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窪田製薬HD Research Memo(6):「eyeMO」はインド大手企業と共同開発に向けた契約を締結
配信日時:2024/04/16 13:26
配信元:FISCO
*13:26JST 窪田製薬HD Research Memo(6):「eyeMO」はインド大手企業と共同開発に向けた契約を締結
■窪田製薬ホールディングス<4596>の主要開発パイプラインの概要と進捗状況
2. 在宅・遠隔眼科医療用網膜モニタリング機器「eyeMO」
(1) 「eyeMO」の特徴と競合状況
「eyeMO」※は、ウェット型加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫等の網膜疾患の患者を対象にした在宅・遠隔眼科医療用網膜モニタリング機器(Patient Based Ophthalmology Suite)である。患者自身が自宅で網膜の厚みの測定や撮影を行い、担当医師がインターネットを介してそのデータを確認し、治療(投薬)の必要性の有無を診断するシステムとなる。
※従来はPBOSとして表記してきたが、2023年12月に商品名が「eyeMO」に決定したため、以後「eyeMO」で表記する。名前の由来はeye(眼)とMonitoring(観察)のMoを組み合わせたものである。
従来、患者は定期的に通院してOCT※検査を行い、必要に応じて治療(眼内注射)を行っていた。「eyeMO」では、在宅で手軽に検査できることから検査のための通院の必要性がなくなるほか、適切なタイミングで治療を受けることで、症状が悪化するリスクを低減できるといったメリットがある。距離や経済的な問題で定期的に通院できず症状を悪化させる患者も多いだけに、在宅で手軽に検査できるデバイスの潜在的なニーズは大きい。病院側でも検査より治療に充てる時間を増やしたほうが経営面でプラスとなるほか、製薬企業にとっても適切な投薬が実施されることで従来よりも販売量が増える可能性があり、すべての関係者がメリットを享受できる仕組みとなっているのが特徴だ。
※OCT(Optical Coherence Tomography):赤外線を利用して網膜の断面を精密に撮影する検査機器のこと。緑内障や加齢黄斑変性等の網膜疾患患者の診断用として使用される。
在宅OCTを商用化している企業はまだなく、開発済みの企業としては同社のほかNotal Vision, Inc.など数社に限られる。同社製品は、操作ボタンの大型化や操作方法を音声ガイダンスでサポートする機能を実装するなど、高齢の患者に配慮した設計となっているほか、検査時間も競合のNotal Vision製品より短く手軽に利用できるのが特徴となっている。一方で、機能面では必要最小限なものに留めている。Notal Visionの製品は米国で販売承認申請中となっており、同社はやや遅れた格好となっているが、今後巻き返すチャンスはあると見られる。患者自身が在宅で簡易検査を実施することに対してリスク面も含めて制度上の課題が残っており、本格的な普及は制度設計を確立してからとの見方もあるためだ。
(2) AUROLABとの共同開発契約について
同社は2023年12月に眼科領域に特化した医療用製品メーカーのAUROLAB(インド)と「eyeMO」の共同開発に向けた基本合意書を締結したことを発表した。同合意書により、AUROLABはインド、パキスタン、アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブ、ネパール、スリランカと、中東、アジア、アフリカの未開拓市場の一部で、より低価格化した「eyeMO」の商業化に向け、製品開発・製造・販売に関するライセンスを独占的に取得することになる。詳細な契約条件については今後協議していくことになるが、販売に応じたロイヤリティを受領することになりそうで、短期的な業績への影響はないものと考えられる。
AUROLABは、主に眼内レンズや手術用縫合糸、医薬品、手術用ブレードなどを製造しており、世界で最も権威のある眼科病院の1つであるアラビンド眼科病院(以下、AECS)のグループ会社である。AECSは南インドに14施設の眼科病院、6カ所の外来眼科検査センサー、108カ所の初期眼科医療施設を保有しており、年間手術件数で世界トップクラスと言われており、AUROLABはAECSグループだけでなく、世界160ヵ国以上の眼科病院に医療機器を販売している。
AULOLABでは、大量生産で低価格化した「eyeMO」を眼科医院や公共施設などへ導入することで、加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫の患者へのサポートだけでなく、網膜疾患の早期発見にも貢献していくことを目指していると思われ、今後の展開に注目したい。
(3) IQVIAサービシーズジャパンとベンダー契約締結
