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デリカフHD Research Memo(7):野菜の総合加工メーカーとして売上高1,000億円企業を目指す
配信日時:2024/12/23 13:07
配信元:FISCO
*13:07JST デリカフHD Research Memo(7):野菜の総合加工メーカーとして売上高1,000億円企業を目指す
■デリカフーズホールディングス<3392>の今後の見通し
2. 第5次中期経営計画
(1) 長期ビジョン
同社は2025年3月期からスタートする第5次中期経営計画の策定にあたって、長期ビジョン(10年後の在りたい姿)を掲げた。第1に、野菜の価値と可能性を徹底的に追及して農業と健康に貢献する「野菜の総合加工メーカーとしてのポジションを確立」すること、第2に、農業従事者の高齢化が進み将来の国内における野菜自給率の低下が懸念されるなかで、「持続可能な農業の実現」に取り組むこと、第3に、「個人の幸福と会社の繁栄の両立を実現」することで人々から選ばれ、社会から必要とされる企業になること、の3点となる。これらのビジョンを実現することで10年後に売上高1,000億円、経常利益率4~5%、ROE10~15%の水準を目指していく。
(2) 第5次中期経営計画の概要
第5次中期経営計画では、「keep on trying 2027」をテーマに掲げ、長期ビジョンの実現に向けてあらゆることに挑戦し、新たな成長に向けた転換点とする期間と位置付けている。3カ年で取り組む基本方針としては、1) 各種ポートフォリオの変革、2) 青果物サプライチェーンの構造変革、3) 研究部門・開発部門への投資拡大に取り組み、最終年度となる2027年3月期の業績目標として、売上高600億円、経常利益18億円、ROE10.2%を設定した。2025年3月期は新工場立ち上げに伴う費用増や異常気象に伴う市況高騰が響いて期初計画を利益段階で下回る見込みだが、2026年3月期以降は先行投資の効果が顕在化し、利益成長フェーズに入るものと予想される。売上高については年率4%成長、EBITDAベースでは年率10%弱の増益ペースとなり、異常気象など予測外の環境変化がなければ達成可能な計画と弊社では見ている。
(3) 事業戦略の進捗状況
a) 各種ポートフォリオの変革
同社は前中期経営計画において事業ポートフォリオの変革を推進したが、今中期経営計画においても各種ポートフォリオ(事業・顧客・商品)の見直しを進め、経営基盤の拡充と収益性の向上に取り組む。事業ポートフォリオについては、物流事業やBtoC事業の経営強化を進め、青果物事業のみに依存しない体制の構築を進めていく。物流事業では「2024年問題」により物流費が上昇するなかで、受託物流サービスの顧客獲得が進んでおり、事業規模の拡大が順調に進んでいる。BtoC事業においては、新設した食品事業部において付加価値型商品の開発販売を強化し、販路の拡大も進めていくことで育成していく方針だ。物流事業とBtoC事業を合わせた売上構成比を2024年3月期の12%から2027年3月期に15%まで引き上げていくことを目標とする。
顧客ポートフォリオについては、将来性や収益性をもとに取引口座数の適正化を進めていくほか、市場環境の変化に影響を受け難いポートフォリオへの変革を進めていく方針だ。業界別売上構成比では、外食以外の比率を2024年3月期の約25%から2027年3月期は約28%に引き上げていく。
商品ポートフォリオについては、従来のホール野菜やカット野菜に加えて、加熱野菜や冷凍野菜、加工野菜、ミールキットやスープ・調味液も含めた「加工度の高い商品(=付加価値商品)」を開発・育成することで収益性向上を図るほか、これら商品を海外やBtoC市場など新規市場で拡販していく。
b) 青果物サプライチェーンの構造変革
従来のサプライチェーンを抜本的に見直し、持続可能かつ機能的な青果物流通インフラへの変革を推進していく。主には、輸入比率の高い野菜について国内調達比率を引き上げていくほか、安定供給体制をさらに強化すべく長期保存技術を確立するとともに貯蔵集出荷拠点の設置計画を進めていく方針だ。輸入品を国内産に切り替えることで仕入コストが上昇するが、顧客と売価交渉を進め粗利益に影響を与えない範囲で、徐々に転換していくことにしている。同社では、国内農業の衰退が危ぶまれる中で、将来に向けて持続可能な農業を実現するためには、こうした取り組みが極めて重要と考えており、顧客先とは失注リスクを覚悟のうえで売価交渉に臨む決意を示している。
現在、国内調達率の引き上げに取り組んでいる品目としては玉葱がある。従来は、中国産の剥き玉葱を輸入していたが、安定供給リスクがあることから国内産への切り替えを進めている。同社では、2025年4月に玉葱専用加工工場(旧大阪工場)を稼働させる方針だが、仕入から剥き加工まで自社で手掛けることで国内産剥き玉葱のコスト低減を図ることが狙いとなっている。今後も輸入比率の高い野菜に関しては、国内産への切り替えを進めていく計画となっており、候補品目としてはトマトや長ネギなどが挙がっている。
