注目トピックス 日本株
SMK Research Memo(6):2025年3月期は各利益予想を上方修正。足元の事業環境は良好
配信日時:2025/01/15 17:06
配信元:FISCO
*17:06JST SMK Research Memo(6):2025年3月期は各利益予想を上方修正。足元の事業環境は良好
■SMK<6798>の今後の見通し
2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比3.2%増の48,000百万円、営業利益が200百万円(前期は1,243百万円の損失)、経常利益が同165.2%増の600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が200百万円(同489百万円の損失)と、売上高・各利益ともに回復を予想する。2024年10月に売上高は期初予想から下方修正したが、各利益は上方修正した。
電子部品市場を巡る事業環境は車載市場におけるCASEの進展、情報通信市場における5Gの普及、IoT技術の急速な進化など著しく変化している。これらの環境変化に的確に対応し、持続的な企業価値向上を実現するために長期ビジョンを明確化し、中期経営計画「SMK Next100」を策定した(詳細は後述)。
売上高は、円ドル相場が期初予想150円/米ドルから145円/米ドルと5円の円高としたこと、SCI事業関連で市況の回復が遅れていることなどから、期初予想50,000百万円から48,000百万円に下方修正した。CS事業部の売上高は前期比12.5%増の23,158百万円と全社の成長をけん引する。SCI事業部の売上高は同3.8%減の24,563百万円、イノベーションセンターは同29.4%減の278百万円と減収を予想する。中間期を終えた段階で通期売上高予想に対する進捗率は49.2%(前年同期は49.6%)と前年同期並みである。
営業利益は、期初予想が200百万円の損失だったが、上期の改善を反映して200百万円の利益予想となった。下期は売上高が期初予想より伸びないと想定し、上期程度の利益水準を見込む。セグメント別では、CS事業部が前期比62.1%増の1,775百万円と大幅な増益を予想する。増収効果に加え、プロダクトミックス改善、生産性向上が進むことが増益の主因となる。SCI事業部は営業損失1,086百万円(前期は2,145百万円の損失)、イノベーションセンターは同487百万円(同193百万円の損失)を予想する。中間期を終えた段階で通期営業利益予想に対する進捗率は54.0%と進捗は順調である。同社業績に対する顧客の在庫調整の長期化、エネルギー価格の高騰、円高の急激な進行などのマイナス要因は足元で発生しておらず、2025年3月期の全社業績目標は十分達成可能であると弊社では考えている。
■成長戦略・トピック
2027年3月期に売上高600億円、営業利益21億円を目指す
1. 長期ビジョン及び新中期経営計画「SMK Next100」の概要
同社は、2025年4月に創立100周年を迎える。次の100年のスタートを機に長期ビジョン及び新中期経営計画「SMK Next100」を策定し、推進中である。長期ビジョンは10期後に当たる2036年3月期を想定し、ありたき姿として「あらゆるニーズを実現する“ものづくり力”で、次の100年に貢献する。」を掲げた。同社の原点である、エレクトロニクスを活用したものづくりによって、顧客や社会の課題を解決する自信と責任を明確にしたものである。これまでのものづくりの蓄積を継承するとともに、今後は高周波技術やアルゴリズム技術を活用して付加価値の高い製品サービスを開発・提供する。業績目標としては、2036年3月期に売上高で1,500億円、営業利益率で10.0%、ROEで10.0%を目指す。
また10年ビジョンの達成のために、3ヶ年の新中期経営計画「SMK Next100」を策定し、持続的成長に向けた構造改革を加速させる期間と位置付けた。基本方針としては、企業価値の向上に向け、1) 売上・利益の持続的成長の実現、2) 事業を支える経営基盤の強化、3) 資本・財務戦略の高度化、4) ESG&サステナビリティ経営の推進である。最終年度の2027年3月期の業績目標は、売上高で600億円、営業利益率で3.5%、ROEで5.0%である。
2. 新中期経営計画「SMK Next100」における成長戦略
同社は、新中期経営計画「SMK Next100」の基本方針として、既存事業の拡大と新規事業の創出により売上高・各事業部門で利益の持続的成長の実現を目指す。
CS事業部の成長戦略は、車載・E-Bike/再生エネルギー/ウェアラブルなどの注力市場での売上拡大と収益性の向上(製造現場の自動化・スマート化)に取り組む。2027年3月期に売上高で278億円(2024年3月期の1.35倍)、営業利益で15億円(同1.36倍)を目指す。
