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アングル:米でボトル入りカクテルに脚光、家飲み・物価高が追い風

配信日時:2023/12/30 08:38 配信元:REUTERS

Emma Rumney Arriana McLymore

[ロンドン/ニューヨーク 23日 ロイター] - 蒸留酒大手は、缶入りよりも容量が多く割安で手軽に飲める「ボトル入りカクテル」の売り込みに力を入れている。

英ディアジオと仏ペルノ・リカールは最近、パンデミック後に高まった「家飲み」需要の取り込みを狙って米国での発売に踏み切った。

新発売のボトル入りカクテルは容量が750ミリリットルもあり、両社はパーティー用やプレゼント用の需要を見込んでいる。

ニューヨークに住むニラヤ・コービンさん(22)は11月にワインの代わりに「ケテル・ワン・ウォッカ」をベースにしたディアジオのボトル入り「エスプレッソ・マティーニ」を購入。すっかり気に入ってしまった。「めちゃめちゃ強くて」、バーやレストランで飲んだものよりもおいしかったという。

以来、エスプレッソ・マティーニは家で飲むだけになり、今月の誕生日には、別のボトル入りカクテルも購入した。

生活費が上昇する中、価格に敏感な消費者にとってボトル入りカクテルは節約になる。

サウスカロライナ州チャールストンに住むキャロライン・ザティナさん(37)は、ボトル入りカクテルが20ドルで売られているのを見て、バーで飲むよりどれだけ「お得か」を即座に計算した。「私のような人にはぴったり。カクテルが大好きで、甘いものが好きで、予算は限られている」と話す。

ペルノ・リカール・ノースアメリカの最高経営責任者(CEO)で近く退任予定のアン・ムカルジー氏は「今の顧客は品質を求める一方、手軽に安く飲みたいという欲求もある。ミクソロジスト(カクテル作りに熱心なバーテンダー)になったような気分を味わいたいけれど、冷蔵庫からビールを取り出すのと同じくらい簡単に済ませたい気持ちもある」と顧客の心理を読み解く。消費者は2020年初頭のパンデミックで家飲みの節約効果に気付いたのだという。

蒸留酒メーカーはボトル入り製品について、プロのバーテンダーが注ぐのと同等品質のカクテルを格安で提供できるとうたっている。

しかし、誰もが納得しているわけではなく、とりわけ接客業界で働く人々の間ではそうだ。ニューヨークのパーティー出張サービス会社アルケミックの創業者、イゴール・ズコビエック氏は、ボトル入りカクテルについて「質は高いが、バーで注文する経験や本物の職人技を再現することはできない」と指摘した。

<重要なパーティーシーズン>

ディアジオ、ペルノ・リカール、ビームサントリーの業界幹部3人がロイターに語ったところによると、ボトル入りカクテルはビールやワインからシェアを奪っている。

このうち2人が、パーティーシーズンはこの急成長市場で足がかりを築くのに重要な時期だとの認識を示した。大手各社は年末シーシーズンをテーマに据えてマーケティングや広告に資金を投じている。

酒類調査会社IWSRのドリンクス・マーケッツ・アナリシスによると、缶入りカクテルや低アルコール炭酸飲料ハードセルツァーのような「いつでもどこでも飲める」アルコール飲料の米市場規模は、現在の182億ドルが2027年までに211億ドルに達する見込みで、ビール離れ、ワイン離れが加速する可能性がある。

<利便性で優位>

ペルノが米国で8月に発売したボトル入りとディアジオが10月に発売したボトル入りは、いずれも価格が高く、ペルノの「グレンリベット・オールド・ファッションド」375ミリリットル入りが16.99ドルもする。

ただ、ボトル入りが「量のために質を犠牲にしているのではないか」という消費者の疑心暗鬼を覆すのは難しそうで、現在、このカテゴリーは出遅れている。

市場調査会社NIQのデータによると、12月2日までの52週間の「すぐに飲める」カクテルの米国での販売本数は、前年比がわずか0.1%増にとどまった。一方で、ブラディーマリーやマティーニ、ネグローニなど急成長したカクテルもある。

「すぐに飲める」カクテル製品を使えば、本格的なカクテル愛好家に応えるだけの備えを持たない店でも、メニューが提供できるようになる、とニューヨークのバーテンダー、リネット・マレロ氏は指摘。

別の業界関係者も、このカテゴリーは航空会社のようにこれまでワインやビール、炭酸飲料しか提供してこなかった販路でも成長していると話す。

ビームサントリーは2020年からボトル入りカクテルシリーズを提供しており、昨年は70%の伸びを記録したと北米担当幹部が明かした。

ペルノのムカルジー氏によると、同社はこの分野で品ぞろえをさらに増やす計画。「人々は便利さを求めているし、簡単に飲めるクテルを求めている」と手ごたえを感じている。

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