2023年12月に、中外製薬が資金提供を予定する特定臨床研究で「eyeMO」を使用するため、調整管理実務担当機関として介入するIQVIAサービシーズジャパンと「eyeMO」のベンダー契約を締結したことを発表した。今後、「eyeMO」の貸与収入が得られる見込みだが、貸与台数は多くはなく金額的にも軽微と見られる。臨床研究開始の前に、フィージビリティスタディを2024年春頃に実施する予定となっている。特定臨床研究では、糖尿病黄斑浮腫患者を対象に、患者自身が自宅で「eyeMO」の使用が可能であるかを検証すること、また、網膜厚測定及び網膜内・網膜下浮腫の有無判定のための網膜状態の測定値の妥当性を医療者によって評価する研究となる。
「eyeMO」の臨床試験の状況について見ると、2023年1月より米国のハーバード大学医学部に付属するジョスリン糖尿病センターで実施していた糖尿病網膜症患者のスクリーニング装置としての実用性に関する評価、及び市販のOCT装置と比較する2つの医師主導による臨床試験が終了した。試験結果については国際学会での発表が予定されているほか、さらなる臨床試験を行う見通しとなっている。
(4) ビジネスモデルと市場規模
ビジネスモデルとしては、患者の初期負担が軽減されるレンタルサービスとして、毎月利用料を徴収する方式となる可能性が高い。また保険適用されれば患者負担も大幅に軽減できるため、普及も加速するものと考えられる。網膜疾患は根治療薬がないため、一度「eyeMO」を使うと失明しない限りは継続して使用される可能性が高く、ストック型ビジネスとして安定した収益源に育つ可能性がある。
国際糖尿病連合(IDF)によれば、2019年の時点で世界の糖尿病患者は約4.6億人となっており、2030年には5.7億人、2045年には7億人に達すると予測されている。糖尿病になると様々な合併症を引き起こすと言われているが、そのなかでも失明の恐れがあるのが糖尿病黄斑浮種である。(一社)日本生活習慣病予防協会によれば、国内の糖尿病患者は約1,000万人(糖尿病が強く疑われる者を含む)と言われており、糖尿病黄斑浮腫の患者数を有病率から推計すると国内では約50万人、世界では約2,300万人となる。糖尿病黄斑浮腫は根治療薬がまだ開発されていないため、患者数は糖尿病患者数と比例して年々増加していくことが予想され、「eyeMO」が手軽な検査装置として普及する可能性は十分あると弊社では見ている。仮に、レンタル料金を年間1万円とすると、国内で普及率が30%とすれば年間15億円、世界で普及率10%とすれば年間230億円のポテンシャルが期待できることになる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<AS>
2. 在宅・遠隔眼科医療用網膜モニタリング機器「eyeMO」
(1) 「eyeMO」の特徴と競合状況
「eyeMO」※は、ウェット型加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫等の網膜疾患の患者を対象にした在宅・遠隔眼科医療用網膜モニタリング機器(Patient Based Ophthalmology Suite)である。患者自身が自宅で網膜の厚みの測定や撮影を行い、担当医師がインターネットを介してそのデータを確認し、治療(投薬)の必要性の有無を診断するシステムとなる。
※従来はPBOSとして表記してきたが、2023年12月に商品名が「eyeMO」に決定したため、以後「eyeMO」で表記する。名前の由来はeye(眼)とMonitoring(観察)のMoを組み合わせたものである。
従来、患者は定期的に通院してOCT※検査を行い、必要に応じて治療(眼内注射)を行っていた。「eyeMO」では、在宅で手軽に検査できることから検査のための通院の必要性がなくなるほか、適切なタイミングで治療を受けることで、症状が悪化するリスクを低減できるといったメリットがある。距離や経済的な問題で定期的に通院できず症状を悪化させる患者も多いだけに、在宅で手軽に検査できるデバイスの潜在的なニーズは大きい。病院側でも検査より治療に充てる時間を増やしたほうが経営面でプラスとなるほか、製薬企業にとっても適切な投薬が実施されることで従来よりも販売量が増える可能性があり、すべての関係者がメリットを享受できる仕組みとなっているのが特徴だ。
※OCT(Optical Coherence Tomography):赤外線を利用して網膜の断面を精密に撮影する検査機器のこと。緑内障や加齢黄斑変性等の網膜疾患患者の診断用として使用される。
在宅OCTを商用化している企業はまだなく、開発済みの企業としては同社のほかNotal Vision, Inc.など数社に限られる。同社製品は、操作ボタンの大型化や操作方法を音声ガイダンスでサポートする機能を実装するなど、高齢の患者に配慮した設計となっているほか、検査時間も競合のNotal Vision製品より短く手軽に利用できるのが特徴となっている。一方で、機能面では必要最小限なものに留めている。Notal Visionの製品は米国で販売承認申請中となっており、同社はやや遅れた格好となっているが、今後巻き返すチャンスはあると見られる。患者自身が在宅で簡易検査を実施することに対してリスク面も含めて制度上の課題が残っており、本格的な普及は制度設計を確立してからとの見方もあるためだ。
