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ジーニー Research Memo(4):2024年3月期は売上収益・売上総利益が2ケタ増(1)
配信日時:2024/10/09 13:04
配信元:FISCO
*13:04JST ジーニー Research Memo(4):2024年3月期は売上収益・売上総利益が2ケタ増(1)
■ジーニー<6562>の業績動向
1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の連結業績は、売上収益8,012百万円(前期比24.1%増)、売上総利益6,138百万円(同19.4%増)、営業利益1,538百万円(同37.4%減)、税引前利益1,277百万円(同44.0%減)、当期利益1,035百万円(同51.0%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益1,031百万円(同51.2%減)で着地した。営業利益以下の段階利益は減益となったが、主因は、前期に計上した米Zeltoの子会社化に伴う時価評価益の反動や、人件費及び外注費(10億円)、広告宣伝費及び販促費(1億円)などの成長投資である。一過性損益であるZeltoに対するアーンアウト※減額益(5.5億円)及び旧株主への義務免除益(1.1億円)調整後の営業利益は8.7億円となり、前期の約11.1億円より同22%減となった。
売上面では、主力の広告プラットフォーム事業においてサプライサイドビジネスでの動画領域の業績が拡大したことや、デマンドサイドビジネスでのパフォーマンス領域での業績進展が貢献した。電通グループ<4324>が公表した「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」※では、ビデオ(動画)広告やデジタル販促の伸長により、インターネット広告媒体費は前年比8.3%増の2兆6,870億円となった。同事業の2024年3月期増収率は前期比9.9%増とそれを上回っており、高い成長性を示している。ほかにも、マーケティングSaaS事業におけるエンタープライズ層顧客の開拓が増収に寄与した。
※ 出典:電通「2023年 日本の広告費」
事業別に見ると、主力の広告プラットフォーム事業の売上収益は4,306百万円(前期比9.9%増)、セグメント利益は2,244百万円(同3.7%増)と増収増益を確保した。好調の主な要因としては、前述のとおり、サプライサイドビジネスでの動画領域の業績が拡大したことが挙げられる。マーケティングSaaS事業は売上収益2,704百万円(同36.8%増)、セグメント利益215百万円(同151.1%増)と大幅な増収増益となった。好調な要因として、SFA/CRMといった営業支援・管理システムの受注が伸びたほか、CHATの受注増加も顕著であった。同社は同事業においてもエンタープライズ領域での顧客開拓に注力しているが、顧客企業が持つ自社システムとの連携をはじめとする個社別ニーズに対して受託開発という形で柔軟に対応する、顧客満足度を高める施策が大きく寄与した。ほかにも、大手広告代理店との紐帯を強化し、自社製品を顧客企業にリコメンドしてもらう等の施策が奏功して売上収益増につながった。また広告効果測定ツールである「CATS」は2022年に同社が子会社化したCATS(株)が運営するサービスであるが、こちらも課金形態の変更や受託開発案件の増加により業績に貢献している。同社の製品群は競合他社との競争が激しい分野ではあるが、上記のような顧客ニーズに寄り添った対応や、他社比優位なコストパフォーマンスが競争力の源泉の1つになっていると弊社では見ている。海外事業は売上収益1,249百万円(同59.4%増)、セグメント利益201百万円(同40.6%減)と増収減益となった。
2024年3月期中に修正した通期業績予想との対比では、広告プラットフォーム事業は売上収益(達成率100.2%)、セグメント利益(同102.0%)とも計画値を達成したが、マーケティングSaaS事業は売上収益(同93.2%)、セグメント利益(同53.9%)、海外事業は売上収益(同89.2%)、セグメント利益(同67.1%)と計画値未達となった。同社は主な理由を2点挙げている。1点目は北米の広告市場のリセッションに伴う影響である。市況の改善が見込めず、大手のプレイヤーであるGoogle等が広告単価を引き下げたこと等が、国内広告市場にも影響を与えた。後半はやや盛り返したものの期中を通じて予想を下回った。2点目はマーケティングSaaS事業におけるエンタープライズ顧客からの受注タイミングのずれである。これらにより全体の修正通期計画に対する達成率は・売上収益、各段階利益ともに計画未達となった。
2. 2025年3月期第1四半期の業績概要