SCI事業部の成長戦略としては、高付加価値製品の創出(センシング+既存技術)、製造現場の自動化・スマート化、生産体制の最適化による収益性の向上と成長市場(家電・住設、車載・E-Bike)に注力することによる成長軌道への回帰に取り組む。2027年3月期に売上高で310億円(2024年3月期の1.22倍)、営業利益で7億円(2024年3月期は21.4億円の損失)を目指す。
イノベーションセンターの成長戦略としては、ヘルスケア分野において自社技術・オープンイノベーションの活用し、通信モジュール/センサー/アルゴリズムを組み合わせた新たなソリューションビジネスの創出に取り組む。2027年3月期に売上高で12億円(2024年3月期の3.00倍)、営業損失で1億円(2024年3月期は1.8億円の損失)を目指す。
CS事業部は安定成長、SCI事業部とイノベーションセンターは収益力が大幅に改善する計画となっている。市場分野別では売上高の伸び率が高いのが情報通信と産機・その他であり、増収幅が大きいのが車載と家電である。最終年度の売上高営業利益率目標は3.5%、ROE目標は5.0%である。
3. 最新トピック
同社では、各事業部門が技術開発を行っており、その成果が将来の事業の発展のカギを握っている。最新のトピックとしては、SCI事業部が開発した「自立給電型コイン電池モジュール」が世界最大規模の最新テクノロジー見本市「CES2025」において「CES Innovation Awards 2025(Sustainability & Energy/Power部門)」を受賞した。自立給電型コイン電池モジュールは、電池・太陽電池セル・通信回路・各種センサーを一体化した製品で、太陽光発電を利用したエナジーハーベスティングとBluetooth Low Energy5.3による低消費電力通信の組み合わせにより、リモコンやセンサー等の電池交換を不要にする。コイン電池CR2032と置き換え可能なコンパクト設計を特長としており、既存の製品デザインを変更することなく「電池交換不要」「通信機能の追加」といったニーズに素早く対応する。
主にイノベーションセンターが注力するヘルスケア分野においても、技術開発の成果が顕在化しつつある。特に認知症や鬱、シニア向けの分野では、上期の研究開発により声による分析技術の検知精度が目標の80%以上に達した。2026年3月期にはサービス開始の方向で、生命保険会社や大手SIerとの商談が進む。電波式見守りセンサーにおいても、浴室での転倒や湯ぶねでの水没検知を強みとして複数の高齢者施設と商談が進んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比3.2%増の48,000百万円、営業利益が200百万円(前期は1,243百万円の損失)、経常利益が同165.2%増の600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が200百万円(同489百万円の損失)と、売上高・各利益ともに回復を予想する。2024年10月に売上高は期初予想から下方修正したが、各利益は上方修正した。
電子部品市場を巡る事業環境は車載市場におけるCASEの進展、情報通信市場における5Gの普及、IoT技術の急速な進化など著しく変化している。これらの環境変化に的確に対応し、持続的な企業価値向上を実現するために長期ビジョンを明確化し、中期経営計画「SMK Next100」を策定した(詳細は後述)。
売上高は、円ドル相場が期初予想150円/米ドルから145円/米ドルと5円の円高としたこと、SCI事業関連で市況の回復が遅れていることなどから、期初予想50,000百万円から48,000百万円に下方修正した。CS事業部の売上高は前期比12.5%増の23,158百万円と全社の成長をけん引する。SCI事業部の売上高は同3.8%減の24,563百万円、イノベーションセンターは同29.4%減の278百万円と減収を予想する。中間期を終えた段階で通期売上高予想に対する進捗率は49.2%(前年同期は49.6%)と前年同期並みである。
営業利益は、期初予想が200百万円の損失だったが、上期の改善を反映して200百万円の利益予想となった。下期は売上高が期初予想より伸びないと想定し、上期程度の利益水準を見込む。セグメント別では、CS事業部が前期比62.1%増の1,775百万円と大幅な増益を予想する。増収効果に加え、プロダクトミックス改善、生産性向上が進むことが増益の主因となる。SCI事業部は営業損失1,086百万円(前期は2,145百万円の損失)、イノベーションセンターは同487百万円(同193百万円の損失)を予想する。中間期を終えた段階で通期営業利益予想に対する進捗率は54.0%と進捗は順調である。同社業績に対する顧客の在庫調整の長期化、エネルギー価格の高騰、円高の急激な進行などのマイナス要因は足元で発生しておらず、2025年3月期の全社業績目標は十分達成可能であると弊社では考えている。
