緩和される
建築基準法第20条(4号特例)は建築確認申請に係る審査の一部を省略できる特例であるが、2025年4月に施行される改正建築基準法では、この4号建築物の区分が廃止され、「新2号建築物」と「新3号建築物」に振り分けられる。「新2号建築物」は審査省略制度の対象外となり、「新3号建築物」はこれまでどおり審査を省略できる。
「新2号建築物」:木造2階建、または木造平屋建てかつ延床面積200m2超(構造計算が必要)
「新3号建築物」:木造平屋建かつ延床面積200m2以下(従来どおり構造計算は不要)
2025年4月以降は上記の「新3号建築物」以外の木造建築物は、原則建築確認申請において構造計算が必須となり、ハウスメーカーや工務店は、法改正に伴う制度変更に向けた対応に迫られている。
一方、住宅以外の木造建築物に対応できる構造設計者が少ないことや、構造設計された図面どおりに正しく製造工場に情報を受け渡すことができないのが現状である。大手建設会社やハウスメーカーなどでは構造設計者を確保する動きを見せているが、コスト増となるため、アウトソーシングが主流になると弊社では考えている。構造設計の際にコストと施工のコンサルティングが同時にできることは、クライアントにとっては大きなメリットとなる。木構造デザインは、SE構法以外の非住宅木造建築物の構造設計と生産設計を扱っており、成長期待は大きい。構造設計と連動したプレカットデータとして最適な生産設計を提供することで、多種多様な物件に対して、オンリーワンのワンストップサービスを提案できるため、木構造デザインは同社の強みとなるだろう。
また2020年10月に開始した、ゼネコンや設計事務所と、プレカット工場をつなぐ日本初の大規模木造マッチングプラットフォーム事業は、開始直後からコロナ禍の影響を受けたためスタートダッシュは遅れたものの、経済活動が正常化に向かうなか、足元で引き合いも増えていることから、成長が見込まれると弊社では考えている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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同社は、日本の木造建築の耐震性や、木造中古住宅の再販価値といった社会的課題を、全国の工務店・ハウスメーカーと解決していくため、木造建築業者のビジネスプラットフォームを展開している。構造設計を起点とした資材調達・施工までの一貫したサプライチェーンマネジメントによって正確な資材調達を可能にしており、この同社独自のサプライチェーンは最大の強みと言える。
同社は2020年3月期までは約500社の既存登録店の活性化に注力していたが、同社のシステム及び体制が整ってきたことから、耐震性の高い木造住宅のさらなる普及に向けて新規登録店の獲得強化を図っており、2025年3月期中間期末には615社に拡大した。引き続き施工店ネットワークを拡大するとともに、木構造デザイン、MAKE HOUSEによる構造計算、省エネルギー計算、BIMといったテクノロジー分野、SE住宅ローンサービスによるアセット分野、MUJI HOUSE、YADOKARI、一宮リアライズ、N&S開発によるライフスタイル分野を融合したビジネスプラットフォームをより強固なものにする方針だ。さらに大断面集成材加工や木材の特殊加工、大規模木造建築の施工力に強みを持つ翠豊の子会社化によって、大型化・特殊化する大規模木造建築事業への体制強化と、事業領域の拡大が図られた。2021年の法改正により、木材利用を促進する対象が公共建築物だけでなく民間建築物にも拡大され、構造計算が必要となる大規模木造建築の建設需要が高まるなか、「木構造のトータルソリューションカンパニー」としての成長が見込まれると弊社では考えている。
1. SE構法
既述のとおりSE構法とは、鉄骨造やRC造で主流だったラーメン構法を木造住宅に取り入れた同社独自の建築システムである。圧倒的な強度を持つSE構法は、現在に至るまで同社の強みであり、これまでの施工・建築経験の蓄積により、他社には追随できない知的財産となっている。同構法は、すべての建物に構造計算を行うほか、構造品質の高い集成材を採用し、接合部に独自開発したSE金物を使用することにより、高い耐震性と大空間を同時に実現する。構造計算から部材供給・施工・検査・性能保証まで一括管理できるシステムである。
2. 木構造デザイン
同社は2020年2月、木造プレカットCAD開発トップシェア(60%以上)のネットイーグルとSE構法以外の構法も扱う大規模木造建築(非住宅)分野の構造設計事業について業務提携し、合弁会社である木構造デザインを設立した。「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が2010年10月に施行されたが、これは、木造率が低く今後の需要が期待できる公共建築物への木材利用を促進すること、地方公共団体や民間事業者にも主体的な取り組みを促し、住宅など一般建築物への波及効果を含め、木材全体の需要を拡大することを狙いとしている。一方で「建築基準法」では、構造計算によって安全性を確かめる必要がある建築物として、以下のように定めている。
「建築基準法第20条(4号特例)」確認申請に構造計算が必要な建物
木造の規模(階数または延べ床面積)
(1) 住宅などの木造建築物で階数が3以上のもの
(2) 住宅などの木造建築物で延べ床が500m2超のもの
(3) 住宅などの木造建築物で建物の高さが13m超のもの
(4) 軒の高さが9m超のもの
※ 上記に該当しない木造建築物は4号建築物とされ、建築確認申請内容が緩和される
建築基準法第20条(4号特例)は建築確認申請に係る審査の一部を省略できる特例であるが、2025年4月に施行される改正建築基準法では、この4号建築物の区分が廃止され、「新2号建築物」と「新3号建築物」に振り分けられる。「新2号建築物」は審査省略制度の対象外となり、「新3号建築物」はこれまでどおり審査を省略できる。
「新2号建築物」:木造2階建、または木造平屋建てかつ延床面積200m2超(構造計算が必要)
「新3号建築物」:木造平屋建かつ延床面積200m2以下(従来どおり構造計算は不要)
2025年4月以降は上記の「新3号建築物」以外の木造建築物は、原則建築確認申請において構造計算が必須となり、ハウスメーカーや工務店は、法改正に伴う制度変更に向けた対応に迫られている。
一方、住宅以外の木造建築物に対応できる構造設計者が少ないことや、構造設計された図面どおりに正しく製造工場に情報を受け渡すことができないのが現状である。大手建設会社やハウスメーカーなどでは構造設計者を確保する動きを見せているが、コスト増となるため、アウトソーシングが主流になると弊社では考えている。構造設計の際にコストと施工のコンサルティングが同時にできることは、クライアントにとっては大きなメリットとなる。木構造デザインは、SE構法以外の非住宅木造建築物の構造設計と生産設計を扱っており、成長期待は大きい。構造設計と連動したプレカットデータとして最適な生産設計を提供することで、多種多様な物件に対して、オンリーワンのワンストップサービスを提案できるため、木構造デザインは同社の強みとなるだろう。
また2020年10月に開始した、ゼネコンや設計事務所と、プレカット工場をつなぐ日本初の大規模木造マッチングプラットフォーム事業は、開始直後からコロナ禍の影響を受けたためスタートダッシュは遅れたものの、経済活動が正常化に向かうなか、足元で引き合いも増えていることから、成長が見込まれると弊社では考えている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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