同社は2024年8月13日に2025年3月期第1四半期の決算発表を行った。売上収益2,265百万円(前年同期比26.2%増)、売上総利益1,740百万円(同26.5%増)、営業利益815百万円(同633.7%増)、税引前利益748百万円(前年同期は8百万円)、四半期利益670百万円(同6百万円)、親会社の所有者に帰属する四半期利益672百万円(同4百万円)で着地した。営業利益も前年同期比で大幅増となったが、これにはZeltoのM&Aに関するアーンアウトの取り崩しに伴う一過性の利益を含む。それを除いた正常ベースでも170百万円(前年同期比53.2%増)となり、売上・利益とも順調な進捗を見せた。セグメント別の状況では、主力の広告プラットフォーム事業は前期から好調なサプライサイド向けの事業が順調に推移した。またマーケティングSaaS事業では2024年3月期の大型案件の納品が完了して月次収益獲得の段階に達したことに加え、受託開発案件や、SFA/CRMやCHAT分野でのエンタープライズ領域の顧客開拓が進んだ。海外事業ではZeltoに対するマネジメントが進み、同社との事業統合を推進している。一般的に広告プラットフォーム事業は下期に収益が拡大する傾向にあるが、2025年3月期は第1四半期から前期の好調を引き継いでいる状況が窺われ、第2四半期以降の業績にも期待したい。
3. 2025年3月期第1四半期のセグメント別業績
(1) 広告プラットフォーム事業
2025年3月期第1四半期業績は、売上収益1,179百万円(前年同期比24.4%増)、セグメント利益581百万円(同26.4%増)と増収増益となった。サプライサイド向けのビジネスにおいては、2024年3月期よりこれまで未開拓であった動画領域向けの案件を積極的に開拓しているが、今期もその流れを汲み業績拡大につなげた。また新規媒体に加え、既存媒体においても広告単価向上策を進めたことで1社当たりの売上単価が上昇したほか、エンタープライズ向け取引が拡大したことで売上収益の増加を果たした。同社では1社当たりの売上収益を「社単」として経営上のKPIとしているが、エンタープライズ案件の増加に伴い、2024年第1四半期時点と比較すると1,500千円から2,000千円程度に向上した。取引社数もKPIとして管理しているが、同比較では200社前後で大差はないため、社単の増加が収益増に結び付いている状況が窺える。同社は今後も顧客単価上昇が見込めるプロダクトの開発・拡販を推進する考えであり、収益増への貢献が期待できる。売上単価の向上やエンタープライズ向け取引の増加によって売上総利益も拡大しており、2025年3月期第1四半期の売上総利益は四半期単体で前年同期比25.3%増の9.9億円を確保し、増加率は前年同期の増加率と比較して24.0ポイント向上した。
エンタープライズ領域での顧客獲得において同社が高い実績を挙げている背景には、提供するプロダクトやコストパフォーマンスといった競争力がある。シェアを獲得するためには、顧客企業の既契約先が提供するサービスとの競合を勝ち抜く必要があり、同社は顧客企業の事業セグメント毎に競合する企業のプロダクトやサービスを分析し、自社の劣位する部分を機能アップした形で顧客企業に提案している。また、顧客企業のニーズを的確に捉え、競合企業に対して同等以上の機能を持つサービスをより安価で提供することで、サービスのリプレイスに成功している。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の連結業績は、売上収益8,012百万円(前期比24.1%増)、売上総利益6,138百万円(同19.4%増)、営業利益1,538百万円(同37.4%減)、税引前利益1,277百万円(同44.0%減)、当期利益1,035百万円(同51.0%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益1,031百万円(同51.2%減)で着地した。営業利益以下の段階利益は減益となったが、主因は、前期に計上した米Zeltoの子会社化に伴う時価評価益の反動や、人件費及び外注費(10億円)、広告宣伝費及び販促費(1億円)などの成長投資である。一過性損益であるZeltoに対するアーンアウト※減額益(5.5億円)及び旧株主への義務免除益(1.1億円)調整後の営業利益は8.7億円となり、前期の約11.1億円より同22%減となった。
売上面では、主力の広告プラットフォーム事業においてサプライサイドビジネスでの動画領域の業績が拡大したことや、デマンドサイドビジネスでのパフォーマンス領域での業績進展が貢献した。電通グループ<4324>が公表した「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」※では、ビデオ(動画)広告やデジタル販促の伸長により、インターネット広告媒体費は前年比8.3%増の2兆6,870億円となった。同事業の2024年3月期増収率は前期比9.9%増とそれを上回っており、高い成長性を示している。ほかにも、マーケティングSaaS事業におけるエンタープライズ層顧客の開拓が増収に寄与した。
※ 出典:電通「2023年 日本の広告費」
