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柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている(1)【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2023/11/21 10:28
配信元:FISCO
*10:28JST 柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。
台湾総統選における野党連携「藍白合作」(藍は国民党、白は台湾民衆党)を発表した翌日の11月16日、台湾の国営通信社である中央通信社(中央社)は、柯文哲候補(台湾民衆党)が「今年2月以来、AIT(米国在台湾協会)から常に選挙に関する現状報告をするように要求されてきた」と語ったと報道している。
その1ヵ月前の10月17日にはシンガポールの「聯合早報」がAITの理事長(バイデン米国大統領の側近)が10月15日から台湾を訪問し3人の総統選立候補者を「面接試験した」と報じた。ここ半年間で3回目の「面接試験」であるという。10月20日のアメリカの国営放送VOAも、今回の台湾訪問は「3回目の面接試験を行うためだ」と説明している。
台湾の選挙はアメリカの管轄下にあり、総統選候補者はアメリカの顔色をうかがいながらでないと行動できない状況にあるようだ。立候補者は先ず訪米し「面接試験」に「合格」しなければならない。
「一つの中国」は国連で議決されたのではなかったのか?
台湾は誰のものか――?
◆柯文哲氏は2月から常に状況を報告せよとAITに要求されている
2023年11月16日、台湾の国営通信社である中央社は、台湾民衆党の次期総統選候補者である柯文哲氏に関して<柯文哲:米国は台湾の重要な同盟国だ AITが藍白合作に関して聞いてくるのは正常なことだ>(※2)という見出しで柯文哲がAITから状況報告を要求されてきたことを報道している(リンク先はその転載)。
それによれば、柯文哲は以下のように述べているという。
・民衆党は今年2月以来、毎週AITと連絡を取っており、AITの立場を考えると、AITが藍白問題を懸念して電話して来るのは当然のことだと思う。なぜならアメリカは台湾の重要な同盟(国)であり、台湾と良好な関係を維持する必要があるからだ。コミュニケーションを図り、誤解を避けなければならない。
・藍白の政党は昨日、馬英九・元総統の立会いのもとで交渉し合意に達したが、外界の一部は藍白合作に関して中国共産党が介入しているのではないかと疑問視している。
・藍白合作を決定したと発表するとすぐ、AITが私に電話してきて、中国が藍白合作に関与したか否かを説明するように要求してきた。
・今年2月から現在に至るまで、われわれ民衆党は毎週AITと連絡を取り、党事務局の局長、副局長、政治チームのレベル全て、ずーっと常にAITに選挙運動に関する報告をしている。私自身もAITのサンドラ・オウドカーク処長に「台米関係においてはノーサプライズを維持する」と保証し、訪米したときにも米政府高官にこの原則を維持し決して突然奇妙な動き(=中国と接近するようなこと)はしないことを誓った。
・私はこれまで、AITに対し、「どんな問題でも疑問があればいつでも電話して質問していい」と保証したことがあるし、「民衆党は何か新しい変化があったら、必ずAITに報告する」と誓ったこともある。したがって昨日、「藍白合作」決定を発表したわけだから、AITが「お前、何をやっているんだ!?」と聞いてくるのは正常なことだと思う。なぜなら私はAITに「何か変化があったら報告する」と誓っていたからだ(=それに違反したことになる)。
◆AIT理事長は総統候補者に面接試験
2023年10月17日、シンガポールの「聯合早報」は<米国在台湾協会(AIT)理事長が藍・緑・白の総統選立候補者に“面接試験”>(※3)という見出しで、台湾総統選立候補者の「面接試験」を報道している(緑は民進党のシンボルカラー)。以下、「聯合早報」の温偉中・台北特派員が書いた記事の冒頭部分だけを和訳して転載する。
――米国在台湾協会(AIT)のローラ・ローゼンバーガー理事長は、5日間の日程で台湾を訪問し、藍・緑・白三大政党の総統選立候補者と面談する。これは台湾の将来の総統候補に対する「面接試験」とみなされている。学者らによると、「アメリカは現場の一次情報を直接得ることによって、選挙情勢を評価分析しようとしている」とのこと。
ローラ・ローゼンバーガーは日曜日(10月15日)に台湾に到着したが、これは彼女が3月20日に就任して以来の3度目の台湾訪問となる。彼女はすでに月曜日(10月16日)に台湾の蔡英文総統と会談しているが、より注目されるのは、藍(国民党)、緑(民進党)、白(民衆党)三党の総統候補者との会談だ。
ローゼンバーガーはブリンケン米国務長官の補佐官を務め、バイデン米大統領の側近ともみなされている。台湾では3ヵ月以内に、すなわち2024年1月13日に総統選挙と立法院委員選挙が行われることになっている。中東でイスラエルとハマスの戦争が激化し、台湾の選挙戦が燃え上がっている時期に彼女が台湾を訪問したことは、アメリカが台湾問題と選挙情勢をいかに重要視しているかの何よりの証拠である。(「聯合早報」からの引用は以上)
「米国在台湾協会は3回も台湾総統候補者を面接試験し、柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
この論考はYahoo(※4)から転載しました。
写真: ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://money.udn.com/money/story/7307/7578194
(※3)https://www.zaobao.com.sg/news/china/story20231017-1443681
(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a97eb2bf45b9a22c03a2af1ae593cc6c532f2820
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台湾総統選における野党連携「藍白合作」(藍は国民党、白は台湾民衆党)を発表した翌日の11月16日、台湾の国営通信社である中央通信社(中央社)は、柯文哲候補(台湾民衆党)が「今年2月以来、AIT(米国在台湾協会)から常に選挙に関する現状報告をするように要求されてきた」と語ったと報道している。
その1ヵ月前の10月17日にはシンガポールの「聯合早報」がAITの理事長(バイデン米国大統領の側近)が10月15日から台湾を訪問し3人の総統選立候補者を「面接試験した」と報じた。ここ半年間で3回目の「面接試験」であるという。10月20日のアメリカの国営放送VOAも、今回の台湾訪問は「3回目の面接試験を行うためだ」と説明している。
台湾の選挙はアメリカの管轄下にあり、総統選候補者はアメリカの顔色をうかがいながらでないと行動できない状況にあるようだ。立候補者は先ず訪米し「面接試験」に「合格」しなければならない。
「一つの中国」は国連で議決されたのではなかったのか?
台湾は誰のものか――?
◆柯文哲氏は2月から常に状況を報告せよとAITに要求されている
2023年11月16日、台湾の国営通信社である中央社は、台湾民衆党の次期総統選候補者である柯文哲氏に関して<柯文哲:米国は台湾の重要な同盟国だ AITが藍白合作に関して聞いてくるのは正常なことだ>(※2)という見出しで柯文哲がAITから状況報告を要求されてきたことを報道している(リンク先はその転載)。
それによれば、柯文哲は以下のように述べているという。
・民衆党は今年2月以来、毎週AITと連絡を取っており、AITの立場を考えると、AITが藍白問題を懸念して電話して来るのは当然のことだと思う。なぜならアメリカは台湾の重要な同盟(国)であり、台湾と良好な関係を維持する必要があるからだ。コミュニケーションを図り、誤解を避けなければならない。
・藍白の政党は昨日、馬英九・元総統の立会いのもとで交渉し合意に達したが、外界の一部は藍白合作に関して中国共産党が介入しているのではないかと疑問視している。
・藍白合作を決定したと発表するとすぐ、AITが私に電話してきて、中国が藍白合作に関与したか否かを説明するように要求してきた。
・今年2月から現在に至るまで、われわれ民衆党は毎週AITと連絡を取り、党事務局の局長、副局長、政治チームのレベル全て、ずーっと常にAITに選挙運動に関する報告をしている。私自身もAITのサンドラ・オウドカーク処長に「台米関係においてはノーサプライズを維持する」と保証し、訪米したときにも米政府高官にこの原則を維持し決して突然奇妙な動き(=中国と接近するようなこと)はしないことを誓った。
・私はこれまで、AITに対し、「どんな問題でも疑問があればいつでも電話して質問していい」と保証したことがあるし、「民衆党は何か新しい変化があったら、必ずAITに報告する」と誓ったこともある。したがって昨日、「藍白合作」決定を発表したわけだから、AITが「お前、何をやっているんだ!?」と聞いてくるのは正常なことだと思う。なぜなら私はAITに「何か変化があったら報告する」と誓っていたからだ(=それに違反したことになる)。
◆AIT理事長は総統候補者に面接試験
2023年10月17日、シンガポールの「聯合早報」は<米国在台湾協会(AIT)理事長が藍・緑・白の総統選立候補者に“面接試験”>(※3)という見出しで、台湾総統選立候補者の「面接試験」を報道している(緑は民進党のシンボルカラー)。以下、「聯合早報」の温偉中・台北特派員が書いた記事の冒頭部分だけを和訳して転載する。
――米国在台湾協会(AIT)のローラ・ローゼンバーガー理事長は、5日間の日程で台湾を訪問し、藍・緑・白三大政党の総統選立候補者と面談する。これは台湾の将来の総統候補に対する「面接試験」とみなされている。学者らによると、「アメリカは現場の一次情報を直接得ることによって、選挙情勢を評価分析しようとしている」とのこと。
ローラ・ローゼンバーガーは日曜日(10月15日)に台湾に到着したが、これは彼女が3月20日に就任して以来の3度目の台湾訪問となる。彼女はすでに月曜日(10月16日)に台湾の蔡英文総統と会談しているが、より注目されるのは、藍(国民党)、緑(民進党)、白(民衆党)三党の総統候補者との会談だ。
ローゼンバーガーはブリンケン米国務長官の補佐官を務め、バイデン米大統領の側近ともみなされている。台湾では3ヵ月以内に、すなわち2024年1月13日に総統選挙と立法院委員選挙が行われることになっている。中東でイスラエルとハマスの戦争が激化し、台湾の選挙戦が燃え上がっている時期に彼女が台湾を訪問したことは、アメリカが台湾問題と選挙情勢をいかに重要視しているかの何よりの証拠である。(「聯合早報」からの引用は以上)
「米国在台湾協会は3回も台湾総統候補者を面接試験し、柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
この論考はYahoo(※4)から転載しました。
写真: ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://money.udn.com/money/story/7307/7578194
(※3)https://www.zaobao.com.sg/news/china/story20231017-1443681
(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a97eb2bf45b9a22c03a2af1ae593cc6c532f2820
