インタビュー:米でM&A検討、スーパードライの海外販売4倍へ=アサヒGHD社長
(肩書を社長に統一しました)
Mayu Sakoda Rocky Swift
[東京 26日 ロイター] - アサヒグループホールディングスの勝木敦志社長は、主力ビール「アサヒスーパードライ」の海外販売を2030年までに4倍へ引き上げるとし、手薄だった米国を中心にビール会社の合併・買収(M&A)を検討していることを明らかにした。来年以降に実現したい考え。
同社は1月に米飲料製造受託のオクトピ・ブルーイング(ウィスコンシン州)を買収し、これまで日本や欧州から出荷していたスーパードライの現地生産に乗り出す。スーパードライの海外販売に占める割合が2023年時点で6%(数量ベース)だった米国で事業を強化する。
勝木社長は「先進国の中で唯一人口が増えている成長市場である米国でのプレゼンスがないのは課題」と説明。次は来年以降、ビール会社のM&Aを検討する考えを表明した。「2030年までにアサヒスーパードライの海外売り上げを23年比で約4倍に伸ばしたい。既存の市場だけでは難しく、中国、北米での売り上げを上げないといけない」と語った。
ただ、現時点では対象企業がないとし、「投資余力やマーケットの状況をにらみつつ探索していきたい」と話した。長期的にはアジア、アフリカも視野に入れ、「M&Aは機会があったら考えたい」と述べた。
海外進出を進める同社は、09年にオセアニア市場へ本格参入し、20年にベルギーのビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)から豪ビール最大手カールトン・アンド・ユナイテッド・ブルワリーズ(CUB)を買収した。欧州市場は16年に本格参入し、旧SABミラーの中東欧5カ国のビール事業を翌年買収した。
23年の売上収益は国内49.2%に対し、欧州が24.9%、オセアニアが23.6%、東南アジアが2.1%だった。北米市場は規模が小さく開示していない。
米国は他の地域に比べて進出が遅れていたが、22年に米サンフランシスコで投資運用会社を設立し、23年からスタートアップ投資ファンドの運営を開始した。今年の1月には第1号投資案件として、ノンアルコールワインなどの輸入・販売を手掛ける米企業に少額出資した。
勝木社長は「米国では日本で見られないような面白い商品が出てきている。われわれは飲料と酒類の両方のケーパビリティを持っているので、いろんな形での成長を狙っていきたい」と語った。
日本企業の多くが株価純資産倍率(PBR)対策で自社株買いを増やす中、同社はこれまで買収による成長投資へ資金を振り向けてきた。
勝木社長は「M&A後の債務返済を優先してきたので、基本的には利益を上げることによって株価を高め、PBRを高めていくことが今のところの方針」と述べた。「新たなキャッシュアロケーションの方針は来年の年初に打ち出す。その中で株主還元についても改めて報告する」とした。
同社は25年までに配当性向を40%へ引き上げる方針を掲げている。23年の配当性向は37%だった。
勝木社長は国内市場にも言及し、「消費者は値上げを受け入れてくれている。昨今では賃上げの動きが活発になっているが、健全なインフレが継続し、経済全体が回ることを期待したい」と述べた。
原材料価格や人件費が上昇する中、同社は22年10月、約14年ぶりに国内でビールを値上げした。今年5月から清涼飲料水も値上げする。
*インタビューは23日に実施しました。
(佐古田麻優、Rocky Swift 編集:久保信博)