(2) AUROLABとの共同開発契約について
同社は2023年12月に眼科領域に特化した医療用製品メーカーのAUROLAB(インド)と「eyeMO」の共同開発に向けた基本合意書を締結したことを発表した。同合意書により、AUROLABはインド、パキスタン、アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブ、ネパール、スリランカと、中東、アジア、アフリカの未開拓市場の一部で、より低価格化した「eyeMO」の商業化に向け、製品開発・製造・販売に関するライセンスを独占的に取得することになる。詳細な契約条件については今後協議していくことになるが、販売に応じたロイヤリティを受領することになりそうで、短期的な業績への影響はないものと考えられる。
AUROLABは、主に眼内レンズや手術用縫合糸、医薬品、手術用ブレードなどを製造しており、世界で最も権威のある眼科病院の1つであるアラビンド眼科病院(以下、AECS)のグループ会社である。AECSは南インドに14施設の眼科病院、6カ所の外来眼科検査センサー、108カ所の初期眼科医療施設を保有しており、年間手術件数で世界トップクラスと言われており、AUROLABはAECSグループだけでなく、世界160ヵ国以上の眼科病院に医療機器を販売している。
AULOLABでは、大量生産で低価格化した「eyeMO」を眼科医院や公共施設などへ導入することで、加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫の患者へのサポートだけでなく、網膜疾患の早期発見にも貢献していくことを目指していると思われ、今後の展開に注目したい。
(3) IQVIAサービシーズジャパンとベンダー契約締結
2023年12月に、中外製薬が資金提供を予定する特定臨床研究で「eyeMO」を使用するため、調整管理実務担当機関として介入するIQVIAサービシーズジャパンと「eyeMO」のベンダー契約を締結したことを発表した。今後、「eyeMO」の貸与収入が得られる見込みだが、貸与台数は多くはなく金額的にも軽微と見られる。臨床研究開始の前に、フィージビリティスタディを2024年春頃に実施する予定となっている。特定臨床研究では、糖尿病黄斑浮腫患者を対象に、患者自身が自宅で「eyeMO」の使用が可能であるかを検証すること、また、網膜厚測定及び網膜内・網膜下浮腫の有無判定のための網膜状態の測定値の妥当性を医療者によって評価する研究となる。
「eyeMO」の臨床試験の状況について見ると、2023年1月より米国のハーバード大学医学部に付属するジョスリン糖尿病センターで実施していた糖尿病網膜症患者のスクリーニング装置としての実用性に関する評価、及び市販のOCT装置と比較する2つの医師主導による臨床試験が終了した。試験結果については国際学会での発表が予定されているほか、さらなる臨床試験を行う見通しとなっている。
(4) ビジネスモデルと市場規模
ビジネスモデルとしては、患者の初期負担が軽減されるレンタルサービスとして、毎月利用料を徴収する方式となる可能性が高い。また保険適用されれば患者負担も大幅に軽減できるため、普及も加速するものと考えられる。網膜疾患は根治療薬がないため、一度「eyeMO」を使うと失明しない限りは継続して使用される可能性が高く、ストック型ビジネスとして安定した収益源に育つ可能性がある。
国際糖尿病連合(IDF)によれば、2019年の時点で世界の糖尿病患者は約4.6億人となっており、2030年には5.7億人、2045年には7億人に達すると予測されている。糖尿病になると様々な合併症を引き起こすと言われているが、そのなかでも失明の恐れがあるのが糖尿病黄斑浮種である。(一社)日本生活習慣病予防協会によれば、国内の糖尿病患者は約1,000万人(糖尿病が強く疑われる者を含む)と言われており、糖尿病黄斑浮腫の患者数を有病率から推計すると国内では約50万人、世界では約2,300万人となる。糖尿病黄斑浮腫は根治療薬がまだ開発されていないため、患者数は糖尿病患者数と比例して年々増加していくことが予想され、「eyeMO」が手軽な検査装置として普及する可能性は十分あると弊社では見ている。仮に、レンタル料金を年間1万円とすると、国内で普及率が30%とすれば年間15億円、世界で普及率10%とすれば年間230億円のポテンシャルが期待できることになる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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