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上新電機 Research Memo(1):ファンベース戦略等で競争の厳しい家電量販店業界での中長期的な成長を目指す
配信日時:2024/06/06 16:01
配信元:FISCO
*16:01JST 上新電機 Research Memo(1):ファンベース戦略等で競争の厳しい家電量販店業界での中長期的な成長を目指す
■要約
上新電機<8173>は、日本の大手家電量販店の1社であり、家電製品や情報通信機器、エンターテインメント商品、住宅設備機器などの販売を中心に手掛けている。また、製品販売だけでなく、その付帯業務や商品の修理、配送、保守業務までカバーしており、販売にとどまらない充実した周辺サービスの提供に強みや特徴を持っている。
1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の業績は、売上高が前期比1.2%減の403,692百万円、営業利益が同0.6%増の8,364百万円、経常利益が同0.8%減の8,251百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同1.6%減の4,891百万円となり、期初に発表した業績予想である売上高410,000百万円、営業利益9,000百万円、経常利益9,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益6,000百万円に対しては、全ての項目において下振れての着地となった。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)からの経済正常化の流れのなか、顧客がECからリアル店舗への来店・購入に再シフトするなか、同業他社に比べてECに対して積極的に取り組んできたことが、短期的に同社業績の向かい風になったとも言えよう。
2. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比1.6%増の410,000百万円、営業利益が同7.6%増の9,000百万円、経常利益が同9.1%増の9,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同22.7%増の6,000百万円を見込む。営業利益率は2.2%と2024年3月期の2.1%とわずか0.1%の改善だけに留まる計画なのはやや物足りなく映る。商品カテゴリー別では、同社が得意とするゲーム機は主力メーカーの新機種発売前の移行期にあたるため売上高が大きく減少する可能性が高い一方、2024年3月期に売上高が減少したエアコンやパソコンなどは増加へ転じる可能性が高そうだ。
3. 中期経営計画「JT-2025経営計画」の概要
同社は2023年5月に2026年3月期を最終年度とする3年間の中期経営計画「JT-2025経営計画」を公表した。数値目標としては、2026年3月期において売上高4,200億円、営業利益110億円、営業利益率2.6%、ROE8.0%以上、ROA及びROIC5.0%以上、配当性向30%以上、3ヶ年営業キャッシュ・フロー累計400~450億円、また、2031年3月期のあるべき姿は、営業利益率4.0%レベル、ROE10.0%以上、ROA及びROI7.0%以上、配当性向30%以上持続としている。やみくもに売上高の拡大を追うことなく、ファンベース戦略やドミナント戦略を実行することで収益性を重視し、営業利益率の改善に主眼を置いた計画だ。また、営業利益率以上にROEの大幅な改善を狙っており、その実現のためには2024年3月に発表された配当性向の30%から40%への引き上げだけでなく、さらなる配当性向の引き上げや自己株式の取得などによる自己資本の圧縮についても一段と積極的に検討する必要があるだろう。弊社の試算では、ROE8.0%を達成するためには、2024年3月期末の純資産104,613百万円を2026年3月期末には94,000百万円程度へ圧縮するか、純資産を圧縮しない場合は2026年3月期の営業利益を120億円超と現在の前提から超過しない限りこの目標の達成は難しい。上場企業各社がPBR1倍の達成に向けた取り組みを強化するなか、同社も中期経営計画で公表したROE8.0%は必達目標として、収益力の拡大と自己株式の取得も含めたさらなる株主還元の強化に期待したい。
■Key Points
・2024年3月期は期初計画に対して売上高、営業利益ともに下振れて着地。競合他社比で相対的に売上比率の高いEC販売がコロナ禍からの経済正常化の流れのなかで減収へと転じたことが大きく影響した
・2025年3月期は中期経営計画2年目として増収増益を計画し、初年度の出遅れからの回復を狙う。また、株主還元強化の姿勢を打ち出しており、配当性向目標が30%から40%へ引き上げられたが、今後さらなる還元強化の可能性もあろう
