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巴川紙 Research Memo(7):商号変更を実施し事業ポートフォリオの転換で新たな成長を目指す(2)

配信日時:2024/10/08 12:07 配信元:FISCO
*12:07JST 巴川紙 Research Memo(7):商号変更を実施し事業ポートフォリオの転換で新たな成長を目指す(2) ■巴川コーポレーション<3878>の中期の成長戦略

3. セグメント分類と事業ポートフォリオの見直し
事業セグメントについて4つの事業ポートフォリオに括りなおした上で、特に「新規成長事業(半導体関連部品、機能性不織布)、「現在の主力事業」である半導体実装用テープとトナー事業を「注力事業」として成長を目指すこととした。以下、事業別にみていく。

(1) トナー事業はシェア拡大で収益成長見込む
トナー事業は中国メーカーとの棲み分けができており、カラートナーなどの高機能品の拡大を目指す。2025年3月期は中国、欧州で落ち込んでいたモノクロトナーが在庫調整一巡で売上は回復傾向にある。2026年3月期は利益率の高いカラートナーの拡販に注力する計画で、売上高150億円、営業利益22.2億円を見込む。現状、ペーパーレス化の流れのなか、トナー市場全体として伸びが望みにくい環境にある。しかし同社は独立系トナー最大手としてスケールメリットを有するほか、複写機・プリンターメーカーからのOEM受託生産拡大が見込まれることに加え、低温度定着化や低消費量化といった環境配慮型トナーなど差別化製品も期待できる。また一部でトナー事業から撤退するメーカーも出ており、注力事業として成熟市場の中でもシェア拡大で収益成長を実現する計画である。

(2) 半導体・ディスプレイ関連事業は半導体製造装置向けに「熱・電気・電磁波制御」、「省エネ」に注力
半導体・ディスプレイ関連事業は2026年3月期に売上高87億円、営業利益12.7億円を見込んでおり、中期経営計画の収益の伸びを支える事業として期待がかかる。特に成長の中心となるのは半導体関連部品で、2026年3月期に新製品効果で売上高33億円(2024年3月期比3.8倍、30.9億円増)を見込む。中でも半導体設備投資の本格拡大を受けて「熱・電気・電磁波制御」「省エネ」を実現するための「フレキシブル面状ヒーター」「高性能ヒートシンク」などで急拡大を見込む。同社は1980年代より、ステンレスやセラミックスといった金属、無機材料を繊維化、シート化する技術開発を行ってきた。ステンレス100%の多孔質シートは金属繊維同士が交互で融着しているため繊維剥離が少なく、耐熱性、耐薬品性、導電性などを備え、1998年にはノートPC用電磁波シールド材として上市した。また2016年に世界で初めて銅繊維のシート化に成功、大電流、小型化が求められるデバイスへの用途展開を模索していた。これらの金属繊維シートを利活用した「フレキシブル面状ヒーター」「高性能ヒートシンク」は半導体製造装置向け重要部材として付加価値が高まり売上拡大が期待されている。

特に「フレキシブル面状ヒーター」はステンレス繊維シートに熱を通すと瞬時に数百度まで加熱が可能で、製造装置部材の加熱したい部分に密着し、効率的に熱を伝えるため、条件によってはニクロム線ヒーターと比較して30%以上の省エネ効果が期待できる。半導体工場では電力使用量の中で加熱が冷却と同程度の22%程度の負荷となっており、加熱の電力消費量を半減できる可能性がある。さらに通常のニクロム線ヒーターを面状にすると面内に凹凸が発生するが、このシートは均質な面で、微細な繊維が結合された発熱体であるため精密な温度制御ができ、断線リスクも低減できる。同製品は量産化が始まり、2023年12月に日本の半導体製造装置トップの東京エレクトロンから「環境パートナー賞」を受賞するなど注目度が高い。現在、加熱ヒーター市場はマントルヒーター(ガラスなどの耐熱繊維で被覆した電熱線を、保温材で包み込んだ加熱・保温装置)として400億円程度の規模とみられる。独自開発製品であるため東京エレクトロン以外への拡販も可能であり、2026年3月期には10億円を超える売上規模、それ以降も既存ヒーターの代替も含め売上加速が期待される。

また銅繊維シートは表面積の大きさを利用して、「高性能ヒートシンク材」としての利用を狙う。比表面積が50〜100倍となる独自金属材料を用いることで放熱効率が従来品の2〜3倍も得られることから、半導体製造装置のコンパクト化に役立つだけでなく水冷から空冷化も可能となる装置の流路設計の自由度が上がり、省エネ効果も大きい。製造装置の温度制御に加えて工業設備でも利用が見込まれ、2026年3月期には量産化も期待される。放熱対策は半導体製造装置の大きな課題であり、本格採用となれば大きな利益を生む製品に育つと見られる。

半導体実装用テープについては信頼性を求める車載半導体などで引き続きQFNなどが使用されるとみられ、車載半導体の搭載数増加で緩やかな拡大が見込まれ、2026年3月期に売上高39億円を見込み、半導体・ディスプレイ関連事業では引き続き最大売上を確保しよう。

一方、「新型静電チャック」は新モデルに内蔵され本格量産を2025年3月期に見込んでいたが開発方針見直しとなった。2026年3月期には従来品に加え10億円を超える売上を期待していたが、現在の主力製品であるレガシー半導体向けの従来型静電チャックの売上維持に止まろう。

光学フィルムについては損益分岐点を引き下げており、需要減でも損失化しない体制をとっている。発注があれば利益貢献する認識で、2026年3月期には売上高15億円(2024年3月期比6.1億円減)を見込んでいる。
全体として87億円の達成には「新型静電チャック」の想定売上をフレキシブル面状ヒーターなどで埋められるかがポイントとなるが、光学フィルム向けを慎重に見ており、結果として売上での計画達成は十分可能とみられる。ただし、利益面では高付加価値分野の売上がいかに拡大するかが達成の鍵となろう。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)

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