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RSテクノ Research Memo(9):新規事業とM&A戦略により成長加速を狙う
配信日時:2024/10/09 15:09
配信元:FISCO
*15:09JST RSテクノ Research Memo(9):新規事業とM&A戦略により成長加速を狙う
■RS Technologies<3445>の今後の見通し
2. 中期経営計画
同社は2026年12月期までの3ヶ年の中期経営計画をスタートしており、業績目標として既存事業によるベースプランで売上高64,100百万円、営業利益16,830百万円、経常利益18,230百万円、親会社株主に帰属する当期純利益8,800百万円を掲げた。3年間の年平均成長率は売上高で7.3%、営業利益で12.3%、経常利益で6.9%と着実な成長を目指す。また、アップサイドプランとして、新規事業として取り組みを開始した再生可能エネルギー事業の成長と今後のM&Aによる効果を上乗せした目標値として、2026年12月期に売上高131,100百万円、営業利益24,200百万円を掲げた。M&Aの対象としては半導体業界に加えて、再生可能エネルギー業界にも事業領域を広げて検討する方針だ。
世界の半導体市場は、AI関連や自動車向けが牽引し2026年まで年率10%台前半の成長が期待できることから、既存事業の業績目標については達成可能な水準と弊社では見ている。米中半導体摩擦が続くなか、中国半導体市場へのマイナス影響が懸念されるが、中国では国策として半導体産業を育成する方針に変わりない。また、同社が手掛けるプライムウェーハは先端分野ではなくレガシー分野を対象としているため、最先端の半導体製造装置の輸出規制によるマイナス影響は受けないと考えている。実際、プライムウェーハ事業の収益は回復に向かっている。中国がパソコンやスマートフォン、自動車、家電製品などの主要生産拠点であり、国産の半導体利用を推奨していることから、中国及び中国以外の両方で事業展開をしていることは、同社の中長期的な業績においてリスク分散につながると弊社では評価している。
なお、中期経営計画では持分法適用関連会社で、12インチプライムウェーハの量産化を目指しているSGRSの業績については織り込んでいない。12インチプライムウェーハについては徳州工場で月産5万枚からスタートするが、当面はプライムウェーハの品質基準をクリアするための品質改善に取り組む予定であり、本格量産化は2027年頃となりそうなためだ。その間はモニター用ウェーハとして出荷を続けていく。
(1) ウェーハ再生事業
ウェーハ再生事業については、12インチ再生ウェーハの旺盛な需要に対応するため、日本及び台湾で能力増強を進めるほか、SGRSの徳州工場でも量産を開始し中国での需要を取り込む戦略である。このうち、国内と台湾を合わせた月産能力は2023年12月末の54万枚から2026年末は69万枚となる計画だ。国内では12インチウェーハの新工場としてJASM(株)(TSMC子会社)の熊本第1工場が2024年内に稼働を開始する。また、Micron Technologyの広島工場が2025年内に稼働開始するほか、SBIホールディングス<8473>と台湾のPSMCの合弁会社であるJSMC(株)が宮城県に新工場を建設し、2027年の稼働を予定するなど2024年以降合計9つの新工場プロジェクトが決まっている。これら新工場の需要に加えて、欧米市場での需要に対応することになる。台湾工場ではTSMC向けを中心に増産対応する計画だ。
また、SGRSの徳州工場でも2025年以降の2年間で60億円の設備投資を実施し、月産能力を2023年12月期末の5万枚から2026年12月期末には20万枚まで増強する。中国国内における12インチ再生ウェーハの新工場も17件程のプロジェクトが決まっており、これら需要に対応していく。
(2) プライムウェーハ事業
プライムウェーハ事業では、山東GRITEKの8インチの月産能力を2023年12月期末の13万枚から段階的に引き上げ2026年12月期末には28万枚と2倍強に拡大する計画で、3年間の累計設備投資額は80億円となる。2023年の中国内での8インチの市場シェアは5%程度の水準であり、シェア拡大による成長余地は大きい。将来的にはコスト競争力を生かして中国以外の市場への展開も視野に入れている。
