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製造・非製造業とも改善、値上げモメンタムは低下の声=日銀短観

配信日時:2023/12/13 09:28 配信元:REUTERS

Kentaro Sugiyama Takahiko Wada

[東京 13日 ロイター] - 日銀が13日発表した12月短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス12と、3期連続で改善した。価格転嫁の進展や自動車の生産台数回復などが寄与。DIは2022年3月以来の高水準となった。大企業・非製造業のDIはプラス30と7期連続で改善し、91年11月以来の高水準。引き続き感染症の影響緩和が貢献している。一方、企業の販売価格判断DIは今回も低下した。輸入物価高の物価押し上げ効果が後退する中、値上げモメンタムが低下しているとの声が聞かれる。

<自動車、生産回復で14年3月以来の高水準>

大企業・製造業の業況判断DIは、ロイターがまとめた予測中央値(プラス10)を上回った。「紙・パルプ」、「窯業・土石製品」、「鉄鋼」、「非鉄金属」、「金属製品」といった業種で、価格転嫁が進展した。

「自動車」はプラス28と、前回から13ポイント改善。14年3月以来の高水準となった。自動車生産の回復は「鉄鋼」、「非鉄金属」、「はん用機械」、「電気機械」などの業種の景況感を上向かせた。

先行き判断DIはプラス8と、悪化を見込む。原材料・エネルギーコスト高の再燃や海外経済の減速などが警戒されている。

大企業・非製造業の業況判断DIは、ロイターがまとめた予測中央値(プラス27)を上回った。感染症の影響緩和や価格転嫁が寄与するかたちで幅広い業種で改善した。

「宿泊・飲食サービス」はプラス51と、前回から7ポイント改善。04年3月の調査開始以来最高となった。

先行き判断DIはプラス24と、悪化を見込む。日銀の担当者によると、原材料・エネルギーコスト高のほか、人手不足や人件費の上昇を懸念する声が聞かれたという。

事業計画の前提となる想定為替レート(全規模・全産業)は2023年度通期で1ドル=139.35円と、前回9月の135.75円から、3円超円安方向に修正された。

大企業・全産業の23年度の設備投資計画は若干下方修正され、前年度比13.5%増となった。市場の予測中央値、12.4%増を上回った。もっとも、みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストは名目値で示される設備投資計画は原材料や人件費のコスト上昇分でかさ上げされており、実際には資材価格の高騰や人手不足の深刻化で設備投資は伸びていないと指摘する。足元の強い景況感を反映して設備投資が実際に伸びてくるのは、米景気やシリコンサイクルの回復が見込まれる来年後半と予想している。

<販売価格DIの低下続く、「値上げモメンタムが低下」との声>

企業の販売価格判断DIでは、大企業・製造業が6ポイント低下してプラス26、4期連続の低下となった。大企業・非製造業は1ポイント低下してこちらもプラス26、3期連続の低下となった。みずほリサーチの酒井氏は、輸入物価高による物価の押し上げ効果が剥落する中で「値上げモメンタムが低下してきている」と述べた。

全規模・全産業の販売価格見通しは1年後、3年後が前回を下回った。物価の見通しは1年後が前回を下回ったが、3年後は前年比プラス2.2%、5年後はプラス2.1%で前回と変わらず。

今回の短観の調査期間は11月9日から12月12日。回答基準日は11月27日で、基準日までの回収率は7割強だった。

(杉山健太郎、和田崇彦)

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