事業別に見ると、主力の広告プラットフォーム事業の売上収益は4,306百万円(前期比9.9%増)、セグメント利益は2,244百万円(同3.7%増)と増収増益を確保した。好調の主な要因としては、前述のとおり、サプライサイドビジネスでの動画領域の業績が拡大したことが挙げられる。マーケティングSaaS事業は売上収益2,704百万円(同36.8%増)、セグメント利益215百万円(同151.1%増)と大幅な増収増益となった。好調な要因として、SFA/CRMといった営業支援・管理システムの受注が伸びたほか、CHATの受注増加も顕著であった。同社は同事業においてもエンタープライズ領域での顧客開拓に注力しているが、顧客企業が持つ自社システムとの連携をはじめとする個社別ニーズに対して受託開発という形で柔軟に対応する、顧客満足度を高める施策が大きく寄与した。ほかにも、大手広告代理店との紐帯を強化し、自社製品を顧客企業にリコメンドしてもらう等の施策が奏功して売上収益増につながった。また広告効果測定ツールである「CATS」は2022年に同社が子会社化したCATS(株)が運営するサービスであるが、こちらも課金形態の変更や受託開発案件の増加により業績に貢献している。同社の製品群は競合他社との競争が激しい分野ではあるが、上記のような顧客ニーズに寄り添った対応や、他社比優位なコストパフォーマンスが競争力の源泉の1つになっていると弊社では見ている。海外事業は売上収益1,249百万円(同59.4%増)、セグメント利益201百万円(同40.6%減)と増収減益となった。
2024年3月期中に修正した通期業績予想との対比では、広告プラットフォーム事業は売上収益(達成率100.2%)、セグメント利益(同102.0%)とも計画値を達成したが、マーケティングSaaS事業は売上収益(同93.2%)、セグメント利益(同53.9%)、海外事業は売上収益(同89.2%)、セグメント利益(同67.1%)と計画値未達となった。同社は主な理由を2点挙げている。1点目は北米の広告市場のリセッションに伴う影響である。市況の改善が見込めず、大手のプレイヤーであるGoogle等が広告単価を引き下げたこと等が、国内広告市場にも影響を与えた。後半はやや盛り返したものの期中を通じて予想を下回った。2点目はマーケティングSaaS事業におけるエンタープライズ顧客からの受注タイミングのずれである。これらにより全体の修正通期計画に対する達成率は・売上収益、各段階利益ともに計画未達となった。
2. 2025年3月期第1四半期の業績概要
同社は2024年8月13日に2025年3月期第1四半期の決算発表を行った。売上収益2,265百万円(前年同期比26.2%増)、売上総利益1,740百万円(同26.5%増)、営業利益815百万円(同633.7%増)、税引前利益748百万円(前年同期は8百万円)、四半期利益670百万円(同6百万円)、親会社の所有者に帰属する四半期利益672百万円(同4百万円)で着地した。営業利益も前年同期比で大幅増となったが、これにはZeltoのM&Aに関するアーンアウトの取り崩しに伴う一過性の利益を含む。それを除いた正常ベースでも170百万円(前年同期比53.2%増)となり、売上・利益とも順調な進捗を見せた。セグメント別の状況では、主力の広告プラットフォーム事業は前期から好調なサプライサイド向けの事業が順調に推移した。またマーケティングSaaS事業では2024年3月期の大型案件の納品が完了して月次収益獲得の段階に達したことに加え、受託開発案件や、SFA/CRMやCHAT分野でのエンタープライズ領域の顧客開拓が進んだ。海外事業ではZeltoに対するマネジメントが進み、同社との事業統合を推進している。一般的に広告プラットフォーム事業は下期に収益が拡大する傾向にあるが、2025年3月期は第1四半期から前期の好調を引き継いでいる状況が窺われ、第2四半期以降の業績にも期待したい。
3. 2025年3月期第1四半期のセグメント別業績
(1) 広告プラットフォーム事業
2025年3月期第1四半期業績は、売上収益1,179百万円(前年同期比24.4%増)、セグメント利益581百万円(同26.4%増)と増収増益となった。サプライサイド向けのビジネスにおいては、2024年3月期よりこれまで未開拓であった動画領域向けの案件を積極的に開拓しているが、今期もその流れを汲み業績拡大につなげた。また新規媒体に加え、既存媒体においても広告単価向上策を進めたことで1社当たりの売上単価が上昇したほか、エンタープライズ向け取引が拡大したことで売上収益の増加を果たした。同社では1社当たりの売上収益を「社単」として経営上のKPIとしているが、エンタープライズ案件の増加に伴い、2024年第1四半期時点と比較すると1,500千円から2,000千円程度に向上した。取引社数もKPIとして管理しているが、同比較では200社前後で大差はないため、社単の増加が収益増に結び付いている状況が窺える。同社は今後も顧客単価上昇が見込めるプロダクトの開発・拡販を推進する考えであり、収益増への貢献が期待できる。売上単価の向上やエンタープライズ向け取引の増加によって売上総利益も拡大しており、2025年3月期第1四半期の売上総利益は四半期単体で前年同期比25.3%増の9.9億円を確保し、増加率は前年同期の増加率と比較して24.0ポイント向上した。
エンタープライズ領域での顧客獲得において同社が高い実績を挙げている背景には、提供するプロダクトやコストパフォーマンスといった競争力がある。シェアを獲得するためには、顧客企業の既契約先が提供するサービスとの競合を勝ち抜く必要があり、同社は顧客企業の事業セグメント毎に競合する企業のプロダクトやサービスを分析し、自社の劣位する部分を機能アップした形で顧客企業に提案している。また、顧客企業のニーズを的確に捉え、競合企業に対して同等以上の機能を持つサービスをより安価で提供することで、サービスのリプレイスに成功している。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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