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柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている(2)【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2023/11/21 10:33
配信元:FISCO
*10:33JST 柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「米国在台湾協会は3回も台湾総統候補者を面接試験し、柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
◆アメリカVOAの報道も「面接試験」と表現
2023年10月20日、アメリカの国営放送VOA(Voice of America)は、<アメリカは台湾の総統選を高度に重視 両岸政策の最重要事項>(※2)という見出しで、AIT理事長の台湾訪問を伝えている。報道では、「これは半年間で3度目の台湾訪問で、何よりも野党候補者が連携するのではないかという懸念があるため、総統立候補者を【面接試験する旅】であった」と位置付けている。
何と言っても10月14日には「藍白合作」に関する話し合いが国民党と民衆党の間で行われたばかりで、その成り行きを確認するのが重要な目的だ。
10月18日には国民党の侯友宜と民衆党の柯文哲が同じフォーラムに出席したが、できるだけ目を合わさないようにするほど、「私たちは藍白合作をするつもりはありません」という印象をAIT理事長に与えようと涙ぐましい努力をしていた。(以上VOAから引用)
どの報道を見ても、アメリカが何としても「藍白合作」野党連携を阻止しようと躍起になっていることがうかがわれる。
◆台湾は誰のものか?
2023年7月29日の「聯合早報」は<自らアメリカへ赴いて面接試験を受ける 台湾総統選の奇怪な景色>(※3)という見出しで、今般の総統立候補者が全員が自ら積極的にアメリカに赴いて「面接試験」を受けに行ったと、「怪奇現象」として、以下のように報じている。
――陳水扁と馬英九は、それぞれ2000年と2008年に総統に当選し二期務めたが、総統に立候補した段階で、それぞれアメリカに「ご挨拶」に行き「面接試験を受ける」ような怪奇現象は起きなかった。それは「必要条件」ではなかった。
でも、今は違う。立候補者は誰もアメリカの影響力を無視する勇気はなく、アメリカの顔色をうかがい、少なくとも渡米して「保険」を購入しようとする。(引用以上)
台湾はアメリカの植民地ではない。
なぜそこまでアメリカの顔色をうかがいながらでないと行動できないのか?
そもそも1943年のカイロ宣言で台湾は日本から「中華民国」に返還されると宣言され、事実、1945年の日本敗戦により日本が統治していた台湾は「中華民国」に返還された。日本敗戦後、中国(中華民国)国内では政権を握る国民党(蒋介石)と、その政権を倒そうと革命を起こしていた共産党(毛沢東)との間で国共内戦(=解放戦争=革命戦争)が起こり、1949年に国民党が敗北して台湾に根拠地を置いただけである。今はまだ、その内戦過程にある。
台湾を含めた中国全土を統一する前に毛沢東は「中華人民共和国」の誕生を宣言した。旧ソ連のスターリンが「(中華民国の一地域である)台湾解放のために空軍や海軍を出して支援する」と約束したからだ。しかし北朝鮮の金日成(キム・イルソン)の甘言に乗り、スターリンは「台湾解放という中国統一」よりも、ウラジオストックに近い朝鮮半島の利害を優先したので、「台湾解放」が後回しになってしまった。金日成とスターリンの策略により、朝鮮戦争に強引に参戦させられた毛沢東は、自分の息子を北朝鮮の戦地で失い、「100年かけても台湾は解放する!」と台湾統一を誓ったものだ。筆者はこの言葉を、天津にあった小学校の担任の馬(マー)老師から聞いた。
台湾に立てこもった「中華民国」の蒋介石総統は、しばらくの間、毛沢東が統治する中国大陸全体を含めて「中華民国の領土」として、大陸奪還を試みていた。しかしアメリカが旧ソ連を倒すために旧ソ連と対立していた共産中国「中華人民共和国」の国連加盟に向けて積極的に動き、「中華民国」台湾を国連から追放してしまった(1971年)。共産中国は「中国を代表する国」として「中華人民共和国」しかないという「一つの中国」を相手国が認めることを国交樹立の絶対条件にした。したがってアメリカは「一つの中国」を認めて共産中国「中華人民共和国」と国交を樹立し、「中華民国」台湾と国交を断絶したのだ。
この時点で「中国」は「台湾を含めて中国の領土」と定める正当性を「政治外交的手段」で獲得したことになる。「平和統一」であるなら「台湾を統一することは合法的である」と国連が決議したに等しい。