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トランプ氏、取材で台湾有事への回答を回避し「台湾は米国に防衛費を支払うべき」と主張【中国問題グローバル研究所】
*15:59JST トランプ氏、取材で台湾有事への回答を回避し「台湾は米国に防衛費を支払うべき」と主張【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。7月16日発売の雑誌「Bloomberg Business Week」(※2)は、トランプ氏を独占取材した記事を掲載。取材でトランプ氏は「中国大陸に対抗する台湾を防衛するか?」という問いには答えず、「台湾は米国から半導体を100%奪っていった」とかわし、「台湾はわれわれに防衛費用を支払うべきだ」と主張した。中国はこのトランプ発言を「みかじめ料を要求された島(台湾)は大騒動」という見出しで、主として台湾の情況を中心に報道している。◆ブルームバーグの独占取材記事まず、7月16日発売の雑誌「Bloomberg Business Week」が、どのような記事を掲載したのか、台湾防衛関係の部分だけを抜き出してご紹介したい。●トランプ氏の外交政策に対する取引的な見方と、あらゆるディール(取引)を「勝ち取る」という願望は、世界中に影響を及ぼす可能性があり、米国との同盟関係を断絶させることさえある。●「アジアの民主主義(台湾)を分離独立の地域とみなす中国から台湾を守るという米国の取り組み」について尋ねられたトランプ氏は、「台湾に対する最近の(米国内)超党派の支持にもかかわらず、中国の攻撃に立ち向かうことについては、せいぜいよく言って、生ぬるい」と表明した。(筆者注:米国は台湾を守るか否かに関しては回答を回避した。)●彼(トランプ氏)の懐疑的な姿勢の一部は、経済的な憤りに根ざしている。「台湾はわれわれから半導体事業を奪った」と彼は言う。「つまり、われわれはどれだけ愚かなのか? 彼らはわれわれの半導体事業をすべて奪った。彼らは途方もない巨額の富を手にしたのだ」と彼は続けた。彼が台湾に望んでいるのは、米国に防衛費(保護料)を支払うことだ。「われわれは保険契約と何ら変わらないと思うんだよ。なぜだ? なぜ、われわれはこんなことをしているんだい?」と彼は尋ねた。(筆者注:最後の「こんなこと」は英語では「this」だけだし、一瞬の会話の中で出てきた言葉なので、受け取る側が解釈するしかないが、「保険契約なら契約料を毎月支払うはずだが、それを受け取ってないのに、なぜ台湾を守らなければならいんだ?」という意味を示唆していると考えられる。)●彼(トランプ氏)が懐疑的になるもう一つの要因は、地球の反対側にある小さな島を守ることの実際的な難しさだ。「台湾は9,500マイルも離れているんだよ。それに比べて、中国からは68マイルしか離れていない」と彼は言う。台湾への関与を放棄することは、米国の外交政策の劇的な転換をもたらすだろう。それはウクライナへの支援を停止するのと同じくらい重大なことだ。しかし、どうやらトランプは、これらの関係を根本的に変える代替案の準備ができているようにも見える。(筆者注:この最後の文章は、おそらく「守ってほしければ金を払え」という言葉を指しているものと推測される。)ブルームバーグの独占取材記事の台湾に関する部分は概ね以上だが、別途、台湾問題に焦点を絞った討論番組<Watch Trump Suggests Taiwan Should Pay US for Protection - Bloomberg(トランプが「台湾は防衛費を支払うべきだ」と言ったことをウォッチしよう)>(※3)も報道されている。冒頭に掲げたタイトル画像は、この番組からのスクリーンショットである。トランプ氏の主張には、一貫した外交観が滲み出ている。すなわち、NATOに関してもトランプ氏は「その国の軍事費負担が不十分ならば米国はその国を守らず、ロシアに『好きにするよう促す』」(※4)とさえ言っている 。トランプ政権時代には日本や韓国に対しても、駐留米軍に対する経費をもっと支払わないと米軍を撤退させるようなことをほのめかしたことがある。台湾に対しても、「米軍に守ってもらおうと思うなら、米国に保護料を支払え」というわけだ。この姿勢であるなら、中国は喜ぶだろう。◆中国での報道7月18日の中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は<みかじめ料をトランプに要求され、島内(台湾)は大騒動>(※5)という見出しの、かなり長い記事を発表した。ほとんどは、ブルームバーグの独占取材記事の解説と、台湾がどのように報じたかに関する内容が多いが、いくつかの要点をピックアップしてお示しする。台湾報道に関しては当然、中国大陸にとって都合のいいものを拾い上げているとは思うが、台湾で報道されていること自体は事実だし、中国がどのように受け止めているかも見えてくるので、考察する価値はあるだろう。●台湾の世論は、民進党当局の徹底した「親米・反中」政策が今後の台湾にとって厳しい課題となると一般に考えている。●トランプ氏は「米国に保護してほしいのなら、台湾はみかじめ料を支払うべきだ」とストレートに言った。トランプ氏の「台湾防衛」に対する態度が冷淡であることのもう一つの理由は、何千マイルも離れた小さな島を守るのは非常に難しいと考えていることだ。●トランプ氏は、今年4月の、タイム誌とのインタビューでも同様の見解を表明した。彼は、米国に依存する欧州とアジアの同盟国が米国に資金を支払うことを望んでいる。●タイム誌は「中国が台湾を攻撃した場合、米国は台湾を守るべきか」と質問し、トランプ氏は「この質問は何度も受けているが、(私の切り札が明らかになるので)答えたくない」と明言を避けた。●台湾にみかじめ料の支払いを求めるトランプ氏の発言に対し、民進党「立法院」議員団の呉思耀幹事長は17日、米国は「台湾の防衛に協力している」と述べ、台湾の卓栄泰行政院長は、「台湾は台湾海峡とインド太平洋地域にわたる共通の責任に対して、より多くの費用を支払う用意がある」と述べた。これに対して台湾の多くのネット民は不満を表明し、台湾のソーシャルプラットフォームPTTでは「お前が払えよ。私に払わせるな。みんなを水の中に引きずり込むな」と民進党当局を罵倒した。また、少なからぬ人が「我々が望んでいるの海峡の平和共存だ」、「みかじめ料は『台湾独立』を叫んでいる人から徴収せよ!」と呼びかけた。●国民党の立法委員である王鴻薇氏は、「台湾の米軍からの兵器購入額が最高値を更新し続けている今、米国の武器売却やみかじめ料に対処するために、将来さらに多くの資金を提供する必要があるのだろうか?」問うた。●元台湾空軍副司令官の張延廷氏は、「保護費は天文学的な金額になる」と述べ、「台湾は全体的な環境を理解しなければならず、米国の操り人形になってはならない」と語った。●元立法委員の蔡正元氏は17日、台湾の一部の愚か者は台湾と米国は「価値ある同盟」だとよく言っているが、「台湾は米国の単なる属国に過ぎない」とした上で、「台湾と米国の間には友好関係はない。すべては金銭的な関係にすぎない」と述べた。●米国在住の学者、翁履中氏は、「台湾がトランプを満足させるために、もっとみかじめ料を支払っても構わないが、いくら払っても彼を満足させることはできないのではないか」と心配している●国民党の立法委員である馬文君氏は、「唯一確かなことは、トランプは台湾の安全保障上の利益を考慮するのではなく、米国の利益を最優先しているということだけだが、民進党はそれを明確に理解することができない」とした上で、「鍵となるのは両岸関係だ。両岸関係がうまく処理されれば、台湾は他国に支配される必要はない」と述べた。●台湾国立政治大学国際関係センターの研究者厳振生氏は、「台湾海峡の問題解決を米国に依存することは、台湾にとって多大な損失をもたらし、効果的ではない」と述べた。●台湾聯合新聞網は17日、「最近の典型的なケースは、台湾は古い第4世代戦闘機F-16Vを購入したが、これは他国が第5世代ステルス戦闘機F-35を購入するよりも高価だったということである」と報道している。また「トランプ氏もバンス氏も現実主義者であり、(中国)大陸の軍事発展により、米国は台湾への派兵は極めて採算の合わない取引であり、米国の国益に合致しないとの認識を強めている」と書いている。(以上、「環球網」より)台湾では国民党の趙少康氏は18日に「頼清徳は今のところ押し黙っているが、このまま米国に跪(ひざまず)き続けるのだろうか?」と投稿し(※6)、民衆党の柯文哲主席は「保護費だって?それって、米国が台湾に支払うのか、それとも台湾が米国に支払うのか、どっちなんだい?だって、台湾が米国のために第一列島線を守ってあげてるんだから、米国が台湾に支払うべきなのでは?」(※7)という趣旨のことを書いている。なお、トランプ氏の台湾防衛に関する回答と発言は昨年から何度もくり返されているが、これまでの発言に関しては拙著『嗤う習近平の白い牙』の【第一章 TikTokと米大統領選と台湾有事】の【二 もしトランプが大統領に当選したら台湾有事はどうなるか?】で詳細に考察した。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※8)より転載しました。写真: ブルームバーグTV番組からのスクリーンショットに筆者が和訳加筆(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.bloomberg.com/features/2024-trump-interview/(※3)https://www.bloomberg.com/news/videos/2024-07-16/trump-suggests-taiwan-should-pay-us-for-protection-video(※4)https://www.bbc.com/japanese/articles/cevrjpgn418o(※5)https://taiwan.huanqiu.com/article/4IeY497cZfM(※6)https://tw.news.yahoo.com/%E5%B7%9D%E6%99%AE%E5%97%86-%E4%BA%A4%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E8%B2%BB-%E6%90%B6%E6%99%B6%E7%89%87%E7%94%9F%E6%84%8F-%E8%B6%99%E5%B0%91%E5%BA%B7-%E5%8F%B0%E7%81%A3%E8%A2%AB%E7%95%B6%E8%82%A5%E7%BE%8A-073741087.html?guccounter=1(※7)https://tw.news.yahoo.com/%E5%B7%9D%E6%99%AE%E8%A6%81%E5%8F%B0%E7%81%A3-%E4%BA%A4%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E8%B2%BB-%E8%B3%B4%E6%B8%85%E5%BE%B7%E6%B2%89%E9%BB%98%E4%BB%A5%E5%B0%8D-%E6%9F%AF%E6%96%87%E5%93%B2%E9%9C%B8%E6%B0%A3%E5%8F%8D%E5%97%86-%E5%B9%AB%E4%BB%96%E6%93%8B%E9%82%84%E8%A6%81%E4%BB%98%E9%8C%A2-065547831.html(※8)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/ef4b86f8b564211b82b54d1f5d2e9a97b14de7e7
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2024/07/19 15:59