また、業務提携先との協業体制の確立により、栽培・流通・加工におけるサプライチェーン全体の合理化を進め持続可能な農業と流通体制の構築を進めていく。同社は2023年2月にエア・ウォーター及びベジテックと3社業務提携を発表し、2024年3月には精米卸販売の最大手である(株)神明ホールディングスも新たに加わり、4社による協業体制を構築した。各社が構築しているサプライチェーン(仕入、物流、販売のネットワーク)のリソースを共有化することによる合理化効果は大きいと見られ、収益性向上に寄与する取り組みとして注目される。既述のとおり、同社の物流事業においてエア・ウォーターやベジテックとの取引額が増加しているほか、エア・ウォーターとは冷凍・冷蔵技術の共同開発なども進めている。青果物の長期保存が可能となれば、貯蔵施設にストックとして保存することで、異常気象に起因する価格高騰リスクを軽減することが可能となる。
c) 研究部門・開発部門への投資拡大
既存事業の継続的な改善、事業領域の拡大に向け、各種研究・開発部門の強化を図り、将来の成長エンジンへとつなげていく。開発テーマとしては、青果物の長期保存技術の確立や付加価値の高い商品開発、青果物を基軸とした新規事業の開発などがあり、デザイナーフーズやデリカフーズの食品事業部で研究・開発を行っていく。
(4) 財務戦略
財務戦略としては、キャッシュ・フローの配分適正化を進めていくほか、大型投資が一巡したことによる株主還元の強化や資本コストを意識した経営に取り組む。キャッシュアロケーションとしては、今後3年間で獲得する営業キャッシュ・フロー約60億円を企業価値拡大につながる成長戦略投資や設備の維持・更新投資(30~40億円)、株主還元(8~10億円)などに充当していく方針だ。営業キャッシュ・フローを超える資金需要が発生した場合は、借入金等で調達していくことになる。また、シナジーが見込める案件であればM&Aについても前向きに検討していく。
資本コストを意識した取り組みについては、中長期的な企業価値向上に対する役職員のコミットメント強化(役員・幹部社員を対象としたインセンティブの付与、従業員持株会の促進)を図るとともに、IR活動の強化を通じて適切な情報開示と認知度の向上に取り組み、期待収益率を踏まえたKPIを達成することで企業価値の向上につなげていく考えだ。なお、想定する株主資本コストについては5~10%の水準を想定しており、ROEは10%以上を目標としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 第5次中期経営計画
(1) 長期ビジョン
同社は2025年3月期からスタートする第5次中期経営計画の策定にあたって、長期ビジョン(10年後の在りたい姿)を掲げた。第1に、野菜の価値と可能性を徹底的に追及して農業と健康に貢献する「野菜の総合加工メーカーとしてのポジションを確立」すること、第2に、農業従事者の高齢化が進み将来の国内における野菜自給率の低下が懸念されるなかで、「持続可能な農業の実現」に取り組むこと、第3に、「個人の幸福と会社の繁栄の両立を実現」することで人々から選ばれ、社会から必要とされる企業になること、の3点となる。これらのビジョンを実現することで10年後に売上高1,000億円、経常利益率4~5%、ROE10~15%の水準を目指していく。
(2) 第5次中期経営計画の概要
第5次中期経営計画では、「keep on trying 2027」をテーマに掲げ、長期ビジョンの実現に向けてあらゆることに挑戦し、新たな成長に向けた転換点とする期間と位置付けている。3カ年で取り組む基本方針としては、1) 各種ポートフォリオの変革、2) 青果物サプライチェーンの構造変革、3) 研究部門・開発部門への投資拡大に取り組み、最終年度となる2027年3月期の業績目標として、売上高600億円、経常利益18億円、ROE10.2%を設定した。2025年3月期は新工場立ち上げに伴う費用増や異常気象に伴う市況高騰が響いて期初計画を利益段階で下回る見込みだが、2026年3月期以降は先行投資の効果が顕在化し、利益成長フェーズに入るものと予想される。売上高については年率4%成長、EBITDAベースでは年率10%弱の増益ペースとなり、異常気象など予測外の環境変化がなければ達成可能な計画と弊社では見ている。
(3) 事業戦略の進捗状況
a) 各種ポートフォリオの変革
同社は前中期経営計画において事業ポートフォリオの変革を推進したが、今中期経営計画においても各種ポートフォリオ(事業・顧客・商品)の見直しを進め、経営基盤の拡充と収益性の向上に取り組む。事業ポートフォリオについては、物流事業やBtoC事業の経営強化を進め、青果物事業のみに依存しない体制の構築を進めていく。物流事業では「2024年問題」により物流費が上昇するなかで、受託物流サービスの顧客獲得が進んでおり、事業規模の拡大が順調に進んでいる。BtoC事業においては、新設した食品事業部において付加価値型商品の開発販売を強化し、販路の拡大も進めていくことで育成していく方針だ。物流事業とBtoC事業を合わせた売上構成比を2024年3月期の12%から2027年3月期に15%まで引き上げていくことを目標とする。
