アングル:大台突破のS&P500、相場の広がり乏しく危うさも
David Randall
[ニューヨーク 9日 ロイター] - S&P総合500種指数が連日最高値を更新するなか、上昇に参加する銘柄数が減少しており、相場のリーダーがつまずけば上昇が反転する可能性があるとの懸念が浮上している。
相場の広がりの強さ、つまり株価指数の上昇に参加している銘柄数の多さは、上昇が少数銘柄に依存していないことを示し、しばしば健全性のサインと見なされる。
2023年はS&P500の24%上昇をメタ・プラットフォームズ、アップル、アマゾン・ドット・コムなど「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる巨大テック企業がけん引し、相場の広がりが狭い状況がほぼ年間を通じて続いた。
年末にかけて広がりは改善したが、24年に入り再び縮小していることを示す指標もある。例えばS&P500は年初来5.4%上昇し、9日に過去最高値を更新したが、ハイ・マウント・リサーチのデータによると、ニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダックの新高値更新銘柄数は10日平均で昨年7月以来の水準に落ち込んでいる。
また、スラッシャー・アナリティクスのデータによれば、大型銘柄のうち8日終値時点で株価が50日移動平均を上回ったのは62%にとどまり、12月時点の87%から減少した。一方、ダウ・ジョーンズ・インディシーズによると、マグニフィセント・セブンは今年のS&P500の上昇の6割近くを占めている。
オールスプリング・グローバル・インベストメンツのシニアポートフォリオマネジャー、マイケル・スミス氏は「ごく少数の銘柄に資金が集中する、歴史的に見ても極端な局面にある」と指摘。一部の銘柄が相場をけん引しているため、業績不振などの問題が大型株を直撃した場合、相場急落のリスクが高まる恐れがあると述べた。
超大型株の多くが24年に上昇している一方、テスラは22%安とS&P500構成銘柄の中で下落率が3番目に大きく、スター銘柄がいかに急速に人気を失うかを浮き彫りにしている。
一部の投資家は、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ時期が後ずれするとの見方から、金利低下の恩恵を受けるセクターへの買いが巻き戻され、相場の広がりが縮小したとみている。
例えばS&P500の不動産セクターは商業用不動産を巡る懸念から年初来4.4%、小型株で構成するラッセル2000は0.8%、それぞれ下落している。
大型株への投資を堅持すべきとの見方もある。これらの企業は成長率が平均を上回り、バランスシートも健全な場合が多い。ダウ・ジョーンズ・インディシーズによると、S&P500を構成する上位10社のリターンは1999年以降、指数全体を平均12.3%ポイント上回っている。
同時に、長期的に見るとより多くの銘柄が上昇に参加しているとの指摘もある。ヤルデニ・リサーチによると、現在の強気相場が22年10月に始まって以降、S&P500の100以上のサブセクターのうち半数以上が20%超上昇している。ただ、指数全体をアウトパフォームしているのは情報技術と通信セクターのみという。
同社は「一部の銘柄が出遅れ株を大きくアウトパフォームしているが、出遅れ銘柄の多くも非常に好調だ。一部の銘柄ほどではないだけだ」とした。
(David Randall記者)