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NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(2)【中国問題グローバル研究所】
*16:14JST NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆ハンガリー外務大臣「NATOが反中ブロックになることに賛同しない」7月12日、ロイター社は<ハンガリーはNATOが「反中」ブロックになることを支持しない、と大臣は言う>(※2)という見出しでNATOワシントン宣言に反対するハンガリーの意見を報道した。それによればハンガリーのシーヤールトー(シャルト)・ペーテル外務大臣は「ハンガリーはNATOが反中ブロックになることを望んでおらず、そうすることを支持しない」と述べたとのこと。彼はまた「ウクライナが軍事同盟に加盟すれば、NATOグループの結束が弱まるだろう」とも述べている。さらに「NATOは防衛同盟だ…反中ブロックに組織化することはできない」と、ハンガリー国営テレビの質問に対し答えたという。7月10日のコラム<嗤(わら)う習近平――ハンガリー首相訪中が象徴する、したたかな中露陣営と弱体化するG7>(※3)に書いたように、ハンガリーは欧州議会の新たな右派会派「欧州の愛国者」をフランスのマリーヌ・ルペン氏が率いる極右政党「国民連合」を迎えて誕生させている。ルペン氏は<バイデン政権は中国に対してあまりに攻撃的過ぎて、アメリカは自国の同盟国がアメリカの統治下で団結できるようにするために敵を作りたいだけだ。アメリカが欧州を中国の敵に誘導している>(※4)と述べている。欧州が一枚岩でないということは、NATOも一枚岩ではないことになる。◆NATOワシントン宣言は「日本を戦争に誘い込む」シナリオ特に冒頭に書いたNATOワシントン宣言を詳細に読むと、これはNATOの思いというより、バイデン大統領の米大統領選に対する意図が全面的に出ており、トランプ前大統領との討論会の失態を挽回するために書かれたもののように映る。NATO諸国には「もしトランプが大統領に選ばれたらNATOは消滅する」と脅迫し、米大統領選でバイデンに有利になるために作成された宣言であるという印象を深くした。あと4ヵ月後に、もしトランプが大統領に当選したらウクライナ支援をやめて、アメリカの代理戦争であるウクライナ戦争をすぐさま停戦に持って行くと、トランプは豪語している。NATOがもっと多くの拠出金を分担しなければ、ロシアの好き勝手にさせてNATOを守ることをしないとまでトランプは言っているのだ。事実、トランプ政権時代には戦争は起きなかった。それどころかトランプはまるで「禁じられた恋」のように秘かにプーチンを慕い、北朝鮮の金正恩とも会って和平に向けて動こうとした。しかしバイデン政権になった瞬間からウクライナ戦争、イスラエル戦争と、世界に戦争をばらまく戦争屋ネオコンの本領が再び発揮され始めた。もし、それを信じない方がおられたら、ぜひとも拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』の【図表6-2 朝鮮戦争以降にアメリカが起こした戦争】(p.234~p.235)および【図表6-8 「第二のCAI」NEDの活動一覧表】(p.253~p.255)をご覧いただきたい。アメリカは、トランプ政権時代を除いて、第二次世界大戦が終わったあとから、ただひたすら全世界で戦争を巻き起こしてきたのだ。そのためにはルペン氏が言っているように「アメリカは敵を必要としている」。旧ソ連を崩壊させるに当たって、アメリカは「NATOを1インチたりとも東方に拡大させない」と約束しておきながら、ゴルバチョフがそれを信じてワルシャワ機構を解体させソ連が崩壊するのを見届けると、その瞬間から東方拡大を始めたではないか。それでも飽きずに、「戦争の種」を求めて、今度は台湾有事を創り出して、親米的でない国家「中国」を潰そうとしている。その大きな枠組みの中で人類が動かされていることに、日本人は気づこうとしないし、気づきたくないようだ。そして気づいた時には、日本人はアメリカの駒として戦場に送られていることになる。その視点でNATOワシントン宣言を見ると、NATOワシントン宣言は結局のところアメリカの世界一極支配を維持するために「日本を戦争に誘い込むシナリオ」であることが浮かび上がってくる。日本国民の命を守るために、その視点を一人でも多くの日本人と共有したいと切に望む。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※5)より転載しました。NATOワシントン首脳会議で会見するバイデン大統領 写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.reuters.com/world/europe/hungary-will-not-support-nato-becoming-anti-china-bloc-minister-says-2024-07-11/(※3)https://grici.or.jp/5437(※4)https://www.nytimes.com/2022/04/13/world/europe/le-pen-nato-russia-germany.html(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6c7ff82141848f044f808a47da2869a323564cef
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2024/07/12 16:14
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NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(1)【中国問題グローバル研究所】
*16:12JST NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。ワシントンで開かれていたNATOサミットがアメリカ時間7月10日に宣言を出し、その中で中国に関して、ロシアの侵攻に対する「決定的な支援者だ」と批判した。インド太平洋地域は米欧の安全保障に影響するとし、日本や韓国との協力強化も盛り込んだ。これに対して中国は激しく抗議している。両者の言い分を考察すると、日本人がやがてアメリカの駒として戦場で戦わされるシナリオが見えてくる。◆NATOワシントン宣言の対中批難部分アメリカ時間7月10日、NATOサミットは<Washington Summit Declaration(ワシントン・サミット宣言)>(※2)というタイトルの宣言を発表した。その4項目目に「戦略的競争、蔓延する不安定性、そしてくり返されるショックが、われわれのより広範な安全保障環境を特徴づけている」とした上で、中国に対する警告が盛り込まれている。また26項目および27項目にも対中批難が書かれているので、それらの概要をまとめて以下に記す。●野心と威圧的な政策を表明してきた中華人民共和国(以下、中国)は、われわれの利益、安全保障と価値観に引き続き挑戦している。●ロシアと中国の戦略的パートナーシップの深化と、ルールに基づく国際秩序を無効化させ再構築しようとする試みは、深刻な懸念の原因となっている。われわれは、ハイブリッド、サイバー、宇宙、その他の脅威と悪意のある活動にも直面している。●中国は、いわゆる「無制限」のパートナーシップとロシアの防衛産業基盤への大規模な支援を通じて、ロシアのウクライナに対する戦争を決定的に可能にしている。これにより、ロシアが近隣諸国と欧州大西洋の安全保障に及ぼす脅威が増大している。われわれは中国に対し、ロシアの戦争活動に対するすべての物質的および政治的支援を停止するよう求める。●中国は、自国の利益と評判に悪影響を及ぼさずに、ヨーロッパにおける近年最大の戦争を可能にすることはできない。●中国は、欧州大西洋の安全保障に体系的な挑戦を取り続けている。われわれは、中国に起因する偽情報を含む悪意のあるサイバー活動とハイブリッド活動が継続しているのを目にしている。われわれは中国に対し、サイバー空間で責任ある行動をとるという約束を守るよう求める。●われわれは中国の宇宙能力と活動の発展を懸念している。われわれは中国に対し、責任ある宇宙行動を促進するための国際的な取り組みを支持するよう求める。●中国は核弾頭の増加と高度な運搬手段の増加により、核兵器の急速な拡大と多様化を続けている。われわれは中国に対し、戦略的リスク削減の議論に参加し、透明性を通じて安定を促進するよう求める。(概ね以上)◆中国の反論これに対して駐EUの中国使節団の報道官は、7月11日の記者会見で以下のように反論した(※3)。●NATOサミットの宣言は、冷戦のメンタリティと好戦的なレトリックに満ちており、中国関連の内容は、挑発、嘘、扇動、中傷に満ちている。●周知の通り、中国はウクライナ危機の生みの親でもなければ当事者でもない。ウクライナ問題に関する中国の核心的立場は、和平交渉と政治的解決を促進することであり、これは国際社会から広く認識され、高く評価されている。●中国は紛争当事者に殺傷力のある武器を提供したことはなく、民生用ドローンの輸出を含む軍民両用物品を常に厳しく管理してきた。中国とロシアの間の正常な貿易は第三者に向けられたものではなく、外部からの干渉や強制の対象であってはならない。●ウクライナ危機は今のところ長引いているが、誰が火に油を注いでいるのか、誰がこの機会を利用して個人的な利益を求めているのか。国際社会は、このことをはっきりと認識している。われわれはNATOに対し、国際社会の正当な声に注意深く耳を傾け、自らが行っていることを深く反省し、責任を転嫁したり他国を非難したりするのではなく、事態の悪化を緩和し、問題を解決するための具体的な行動をとるよう求める。●アジア太平洋地域は平和的発展の高地であり、地政学的な駆け引きの競技場ではない。NATOは再三再四にわたって「ユーラシア安全保障のつながり」誇大宣伝しているが、その意図は何処(いずこ)にあるや?●われわれはNATOに対し、北大西洋における地域防衛機関としての地位を堅持し、アジア太平洋地域の平和と安定を台無しにしたり、特定の大国の覇権の道具にならないよう要請する。●中国は世界平和の建設者であり、世界の発展に貢献し、国際秩序の擁護者である。われわれはNATOに対し、中国に対する誤った認識を直ちに正し、冷戦のメンタリティとゼロサムゲームを放棄し、いわゆる中国の脅威を声高に叫ぶのをやめ、対立と対抗を扇動するのをやめ、世界の平和と安定のためにより実践的なことを行うことを要求する。(以上)一方、中国の外交部はやはり7月11日の記者会見で(※4)以下のように抗議している。●NATOの「ワシントン首脳宣言」は、アジア太平洋地域の緊張を誇張し、冷戦思考と好戦的な発言に満ちており、中国関連の内容には偏見・中傷・挑発に満ちており、われわれは強烈な不満を抱いており、断固として反対する。●今回のNATOサミットにはNATO創設75周年という背景がある。存続の必要性を示すために、米国とNATOは会合前にNATOの「栄光」と「団結」を誇示し、NATOを「平和維持組織」であるかのように見せかけているが、実は「冷戦の遺物」であることを覆い隠すことはできない。●NATO軍は「人道的災害の回避」を旗印にしながら、かつてユーゴスラビアに対して78日間にわたる爆撃を実施した。NATOの黒い手が伸びるところはどこでも、混乱が現れる。NATOのいわゆる安全保障は、他国の安全保障を犠牲にして成り立っている。NATOが売り込む「安全保障上の不安」の多くは、NATO自身が引き起こしている。NATOが誇るいわゆる「成功」や「力」は世界にとって大きな危険を意味する。