インタビュー:物価目標実現と日銀が判断しても、共同声明の重要性変わらず=内閣府・林伴子氏
Takahiko Wada Leika Kihara
[東京 6日 ロイター] - 内閣府の林伴子政策統括官(経済財政分析担当)は、ロイターのインタビューに応じ、日銀が物価目標の実現が見通せるようになったと判断しても、デフレ脱却を掲げた政府・日銀の2013年の共同声明の重要性は変わらないと述べ、日銀が引き続き2%物価目標に向けて金融政策を運営することが重要だと話した。デフレ脱却へ「今が千載一遇のチャンスだ」と語り、デフレに後戻りしないか見極める上では賃金動向も重要になると述べた。
林氏は、13年1月公表の政府・日銀の共同声明の取りまとめに当たり、内閣府サイドの窓口役を担った。第2次安倍晋三政権が打ち出した「アベノミクス」を反映し、共同声明では日銀が金融緩和を推進し、2%物価目標を「できるだけ早期に実現することを目指す」と明記されている。一方で、市場では3―4月にも日銀が物価目標の実現を見通せる状況になったと判断した上でマイナス金利解除を含む政策修正に動くとの見方が強い。
林氏は、日銀が物価目標の実現が見通せる状況になったと判断しても「デフレ脱却と持続的な経済成長をうたった政府と日銀の共同声明の重要性は変わらない」と述べた。政策変更を受けて共同声明を変えなければならないのではなく、今後も政府と日銀が共同声明の下で一緒にやっていくということかとの質問に「そう思う」と答えた。
林氏は「2%の物価安定目標を目指して日銀が金融政策運営をしている現在の枠組みは、政府にとっても一般の国民にとっても大事なことだ」と強調。2%物価目標の下で日銀が金融政策を運営し、実際の物価上昇率も2%付近で推移すれば、家計・企業・政府それぞれが支出などの計画を立てやすくなると述べた。
共同声明に盛り込まれた機動的な財政運営や成長戦略についても「両方とも大事なことだ」と話し、現時点でも重要性は変わっていないとの認識を示した。
<サービス価格上昇、「望ましい方向」>
日銀が物価目標実現を見極める上では、賃金と物価の好循環の確からしさが十分高まるかがポイントになる。
林氏は「昨年を上回る賃上げが今年実現すれば、徐々に賃金と物価の好循環が回り始めていくだろう」と指摘。「物価上昇はだんだん落ち着きつつある。一方で財よりサービス価格が上がっており、望ましい方向で幅広い品目で物価上昇が見られている」と述べた。
ただ、マイナス金利解除の経済への影響については「日銀が判断すべきことなので政府としてはコメントしない。日銀の判断を信頼している」と話した。
<デフレに後戻りしないかの判断は難しい>
林氏は「今はデフレ脱却の千載一遇のチャンスと言える」と語った。ただ、デフレ脱却の定義は「現在デフレではないことと、デフレに後戻りしないことが見込まれること」とした上で「デフレに後戻りしないかどうかの判断が難しい」と述べた。後戻りしないことを判断する上で、賃金動向が重要な指標の1つになるとした。
政府は物価上昇に負けない賃上げを目指すと同時に、公正取引委員会の指針などを通じて人件費上昇分の価格転嫁が浸透するよう働きかけを強めている。
政府のデフレ脱却宣言はいつになりそうかとの質問には「日々、色々な指標を見て検討している状態だ」と述べるにとどめた。
このインタビューは5日に実施しました。
(和田崇彦、木原麗花)