顧客ポートフォリオについては、将来性や収益性をもとに取引口座数の適正化を進めていくほか、市場環境の変化に影響を受け難いポートフォリオへの変革を進めていく方針だ。業界別売上構成比では、外食以外の比率を2024年3月期の約25%から2027年3月期は約28%に引き上げていく。
商品ポートフォリオについては、従来のホール野菜やカット野菜に加えて、加熱野菜や冷凍野菜、加工野菜、ミールキットやスープ・調味液も含めた「加工度の高い商品(=付加価値商品)」を開発・育成することで収益性向上を図るほか、これら商品を海外やBtoC市場など新規市場で拡販していく。
b) 青果物サプライチェーンの構造変革
従来のサプライチェーンを抜本的に見直し、持続可能かつ機能的な青果物流通インフラへの変革を推進していく。主には、輸入比率の高い野菜について国内調達比率を引き上げていくほか、安定供給体制をさらに強化すべく長期保存技術を確立するとともに貯蔵集出荷拠点の設置計画を進めていく方針だ。輸入品を国内産に切り替えることで仕入コストが上昇するが、顧客と売価交渉を進め粗利益に影響を与えない範囲で、徐々に転換していくことにしている。同社では、国内農業の衰退が危ぶまれる中で、将来に向けて持続可能な農業を実現するためには、こうした取り組みが極めて重要と考えており、顧客先とは失注リスクを覚悟のうえで売価交渉に臨む決意を示している。
現在、国内調達率の引き上げに取り組んでいる品目としては玉葱がある。従来は、中国産の剥き玉葱を輸入していたが、安定供給リスクがあることから国内産への切り替えを進めている。同社では、2025年4月に玉葱専用加工工場(旧大阪工場)を稼働させる方針だが、仕入から剥き加工まで自社で手掛けることで国内産剥き玉葱のコスト低減を図ることが狙いとなっている。今後も輸入比率の高い野菜に関しては、国内産への切り替えを進めていく計画となっており、候補品目としてはトマトや長ネギなどが挙がっている。
また、業務提携先との協業体制の確立により、栽培・流通・加工におけるサプライチェーン全体の合理化を進め持続可能な農業と流通体制の構築を進めていく。同社は2023年2月にエア・ウォーター及びベジテックと3社業務提携を発表し、2024年3月には精米卸販売の最大手である(株)神明ホールディングスも新たに加わり、4社による協業体制を構築した。各社が構築しているサプライチェーン(仕入、物流、販売のネットワーク)のリソースを共有化することによる合理化効果は大きいと見られ、収益性向上に寄与する取り組みとして注目される。既述のとおり、同社の物流事業においてエア・ウォーターやベジテックとの取引額が増加しているほか、エア・ウォーターとは冷凍・冷蔵技術の共同開発なども進めている。青果物の長期保存が可能となれば、貯蔵施設にストックとして保存することで、異常気象に起因する価格高騰リスクを軽減することが可能となる。
c) 研究部門・開発部門への投資拡大
既存事業の継続的な改善、事業領域の拡大に向け、各種研究・開発部門の強化を図り、将来の成長エンジンへとつなげていく。開発テーマとしては、青果物の長期保存技術の確立や付加価値の高い商品開発、青果物を基軸とした新規事業の開発などがあり、デザイナーフーズやデリカフーズの食品事業部で研究・開発を行っていく。
(4) 財務戦略
財務戦略としては、キャッシュ・フローの配分適正化を進めていくほか、大型投資が一巡したことによる株主還元の強化や資本コストを意識した経営に取り組む。キャッシュアロケーションとしては、今後3年間で獲得する営業キャッシュ・フロー約60億円を企業価値拡大につながる成長戦略投資や設備の維持・更新投資(30~40億円)、株主還元(8~10億円)などに充当していく方針だ。営業キャッシュ・フローを超える資金需要が発生した場合は、借入金等で調達していくことになる。また、シナジーが見込める案件であればM&Aについても前向きに検討していく。
資本コストを意識した取り組みについては、中長期的な企業価値向上に対する役職員のコミットメント強化(役員・幹部社員を対象としたインセンティブの付与、従業員持株会の促進)を図るとともに、IR活動の強化を通じて適切な情報開示と認知度の向上に取り組み、期待収益率を踏まえたKPIを達成することで企業価値の向上につなげていく考えだ。なお、想定する株主資本コストについては5~10%の水準を想定しており、ROEは10%以上を目標としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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