一方、12インチプライムウェーハを手掛けるSGRSでは北京の研究開発棟に設置した月産1万枚規模のテストラインで、製品として販売できるレベルの品質基準をクリアしている。今後は徳州工場で段階的に能力増強を行い、2026年には月産21万枚まで増強する計画だ。
販売戦略としては、中国半導体メーカーをターゲットにボリュームゾーンである回路線幅28〜40ナノメートル品の品質基準を確保し、販売を拡大する。まずは中国市場でトップシェアを目指し、次のステップとしてグローバル市場でのボリュームゾーンである14〜20ナノメートル品の品質基準をクリアして、価格競争力を生かして海外の大手半導体メーカー向けに販売する戦略だ。ウェーハ再生事業の主要顧客先からは、品質基準の確保と安定供給体制さえ確立できれば価格メリットからプライムウェーハも購入したいとの意向を受けており、体制が整いさえすればシェアを拡大する可能性は十分にある。
(3) 第3の収益柱として半導体製造装置向け消耗部材を育成
同社は、ウェーハ再生事業、プライムウェーハ事業に続く第3の収益柱を育成するため、子会社のDG Technologiesで展開している半導体製造装置向け消耗部材に注力している。具体的には、ドライエッチング装置でシリコンウェーハを固定するための石英リングやシリコン電極など消耗部材の売上拡大を目指す。
同消耗部材の年間市場規模は約1,500億円と同社では推計しており、当面の売上目標としてシェア10%(約150億円)を目指す。現在の売上規模は数十億円規模で収益性も低いが、将来的にはウェーハ再生事業と同等の30%台まで引き上げることを目標にしている。競合は国内、台湾、韓国、米国などに複数社あるが、品質や技術力では同等以上の水準にあると見られる。多品種少量生産となるため生産効率の低い点が課題で、自動化設備の導入や生産管理の強化等による生産性向上、材料調達コストの低減に取り組んでいる。営業面ではウェーハ再生事業の顧客に対してクロスセルを実施するとともに、大手ドライエッチング装置メーカー向けに純正品として納入することで売上を拡大する戦略で、長期目標として世界シェア約3割、売上高450億円を目指す。石英ガラスの競合であるテクノクオーツ<5217>の事業規模は、2024年3月期の実績で売上高170億円、営業利益率で21%の水準となっており、DG Technologiesも売上規模が拡大すれば営業利益率で20%前後の水準まで引き上げることは可能と弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 中期経営計画
同社は2026年12月期までの3ヶ年の中期経営計画をスタートしており、業績目標として既存事業によるベースプランで売上高64,100百万円、営業利益16,830百万円、経常利益18,230百万円、親会社株主に帰属する当期純利益8,800百万円を掲げた。3年間の年平均成長率は売上高で7.3%、営業利益で12.3%、経常利益で6.9%と着実な成長を目指す。また、アップサイドプランとして、新規事業として取り組みを開始した再生可能エネルギー事業の成長と今後のM&Aによる効果を上乗せした目標値として、2026年12月期に売上高131,100百万円、営業利益24,200百万円を掲げた。M&Aの対象としては半導体業界に加えて、再生可能エネルギー業界にも事業領域を広げて検討する方針だ。
世界の半導体市場は、AI関連や自動車向けが牽引し2026年まで年率10%台前半の成長が期待できることから、既存事業の業績目標については達成可能な水準と弊社では見ている。米中半導体摩擦が続くなか、中国半導体市場へのマイナス影響が懸念されるが、中国では国策として半導体産業を育成する方針に変わりない。また、同社が手掛けるプライムウェーハは先端分野ではなくレガシー分野を対象としているため、最先端の半導体製造装置の輸出規制によるマイナス影響は受けないと考えている。実際、プライムウェーハ事業の収益は回復に向かっている。中国がパソコンやスマートフォン、自動車、家電製品などの主要生産拠点であり、国産の半導体利用を推奨していることから、中国及び中国以外の両方で事業展開をしていることは、同社の中長期的な業績においてリスク分散につながると弊社では評価している。
なお、中期経営計画では持分法適用関連会社で、12インチプライムウェーハの量産化を目指しているSGRSの業績については織り込んでいない。12インチプライムウェーハについては徳州工場で月産5万枚からスタートするが、当面はプライムウェーハの品質基準をクリアするための品質改善に取り組む予定であり、本格量産化は2027年頃となりそうなためだ。その間はモニター用ウェーハとして出荷を続けていく。