・家電量販店は小売業のなかでも利益率が相対的に低く、専業ECとの競争も厳しい。同社は規模の拡大を追い求めず、アフターサービス体制の強みなどを生かした顧客ロイヤルティの向上で差別化を推進、中長期的に利益率の向上を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
<HN>
上新電機<8173>は、日本の大手家電量販店の1社であり、家電製品や情報通信機器、エンターテインメント商品、住宅設備機器などの販売を中心に手掛けている。また、製品販売だけでなく、その付帯業務や商品の修理、配送、保守業務までカバーしており、販売にとどまらない充実した周辺サービスの提供に強みや特徴を持っている。
1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の業績は、売上高が前期比1.2%減の403,692百万円、営業利益が同0.6%増の8,364百万円、経常利益が同0.8%減の8,251百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同1.6%減の4,891百万円となり、期初に発表した業績予想である売上高410,000百万円、営業利益9,000百万円、経常利益9,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益6,000百万円に対しては、全ての項目において下振れての着地となった。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)からの経済正常化の流れのなか、顧客がECからリアル店舗への来店・購入に再シフトするなか、同業他社に比べてECに対して積極的に取り組んできたことが、短期的に同社業績の向かい風になったとも言えよう。
2. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比1.6%増の410,000百万円、営業利益が同7.6%増の9,000百万円、経常利益が同9.1%増の9,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同22.7%増の6,000百万円を見込む。営業利益率は2.2%と2024年3月期の2.1%とわずか0.1%の改善だけに留まる計画なのはやや物足りなく映る。商品カテゴリー別では、同社が得意とするゲーム機は主力メーカーの新機種発売前の移行期にあたるため売上高が大きく減少する可能性が高い一方、2024年3月期に売上高が減少したエアコンやパソコンなどは増加へ転じる可能性が高そうだ。
3. 中期経営計画「JT-2025経営計画」の概要
同社は2023年5月に2026年3月期を最終年度とする3年間の中期経営計画「JT-2025経営計画」を公表した。数値目標としては、2026年3月期において売上高4,200億円、営業利益110億円、営業利益率2.6%、ROE8.0%以上、ROA及びROIC5.0%以上、配当性向30%以上、3ヶ年営業キャッシュ・フロー累計400~450億円、また、2031年3月期のあるべき姿は、営業利益率4.0%レベル、ROE10.0%以上、ROA及びROI7.0%以上、配当性向30%以上持続としている。やみくもに売上高の拡大を追うことなく、ファンベース戦略やドミナント戦略を実行することで収益性を重視し、営業利益率の改善に主眼を置いた計画だ。また、営業利益率以上にROEの大幅な改善を狙っており、その実現のためには2024年3月に発表された配当性向の30%から40%への引き上げだけでなく、さらなる配当性向の引き上げや自己株式の取得などによる自己資本の圧縮についても一段と積極的に検討する必要があるだろう。弊社の試算では、ROE8.0%を達成するためには、2024年3月期末の純資産104,613百万円を2026年3月期末には94,000百万円程度へ圧縮するか、純資産を圧縮しない場合は2026年3月期の営業利益を120億円超と現在の前提から超過しない限りこの目標の達成は難しい。上場企業各社がPBR1倍の達成に向けた取り組みを強化するなか、同社も中期経営計画で公表したROE8.0%は必達目標として、収益力の拡大と自己株式の取得も含めたさらなる株主還元の強化に期待したい。
■Key Points
・2024年3月期は期初計画に対して売上高、営業利益ともに下振れて着地。競合他社比で相対的に売上比率の高いEC販売がコロナ禍からの経済正常化の流れのなかで減収へと転じたことが大きく影響した
・2025年3月期は中期経営計画2年目として増収増益を計画し、初年度の出遅れからの回復を狙う。また、株主還元強化の姿勢を打ち出しており、配当性向目標が30%から40%へ引き上げられたが、今後さらなる還元強化の可能性もあろう
・家電量販店は小売業のなかでも利益率が相対的に低く、専業ECとの競争も厳しい。同社は規模の拡大を追い求めず、アフターサービス体制の強みなどを生かした顧客ロイヤルティの向上で差別化を推進、中長期的に利益率の向上を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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