「仮想敵国」を設定することで存在を維持し、国境を越えて勢力を拡大するのはNATOの常套手段であり、中国に対する「体制的挑戦」の誤った位置付けに固執し、中国の内政・外交政策の信頼を損なうことはまさにそれを体現している。●ウクライナ問題に関して、NATOが「中国の責任」論を主張するのは荒唐無稽であり、邪悪な意図がある。NATOはいかなる証拠もなく、米国が捏造した虚偽の情報を拡散し続け、公然と中国を中傷し、中国とEUの関係を破壊し中欧協力を潰したいのだ。ウクライナ危機を今日まで延期させ、火に油を注いでいるのが誰であるか、国際社会は知っている。NATOは、危機の根本原因と自らの行動を熟考し、国際社会の公正な声に注意深く耳を傾け、責任を転嫁したり他国を非難するのではなく、状況を緩和するために実際的な行動を取るよう勧告する。●NATOはその範囲をアジア太平洋にまで拡大し、中国の近隣諸国や米国の同盟国との軍事・安全保障上の関係を強化し、「インド太平洋戦略」の実施において米国に協力してきたが、その行為は中国の利益を損ない、アジア太平洋地域の平和と安定を破壊し、すでに地域諸国の疑念と反対を引き起こしている。●中国はNATOに対し、冷戦思考・陣営対立・ゼロサムゲームという時代遅れの概念を放棄し、中国に対する誤った理解を正し、中国の内政干渉をやめ、中国のイメージを汚し、中国とEUの関係に干渉しないよう求める。ヨーロッパを混乱させた後、アジア太平洋を混乱させるのをやめよ。●中国は自国の主権・安全保障・発展利益を断固として守り、自国の発展と対外協力を通して、世界の平和と安定にさらなる安定と前向きなエネルギーを注ぎたい。(以上)外交部のこの回答は7月11日の新華網(※5)が掲載し、中央テレビ局CCTV(※6)も同じ内容で報道した。したがって、外交部の記者会見での回答が中国政府の正式見解であると解釈していいだろう。「(NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。NATOワシントン首脳会議で会見するバイデン大統領 写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_227678.htm(※3)http://eu.china-mission.gov.cn/stxw/202407/t20240711_11451831.htm(※4)https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/202407/t20240711_11452358.shtml(※5)http://www.news.cn/world/20240711/9707b00c867b4840bef0f9f4da2e6ac8/c.html(※6)https://tv.cctv.com/2024/07/11/VIDENC0MeGRaeb3gQsqlcFeW240711.shtml(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6c7ff82141848f044f808a47da2869a323564cef
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2024/07/12 16:12
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プーチン訪朝で国境の豆満江開放 中国海警局の船も日本海に!【中国問題グローバル研究所】
*10:38JST プーチン訪朝で国境の豆満江開放 中国海警局の船も日本海に!【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。6月19日、北朝鮮を訪問していたプーチン大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長との間で「包括的戦略パートナーシップ」が締結された。軍事同盟に近い「互いの国が第三国から攻撃された場合には互いに支援する」という項目が盛り込まれたようだが、同時に合意文書には「豆満江(とまんこう)に架かる国境道路橋の建設に関するロシア連邦政府と朝鮮民主主義人民共和国政府間の合意」も謳われている。豆満江は「中露朝」三ヵ国の国境に接する河で、日本海に注ぐ国際河川だ。中国にとっては、旧ソ連以来塞(ふさ)がれていた豆満江の航行が自由化されることになる。それは立ち遅れていた「東北大振興政策」を大きく飛躍させ中国にとっては大きな収穫だが、日本にとっては厳しいダメージをもたらすだろう。なぜなら貨物を運ぶコンテナ船だけでなく、中国海警局の大型船舶も北の豆満江から日本海に直行できるようになるからだ。これらはアメリカによる「中露朝」に対する制裁や包囲網がもたらした結果でもあることを見逃してはならない。◆中露間に横たわっていた豆満江航行閉鎖問題中国の東北部吉林省の東端(地図で見て右端)は、「中国・ロシア・北朝鮮」三ヵ国の国境が接する地区につながっている。そこには豆満江(中国語では図們江)という河が流れており、朝鮮戦争のときに旧ソ連と北朝鮮をつなぐ「ソ朝友誼大橋」が架けられた。1952年のことで、最初は武器やその他の支援物資をソ連から北朝鮮に運ぶための簡易な木製の大橋だったが、1959年に金属製に強化された。問題は橋の高さだ。水面からわずか7メートルほどしかないので、中国領土の吉林省の琿春(こんしゅん)市防川村までしか中国の大型船は航行できず、中国東北部は本来なら豆満江を下れば日本海に出られたのに、それが出来なかった。中国はこれまで何度も何度もロシアに対して大橋を解体して中国の大型船舶が通れるように改善して欲しいと頼んできたのだが、ロシアは、プーチン時代に入ってからも首を縦に振らなかった。それが突如変わったのは、ウクライナ戦争で西側からの厳しい制裁を受ける中、習近平が経済面に関しては徹底してプーチンを支援してきたからだと断言していいだろう。それ以外に思い当たる理由はない。◆中国20年来の「東北大振興政策」がウクライナ戦争により実現中国建国当時、東北部は「旧満州国」が遺した重工業施設が豊富だったので、第一次五ヵ年計画は東北部の重工業を中心として経済建設が推進され、改革開放までは中国経済の花形として、その骨格を成していた。しかし1980年代から自由経済の波が中国全土を覆うにつれ、国営企業を中心とした重工業地帯・東北部は経済発展から取り残され、荒廃の一途をたどっていったので、胡錦涛政権時代に入った2003年に「東北大振興政策」が打ち出された。あれから20年。遅々として進まなかった東北大振興に新しい光をともしたのはロシアのプーチンだ。ウクライナ戦争により西側からの制裁が激しいため、活路を東側に見いだし、中国語で「看東方」と呼ばれる東方重視策に着手した。拙著『嗤(わら)う習近平の白い牙』の【第五章 ウクライナ戦争と「嗤う習近平」】の【三 中国20年来の「東北大振興政策」が初めて実現できた】で書いたように、2023年9月7日に、習近平が黒竜江省ハルビン市で「新時代の東北全面振興を推進する」という座談会を開いた。すると、それに呼応するように数日後の9月11日から13日にかけてウラジオストクで開催した「東方経済フォーラム」で、プーチンは「ロシアは遠東重点戦略に着手する」と宣言。今年5月16日から17日にかけて、プーチンは国賓として訪中し習近平と会談して共同声明を発表した。その中で、「(中露)両国は図們江(豆満江)下流域を航行する中国船舶の問題について朝鮮民主主義人民共和国と建設的な対話を行う」と謳っている。今般のプーチンによる訪朝の目的の一つは、まさにこの「豆満江における中国船舶航行問題」を解決することにある。日本のメディアでは、「露朝の接近に中国ジレンマ」といった傾向の報道が多く、中国が露朝接近を警戒しているのではないかと思っているようだが、実際はまったくその逆だ。◆豆満江を航行できれば、中国海警局の大型船舶も直行で日本海に出航できるこれまで堰(せ)き止められていた豆満江流域の吉林省琿春市防川村から日本海までは、わずか15キロメートルしかない。目の前が日本海だ。ただ露朝間に架けられている友誼大橋の高さは7メートルなので、貿易用のコンテナ船であれ海警局の大型艦艇であれ、せめて水面から30メートルほどの高さがないと安心して通ることはできないだろう。したがって現在の友誼大橋を取り壊して、新しく水上最低30メートルほどはある鉄橋を建設するしかない。建設費用は中国が持つだろうが、ここが「大海」に開放されれば、中国東北部の経済繁栄に大きく寄与するのは確実だ。中国にとって露朝会談は大歓迎なのだが、問題は日本に対する安全保障上のリスクが急激に高まるということである。中国はこれまで北朝鮮を動かそうと思えばできたはずだが、今回習近平は先ずプーチンを説得してから、プーチンに北朝鮮の金正恩を説得させた。それは習近平がウクライナ戦争によりプーチンの足元を見ている証拠なのだが、金正恩は習近平の話よりもプーチンの話の方に、より耳を傾ける傾向にある。北朝鮮の建国の父である金日成(キム・イルソン)はソ連の支援を得て北朝鮮を建国したからだ。一方、中朝は軍事同盟を結んでいるが、露朝は(旧)ソ連崩壊によってそれまでソ朝間で締結されていた軍事同盟は消滅していた。プーチンによる24年ぶりの訪朝は、まさにその軍事同盟に近い同盟関係を露朝間にもたらしたことになる。それも、もとはと言えばバイデン大統領がアメリカによる一極支配を維持したいためにウクライナをそそのかし、NATOを焚きつけてプーチンがウクライナを侵略するしかないところにプーチンを追い込んだことが最も大きな要因と言える(ウクライナを侵略したプーチンは悪いが、戦争中であればウクライナはNATOに加盟できないので、ウクライナをNATO加盟させないために戦争を仕掛けたという側面もあるだろう。アメリカはソ連を崩壊させるときにNATOを1インチたりとも東方に拡大させないと旧ソ連に約束したが、その約束を限りなく破ってきたという経緯がある)。もしトランプ前大統領が第二期目も大統領を務めていたら、ウクライナ戦争は起きていなかったことを考えると、その因果関係は明白だろう。トランプはNATOやウクライナを動かしてプーチンを倒そうとするどころか、「NATOなど要らない」と繰り返し、プーチンとは仲良くしたくてならなかった大統領だった。北朝鮮の金正恩と電撃的な会談を行なって、朝鮮戦争以降の北朝鮮問題を解決しようとさえしたではないか(トランプはキッシンジャーのようにノーベル平和賞をもらいたいと思っていた。だから故安倍総理にノーベル平和賞への推薦状を依頼したほどである)。トランプは、アメリカを軍事産業によって運営していこうとするネオコンではないために、ネオコンによって北朝鮮との雪解けは封じられてしまった。朝鮮半島が平和になるとアメリカの軍事産業が要らなくなるので、ネオコンは困るのだ。こうして世界中に戦争をばらまいた、バイデンに代表されるアメリカの戦争屋たちが、「中露朝」という、非米陣営のブロックを形成させる結果を招いたことを見逃してはならない。日本に脅威をもたらすのは、アメリカであることが見えてくるプーチンの訪朝であったと思う次第だ。なお筆者は1947年から48年にかけて吉林省長春市で中国共産党による食糧封鎖に遭い、餓死体の上で野宿させられた経験を持つ。国共両軍の真空地帯である卡子(チャーズ)を脱出したあとは北朝鮮に接する吉林省延吉市に難民として流れ着いた。その延吉で豆満江を見ながら2年間の歳月を過ごし、1950年には朝鮮戦争を迎えた。したがって筆者にとって豆満江は、「二度と戦争を起こしてはならない」と筆者に決意させる象徴の一つでもある。そのため、誰が戦争を起こさせるのかを生涯かけて追究している。その視点から論考を書いていることを読者の方々にご理解いただきたいと、心から願う。この論考はYahoo(※2)から転載しました。写真: プーチン大統領と金正恩委員長(ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/4dd0680ec41df27097d0de1173bac50ce79fd406