(1) ウェーハ再生事業
ウェーハ再生事業については、12インチ再生ウェーハの旺盛な需要に対応するため、日本及び台湾で能力増強を進めるほか、SGRSの徳州工場でも量産を開始し中国での需要を取り込む戦略である。このうち、国内と台湾を合わせた月産能力は2023年12月末の54万枚から2026年末は69万枚となる計画だ。国内では12インチウェーハの新工場としてJASM(株)(TSMC子会社)の熊本第1工場が2024年内に稼働を開始する。また、Micron Technologyの広島工場が2025年内に稼働開始するほか、SBIホールディングス<8473>と台湾のPSMCの合弁会社であるJSMC(株)が宮城県に新工場を建設し、2027年の稼働を予定するなど2024年以降合計9つの新工場プロジェクトが決まっている。これら新工場の需要に加えて、欧米市場での需要に対応することになる。台湾工場ではTSMC向けを中心に増産対応する計画だ。
また、SGRSの徳州工場でも2025年以降の2年間で60億円の設備投資を実施し、月産能力を2023年12月期末の5万枚から2026年12月期末には20万枚まで増強する。中国国内における12インチ再生ウェーハの新工場も17件程のプロジェクトが決まっており、これら需要に対応していく。
(2) プライムウェーハ事業
プライムウェーハ事業では、山東GRITEKの8インチの月産能力を2023年12月期末の13万枚から段階的に引き上げ2026年12月期末には28万枚と2倍強に拡大する計画で、3年間の累計設備投資額は80億円となる。2023年の中国内での8インチの市場シェアは5%程度の水準であり、シェア拡大による成長余地は大きい。将来的にはコスト競争力を生かして中国以外の市場への展開も視野に入れている。
一方、12インチプライムウェーハを手掛けるSGRSでは北京の研究開発棟に設置した月産1万枚規模のテストラインで、製品として販売できるレベルの品質基準をクリアしている。今後は徳州工場で段階的に能力増強を行い、2026年には月産21万枚まで増強する計画だ。
販売戦略としては、中国半導体メーカーをターゲットにボリュームゾーンである回路線幅28〜40ナノメートル品の品質基準を確保し、販売を拡大する。まずは中国市場でトップシェアを目指し、次のステップとしてグローバル市場でのボリュームゾーンである14〜20ナノメートル品の品質基準をクリアして、価格競争力を生かして海外の大手半導体メーカー向けに販売する戦略だ。ウェーハ再生事業の主要顧客先からは、品質基準の確保と安定供給体制さえ確立できれば価格メリットからプライムウェーハも購入したいとの意向を受けており、体制が整いさえすればシェアを拡大する可能性は十分にある。
(3) 第3の収益柱として半導体製造装置向け消耗部材を育成
同社は、ウェーハ再生事業、プライムウェーハ事業に続く第3の収益柱を育成するため、子会社のDG Technologiesで展開している半導体製造装置向け消耗部材に注力している。具体的には、ドライエッチング装置でシリコンウェーハを固定するための石英リングやシリコン電極など消耗部材の売上拡大を目指す。
同消耗部材の年間市場規模は約1,500億円と同社では推計しており、当面の売上目標としてシェア10%(約150億円)を目指す。現在の売上規模は数十億円規模で収益性も低いが、将来的にはウェーハ再生事業と同等の30%台まで引き上げることを目標にしている。競合は国内、台湾、韓国、米国などに複数社あるが、品質や技術力では同等以上の水準にあると見られる。多品種少量生産となるため生産効率の低い点が課題で、自動化設備の導入や生産管理の強化等による生産性向上、材料調達コストの低減に取り組んでいる。営業面ではウェーハ再生事業の顧客に対してクロスセルを実施するとともに、大手ドライエッチング装置メーカー向けに純正品として納入することで売上を拡大する戦略で、長期目標として世界シェア約3割、売上高450億円を目指す。石英ガラスの競合であるテクノクオーツ<5217>の事業規模は、2024年3月期の実績で売上高170億円、営業利益率で21%の水準となっており、DG Technologiesも売上規模が拡大すれば営業利益率で20%前後の水準まで引き上げることは可能と弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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