注目トピックス 日本株
リソー教育 Research Memo(9):既存事業の成長と新規事業の拡大により、年率1ケタ台後半の収益成長を目指す
配信日時:2024/11/26 14:09
配信元:FISCO
*14:09JST リソー教育 Research Memo(9):既存事業の成長と新規事業の拡大により、年率1ケタ台後半の収益成長を目指す
■リソー教育<4714>の今後の見通し
2. 中期経営計画
(1) 市場環境認識と主な取り組み
同社は2027年2月期までの3ヶ年の中期経営計画を期初に発表した。市場環境としては、少子化が進行するなかで同社が主力エリアとする首都圏の子ども数は堅調に推移し、また公教育サービスへの不安感から私立小学校及び中学校を受験するため進学塾への通塾ニーズも堅調に推移すると見ている。一方では、学習塾業界における生徒獲得競争も続き業界再編の動きが加速すると見ている。
こうした環境下において今後も持続的成長を図るための取り組みとして、生徒数拡大施策、出店エリアの見直し及び校舎のスクラップ&ビルド、異業種との提携による新規事業の育成、DX戦略などを推進する。生徒数拡大施策としては、需要が見込めるエリアでの新規開校や顧客満足度の向上(生徒・保護者との密なコミュニケーション)による退会率抑制、難関校への合格実績を拡大するための優秀な講師や社員の確保・育成に取り組む。
(2) 経営数値目標
業績目標としては2027年2月期に売上高38,260百万円、営業利益3,360百万円、経常利益3,360百万円、親会社株主に帰属する当期純利益2,000百万円を掲げた。3年間の年平均成長率は売上高で5.9%、営業利益で8.5%となる(同計画値には新規事業となる「こどもでぱーと」の効果を織り込んでいない)。営業利益率は2024年2月期の8.2%に対して2027年2月期は8.8%まで引き上げる。講師・正社員の処遇向上による人件費の増加や物価上昇が見込まれる一方で、広告宣伝費をはじめとした諸経費の最適化やDX推進による業務効率の向上で吸収する方針だ。ただ、2025年2月期は利益ベースで計画を上回る公算が大きいため、2026年2月期以降の利益目標についても2025年2月期の決算発表時点で見直されるものと弊社では見ている。なお、2027年2月期のROEは14.5%と2024年2月期の19.0%からやや低下するものの、引き続き10%以上の水準を維持する計画だ。
(3) 事業別の見通し
a) 学習塾事業
学習塾事業の売上成長率は年率7%程度を計画している。校舎展開については首都圏で年間3~5校ペースで新規開校し、手狭となった教室については増床または移転リニューアルを実施する。「インターTOMAS」や「メディックTOMAS」については「TOMAS」が進出しているエリアで、需要が見込めると判断した場合に開校する。校舎数の拡大に加えて既存校における顧客サービスの徹底により、退会率を抑制し生徒数の拡大を図る。また、新規生徒の募集については紙媒体の広告をWeb広告に切り替えるなど費用対効果を重視して効率的に進め、生徒数の増加につなげる。
b) 家庭教師派遣教育事業
家庭教師派遣教育事業の売上成長率は年率1ケタ台前半の水準を計画している。家庭教師派遣の「名門会」については、大都市圏への集中展開と校舎のスクラップ&ビルドを推進する一方、「TOMEIKAI」は地方の少子化進行を背景に生徒だけでなく学生アルバイト講師の獲得も難しくなっていることから新規開校は行わず、既存校の収益改善に取り組む。こうしたなか、双方向型オンライン授業「名門会Online」の生徒獲得を強化することで、2026年2月期から増収基調への復帰を目指す。同サービスは、講師と生徒の顔だけでなく手元も見えるWebカメラで対面指導と同等のクオリティで双方向授業を受けられることや、地方や海外からでもオンラインで社会人プロ講師や東大生など難関大学の現役大学生講師の完全個別指導を受講できる点が評価され順調に生徒数を伸ばしており、同サービスの動向が今後の収益成長のカギを握ると見られる。
c) 幼児教育事業
幼児教育事業については年率5%前後の売上成長を目指す。「伸芽会」「伸芽’Sクラブ学童」「伸芽’Sクラブ託児」をそれぞれ年間1校ペースで開校する計画(伸芽’Sクラブ学童にはコナミスポーツ 伸芽’Sアカデミーも含む)だが、実際には「こどもでぱーと」が2025年春よりスタートすることから、校舎の増加ペースも加速する可能性が高い。これら新規校やリニューアル校で生徒獲得のための営業を強化するほか、既存生の退会率を抑制するため生徒・保護者とのコミュニケーション強化並びに計画的な個別面談を実施し、収益成長を目指す。
d) 学校内個別指導事業
学校内個別指導事業については、年率10%の売上成長を目指す。学校の進学実績向上に貢献するサービスとして、また教師の長時間労働問題の解消に寄与するサービスとして認知度が高まるなか、私立の中高一貫校を中心に全国の私立学校から多く問い合わせが入っており、年間10校ペースで導入校数を増やしながら高成長が続く見通しだ。
(4) 教育特化ビル「こどもでぱーと」シリーズの展開
