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ティアンドエス Research Memo(2):独立系ソフトウェア受託開発企業(1)
配信日時:2025/01/14 12:02
配信元:FISCO
*12:02JST ティアンドエス Research Memo(2):独立系ソフトウェア受託開発企業(1)
■ティアンドエスグループ<4055>の会社概要
1. 沿革
同社は2016年11月、1996年創業の(株)テックジャパンと1985年創業の(株)シナノシステムエンジニアリングが合併してできた比較的若い企業である。代表取締役執行役員社長の武川義浩(たけかわよしひろ)氏の同業界における30年以上の経験と、そのなかで培われた東芝グループをはじめとする顧客との強固な信頼関係によって、創業以来右肩上がりで成長してきた(武川氏は、東芝グループが手掛けた原子力発電所のシステム開発に従事していた経歴を持つ)。将来の成長加速に向けて研究開発活動にも注力しており、2019年からは東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センターと、スピントロニクス技術を用いた次世代メモリの制御、応用ソフトウェアに関する共同研究を実施してきた。2020年8月には設立からわずか4年弱で東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たしている(2022年4月に東京証券取引所の市場区分見直しによりグロース市場へ移行)。また、2024年6月には機動的できめの細かい経営やリソース配分などを実現するために持株会社体制へと移行している。移行に伴い社名を「ティアンドエスグループ株式会社(T&S Group Inc.)」へと変更し、中核企業である新「ティアンドエス(株)」と新たに設立した「TSシステムソリューションズ(株)」を擁する企業グループとして新たなスタートを切った。
2. 事業内容
同社は「あらゆる産業において、ソフトウェア技術が生み出す新たな付加価値を通じて、お客様に安心と満足そして豊かさを提供するとともに、社員を大切にし、株主様に貢献する」という企業理念の下、東芝グループ、日立グループ、キオクシアグループなどをはじめとする顧客から生産管理システムや業務管理アプリケーションなどの受託開発を請け負っているほか、社員派遣型の保守・運用サービスも提供している。バリューチェーンの一部に特化するのでなく、要件定義、システム開発などの川下から運用・保守といった川上まで全体にわたってサービスを提供していることが同社の特徴の1つである。これにより、顧客との接点及び収益獲得機会の増加を可能にしている。
同社は、DXソリューションカテゴリー、半導体ソリューションカテゴリー、AIソリューションカテゴリーの3つで事業を展開している。持株会社体制への移行を契機に、従来のカテゴリー区分である半導体カテゴリー、ソリューションカテゴリー、先進技術ソリューションカテゴリーの区分をより分かりやすく再編成した。DXソリューションカテゴリーでは半導体関連以外の案件を手掛けており、大手企業顧客向けに、社会インフラ、重電、業務系アプリケーション等のシステム開発、運用・保守サービスを提供している。半導体ソリューションカテゴリーでは、半導体関連企業向けに、工場内システムの開発、運用・保守サービスを提供している。AIソリューションカテゴリーでは、AI(機械学習/ディープラーニング)・画像認識・ハードウェア制御等の高度技術を駆使した、ソフトウェアの高機能化及び品質向上を実現するサービスや、最先端技術に関わる研究開発支援サービスを提供している。
3. DXソリューションカテゴリー
DXソリューションカテゴリーは同社の収益基盤であり、2024年9月期の売上高に占める同カテゴリーの割合は60.6%であった。取引先の企業は、強固な顧客基盤である東芝グループ、日立グループ、重電系メーカーをはじめ、金融、サービス、情報通信関連など多岐にわたっている。こうした大手企業との取引実績を生かし、他の大手企業や中堅企業へと顧客の幅を拡大させている。顧客企業にとっては、同社の大手企業との取引実績が安心材料になっている格好だ。同社は、幅広い顧客に対し、重電系管理システム、プラント・工場の生産管理システム、経費精算システム、人事考課システムなどをはじめとする業務アプリケーションの受託開発サービスを提供しているほか、各種システムのオンサイトでの開発支援も行っている。また、開発に留まらず、コンサルティングから要件定義、テスト、検証、運用・保守とバリューチェーンの全てのフェーズでサービスを提供しており、これが同カテゴリーの競争優位性の1つとなっている。ワンストップでソリューションを提供することにより、顧客にとっては利便性の向上につながっている。一方、同社にとってはバリューチェーンの様々な段階で顧客ニーズを吸い上げることができ、受注の最大化を実現することにつながっている。同カテゴリーの業績は、今後も堅調に推移すると弊社は見ている。同社の主力顧客基盤からの安定した受注が期待できることに加えて、コロナ禍の影響を受けて日本企業のDX推進がさらに加速しているためだ。IT化やDXの流れは、当面続くことが予想され、堅調な需要が見込めるカテゴリーであると言える。
