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芙蓉リース Research Memo(3):2024年3月期の経常利益は7期連続で過去最高益を更新
配信日時:2025/01/15 14:03
配信元:FISCO
*14:03JST 芙蓉リース Research Memo(3):2024年3月期の経常利益は7期連続で過去最高益を更新
■芙蓉総合リース<8424>の決算動向
1. 業績を見るポイント
同社の売上高は、全体の80%超を占めるリース料収入のほか割賦販売による収入やファイナンスによる受取利息、ノンアセット収益(各種手数料収入など)によって構成されている。売上高(ノンアセット収益を除く)は基本的には「営業資産残高」に伴って増減することから、売上高の拡大のためには「契約実行高」を増やし、「営業資産」を積み上げることが必要となる。ただ主力のリース料収入は、売買取引に準じた会計処理となっており、リース物件の価格が含まれている。金融としての本来の業績の伸びを判断するためには、売上高からリース物件の取得原価を除いた「差引利益」の動きを見るのが妥当である。
一方、本業における収益性を判断するためには、「差引利益」から「資金原価(資金調達コスト)」のほか、「人件費及び物件費」や「貸倒関連費用(戻入益を含む)」※などの費用を引いた「経常利益」の動きを見るのが最も合理的である。なお、「経常利益」は「営業資産残高」と「ROA(営業資産経常利益率)」の掛け算となるため両方の動きによって影響を受ける。また最近は、ノンアセット収益の拡大にも取り組んでおり「その他」セグメントの動きにも注目する必要がある。
※ 貸倒引当金繰入額(販管費)と貸倒引当金戻入益(営業外収益)をネットしたもの。
2. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、「経常利益」は「営業資産」の積み上げとROA向上の両方により増益基調を続けている。特にROAの向上については、比較的利回りの高い「不動産リース」及び「航空機リース」の拡大に加え、最近ではBPOサービスを中心としたビジネス(ノンアセット収益)の伸びが寄与している。
費用面を見ると、「資金原価」はほぼ横ばいで推移してきた。調達総額が増加しているものの、市中金利の影響により調達利回りが低下していることが要因である。ただ、2024年3月期は海外の取り組み伸長による外貨調達の拡大等に伴い調達利回りが大きく上昇した。一方、「人物件費」を一定水準に抑えるとともに「貸倒関連費用」も低位で推移しており、同社の強みであるローコストオペレーションも発揮されている。それらの結果、2024年3月期の経常利益は7期連続で過去最高を更新した。
有利子負債は「営業資産」の積み上げに伴い増加してきたが、2024年3月期の自己資本比率は12%を超える水準を確保している。同社の水準は、流動性の高い「営業資産」を大量に保有するリース業界において他社と比べて見劣りするものではなく、財務基盤の安定性に懸念を生じさせるものではない。
また資本効率を示すROEについても、利益水準の底上げとともに上昇し、2021年3月期以降は10%を超える水準で推移している。
3. 2025年3月期中間期の業績概要
2025年3月期中間期の業績は、営業利益が前年同期比16.6%増の323億円、経常利益が同3.5%増の343億円、親会社株主に帰属する中間純利益が同0.8%減の228億円となり、経常利益は中間期としての過去最高益を8期連続で更新した。また、通期予想に対しても各段階利益で順調に進捗している。
事業本来の業績を示す「差引利益」は、「モビリティ物流」や「航空機」といった成長領域を中心に、前年同期比17.5%増の730億円と順調に拡大した。
経常利益についても、「差引利益」の伸びにより増益を確保した。事業分野別で見ると、「不動産」が売却関連益のはく落等により一旦減益となったものの、「モビリティ物流」「エネルギー環境」「BPO/ICT」「航空機」がそれぞれ伸びており、成長領域を中心にバランスの取れた利益成長が続いていると言える。
費用面に目を向けると、営業資産の積み上げに伴う調達残高の増加に加え、調達利回りの上昇により資金原価が増加したが、その点は想定内である。また、人的資本投資による人件費増や前期計上した持分法投資利益(不動産事業)のはく落がマイナス要因となったものの、「差引利益」の伸びで打ち返すことができた。OHR(経費率:人物件費/売上総利益)も良好な水準を維持したほか、保有する債権の貸倒リスクも低く抑えている。
「契約実行高」については前年同期比0.9%増の8,420億円となった。「航空機」や「モビリティ物流」が拡大した一方、「不動産」においてアセットコントロールを進めたことでリース全体の実行高は減少したものの、アクリーティブ(ファクタリング事業)の伸長等により契約実行高全体ではプラスを確保した。また、「営業資産残高」についても、「モビリティ物流」「エネルギー環境」「航空機」といった成長ドライバー領域を中心に着実に積み上がり、前期末比3.7%増の2兆9,829億円となった。
ROA※1については2.34%(前年同期は2.40%)と大口の売却関連益の特殊要因があった前年同期を下回ったものの、その影響を除いた実質ベース※2では改善傾向を維持しており、収益性の高いポートフォリオへの転換や事業領域の拡大により収益力の底上げが定着してきたとの見方に変わりはない。
※1 経常利益(年換算)÷営業資産残高(平均残高)。
※2 特殊要因を除いた前年同期のROAは2.28%。
財政状態に大きな変動はなく、総資産は前期末比1.9%増の3兆4,541億円となった一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同8.3%増の4,674億円に増えたことから、自己資本比率は13.5%(前期末は12.7%)に向上した。また、有利子負債(リース債務を除く)は営業資産の積み上げに伴い同1.2%増※1の2兆7,151億円となったが、長期調達比率※2は69.1%(前期末は68.4%)を確保し、長短のバランスも安定している。
※1 ハイブリット社債(サステナビリティ・リンク・ボンド)総額200億円を発行するなど、営業資産の積み上げに伴って増加した。