同社は2020年9月にヒューリック、コナミスポーツとの3社で業務提携を締結し、首都圏で教育特化ビル「こどもでぱーと」シリーズを展開していく。同ビル内では、同社グループの「伸芽’Sクラブ託児・学童」「伸芽会」「TOMAS」や、コナミスポーツ等が入居し、乳幼児から高校生まで複数の教育サービスを同一拠点で提供可能となり、同じビル内に子ども向けサービスがあることで保護者の送迎負担も軽減される。子どもを勉強と運動の両面でバランス良く育てたいというニーズは強く、好立地の場所で各種サービスを提供することでこれらのニーズを取り込んでいく。同社にとっては、乳幼児から顧客を囲い込むことで顧客のLTV最大化とグループシナジーが期待できるため、収益の一段の成長につながる取り組みとして注目される。
現在の進捗状況については、東京都城南エリアや横浜、千葉エリアなどで合計6件のプロジェクトが具体化している。2025年春に2件(「こどもでぱーと 中野」(東京都中野区)、「こどもでぱーと たまプラーザ」(神奈川県横浜市))が開業、また、2027年に竣工予定の複合ビル「MITAKE Link PARK(渋谷)」内にも展開することが決まっている。ヒューリックでは、「こどもでぱーと」を2029年までに首都圏の主要駅をターゲットに20棟まで広げる構想を描いているが、校舎や教室を運営していくために必要となる講師やスタッフのリソースを確保できるかが重要なため、構想どおりに進まない可能性もある。とは言え、同社にとっては駅前好立地の物件を独力で探す必要がなく、複数の教育サービスを同時に開校できるため事業効率の観点からもメリットが大きく、中期的に同社の収益成長をけん引する取り組みとして注目される。
(5) DX戦略の推進
同社は収益体質の強化と売上拡大を図るべく、2024年2月期からグループ全体のDX戦略推進に着手している。具体的な取り組みとしては、グループ各社で保有する顧客データベースの統合、講師が手書きで作成しているレポートを情報端末で作成できるようにするシステムの構築、顧客接点となるスマートフォンアプリの開発、教室・拠点間のネットワーク設備の増強など、2026年2月期までに697百万円を投入してDXを推進し、業務効率並びに顧客満足度の向上を図る。教務社員がDXによって削減した事務作業時間を生徒や保護者へのフォローアップ、営業提案などの時間に振り向けることで顧客満足度の向上につなげるほか、ペーパーレス化によるコスト低減なども進める。顧客データベースの統合については2027年に完成する予定となっている。完成後は重複機能の統一化による費用の効率化だけでなく、ブランド横断的アプローチによる顧客の囲い込み戦略が従来以上に進むものと期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 中期経営計画
(1) 市場環境認識と主な取り組み
同社は2027年2月期までの3ヶ年の中期経営計画を期初に発表した。市場環境としては、少子化が進行するなかで同社が主力エリアとする首都圏の子ども数は堅調に推移し、また公教育サービスへの不安感から私立小学校及び中学校を受験するため進学塾への通塾ニーズも堅調に推移すると見ている。一方では、学習塾業界における生徒獲得競争も続き業界再編の動きが加速すると見ている。
こうした環境下において今後も持続的成長を図るための取り組みとして、生徒数拡大施策、出店エリアの見直し及び校舎のスクラップ&ビルド、異業種との提携による新規事業の育成、DX戦略などを推進する。生徒数拡大施策としては、需要が見込めるエリアでの新規開校や顧客満足度の向上(生徒・保護者との密なコミュニケーション)による退会率抑制、難関校への合格実績を拡大するための優秀な講師や社員の確保・育成に取り組む。
(2) 経営数値目標
業績目標としては2027年2月期に売上高38,260百万円、営業利益3,360百万円、経常利益3,360百万円、親会社株主に帰属する当期純利益2,000百万円を掲げた。3年間の年平均成長率は売上高で5.9%、営業利益で8.5%となる(同計画値には新規事業となる「こどもでぱーと」の効果を織り込んでいない)。営業利益率は2024年2月期の8.2%に対して2027年2月期は8.8%まで引き上げる。講師・正社員の処遇向上による人件費の増加や物価上昇が見込まれる一方で、広告宣伝費をはじめとした諸経費の最適化やDX推進による業務効率の向上で吸収する方針だ。ただ、2025年2月期は利益ベースで計画を上回る公算が大きいため、2026年2月期以降の利益目標についても2025年2月期の決算発表時点で見直されるものと弊社では見ている。なお、2027年2月期のROEは14.5%と2024年2月期の19.0%からやや低下するものの、引き続き10%以上の水準を維持する計画だ。
(3) 事業別の見通し
a) 学習塾事業
学習塾事業の売上成長率は年率7%程度を計画している。校舎展開については首都圏で年間3~5校ペースで新規開校し、手狭となった教室については増床または移転リニューアルを実施する。「インターTOMAS」や「メディックTOMAS」については「TOMAS」が進出しているエリアで、需要が見込めると判断した場合に開校する。校舎数の拡大に加えて既存校における顧客サービスの徹底により、退会率を抑制し生徒数の拡大を図る。また、新規生徒の募集については紙媒体の広告をWeb広告に切り替えるなど費用対効果を重視して効率的に進め、生徒数の増加につなげる。