4. 半導体ソリューションカテゴリー
半導体ソリューションカテゴリーも、同社に安定した収益をもたらす源泉となっている。2024年9月期の売上高に占める同カテゴリーの割合は29.8%とDXソリューションに次ぐ割合となっている。主な顧客は、東芝グループとキオクシアグループ、ソニーグループ各社である。これらの顧客に対して、半導体工場内のシステム開発、運用・保守並びにインフラ構築支援などのサービスを提供している。DXソリューションカテゴリーと同じく、開発に留まらずコンサルティングから要件定義、テストとバリューチェーンの全てのフェーズでサービスを提供している。具体的には、各種半導体関連システムの受託開発、業務アプリケーション導入支援、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション:事業プロセスを自動化する技術の1つ)導入・運用支援、業務プロセス効率化支援などのサービスを提供している。国内では、キオクシア、Rapidus(株)等の国内メーカーのほか、台湾積体電路製造股フン有限公司(TSMC)や力晶積成電子製造股フン有限公司(PSMC)等の海外半導体各社の投資が予定されている。また、政府は国策として半導体産業への支援に多額の補助金拠出を予定しており、当面の市場拡大が予想される。
同カテゴリーの対象である半導体は、DXの成否を左右する部品と言っても過言ではなく、今後ますます半導体に対する需要が拡大すると弊社は考えている。実際、(一社)電子情報技術産業協会の「2024年春季半導体市場予測について」によると、市場規模は順調に拡大している。2023年に関しては、世界的なインフレやそれに伴う利上げ、地政学的リスクの高まりなどを受け、前年比マイナスとなったものの、世界的に旺盛なAI関連投資を背景にメモリや一部ロジック製品の需要が急拡大していることなどを受け、2024年は再び成長軌道へと回帰することが見込まれている。2025年に関してはさらなる市場拡大が見込まれており、AI関連の需要に加え、環境対応や自動化等の成長領域での半導体に対するニーズの高まりが市場拡大をけん引する見通しだ。
また、たとえ半導体の生産が減少したとしても、工場が稼働している限り、管理システムの保守・運用などのサービスに対する需要がなくなることはないだろう。したがって、同カテゴリーも安定した収益基盤であり続けると同時に、今後の成長が期待できる分野であると言える。同社としても今後、売上高に占める割合を拡大させたい考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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1. 沿革
同社は2016年11月、1996年創業の(株)テックジャパンと1985年創業の(株)シナノシステムエンジニアリングが合併してできた比較的若い企業である。代表取締役執行役員社長の武川義浩(たけかわよしひろ)氏の同業界における30年以上の経験と、そのなかで培われた東芝グループをはじめとする顧客との強固な信頼関係によって、創業以来右肩上がりで成長してきた(武川氏は、東芝グループが手掛けた原子力発電所のシステム開発に従事していた経歴を持つ)。将来の成長加速に向けて研究開発活動にも注力しており、2019年からは東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センターと、スピントロニクス技術を用いた次世代メモリの制御、応用ソフトウェアに関する共同研究を実施してきた。2020年8月には設立からわずか4年弱で東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たしている(2022年4月に東京証券取引所の市場区分見直しによりグロース市場へ移行)。また、2024年6月には機動的できめの細かい経営やリソース配分などを実現するために持株会社体制へと移行している。移行に伴い社名を「ティアンドエスグループ株式会社(T&S Group Inc.)」へと変更し、中核企業である新「ティアンドエス(株)」と新たに設立した「TSシステムソリューションズ(株)」を擁する企業グループとして新たなスタートを切った。
2. 事業内容
同社は「あらゆる産業において、ソフトウェア技術が生み出す新たな付加価値を通じて、お客様に安心と満足そして豊かさを提供するとともに、社員を大切にし、株主様に貢献する」という企業理念の下、東芝グループ、日立グループ、キオクシアグループなどをはじめとする顧客から生産管理システムや業務管理アプリケーションなどの受託開発を請け負っているほか、社員派遣型の保守・運用サービスも提供している。バリューチェーンの一部に特化するのでなく、要件定義、システム開発などの川下から運用・保守といった川上まで全体にわたってサービスを提供していることが同社の特徴の1つである。これにより、顧客との接点及び収益獲得機会の増加を可能にしている。