しかし2010年に中国のGDPが日本を超え、アメリカに近づき始めた。ひょっとすると近い将来にアメリカを超えるかもしれない。そのようなことになったらアメリカの一極支配が終わる。それだけはさせてはならないとばかりに、アメリカは、今度は台湾を駒に中国政府崩壊にチャレンジし始めたのだ。
だから『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』に詳述したように、「第二のCIA」であるNED(全米民主主義基金)が台湾に浸透し、「台湾有事」を創り出そうとしている。その強烈な浸透力のもと、このたびの次期総統立候補者はワシントン詣でをしているのである。
そのため、台湾の政権野党からの立候補者はビクビクしていて勢いがない。
政権与党の民進党の方が信念が揺らいでいないので、堂々としていて頼もしくさえ見える。野党が分立したままなら、圧倒的に民進党が勝利するだろう。
しかし民進党が勝てばNEDやAITの活動は一層強化され、台湾の独立傾向が強まり、結果として中国の台湾武力攻撃を誘うことになり、中国が台湾を武力攻撃すればアメリカが勝つ可能性が高い。そうすれば中国は崩壊してくれる。ただ、そのとき日本が再び戦火に巻き込まれるのは覚悟しなければならない。
日本人は「独立国家」として、どちらを選ぶのか。
台湾総統選は、日本人にも覚悟の選択を迫っている。
追記:但し台湾の政界人と台湾庶民は全く違う。筆者にも多くの台湾の友人がおり、何度かの台湾滞在中に感じ取ったのは台湾人の逞しさと忍耐強さだった。日本人よりも確かな判断眼を持っていて、しかも寛容だ。長年にわたる日本による統治に忍耐強く耐えてきた台湾人の強さと寛容さ。特に柔軟性が逞しさを生んでいることに深い感動を覚えたものだ。その台湾を利用して次の戦争を起こそうと準備しているアメリカに対して警鐘を鳴らしているだけである。台湾人が可哀想ではないか。台湾人への、人間としての尊厳を尊重しなければならないと思う。
この論考はYahoo(※4)から転載しました。
写真: ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.voachinese.com/a/ait-chairwoman-s-third-visit-to-taiwan-20231020/7319081.html
(※3)https://www.zaobao.com.sg/wencui/political/story20230729-1418552
(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a97eb2bf45b9a22c03a2af1ae593cc6c532f2820
<CS>
◆アメリカVOAの報道も「面接試験」と表現
2023年10月20日、アメリカの国営放送VOA(Voice of America)は、<アメリカは台湾の総統選を高度に重視 両岸政策の最重要事項>(※2)という見出しで、AIT理事長の台湾訪問を伝えている。報道では、「これは半年間で3度目の台湾訪問で、何よりも野党候補者が連携するのではないかという懸念があるため、総統立候補者を【面接試験する旅】であった」と位置付けている。
何と言っても10月14日には「藍白合作」に関する話し合いが国民党と民衆党の間で行われたばかりで、その成り行きを確認するのが重要な目的だ。
10月18日には国民党の侯友宜と民衆党の柯文哲が同じフォーラムに出席したが、できるだけ目を合わさないようにするほど、「私たちは藍白合作をするつもりはありません」という印象をAIT理事長に与えようと涙ぐましい努力をしていた。(以上VOAから引用)
どの報道を見ても、アメリカが何としても「藍白合作」野党連携を阻止しようと躍起になっていることがうかがわれる。
◆台湾は誰のものか?
2023年7月29日の「聯合早報」は<自らアメリカへ赴いて面接試験を受ける 台湾総統選の奇怪な景色>(※3)という見出しで、今般の総統立候補者が全員が自ら積極的にアメリカに赴いて「面接試験」を受けに行ったと、「怪奇現象」として、以下のように報じている。
――陳水扁と馬英九は、それぞれ2000年と2008年に総統に当選し二期務めたが、総統に立候補した段階で、それぞれアメリカに「ご挨拶」に行き「面接試験を受ける」ような怪奇現象は起きなかった。それは「必要条件」ではなかった。
でも、今は違う。立候補者は誰もアメリカの影響力を無視する勇気はなく、アメリカの顔色をうかがい、少なくとも渡米して「保険」を購入しようとする。(引用以上)
台湾はアメリカの植民地ではない。
なぜそこまでアメリカの顔色をうかがいながらでないと行動できないのか?
