注目トピックス 日本株
極東貿易 Research Memo(8):新規事業である洋上風力発電関連事業の拡大に期待(2)
配信日時:2024/11/22 14:08
配信元:FISCO
*14:08JST 極東貿易 Research Memo(8):新規事業である洋上風力発電関連事業の拡大に期待(2)
■極東貿易<8093>の中期経営計画と成長戦略
3) バイオプロダクツ分野:廃プラ問題を解決に導く事業
このテーマは中長期の新規事業テーマと位置付けている。バイオプロダクツ分野は複数のテーマを検討していたが、「生分解促進添加剤販売」と生分解プラスチック:マスバランス式のバイオポリプロピレンの販売」有力とし、注力している。「生分解促進添加剤」は米国のベンチャー企業EcoLogic LLCと代理店契約を結び販売を行っている。「Eco-One」はFDA(米国食品医薬品局)に準拠した添加剤で、オーガニック100%である。樹脂に「Eco-One」を約1%添加することで、樹脂製品に生分解・海洋分解性機能を付与できる。用途はランニングシューズ、オフィス家具、医療用資材、レジ・ゴミ袋など幅広く、環境価値を重視するユーザーに受け入れられると弊社は見ている。
生分解性促進添加剤「Eco-One」は、顧客企業が生分解性の実証試験を終え、既に「生分解性機能」を確認し、市場調査や顧客ニーズを検証中である。用途は食品包装用フィルム、農業用資材など多岐にわたり、なかでも発泡スチロール成型品やアパレル向け繊維で注目されている。「生分解プラスチック:マスバランス式のバイオポリプロピレン」は、化粧品容器や工業用フィルムなどにおいて現行樹脂品と性能は変わらないと、顧客企業から好評価を得ていると言う。バイオマス製品を販売するには国際持続可能性カーボン認証(ISCC PLUS認証)が必要である。申請が多く認証受付を一時ストップしている状態であったが、最近ようやく再開したようである。同社は、速やかに国際認証を取得し、マスバランス式のバイオポリプロピレンの販売をスタートさせる考えだ。バイオプロダクツの有望2製品は流れ品であるため、一度流れ出すと継続的に安定受注が期待できる。バイオプロダクツ関連事業は当初の事業計画よりやや遅れているが、3年以内に本格的事業化を目指している。
4) 海外事業分野:インド現地法人の事業拡大
同社は、2008年にインドへ進出(チェンナイにインド現地法人を設立)し、2011年にグルガオン地区に第2事務所を設立した。進出の初期段階は同社のビジネスにつながらなかったが、2019年5月に日系メーカーと共同でテクニカルセンターを設立したのをきっかけにフィーダー※事業を本格化し、現地の日系メーカーへ拡販を進めた。2024年3月期には、産業用重量式連続フィーダー、潤滑剤、自動車部品等取扱アイテムを強みに現地企業へも事業拡大を図っている。また、精密ファスナー関連事業ではインド市場進出を企図中で、今後の受注拡大が見込まれる。インドはグローバルサウス(Global South)市場として世界の企業から最も注目されており、同社においてもポスト中国事業として有望視されている。
※ 産業用連続フィーダーで、樹脂ペレットを流す(フィード)設備。
5) 海外事業分野:米国現地法人の新規事業
同社の米国法人は1956年の設立以来、重工業向け設備、航空宇宙分野、資源開発分野の最新技術、商材を国内市場に提供してきた。米国に進出する日系顧客のサプライチェーンを支援するため、同社のグローバル調達力、在庫管理で商材の安定供給を図ってきた。また、2022年には米国事務所をニューヨークからインディアナポリスへ移転した。近年は米国進出を狙う高い技術力を持った日系メーカーとともに積極的な顧客開拓を進め、新規事業を創出してきた。2024年6月に、機能性複合材料メーカーである西田技研の米国法人:「Nishida Art Speciality Composite America Inc.(Nasca Elastomers)と協業し、日系及び米国自動車部品メーカーへ熱可塑性エラストマー供給を開始した。今後は、西田技研との協業を深化させ、エラストマー製造分野の顧客へのソリューション提案を展開する予定である。
4. M&A戦略とその実行
M&Aは、同社のグループ経営を象徴する手法である。2008年の経営危機から脱出するため、同社は大きく舵を切り、中核事業の一つである航空・防衛関連を失った事業構造の再構築に取り組んだ。その際、新たな事業をM&Aにより取り込むことで再建を図った。その後、2018年までに6件のM&A(7年間)を連続して実施し、これらの案件はいずれも全社平均を上回る売上総利益率を達成した。これにより、持続的成長と高収益体質への事業構造転換を果たした。このような成功体験が積み重なった結果、同社ではM&Aが重要な成長戦略となり、中期経営計画でもM&Aの成長投資枠(50億円)が設定されており、望ましいM&A案件が見つかればすぐに対応できる体制が整えてきた。2018年以降、実際にはM&Aは行われてこなかったが、この間も水面下で検討が続けられており、M&Aが直前で破談になった案件もあったと聞いている。そのような状況の中、今回2つのM&A契約が成立した。(2024年8月30日発表)