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2024/06/20 10:38
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ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(2)【中国問題グローバル研究所】
*10:55JST ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆中国&ブラジル和平案の「6項目コンセンサス」とは?では、ウクライナ戦争に対する中国とブラジルが共同で提唱する和平案とはどういう内容なのだろうか?今年5月23日、王毅・中共中央政治局委員兼外交部長は、北京でブラジルのアモリン大統領首席補佐官と会談し、「ウクライナ危機の政治的解決のための、中国&ブラジル6項目コンセンサス」に合意した(※2)。以下に、その「6項目コンセンサス」を記す。1.すべての関係者に対し、緊張緩和の「3つの原則」、すなわち、「戦場の拡大禁止、戦闘激化の禁止、戦争を煽ることを禁止」を遵守するよう呼びかける。2.対話と交渉がウクライナ危機から抜け出す唯一の実行可能な方法であると信じる。 当事者は、直接対話を再開するための条件を整備し、全面的な停戦に達するまで緊張緩和を促進すべきである。中国とブラジルは、「ロシアとウクライナ双方が認め、各方面が平等に参加し、すべての和平案について公正な議論を行えるような」国際平和会議を適切な時期に開催することを支持する。3.より大規模な人道危機の発生を未然に防ぐため、関連分野における人道支援を強化すべきである。 民間人や民間施設への攻撃は避けるべきであり、女性、子供、戦争捕虜などの民間人は保護されるべきである。 紛争当事者間の捕虜交換を支援する。4.大量破壊兵器、特に核兵器、化学兵器、生物兵器の使用に反対する。 核拡散を防止し、核危機を回避するために可能な限りの努力をする。5.原子力発電所やその他の平和的な原子力施設への攻撃に反対する。 すべての当事者は、原子力安全条約などの国際法を遵守し、人為的な原子力事故を断固として回避すべきである。6.世界の分断と閉鎖的な政治的または経済的ブロックの形成に反対する。世界の産業チェーンとサプライチェーンの安定を維持するために、エネルギー、通貨、金融、貿易、食料安全保障、石油・ガスパイプライン、光海底ケーブル、電力・エネルギー施設、光ファイバーネットワークなどの重要インフラの安全保障に関する国際協力を強化することを求める。中国とブラジル双方は、上記のコンセンサスに対する国際社会の支持と参加を歓迎し、事態の緊張緩和と和平交渉の促進に共同で建設的な役割を果たす。(以上が中国の外交部ウェブサイトに載っている説明だ。)ここで肝心なのは、「2」にある「ロシアとウクライナ双方が認める」という言葉で、中国&ブラジル案は、「排除の論理」に立っていないことが明らかである。当事者双方が参加し、他のいかなる国や国際組織も平等に自由に参加することを謳っている。また、「4」にあるように、「核兵器の使用を禁じる」という意味では、ロシアに一定の圧力を与えることになる。停戦交渉を行なう時に、戦争をしている当事国を招かないで、片方の国だけが相手国を排除した形で仲間を集めるのでは、停戦に結びつくはずがない。おまけにゼレンスキー和平案はロシア軍が2014年以前までの状態に戻るまで一人残らずウクライナから撤退するというのが絶対条件で、ウクライナの完全勝利以外の結果は絶対に受け付けない。しかし欧州外交問題評議会(ECFR)が今年1月に行った世論調査(※3)では、「わずか10%の欧州人しかウクライナの勝利を信じている人はいない」ことがわかった。この状況でゼレンスキー案が受け入れられる可能性は極めて低いだろう。もちろんロシアがウクライナに軍事侵攻したのが悪い。しかし、そこに追い込んだバイデン政権(副大統領時代からのバイデン個人の動き)を考えると、ロシアだけを一方的に非難することもできない。バイデンは2013年末にウクライナでNED(全米民主主義基金)をフル活用してマイダン革命を仕掛け、ウクライナの親露政権を転覆させ、親米傀儡政権をウクライナに樹立させた。もし仮に日本に激しい反中政権があり、中国共産党が日本で暗躍して日本の反中政権を転覆させ、日本に親中政権を樹立させるようなことがあったとしたら、日本は許すだろうか?あり得ない他国干渉であり、国際秩序を激しく乱すものとして全力で厳しく抗議するだろう。その同じことをアメリカがウクライナでやっているのに、なぜそこはスルーするのか。アメリカなら何をやっても許されるのか。アメリカの都合で(NEDの見えない糸の影響下で)動く日本のメディアは、真相から目をそらさせ、結局のところ日本を戦争へと導いている。そのことを、より多くの日本人が、上記の矛盾からも洞察してくださることを祈らずにはいられない。この論考はYahoo(※4)から転載しました。ウクライナのゼレンスキー大統領 写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.mfa.gov.cn/wjdt_674879/wjbxw_674885/202405/t20240523_11310686.shtml(※3)https://ecfr.eu/publication/wars-and-elections-how-european-leaders-can-maintain-public-support-for-ukraine/(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/579e120ba0f51cf3384ad9463fbddb948fa72557
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2024/06/17 10:55
GRICI
ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:54JST ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。6月15日から16日にかけてスイスでウクライナ戦争の停戦に関して「ロシアの参加を排除したゼレンスキー案」に基づいたウクライナ平和サミットが開かれている。会議にはロシアを参加させないという条件があるため、中国は参加しないと表明していた。それに対してウクライナのゼレンスキー大統領は6月2日、シンガポールでの「アジア安全保障会議」で「中国がウクライナ平和サミットに参加しないように各国に呼び掛けている」、「中国は戦争支持者だ」と激しく中国を非難した。だというのに、6月13日になるとイタリアG7サミット後のバイデン大統領との共同記者会見で、突如、「習近平は電話会談でロシアに武器を送らないと約束している」と中国擁護に回り、バイデンが慌てて否定する場面があった。ロシアを含めたすべての国が平等に参加すべきとする「中国&ブラジルが提案している和平案」とともに、何が起きたのかを検証する。◆前言を翻(ひるがえ)したゼレンスキー6月2日、シンガポールのシャングリラホテルで開催されていた「アジア安全保障会議」に出席したゼレンスキーは、記者会見で「中国が他国にウクライナ和平サミットに出席しないよう圧力をかけている」(※2)と非難し、また「中国はロシアの手先であり、戦争の支持者だ」(※3)とまで言って中国を激しく罵倒した。そのゼレンスキーは6月13日になると突然、G7サミットでのバイデンとの共同記者会見で「習近平国家主席がゼレンスキーとの電話会談で、中国がロシアに武器を売却しない」(※4)と約束したと言い出した。この電話会談がいつ行われたものかに関しては触れていない。しかしゼレンスキーは「習近平が立派な人物であれば、私に約束した以上、売却しないだろう」と述べたという。すると、共同記者会見に臨んだバイデンは「武器を生産する能力とそれに必要な技術を提供している。つまり、中国は実際にロシアを支援している」と述べ、反論したほどだ。このことは、<中国に対する見方で温度差 対ロ支援巡って―米ウクライナ首脳>(※5)など、日本の少なからぬメディアも報道している。では、6月2日から13日迄の間に、いったい何が起きたのだろうか?◆ウクライナ高官が訪中し、ゼレンスキーはサウジアラビアに飛んでいた2日のゼレンスキーによる激しい対中批難が公表されると、中国外交部の報道官は定例記者会見で直ちに「中国がウクライナ平和サミットに出席しないように他国を説得した事実は皆無だ!」(※6)と反論し、王毅政治局委員兼外相は6月4日に、訪中していたトルコのフィダン外相と北京で共同記者会見をし「中国はスイスが(ウクライナ平和サミットのために)行った作業を非常に尊重し、スイス側に対して建設的な提案を繰り返し行い、スイス側は常にこれを称賛し、感謝してきた」と述べ(※7)、暗にゼレンスキーの発言を否定した。すると、ウクライナの外務省はそのウェブサイトで<王毅発言に対する(肯定的な)コメントを発表>(※8)し、その翌日の6月5日には、あわててウクライナのアンドリー・シビハ第一副外相(第一外務次官)を北京に派遣し(※9)、中国の孫偉東外交部副部長と会談。それは電光石火のような勢いで、アンドリー・シビハ氏は続けて中国政府の李輝・ユーラシア担当特別代表(※10)および中共中央聯絡部の陳州副部長とも会っている。さらに翌6日には上海に飛び、上海全人代常務委員会副主任(※11)と会談し、さらに中国の13社の企業代表(※12)と面談した。中国はウクライナの最大貿易国で、中国はこれまでウクライナとの友好を重んじ、ウクライナに対する人道支援金などもしてきた。その中国を敵に回すのは賢明でないと判断したためだろう。李輝はこれまで何度もウクライナを訪問して、中国の和平案に関して説明し、かつゼレンスキーから称賛を得ている。今般の中国&ブラジル案に関しても事前にウクライナを訪問し了承を取り付けてから公開している。そのことをゼレンスキーは思い出したのかもしれない。さらに決定打的なことがあった。中国がイランとサウジアラビアを和解させてからは、サウジアラビアの中国への接近が激しくなっている。そこでゼレンスキーは6月12日にサウジアラビアを訪問しムハンマド皇太子と会談している(※13)のだ。スイスで開催するウクライナ平和サミットへの参加を呼びかけたが、どうやらムハンマド皇太子は断ったようだ。平和サミットは首脳級が参加することになっているが、ムハンマド皇太子は結局参加せず、義理のように外相を参加させてお茶を濁した。それもそのはず、5月31日には北京で中国・アラブ諸国協力フォーラム第10回閣僚級会議(※14)が開催され、父親の病気で出席できなかったムハンマド皇太子の代わりに外相が出席し、王毅と会談したばかりだ。さらに6月10-11日にロシアで開催されたBRICS外相会議にも二人は揃って出席している。もちろん中国&ブラジル案が提唱している和平案にサウジアラビアは賛同している。したがって、むしろ、ゼレンスキーに、あのような対中批判などすべきではないと説教した可能性さえある。あれだけウクライナをも支援してきた中国を敵に回せば、それこそゼレンスキー自身が世界を二分させる冷戦構造を形成するのに貢献することになる。このような経緯があり、ゼレンスキーは対中批判を引っ込めたものと考えられる。なお、電話会談は2023年4月に行われたもの(※15)を指しているとしか考えられず、「あの時の習近平との約束を忘れたのか」と諭されたのではないかと思うのである。だから今頃になって1年ほど前の習近平との電話会談を持ち出したのではないだろうか。「ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo(※16)から転載しました。ウクライナのゼレンスキー大統領 写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://apnews.com/article/ukraine-singapore-shangrila-russia-defense-94ebb72539182a0215c85895725cdd48(※3)https://edition.cnn.com/2024/06/02/europe/zelensky-ukraine-shangrila-address-intl-hnk/index.html(※4)https://jp.reuters.com/world/ukraine/BH666KDFL5IWHCTTLO32WRVUBA-2024-06-13/(※5)https://www.jiji.com/jc/article?k=2024061400319&g=int(※6)https://www.mfa.gov.cn/web/fyrbt_673021/202406/t20240603_11375826.shtml(※7)https://www.fmprc.gov.cn/wjbzhd/202406/t20240604_11376586.shtml(※8)https://mfa.gov.ua/en/news/komentar-mzs-ukrayini-shchodo-ostannih-zayav-ministra-zakordonnih-sprav-knr(※9)https://mfa.gov.ua/en/news/ukrayina-ta-kitaj-proveli-politkonsultaciyi(※10)https://www.fmprc.gov.cn/web/wjdt_674879/sjxw_674887/202406/t20240606_11377617.shtml(※11)https://mfa.gov.ua/en/news/andrij-sibiga-proviv-zustrich-iz-zastupniceyu-golovi-postijnogo-komitetu-narodnih-zboriv-shanhayu(※12)https://mfa.gov.ua/en/news/andrij-sibiga-proviv-zustrich-z-predstavnikami-dilovih-kil-knr(※13)https://jp.reuters.com/world/ukraine/5WGJXPGG3RIT3BO2673BKD7HUU-2024-06-13/(※14)https://www.fmprc.gov.cn/wjbzhd/202405/t20240531_11366748.shtml(※15)https://www.president.gov.ua/en/news/vidbulasya-telefonna-rozmova-prezidenta-ukrayini-z-golovoyu-82489(※16)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/579e120ba0f51cf3384ad9463fbddb948fa72557
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2024/06/17 10:54
GRICI
中露蜜月はなぜ堅固なのか? プーチンは習近平にスパイ極秘情報を渡していた【中国問題グローバル研究所】
*10:41JST 中露蜜月はなぜ堅固なのか? プーチンは習近平にスパイ極秘情報を渡していた【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。5月16日に訪中したプーチン大統領は、習近平と12時間にわたって時間を共にしているが、どうやらその間にプーチンが習近平に極秘スパイ情報を渡していたことがのちにわかった。それは中露両国政府を転覆させようとする外国勢力による中露国内におけるスパイ活動のリストらしい。6月15日から16日にかけてスイスでウクライナ戦争の停戦案に関する会議が開催されるが、ロシアが呼ばれていない上に、中国&ブラジルによる共同の和平案を新たに公開していることなどから習近平も出席しない。その背後には「秘密スパイ情報」によってますます強固になっていく二人の蜜月がある。「外国勢力」とは誰のことを指すのか?世界はその「外国勢力」によって大きく二分されながら重要な転換点を迎えようとしている。◆中露首脳会談とスパイ極秘情報もう1ヵ月ほど前のことになるが、今年5月16日、プーチンは北京を訪問し習近平と会談した(※2)。中露国交樹立75周年記念であることと、習近平が三期目の国家主席に就任した後に最初に訪問したのがロシアであったためその返礼としてプーチンが5度目の大統領に就任したので、最初の訪問国を中国にしたと、双方が言っている。首脳会談では「中露国交樹立75周年に当たっての新時代の全面的パートナーシップに関する共同声明」(※3)を発表したり、16日の夜には中南海で二人だけの会談をしたり(※4)などしたことは、広く知られているところだ。その合計の接触時間は12時間以上であったと、ロシアのタス通信は伝えている(※5)。注目すべきは5月18日にロシアの衛星通信であるスプートニクが爆弾情報を公開したことである。5月18日、<ロシア議会下院:中国とロシアに対する政府転覆活動に関する資料がロシアから中国に渡された>(※6)というスプートニクの情報が中国語に翻訳されて報道された。そこには以下のようなことが書いてある。――ロシア議会下院のロシア内政干渉調査委員会のワシーリー・ピスカレフ委員長は、ロシアと中国の政府を転覆させようと活動している外国組織の情報を、最近ロシアが中国側に渡したと述べた。同委員会のテレグラム・チャンネルは、ピスカレフ氏の発言を引用して「われわれは最近、ロシアと中国に対する外国組織の政府転覆活動に関する資料を中国側に渡した」と報道した。ピスカレフはまた、「新たな挑戦や脅威に直面し、ロシアと中国に対する外圧が日々高まる中、当該委員会は近い将来、ロシアは中国というパートナーとの協力を継続し、外国の干渉に対する主権と立法を保護する最も優れた方法を実施する計画である」と表明した。報道は以上で、非常に短いものだ。◆中国とは事前に調整し合っていたのか?中国の民間ウェブサイト騰訊新聞 (qq.com)は5月20日、この情報に関して<ロシアは機密資料を送った、外国による政府転覆活動、国家安全部(国安部)は集中的に情報発信、西側スパイは大きな問題に直面している>(※7)という見出しで、かなり長文の報道をしている。報道の一部には以下のようなことが書いてある。――外国が中国に対して政府転覆活動を行なっているのは、決して驚くべきことではない。中国の国家安全部は国務院のすべての部局の中で最も「謎」が多く、公式ウェブサイトがない唯一の部局でもある。この部局に関する外部の情報は公安部部長の名前と履歴に限られており、その他は一切知らされていない。しかし、そんな謎の部門が昨年7月末、独自のWeChat公式アカウントを開設し、通報(密告)チャンネルを発布した。もし外国による中国政府転覆活動がますます横行していないのだったら、何のために国家安全部が舞台裏から表舞台に出る必要があるのか?最近、国家安全部はスパイ摘発事件のニュースに関してWeChatの公開アカウントを集中的に更新している。5月17日、国家安全部は、航空宇宙分野における複数のスパイ事件の摘発経過を紹介する文書を発表した。それによれば5月13日、国家安全部は、スパイが外国人教授になりすまして我が国の生態系データを盗んだ事件を明らかにした。また、利益誘導やポルノ誘惑などの手段も使用されているのを確認している。現在、国家安全部は基本的に週に 2 ~ 3 件の特別報告を報道しており、これは、スパイ事件が毎週偵察され看破されていることを意味する。(騰訊新聞からの引用は以上)◆「外国勢力」の正体は「第二のCIA」であるNED(全米民主主義基金)いうまでもなく、極秘情報が言うところの「外国勢力」の正体は、基本的に「第二のCIA」と呼ばれているNED(全米民主主義基金)だ。ロシアでは2012年から「外国の代理人」法を設け、予算の20%以上を外国から提供されている団体に対し、いわゆる「外国の代理人」として登録することを義務づけている。2024年には、「団体」を「個人」にまで拡大させた。それは、2023年12月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か?PartIV 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>(※8)の4回シリーズを通して書いたように、ソ連時代からアメリカは何としてもソ連を倒したいとしてNEDに暗躍させてきた。そのことは2023年10月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か? 露ウに民主化運動を仕掛け続けた全米民主主義基金NED PartI>(※9)で考察した。特に近年は、コラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か?PartIV 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>(※10)の図表2で示したアレクセイ・ナワリヌイのように、NEDの支援金の活動対象が特定の人物に象徴されるようになってきた。だからプーチンは「外国の代理人」を組織団体から個人にまで拡張したものと思われる。習近平の場合も、「反スパイ法」の強化や香港特別行政区の国家安全維持法制定などを断行して、NEDが中国に潜り込んで(あるいはネットを使って)中国政府の転覆を謀ろうとしているのを必死で抑え込もうとしている。◆アメリカは中露を離間させたいが、アメリカにより中露は蜜月化その結果、習近平もプーチンも、互いの国をNEDの政府転覆活動から守ろうと、絆を一層強くさせている。習近平にしてみれば、2014年にNEDが主導したマイダン革命によりウクライナの親露政権が転覆させられたように、万一にもロシアに潜り込んだNEDによってプーチン政権が転覆させられロシアが民主的政権にでもなろうものなら、中国包囲網が強靭化し、ほぼ四面楚歌に至ると懸念しているだろう。それだけは絶対に避けねばならないと習近平は思っているだろうから、何が何でもプーチンを応援する方向に動いている。ただウクライナへの軍事侵攻をしたプーチンの軍事行動を容認すると、中国にいるウイグル族やチベット族などが他国に助けを求めたときに他国が中国に侵攻していいことになってしまうので、それだけは絶対に認めていない。それでいながらプーチン政権には絶対に崩壊してほしくないので、何としてもプーチンとの絆を深めてプーチン政権(あるいは専制主義的政権)の持続を望んでいるだろう。NEDの暗躍による政府転覆のリスクという共通項があれば、なおさら絆は深くなる方向に動く。◆中露が民主化してしまうと、実は困るアメリカしかし、万一にもだが、ロシアに民主的な政権が生まれ、それに伴って中国も民主化してしまった場合、実はアメリカは困るのではないだろうか。NEDを主導するネオコンは、基本的に軍事産業を国家運営の骨格に置いているので、中露という大国が平らかに民主化してしまった時に、「戦争を仕掛けていく暗躍の場」がなくなり、「民主の衣」を着て非親米的政権を倒す場がなくなって、活躍の対象を失う。何と言ってもロシアに民主的政権が生まれて、ロシアが欧州と仲良くなってしまうと、NATOの存在意義がなくなるので、アメリカの軍事産業は行き場を失い、「君臨する相手国(NATO諸国)」が存在しなくなるので、逆にアメリカによる世界の一極支配は衰退する方向に傾いていくと言っても過言ではない。