同社は、DXソリューションカテゴリー、半導体ソリューションカテゴリー、AIソリューションカテゴリーの3つで事業を展開している。持株会社体制への移行を契機に、従来のカテゴリー区分である半導体カテゴリー、ソリューションカテゴリー、先進技術ソリューションカテゴリーの区分をより分かりやすく再編成した。DXソリューションカテゴリーでは半導体関連以外の案件を手掛けており、大手企業顧客向けに、社会インフラ、重電、業務系アプリケーション等のシステム開発、運用・保守サービスを提供している。半導体ソリューションカテゴリーでは、半導体関連企業向けに、工場内システムの開発、運用・保守サービスを提供している。AIソリューションカテゴリーでは、AI(機械学習/ディープラーニング)・画像認識・ハードウェア制御等の高度技術を駆使した、ソフトウェアの高機能化及び品質向上を実現するサービスや、最先端技術に関わる研究開発支援サービスを提供している。
3. DXソリューションカテゴリー
DXソリューションカテゴリーは同社の収益基盤であり、2024年9月期の売上高に占める同カテゴリーの割合は60.6%であった。取引先の企業は、強固な顧客基盤である東芝グループ、日立グループ、重電系メーカーをはじめ、金融、サービス、情報通信関連など多岐にわたっている。こうした大手企業との取引実績を生かし、他の大手企業や中堅企業へと顧客の幅を拡大させている。顧客企業にとっては、同社の大手企業との取引実績が安心材料になっている格好だ。同社は、幅広い顧客に対し、重電系管理システム、プラント・工場の生産管理システム、経費精算システム、人事考課システムなどをはじめとする業務アプリケーションの受託開発サービスを提供しているほか、各種システムのオンサイトでの開発支援も行っている。また、開発に留まらず、コンサルティングから要件定義、テスト、検証、運用・保守とバリューチェーンの全てのフェーズでサービスを提供しており、これが同カテゴリーの競争優位性の1つとなっている。ワンストップでソリューションを提供することにより、顧客にとっては利便性の向上につながっている。一方、同社にとってはバリューチェーンの様々な段階で顧客ニーズを吸い上げることができ、受注の最大化を実現することにつながっている。同カテゴリーの業績は、今後も堅調に推移すると弊社は見ている。同社の主力顧客基盤からの安定した受注が期待できることに加えて、コロナ禍の影響を受けて日本企業のDX推進がさらに加速しているためだ。IT化やDXの流れは、当面続くことが予想され、堅調な需要が見込めるカテゴリーであると言える。
4. 半導体ソリューションカテゴリー
半導体ソリューションカテゴリーも、同社に安定した収益をもたらす源泉となっている。2024年9月期の売上高に占める同カテゴリーの割合は29.8%とDXソリューションに次ぐ割合となっている。主な顧客は、東芝グループとキオクシアグループ、ソニーグループ各社である。これらの顧客に対して、半導体工場内のシステム開発、運用・保守並びにインフラ構築支援などのサービスを提供している。DXソリューションカテゴリーと同じく、開発に留まらずコンサルティングから要件定義、テストとバリューチェーンの全てのフェーズでサービスを提供している。具体的には、各種半導体関連システムの受託開発、業務アプリケーション導入支援、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション:事業プロセスを自動化する技術の1つ)導入・運用支援、業務プロセス効率化支援などのサービスを提供している。国内では、キオクシア、Rapidus(株)等の国内メーカーのほか、台湾積体電路製造股フン有限公司(TSMC)や力晶積成電子製造股フン有限公司(PSMC)等の海外半導体各社の投資が予定されている。また、政府は国策として半導体産業への支援に多額の補助金拠出を予定しており、当面の市場拡大が予想される。
同カテゴリーの対象である半導体は、DXの成否を左右する部品と言っても過言ではなく、今後ますます半導体に対する需要が拡大すると弊社は考えている。実際、(一社)電子情報技術産業協会の「2024年春季半導体市場予測について」によると、市場規模は順調に拡大している。2023年に関しては、世界的なインフレやそれに伴う利上げ、地政学的リスクの高まりなどを受け、前年比マイナスとなったものの、世界的に旺盛なAI関連投資を背景にメモリや一部ロジック製品の需要が急拡大していることなどを受け、2024年は再び成長軌道へと回帰することが見込まれている。2025年に関してはさらなる市場拡大が見込まれており、AI関連の需要に加え、環境対応や自動化等の成長領域での半導体に対するニーズの高まりが市場拡大をけん引する見通しだ。
また、たとえ半導体の生産が減少したとしても、工場が稼働している限り、管理システムの保守・運用などのサービスに対する需要がなくなることはないだろう。したがって、同カテゴリーも安定した収益基盤であり続けると同時に、今後の成長が期待できる分野であると言える。同社としても今後、売上高に占める割合を拡大させたい考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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