■成長戦略・トピック
2027年3月期に売上高600億円、営業利益21億円を目指す
1. 長期ビジョン及び新中期経営計画「SMK Next100」の概要
同社は、2025年4月に創立100周年を迎える。次の100年のスタートを機に長期ビジョン及び新中期経営計画「SMK Next100」を策定し、推進中である。長期ビジョンは10期後に当たる2036年3月期を想定し、ありたき姿として「あらゆるニーズを実現する“ものづくり力”で、次の100年に貢献する。」を掲げた。同社の原点である、エレクトロニクスを活用したものづくりによって、顧客や社会の課題を解決する自信と責任を明確にしたものである。これまでのものづくりの蓄積を継承するとともに、今後は高周波技術やアルゴリズム技術を活用して付加価値の高い製品サービスを開発・提供する。業績目標としては、2036年3月期に売上高で1,500億円、営業利益率で10.0%、ROEで10.0%を目指す。
また10年ビジョンの達成のために、3ヶ年の新中期経営計画「SMK Next100」を策定し、持続的成長に向けた構造改革を加速させる期間と位置付けた。基本方針としては、企業価値の向上に向け、1) 売上・利益の持続的成長の実現、2) 事業を支える経営基盤の強化、3) 資本・財務戦略の高度化、4) ESG&サステナビリティ経営の推進である。最終年度の2027年3月期の業績目標は、売上高で600億円、営業利益率で3.5%、ROEで5.0%である。
2. 新中期経営計画「SMK Next100」における成長戦略
同社は、新中期経営計画「SMK Next100」の基本方針として、既存事業の拡大と新規事業の創出により売上高・各事業部門で利益の持続的成長の実現を目指す。
CS事業部の成長戦略は、車載・E-Bike/再生エネルギー/ウェアラブルなどの注力市場での売上拡大と収益性の向上(製造現場の自動化・スマート化)に取り組む。2027年3月期に売上高で278億円(2024年3月期の1.35倍)、営業利益で15億円(同1.36倍)を目指す。
SCI事業部の成長戦略としては、高付加価値製品の創出(センシング+既存技術)、製造現場の自動化・スマート化、生産体制の最適化による収益性の向上と成長市場(家電・住設、車載・E-Bike)に注力することによる成長軌道への回帰に取り組む。2027年3月期に売上高で310億円(2024年3月期の1.22倍)、営業利益で7億円(2024年3月期は21.4億円の損失)を目指す。
イノベーションセンターの成長戦略としては、ヘルスケア分野において自社技術・オープンイノベーションの活用し、通信モジュール/センサー/アルゴリズムを組み合わせた新たなソリューションビジネスの創出に取り組む。2027年3月期に売上高で12億円(2024年3月期の3.00倍)、営業損失で1億円(2024年3月期は1.8億円の損失)を目指す。
CS事業部は安定成長、SCI事業部とイノベーションセンターは収益力が大幅に改善する計画となっている。市場分野別では売上高の伸び率が高いのが情報通信と産機・その他であり、増収幅が大きいのが車載と家電である。最終年度の売上高営業利益率目標は3.5%、ROE目標は5.0%である。
3. 最新トピック
同社では、各事業部門が技術開発を行っており、その成果が将来の事業の発展のカギを握っている。最新のトピックとしては、SCI事業部が開発した「自立給電型コイン電池モジュール」が世界最大規模の最新テクノロジー見本市「CES2025」において「CES Innovation Awards 2025(Sustainability & Energy/Power部門)」を受賞した。自立給電型コイン電池モジュールは、電池・太陽電池セル・通信回路・各種センサーを一体化した製品で、太陽光発電を利用したエナジーハーベスティングとBluetooth Low Energy5.3による低消費電力通信の組み合わせにより、リモコンやセンサー等の電池交換を不要にする。コイン電池CR2032と置き換え可能なコンパクト設計を特長としており、既存の製品デザインを変更することなく「電池交換不要」「通信機能の追加」といったニーズに素早く対応する。
主にイノベーションセンターが注力するヘルスケア分野においても、技術開発の成果が顕在化しつつある。特に認知症や鬱、シニア向けの分野では、上期の研究開発により声による分析技術の検知精度が目標の80%以上に達した。2026年3月期にはサービス開始の方向で、生命保険会社や大手SIerとの商談が進む。電波式見守りセンサーにおいても、浴室での転倒や湯ぶねでの水没検知を強みとして複数の高齢者施設と商談が進んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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