トランプ政権が復活しても、トランプは大統領任期中に何度も「NATO無用論」を唱えてきたし、「アメリカ・ファースト」であって「他国の民主化」などに余計な力を注いで軍事ビジネスで国家運営をしていこうというネオコン系列ではないので、類似の現象は起きるかもしれない。現在、ゼレンスキーが唱えるウクライナ戦争和平案に基づく会議に参加する国の数は約90ヵ国・国際組織で、中国&ブラジルが唱える和平案に賛成する国は101ヵ国・国際組織である。これらの国の一部は重複しているかもしれないが、少なくとも全人類の85%は対露制裁に加わっていないので、残り15%の人類をアメリカ側に引き寄せているに過ぎない現状は、すでにアメリカの劣化を物語っている。中露の絆の強化は、その趨勢の中での分岐点をわれわれに突きつけている。もっとも、それでもなお、習近平がプーチンの足元を見ていることは拙著『嗤(わら)う習近平の白い牙』の【第五章 ウクライナ戦争と「嗤う習近平」】で詳述した。この論考はYahoo(※11)から転載しました。訪中したプーチン大統領と習近平国家主席 写真: 代表撮影/ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202405/t20240516_11305617.shtml(※3)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202405/t20240516_11305860.shtml(※4)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202405/t20240517_11305902.shtml(※5)https://tass.com/politics/1789297(※6)https://sputniknews.cn/20240518/1059159252.html(※7)https://new.qq.com/rain/a/20240520A044NL00(※8)https://grici.or.jp/4885(※9)https://grici.or.jp/4683(※10)https://grici.or.jp/4885(※11)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7781d9020315b44953fb4abc6543363ffe7c08f0
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2024/06/14 10:41
GRICI
禁止令を出しながらTikTokで若者の大統領選人気を競うバイデンとトランプ【中国問題グローバル研究所】
*10:25JST 禁止令を出しながらTikTokで若者の大統領選人気を競うバイデンとトランプ【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。中国企業バイトダンス(ByteDance)が運営する動画アプリTikTokの米国内でのアプリ配信禁止令法案を超党派で可決しておきながら、バイデン大統領もトランプ前大統領もTikTokのアカウントを持ち、大統領選で若者層を取り込もうと競っている。禁止令に従わなければ米国に売却しろと言われたTikTok側は、禁止令は憲法に違反しているとして差し止めを求める訴えを起こした。大統領選のためなら、どんなに矛盾したことでもするアメリカだが、バイデンは自分自身が選挙活動のためにTikiTokを利用しながら禁止令を出し、トランプは禁止令に反対し最近になってTikTokの公式アカウントを設定し、バイデンのフォロワー数を遥かに超えている。中国との関係において、この現象を考察してみたい。◆バイデンがTikiTokの米国内での配信禁止令を出したわけ2024年3月13日、アメリカ議会下院は安全保障上の懸念があるとして、中国の企業バイトダンス(中国語では「抖音=ドウイン」)が運営するTikTokの米国内でのアプリ配信禁止令法案を超党派で可決した。米国内での事業を180日以内にアメリカに売却しなければ米国内での配信を禁止するというものだ。理由は「敵対国からの安全保障上の脅威」だとしているが、実は米大統領選におけるプロパガンダであるとする見解が、身内のバイデン政権側からも出ている。3月13日、国家情報長官のアヴリル・ヘインズ議員は下院情報委員会の公聴会で「中国はソーシャルメディア・アプリTikTokを使って2024年のアメリカ大統領選挙に影響を与える可能性がある」と語っていると、イギリスメディアのザ・ガーディアン紙が報道している(※2)。4月23日には米議会上院でも賛成79票、反対18票で可決され、4月24日にバイデンが大統領として署名し禁止令は成立した。それによれば、ByteDanceは法案の可決から270日以内にTikTok事業を米国に売却しなければならず、株式保有率は20%未満でなければならない。この計算に基づくと、ByteDanceがTikTokの米国事業を売却する期限は2025年1月19日となる。この期限が、バイデンが米大統領としての現在の任期の最終日であることは注目に値する。最初の「180日以内」から「270日以内」に延期したのは、米国各地で禁止令に反対する抗議デモが若者を中心に展開されたため、大統領選においてバイデンに不利に働くことに気が付いたからだろうが、そもそも禁止令を出したのも、やはり大統領選でバイデンに不利に働くと判断したからと思われる。というのは、前回の大統領選が行われた2020年における若者層(30歳未満の有権者)の支持率は、バイデンが61%だったのに対し、トランプはわずか36%でしかなかった。ところが2024年2月25日から28日にかけてFOXニュースが行った調査では、若者層の51%が今年11月の大統領選ではトランプに投票する予定だと回答したのに対し、バイデンに入れると回答したのは45%に留まったとのこと。だからこそバイデンは、若者が多く使っているTikTokの使用禁止令を出したものと考えることができる。◆禁止令に反対したトランプがTikiTokにアカウントを設け一気に人気上昇その証拠に、最初にバイデンが禁止令を言い出したときに、トランプは間髪を入れずに「禁止令反対」を表明した。トランプは3月11日に、アメリカのニュース専門放送局CNBCの取材を受け、TikTok禁止令に反対したと、CNBCは以下のような形で報道している。――2017年から2021年まで米大統領を務めたドナルド・トランプは月曜日(11日)のCNBC番組「スクワークボックス」のインタビューで、「TikTokがなくなれば、フェイスブックを大きくすることになってしまう。フェイスブックは国民の敵だと私は考えている」と語った。(中略)さらに 「TikTokを気に入っている人はたくさんいる。TikTokがなければ気が狂ってしまうような若い子さえ大勢いる」とトランプ前大統領は語った。事実、アメリカにおけるTikTok利用者の数は1億7000万人に上る。アメリカの総人口は2021年統計で約3億3000万人だ。そのうち赤ちゃんや超高齢者などスマホやiPadなどを使えない人口を考えると、大まかに言って50%以上がTikTokを利用していることになろうか。その内の有権者の数を考えれば無視できない要素となる。そこでトランプは、5月30日に有罪判決が出るとすぐ、6月1日にTikTokの公式アカウントを設定した。するとフォロワー数が1日で300万人を超え、その3日後には400万人を超えた。今年2月にTikTokを利用し始めたバイデン陣営のフォロワー数34万人の10倍越えだ。トランプ自身、大統領在任中は、国家安全保障上の懸念を理由にTikTokの使用を禁じる大統領令に署名しているが、カリフォルニア州の連邦地裁が「言論の自由」への懸念を理由に、同命令を差し止める判断を下している。◆TikTok 中国親会社が「表現の自由を侵害した」として米政府を提訴一方、TikTokは中国の親会社とともに5月8日(米時間7日)、「この法律(禁止令)は憲法に違反している」として差し止めを求める訴えを起こした(※3)。訴状の中でTikTok側は「憲法に違反し、憲法で保障された表現の自由を侵害するものだ」と指摘し、「配信を停止しなければTikTokを米国に売却するという条件は、商業的にも、技術的にも、法的にも不可能だ」と主張している。つまり、絶対に売却しないということだ。TikTok側の「禁止令は表現の自由に反する」という主張が、米国内の若者を中心とした「禁止令抗議デモ」の主張と一致するというのも、なんとも奇妙な話だ。TikTok側では、トランプ政権時代にも、「言論の自由」を理由にTikTok配信禁止令を連邦地裁が取り下げていることを強みとして、勝算は高いと見ているようだ。もし勝てば、米中言論闘争に関して「中国側が自由を勝ち取った」という、実にねじれた社会現象が生まれることになる。◆トランプが「絶対にTikTokを禁止しない!」と強く表明6月7日、トランプは「ターニング・ポイントUSA」の創設者チャーリー・カーク氏との対談で、若い有権者にリーチするためのより大きな戦略について語った際に<「私は絶対にTikTokを禁止しない!」と、非常に強いトーンで誓ったという>(※4)。そしてバイデンを「史上最悪の大統領」と呼んだそうだ。アリゾナ州のタウンホールでトランプをもてなしたカーク氏は、トランプを「TikTok お気に入りの大統領」と呼んで、トランプとのやり取りのTikTok動画にキャプションを付けている。トランプがTikTok支援側に立つようになったのは、自身の選挙運動への大口献金者で、バイトダンスの15%の株を保有するジェフリー・ヤス氏と会ったからだ(※5)と一部に報じられたが、トランプはそれを強く否定している。◆中国はトランプを応援しているのか?この流れから見ると、あたかも中国がトランプを応援していて、それがTikTokに反映され、バイデンに不利になっているように見える。中国政府自身は「他国の選挙干渉」として何も表明しないが、しかし実際上、バイデンが「台湾有事の際には米軍が台湾を応援する」と何度も表明し台湾独立を煽っているのに対して、トランプは台湾有事に関してはノーコメントを貫いている。その意味において、当然中国はトランプに当選してもらった方が「まだマシか」とは思っている可能性が高い。この分析に関しては、別の機会に譲りたい。なお詳細は拙著『嗤う習近平の白い牙』の【第一章 TikTokと米大統領選と台湾有事】で考察した。この論考はYahoo(※6)から転載しました。写真:ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.theguardian.com/technology/2024/mar/13/china-tiktok-us-election-influence-avril-haines-us-house-of-representatives(※3)http://www.news.cn/world/20240508/2a72b7b61e3340428a44d99fdf2c3527/c.html(※4)https://nypost.com/2024/06/07/us-news/trump-vows-he-will-never-ban-tiktok-in-strongest-statement-yet-on-social-media-giant/(※5)https://nypost.com/2024/03/07/us-news/billionaire-tiktok-investor-bullies-lawmakers-to-stop-sale/(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/58858e2b9af412bdf5b4383254b09e51b1a0fe70