(1) 三幸商会の株式取得(子会社化)
三幸商会は、汎用プラスチック&エンジニアリングプラスチック及び溶射材※を取り扱う専門商社であり、自動車部品・電化製品から半導体関連まで幅広い産業分野の樹脂材料のサプライチェーンに貢献している。また、海外進出した顧客の事業を支えるため、中国・東南アジア地域に拠点を設け、幅広く材料供給事業を展開している。同社の産業素材関連部門では、多種多様な細々した商材を扱ってきたが事業の柱がなかった。三幸商会をグループインすることにより、汎用プラスチック&エンジニアリングプラスチック分野の大きな事業の柱ができ、ビジネス展開上大きなメリットとなる。
※ 溶射材とは、産業界で広く利用されている溶射と呼ばれる表面改質技術において使用する金属やセラミックス、サーメットなどの材料。
(2) 船舶用補修材:ウエルストンの株式取得(孫会社化)
同社の機械部品関連部門の基幹子会社であるヱトーは産業向け精密ファスナー及び関連機械器具工具の販売を中心とした専門商社として、国内外の顧客を強力にサポートするため、培った経験をもとに品質保証や技術的ノウハウ、サプライチェーンを進化させ、中国・アセアン地区・北米地域に広く海外事業を展開している。一方、ウエルストンは、船舶補修部品の輸出や国内卸を主体とする専門商社で、幅広い仕入先と東南アジアを中心とした海外の顧客を数多く保有しており、近年拡大を続ける船舶のメンテナンス需要を取り込み、グローバルな事業展開を進めている。ヱトーはウエルストンを子会社化(同社からみれば孫会社)することにより、船舶補修部品という新たな市場に参入し、商材の開拓機会を創出することで収益基盤強化が図れる。一方、ウエルストンはヱトーが保有する資金力や多岐にわたる取引先、商品の管理ノウハウを活用することにより顧客対応力を強化し、ヱトーならびに同社グループのネットワークを生かしながら、船舶補修部品市場における優位性を築き、事業多角化を図る。ヱトーとウエルストンは、業界や取引先は異なるが、金属切削部品という共通商材・技術を活用し、機械部品の商流も類似性があるため、中長期的視点でみれば、事業シナジーが大いに期待できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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3) バイオプロダクツ分野:廃プラ問題を解決に導く事業
このテーマは中長期の新規事業テーマと位置付けている。バイオプロダクツ分野は複数のテーマを検討していたが、「生分解促進添加剤販売」と生分解プラスチック:マスバランス式のバイオポリプロピレンの販売」有力とし、注力している。「生分解促進添加剤」は米国のベンチャー企業EcoLogic LLCと代理店契約を結び販売を行っている。「Eco-One」はFDA(米国食品医薬品局)に準拠した添加剤で、オーガニック100%である。樹脂に「Eco-One」を約1%添加することで、樹脂製品に生分解・海洋分解性機能を付与できる。用途はランニングシューズ、オフィス家具、医療用資材、レジ・ゴミ袋など幅広く、環境価値を重視するユーザーに受け入れられると弊社は見ている。
生分解性促進添加剤「Eco-One」は、顧客企業が生分解性の実証試験を終え、既に「生分解性機能」を確認し、市場調査や顧客ニーズを検証中である。用途は食品包装用フィルム、農業用資材など多岐にわたり、なかでも発泡スチロール成型品やアパレル向け繊維で注目されている。「生分解プラスチック:マスバランス式のバイオポリプロピレン」は、化粧品容器や工業用フィルムなどにおいて現行樹脂品と性能は変わらないと、顧客企業から好評価を得ていると言う。バイオマス製品を販売するには国際持続可能性カーボン認証(ISCC PLUS認証)が必要である。申請が多く認証受付を一時ストップしている状態であったが、最近ようやく再開したようである。同社は、速やかに国際認証を取得し、マスバランス式のバイオポリプロピレンの販売をスタートさせる考えだ。バイオプロダクツの有望2製品は流れ品であるため、一度流れ出すと継続的に安定受注が期待できる。バイオプロダクツ関連事業は当初の事業計画よりやや遅れているが、3年以内に本格的事業化を目指している。
4) 海外事業分野:インド現地法人の事業拡大