b) 家庭教師派遣教育事業
家庭教師派遣教育事業の売上成長率は年率1ケタ台前半の水準を計画している。家庭教師派遣の「名門会」については、大都市圏への集中展開と校舎のスクラップ&ビルドを推進する一方、「TOMEIKAI」は地方の少子化進行を背景に生徒だけでなく学生アルバイト講師の獲得も難しくなっていることから新規開校は行わず、既存校の収益改善に取り組む。こうしたなか、双方向型オンライン授業「名門会Online」の生徒獲得を強化することで、2026年2月期から増収基調への復帰を目指す。同サービスは、講師と生徒の顔だけでなく手元も見えるWebカメラで対面指導と同等のクオリティで双方向授業を受けられることや、地方や海外からでもオンラインで社会人プロ講師や東大生など難関大学の現役大学生講師の完全個別指導を受講できる点が評価され順調に生徒数を伸ばしており、同サービスの動向が今後の収益成長のカギを握ると見られる。
c) 幼児教育事業
幼児教育事業については年率5%前後の売上成長を目指す。「伸芽会」「伸芽’Sクラブ学童」「伸芽’Sクラブ託児」をそれぞれ年間1校ペースで開校する計画(伸芽’Sクラブ学童にはコナミスポーツ 伸芽’Sアカデミーも含む)だが、実際には「こどもでぱーと」が2025年春よりスタートすることから、校舎の増加ペースも加速する可能性が高い。これら新規校やリニューアル校で生徒獲得のための営業を強化するほか、既存生の退会率を抑制するため生徒・保護者とのコミュニケーション強化並びに計画的な個別面談を実施し、収益成長を目指す。
d) 学校内個別指導事業
学校内個別指導事業については、年率10%の売上成長を目指す。学校の進学実績向上に貢献するサービスとして、また教師の長時間労働問題の解消に寄与するサービスとして認知度が高まるなか、私立の中高一貫校を中心に全国の私立学校から多く問い合わせが入っており、年間10校ペースで導入校数を増やしながら高成長が続く見通しだ。
(4) 教育特化ビル「こどもでぱーと」シリーズの展開
同社は2020年9月にヒューリック、コナミスポーツとの3社で業務提携を締結し、首都圏で教育特化ビル「こどもでぱーと」シリーズを展開していく。同ビル内では、同社グループの「伸芽’Sクラブ託児・学童」「伸芽会」「TOMAS」や、コナミスポーツ等が入居し、乳幼児から高校生まで複数の教育サービスを同一拠点で提供可能となり、同じビル内に子ども向けサービスがあることで保護者の送迎負担も軽減される。子どもを勉強と運動の両面でバランス良く育てたいというニーズは強く、好立地の場所で各種サービスを提供することでこれらのニーズを取り込んでいく。同社にとっては、乳幼児から顧客を囲い込むことで顧客のLTV最大化とグループシナジーが期待できるため、収益の一段の成長につながる取り組みとして注目される。
現在の進捗状況については、東京都城南エリアや横浜、千葉エリアなどで合計6件のプロジェクトが具体化している。2025年春に2件(「こどもでぱーと 中野」(東京都中野区)、「こどもでぱーと たまプラーザ」(神奈川県横浜市))が開業、また、2027年に竣工予定の複合ビル「MITAKE Link PARK(渋谷)」内にも展開することが決まっている。ヒューリックでは、「こどもでぱーと」を2029年までに首都圏の主要駅をターゲットに20棟まで広げる構想を描いているが、校舎や教室を運営していくために必要となる講師やスタッフのリソースを確保できるかが重要なため、構想どおりに進まない可能性もある。とは言え、同社にとっては駅前好立地の物件を独力で探す必要がなく、複数の教育サービスを同時に開校できるため事業効率の観点からもメリットが大きく、中期的に同社の収益成長をけん引する取り組みとして注目される。
(5) DX戦略の推進
同社は収益体質の強化と売上拡大を図るべく、2024年2月期からグループ全体のDX戦略推進に着手している。具体的な取り組みとしては、グループ各社で保有する顧客データベースの統合、講師が手書きで作成しているレポートを情報端末で作成できるようにするシステムの構築、顧客接点となるスマートフォンアプリの開発、教室・拠点間のネットワーク設備の増強など、2026年2月期までに697百万円を投入してDXを推進し、業務効率並びに顧客満足度の向上を図る。教務社員がDXによって削減した事務作業時間を生徒や保護者へのフォローアップ、営業提案などの時間に振り向けることで顧客満足度の向上につなげるほか、ペーパーレス化によるコスト低減なども進める。顧客データベースの統合については2027年に完成する予定となっている。完成後は重複機能の統一化による費用の効率化だけでなく、ブランド横断的アプローチによる顧客の囲い込み戦略が従来以上に進むものと期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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