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2024/06/10 10:25
GRICI
アメリカがやっと気づいた「中国は戦争をしなくても台湾統一ができる」という脅威【中国問題グローバル研究所】
*10:29JST アメリカがやっと気づいた「中国は戦争をしなくても台湾統一ができる」という脅威【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。5月13日、アメリカン・エンタープライズ研究所と戦争研究所の共同プロジェクトである台湾連合防衛プロジェクトは、「中国は軍事侵攻ではない形で台湾統一をするつもりで、われわれは長いこと、それを見逃してきた」という趣旨の共同報告書を発表した。同日、アメリカメディアのTHE HILLも「中国は台湾統一をするために(台湾を)侵略する必要はない」というタイトルでこの報告書を報道。これは正に筆者が長年にわたって主張し、警鐘を鳴らし続けてきた分析とほぼ完全に一致しており、アメリカがやっとその事に気が付いてくれたかと、感慨深い。5月23日のコラム<中国の威嚇的兵器ポスターと軍事演習 頼清徳総統就任演説を受け>(※2)で書いた今般の軍事演習も、実はその作戦に沿ったものなのである。軍事演習をしているのに「戦争をしない」などと言えるのかと思われる方もおられるかもしれないが、むしろ、それこそがアメリカを勘違いさせてきたキーポイントだ。拙著『嗤(わら)う習近平の白い牙』の【第三章 習近平は台湾をどうするつもりなのか?】で詳細に分析した「港湾封鎖作戦」により、回答を示した。◆アメリカン・エンタープライズ研究所と戦争研究所の共同報告書5月13日、アメリカのシンクタンクであるアメリカン・エンタープライズ研究所(American Enterprise Institute=AEI)と戦争研究所(Institute for the Study of War=ISW)の共同プロジェクトである「台湾連合防衛(Coalition Defense of Taiwan)」プロジェクトは、<From Coercion to Capitulation: How China Can Take Taiwan Without a War(威圧から降伏へ:中国はいかにして戦争をせずに台湾を奪取できるか)>(※3)というタイトルの共同報告書(以下、報告書)を発表した。この報告書に関して、アメリカの政治専門紙THE HILL(ザ・ヒル)は同日、<China doesn’t need to invade to achieve Taiwanese unification(中国は台湾統一のために侵略する必要はない)>(※4)という見出しの報道をしている。報告書と報道によれば、結局のところ「アメリカがこんにちまで行ってきたシミュレーションの盲点に気が付いた」と、率直に認めている。その盲点というのは、主として、1.アメリカは台湾の防衛に関し、中国の侵攻を抑止または打ち負かすことにほぼ専ら焦点を当てており、すでに進行中の可能性の高いシナリオである「侵略には程遠い形で台湾を北京の支配下に置く中国の威圧作戦」をほとんど無視してきた。2.中国は、いわゆる武力攻撃によって台湾を統一するのではなく、「台湾周辺における軍事演習を強化し、台湾行きの船舶の立ち入り捜査を通して、台湾を準封鎖状態に置く」などの手段によって統一を成し遂げるだろうことに気が付いた。3.中国はそれにより次の総統選挙である2028年を目標にして、中台和平協定の締結に持ち込むつもりだ。このことに警戒せよ。(報告書と報道のまとめは以上)◆習近平の「港湾封鎖作戦」 台湾のエネルギー資源は2週間しか持たない冒頭で書いた拙著『嗤う習近平の白い牙』の【第三章 習近平は台湾をどうするつもりなのか?】で、徹底して分析したのが「台湾港湾封鎖作戦」で、これは報告書の「2」に合致する。第三章で特に焦点を絞ったのは「台湾のエネルギー資源」の問題である。習近平は台湾の平和統一を第一の目標に置いているが、もし台湾が独立を叫び、どうしても武力によって独立を阻止するしかないところに追い込まれた場合は、「台湾包囲作戦」を考えている。なぜなら「台湾の港湾を封鎖し、エネルギー資源を遮断すれば、台湾は2週間しか持たない」からだ。台湾はエネルギーを自給自足できず、2022年データで97.3%を輸入に頼っている。エネルギー資源は主として液化天然ガス(LNG)と石炭だが、その入り口は港湾だ。貯蓄量は2週間ほど(天然ガスの在庫は11日間、石炭の在庫は39日間)しか持たないため、港湾を封鎖してしまえば、台湾島に武力攻撃をしなくても、台湾を降参に追い込むことができる。台湾は島国なので、天然ガスのパイプラインを敷くことができないから、天然ガスは全て「液化天然ガス」で、港湾から入ってくる。台湾政府の「2022年(民国111年)發電概況」(※5)によると、2022年の発電源の割合は、・石炭:42.0%・液化天然ガス:38.%・原子力発電:8.2%・再生エネルギー:8.3%%・その他:2.6%となっている。つまり発電量の80.9%は石炭と天然ガスとなる。原発はたったの8.2%で、港湾を封鎖されたときに、半導体製造を動かすことは不可能だ。半導体製造には多くの電力を必要とし、2022年ではTSMC一社だけで、台湾の全エネルギー源の7.5%を使う(※6)。原発で市民の基本インフラを保ち、政府の基本機能のネット連絡を保ち、かつ半導体製造を機能させるということは不可能だということが言える。太陽光発電は2022年の再生エネルギーの44.8%を占めているが、8.3%の内の44.8%だから全体の3.7%くらいしか占めておらず、何もできない。民進党は原発絶対反対で、国民党や民衆党は原発推進派だが、現在の立法院でエネルギー資源に関して妥協し改善しなければ、台湾の安全は保障されない。習近平はここに焦点を当て、「港湾封鎖」のための軍事演習をくり返している。港湾を封鎖するだけで、台湾島自体への砲撃は行わないから、台湾の一般市民の命が砲撃により失われることはない。つまり地上戦は行わないということだ。その意味では「台湾武力攻撃」という「戦争」ではない。この手段を採用すれば、習近平が「喉から手が出るほどに欲しい」TSMCなどの最先端半導体産業を傷つけることもないし、統一後に「親族の命を奪われた」として中共を激しく恨む台湾人も出てこない(→統一後に増加しない)ので、中国共産党による一党支配体制が、「怨みによって起きる暴動(あるいはクーデター)」などによって崩壊に追い込まれる危険性も少なくなるだろうという計算だ。◆5月23-24日の軍事演習「聯合利剣―2024A」の位置づけ中国人民解放軍東部戦区が23日から24日にかけて行った軍事演習「聯合利剣―2024A」は東部戦区の「陸軍、海軍、空軍、ロケット軍」などの兵力を総合的に結び付けた軍事演習だが、この「2024A」の「A」に注意しなければならない。今後必ず「B、C、D…」と続き、かつ「2025A…」も2025年になったら始まるものと位置付けた方がいい。それは「2026A…」、「2027A…」と続き、報告書にある通り、「2028年の総統選」の時には、台湾人が「もう嫌気がさして、中台平和協定締結する政党を選ぶ」というところにまで至るだろうというのが、報告書の見立てと一致するところとなる。今般の「聯合利剣-2024A」の特徴は、「海空合同戦闘即応性パトロール」、「戦場総合支配権の合同奪取」などを重点的に訓練し、艦艇や航空機が台湾島周辺に接近した際の「即応性パトロール」や「列島線内外一体化連動」などを実施している点だ。これは報告書の「2」に書いた「船舶の立ち入り検査」の訓練に相当し、実際、中国の中央テレビ局CCTVはその訓練の様子を<海警2304艦隊が台湾島東方海域で総合的な法執行訓練を実施した>(※7)という見出しで報道している。準拠する法は、日本の海上保安庁法(※8)第十七条にもある「疑義がある場合」の「船舶の進行を停止させて立ち入り検査」をする権利と同じで、中華人民共和国海警法(※9)第十六条 や第十八条にある立ち入り検査をする権利に基づくものと思われる。これにより、たとえば台湾に武器やエネルギー資源を輸送する船舶などにターゲットを絞って運行を停止させ、事実上の海上封鎖を行うに等しい行動に出るものと推測される。◆習近平の哲理「兵不血刃(ひょうふ・けつじん)」筆者は昨年『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で習近平の哲理である「兵不血刃」に関して詳述した。これは「刃(やいば)に血塗らずして勝つ」という意味で、毛沢東もこの哲理に基づいて「長春食糧封鎖」を断行し、数十万に及ぶ長春市内の一般庶民を餓死に追いやって、国民党が支配する長春を陥落させた。この長春陥落によって、中国共産党軍は一気に南下して、全中国解放を成し遂げるに至ったのである。この国共内戦における蒋介石率いる国民党の逃れた先が台湾で、筆者にとって台湾は、あの『もう一つのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』の終着点でもある。だから中国共産党がいかにして「チャーズ」の終着駅である台湾問題を解決させるかは、筆者の生涯の強い関心事でもあるのだ。その執念に基づいて追いかけてきた台湾問題に関して、筆者が結論に至った「台湾港湾封鎖作戦」が、奇しくもアメリカのシンクタンクの分析と一致したことに、言葉には表せないほどの複雑で深い感慨を覚える。「台湾有事」とはしゃがずに、一人でも多くの日本人が、筆者とアメリカのシンクタンクが一致したこの視点を共有してくれることを望まずにはいられない。そうしてこそ、真の警鐘を鳴らすことができると信じるのである。なお、『嗤う習近平の白い牙』の「白い牙(きば)」は、「兵不血刃」の構えを表しており、「牙を血で紅く染めない(=野心はあるが、自ら積極的に戦争はしない)」の意味である。この論考はYahoo(※10)から転載しました。写真: 習近平国家主席(ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/5258(※3)https://www.aei.org/research-products/report/from-coercion-to-capitulation-how-china-can-take-taiwan-without-a-war/(※4)https://thehill.com/opinion/international/4657439-china-doesnt-need-to-invade-to-achieve-taiwanese-unification/(※5)https://www.moeaea.gov.tw/ECW/populace/content/Content.aspx?menu_id=14437(※6)https://ec.ltn.com.tw/article/paper/1592848(※7)https://news.cctv.com/2024/05/24/ARTINDoASE8etSa06Wf1WOJV240524.shtml(※8)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000028(※9)http://legal.people.com.cn/n1/2021/0202/c42510-32019526.html(※10)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/cb76207f7cf4ea0ef222967c9fb398d2b34f728e
<CS>
2024/05/27 10:29
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