そもそも1943年のカイロ宣言で台湾は日本から「中華民国」に返還されると宣言され、事実、1945年の日本敗戦により日本が統治していた台湾は「中華民国」に返還された。日本敗戦後、中国(中華民国)国内では政権を握る国民党(蒋介石)と、その政権を倒そうと革命を起こしていた共産党(毛沢東)との間で国共内戦(=解放戦争=革命戦争)が起こり、1949年に国民党が敗北して台湾に根拠地を置いただけである。今はまだ、その内戦過程にある。
台湾を含めた中国全土を統一する前に毛沢東は「中華人民共和国」の誕生を宣言した。旧ソ連のスターリンが「(中華民国の一地域である)台湾解放のために空軍や海軍を出して支援する」と約束したからだ。しかし北朝鮮の金日成(キム・イルソン)の甘言に乗り、スターリンは「台湾解放という中国統一」よりも、ウラジオストックに近い朝鮮半島の利害を優先したので、「台湾解放」が後回しになってしまった。金日成とスターリンの策略により、朝鮮戦争に強引に参戦させられた毛沢東は、自分の息子を北朝鮮の戦地で失い、「100年かけても台湾は解放する!」と台湾統一を誓ったものだ。筆者はこの言葉を、天津にあった小学校の担任の馬(マー)老師から聞いた。
台湾に立てこもった「中華民国」の蒋介石総統は、しばらくの間、毛沢東が統治する中国大陸全体を含めて「中華民国の領土」として、大陸奪還を試みていた。しかしアメリカが旧ソ連を倒すために旧ソ連と対立していた共産中国「中華人民共和国」の国連加盟に向けて積極的に動き、「中華民国」台湾を国連から追放してしまった(1971年)。共産中国は「中国を代表する国」として「中華人民共和国」しかないという「一つの中国」を相手国が認めることを国交樹立の絶対条件にした。したがってアメリカは「一つの中国」を認めて共産中国「中華人民共和国」と国交を樹立し、「中華民国」台湾と国交を断絶したのだ。
この時点で「中国」は「台湾を含めて中国の領土」と定める正当性を「政治外交的手段」で獲得したことになる。「平和統一」であるなら「台湾を統一することは合法的である」と国連が決議したに等しい。
しかし2010年に中国のGDPが日本を超え、アメリカに近づき始めた。ひょっとすると近い将来にアメリカを超えるかもしれない。そのようなことになったらアメリカの一極支配が終わる。それだけはさせてはならないとばかりに、アメリカは、今度は台湾を駒に中国政府崩壊にチャレンジし始めたのだ。
だから『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』に詳述したように、「第二のCIA」であるNED(全米民主主義基金)が台湾に浸透し、「台湾有事」を創り出そうとしている。その強烈な浸透力のもと、このたびの次期総統立候補者はワシントン詣でをしているのである。
そのため、台湾の政権野党からの立候補者はビクビクしていて勢いがない。
政権与党の民進党の方が信念が揺らいでいないので、堂々としていて頼もしくさえ見える。野党が分立したままなら、圧倒的に民進党が勝利するだろう。
しかし民進党が勝てばNEDやAITの活動は一層強化され、台湾の独立傾向が強まり、結果として中国の台湾武力攻撃を誘うことになり、中国が台湾を武力攻撃すればアメリカが勝つ可能性が高い。そうすれば中国は崩壊してくれる。ただ、そのとき日本が再び戦火に巻き込まれるのは覚悟しなければならない。
日本人は「独立国家」として、どちらを選ぶのか。
台湾総統選は、日本人にも覚悟の選択を迫っている。
追記:但し台湾の政界人と台湾庶民は全く違う。筆者にも多くの台湾の友人がおり、何度かの台湾滞在中に感じ取ったのは台湾人の逞しさと忍耐強さだった。日本人よりも確かな判断眼を持っていて、しかも寛容だ。長年にわたる日本による統治に忍耐強く耐えてきた台湾人の強さと寛容さ。特に柔軟性が逞しさを生んでいることに深い感動を覚えたものだ。その台湾を利用して次の戦争を起こそうと準備しているアメリカに対して警鐘を鳴らしているだけである。台湾人が可哀想ではないか。台湾人への、人間としての尊厳を尊重しなければならないと思う。
この論考はYahoo(※4)から転載しました。
写真: ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.voachinese.com/a/ait-chairwoman-s-third-visit-to-taiwan-20231020/7319081.html
(※3)https://www.zaobao.com.sg/wencui/political/story20230729-1418552
(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a97eb2bf45b9a22c03a2af1ae593cc6c532f2820
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