同社は、2008年にインドへ進出(チェンナイにインド現地法人を設立)し、2011年にグルガオン地区に第2事務所を設立した。進出の初期段階は同社のビジネスにつながらなかったが、2019年5月に日系メーカーと共同でテクニカルセンターを設立したのをきっかけにフィーダー※事業を本格化し、現地の日系メーカーへ拡販を進めた。2024年3月期には、産業用重量式連続フィーダー、潤滑剤、自動車部品等取扱アイテムを強みに現地企業へも事業拡大を図っている。また、精密ファスナー関連事業ではインド市場進出を企図中で、今後の受注拡大が見込まれる。インドはグローバルサウス(Global South)市場として世界の企業から最も注目されており、同社においてもポスト中国事業として有望視されている。
※ 産業用連続フィーダーで、樹脂ペレットを流す(フィード)設備。
5) 海外事業分野:米国現地法人の新規事業
同社の米国法人は1956年の設立以来、重工業向け設備、航空宇宙分野、資源開発分野の最新技術、商材を国内市場に提供してきた。米国に進出する日系顧客のサプライチェーンを支援するため、同社のグローバル調達力、在庫管理で商材の安定供給を図ってきた。また、2022年には米国事務所をニューヨークからインディアナポリスへ移転した。近年は米国進出を狙う高い技術力を持った日系メーカーとともに積極的な顧客開拓を進め、新規事業を創出してきた。2024年6月に、機能性複合材料メーカーである西田技研の米国法人:「Nishida Art Speciality Composite America Inc.(Nasca Elastomers)と協業し、日系及び米国自動車部品メーカーへ熱可塑性エラストマー供給を開始した。今後は、西田技研との協業を深化させ、エラストマー製造分野の顧客へのソリューション提案を展開する予定である。
4. M&A戦略とその実行
M&Aは、同社のグループ経営を象徴する手法である。2008年の経営危機から脱出するため、同社は大きく舵を切り、中核事業の一つである航空・防衛関連を失った事業構造の再構築に取り組んだ。その際、新たな事業をM&Aにより取り込むことで再建を図った。その後、2018年までに6件のM&A(7年間)を連続して実施し、これらの案件はいずれも全社平均を上回る売上総利益率を達成した。これにより、持続的成長と高収益体質への事業構造転換を果たした。このような成功体験が積み重なった結果、同社ではM&Aが重要な成長戦略となり、中期経営計画でもM&Aの成長投資枠(50億円)が設定されており、望ましいM&A案件が見つかればすぐに対応できる体制が整えてきた。2018年以降、実際にはM&Aは行われてこなかったが、この間も水面下で検討が続けられており、M&Aが直前で破談になった案件もあったと聞いている。そのような状況の中、今回2つのM&A契約が成立した。(2024年8月30日発表)
(1) 三幸商会の株式取得(子会社化)
三幸商会は、汎用プラスチック&エンジニアリングプラスチック及び溶射材※を取り扱う専門商社であり、自動車部品・電化製品から半導体関連まで幅広い産業分野の樹脂材料のサプライチェーンに貢献している。また、海外進出した顧客の事業を支えるため、中国・東南アジア地域に拠点を設け、幅広く材料供給事業を展開している。同社の産業素材関連部門では、多種多様な細々した商材を扱ってきたが事業の柱がなかった。三幸商会をグループインすることにより、汎用プラスチック&エンジニアリングプラスチック分野の大きな事業の柱ができ、ビジネス展開上大きなメリットとなる。
※ 溶射材とは、産業界で広く利用されている溶射と呼ばれる表面改質技術において使用する金属やセラミックス、サーメットなどの材料。
(2) 船舶用補修材:ウエルストンの株式取得(孫会社化)
同社の機械部品関連部門の基幹子会社であるヱトーは産業向け精密ファスナー及び関連機械器具工具の販売を中心とした専門商社として、国内外の顧客を強力にサポートするため、培った経験をもとに品質保証や技術的ノウハウ、サプライチェーンを進化させ、中国・アセアン地区・北米地域に広く海外事業を展開している。一方、ウエルストンは、船舶補修部品の輸出や国内卸を主体とする専門商社で、幅広い仕入先と東南アジアを中心とした海外の顧客を数多く保有しており、近年拡大を続ける船舶のメンテナンス需要を取り込み、グローバルな事業展開を進めている。ヱトーはウエルストンを子会社化(同社からみれば孫会社)することにより、船舶補修部品という新たな市場に参入し、商材の開拓機会を創出することで収益基盤強化が図れる。一方、ウエルストンはヱトーが保有する資金力や多岐にわたる取引先、商品の管理ノウハウを活用することにより顧客対応力を強化し、ヱトーならびに同社グループのネットワークを生かしながら、船舶補修部品市場における優位性を築き、事業多角化を図る。ヱトーとウエルストンは、業界や取引先は異なるが、金属切削部品という共通商材・技術を活用し、機械部品の商流も類似性があるため、中長期的視点でみれば、事業シナジーが大いに期待できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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