※2 有利子負債に占める、長期有利子負債(社債+長期借入金+債権流動化に伴う長期支払債務)の比率。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 業績を見るポイント
同社の売上高は、全体の80%超を占めるリース料収入のほか割賦販売による収入やファイナンスによる受取利息、ノンアセット収益(各種手数料収入など)によって構成されている。売上高(ノンアセット収益を除く)は基本的には「営業資産残高」に伴って増減することから、売上高の拡大のためには「契約実行高」を増やし、「営業資産」を積み上げることが必要となる。ただ主力のリース料収入は、売買取引に準じた会計処理となっており、リース物件の価格が含まれている。金融としての本来の業績の伸びを判断するためには、売上高からリース物件の取得原価を除いた「差引利益」の動きを見るのが妥当である。
一方、本業における収益性を判断するためには、「差引利益」から「資金原価(資金調達コスト)」のほか、「人件費及び物件費」や「貸倒関連費用(戻入益を含む)」※などの費用を引いた「経常利益」の動きを見るのが最も合理的である。なお、「経常利益」は「営業資産残高」と「ROA(営業資産経常利益率)」の掛け算となるため両方の動きによって影響を受ける。また最近は、ノンアセット収益の拡大にも取り組んでおり「その他」セグメントの動きにも注目する必要がある。
※ 貸倒引当金繰入額(販管費)と貸倒引当金戻入益(営業外収益)をネットしたもの。
2. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、「経常利益」は「営業資産」の積み上げとROA向上の両方により増益基調を続けている。特にROAの向上については、比較的利回りの高い「不動産リース」及び「航空機リース」の拡大に加え、最近ではBPOサービスを中心としたビジネス(ノンアセット収益)の伸びが寄与している。
費用面を見ると、「資金原価」はほぼ横ばいで推移してきた。調達総額が増加しているものの、市中金利の影響により調達利回りが低下していることが要因である。ただ、2024年3月期は海外の取り組み伸長による外貨調達の拡大等に伴い調達利回りが大きく上昇した。一方、「人物件費」を一定水準に抑えるとともに「貸倒関連費用」も低位で推移しており、同社の強みであるローコストオペレーションも発揮されている。それらの結果、2024年3月期の経常利益は7期連続で過去最高を更新した。
有利子負債は「営業資産」の積み上げに伴い増加してきたが、2024年3月期の自己資本比率は12%を超える水準を確保している。同社の水準は、流動性の高い「営業資産」を大量に保有するリース業界において他社と比べて見劣りするものではなく、財務基盤の安定性に懸念を生じさせるものではない。
また資本効率を示すROEについても、利益水準の底上げとともに上昇し、2021年3月期以降は10%を超える水準で推移している。
3. 2025年3月期中間期の業績概要
2025年3月期中間期の業績は、営業利益が前年同期比16.6%増の323億円、経常利益が同3.5%増の343億円、親会社株主に帰属する中間純利益が同0.8%減の228億円となり、経常利益は中間期としての過去最高益を8期連続で更新した。また、通期予想に対しても各段階利益で順調に進捗している。
事業本来の業績を示す「差引利益」は、「モビリティ物流」や「航空機」といった成長領域を中心に、前年同期比17.5%増の730億円と順調に拡大した。
経常利益についても、「差引利益」の伸びにより増益を確保した。事業分野別で見ると、「不動産」が売却関連益のはく落等により一旦減益となったものの、「モビリティ物流」「エネルギー環境」「BPO/ICT」「航空機」がそれぞれ伸びており、成長領域を中心にバランスの取れた利益成長が続いていると言える。
費用面に目を向けると、営業資産の積み上げに伴う調達残高の増加に加え、調達利回りの上昇により資金原価が増加したが、その点は想定内である。また、人的資本投資による人件費増や前期計上した持分法投資利益(不動産事業)のはく落がマイナス要因となったものの、「差引利益」の伸びで打ち返すことができた。OHR(経費率:人物件費/売上総利益)も良好な水準を維持したほか、保有する債権の貸倒リスクも低く抑えている。
「契約実行高」については前年同期比0.9%増の8,420億円となった。「航空機」や「モビリティ物流」が拡大した一方、「不動産」においてアセットコントロールを進めたことでリース全体の実行高は減少したものの、アクリーティブ(ファクタリング事業)の伸長等により契約実行高全体ではプラスを確保した。また、「営業資産残高」についても、「モビリティ物流」「エネルギー環境」「航空機」といった成長ドライバー領域を中心に着実に積み上がり、前期末比3.7%増の2兆9,829億円となった。
ROA※1については2.34%(前年同期は2.40%)と大口の売却関連益の特殊要因があった前年同期を下回ったものの、その影響を除いた実質ベース※2では改善傾向を維持しており、収益性の高いポートフォリオへの転換や事業領域の拡大により収益力の底上げが定着してきたとの見方に変わりはない。
※1 経常利益(年換算)÷営業資産残高(平均残高)。
※2 特殊要因を除いた前年同期のROAは2.28%。
財政状態に大きな変動はなく、総資産は前期末比1.9%増の3兆4,541億円となった一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同8.3%増の4,674億円に増えたことから、自己資本比率は13.5%(前期末は12.7%)に向上した。また、有利子負債(リース債務を除く)は営業資産の積み上げに伴い同1.2%増※1の2兆7,151億円となったが、長期調達比率※2は69.1%(前期末は68.4%)を確保し、長短のバランスも安定している。
※1 ハイブリット社債(サステナビリティ・リンク・ボンド)総額200億円を発行するなど、営業資産の積み上げに伴って増加した。
※2 有利子負債に占める、長期有利子負債(社債+長期借入金+債権流動化に伴う長期支払債務)の比率。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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