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予測通り全国政協主席になる王滬寧と4人の妻の物語【中国問題グローバル研究所】

配信日時:2023/01/20 10:36 配信元:FISCO
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。

予測した通り王滬寧(おう・こねい)が全国政治協商会議主席になる。3代の紅い皇帝に知恵袋として仕えてきた王滬寧は習近平にかつて「デタラメを言うな!」と怒鳴った男だ。そんな王滬寧の妻たちの物語を知っている人は少ない。

◆予測通り全国政治協商会議主席になることが判明した王滬寧
1月18日、新華網は<中国人民政治協商会議第十四回全国委員会(全国政治協商会議)委員名簿>(※2)を公表した。全体で2172人が代表になったが、このうち、体育や芸術など他ジャンルからの選出も含めて852人が中国共産党員で、全代表の39.2%を占める(※3)。純粋に中国共産党員からのみ選出された代表は99人で、その中に王滬寧の名前がある。

全代表2172人の中で、新チャイナ・セブン(7人の中共中央政治局常務委員会委員)であるのは王滬寧一人なので、自ずと、王滬寧が全国政治協商会議主席になることになる。

昨年10月の第20回党大会閉幕翌日である10月23日に開催された一中全会で、新チャイナ・セブンが選出されたが、その顔ぶれが公開された瞬間に、王滬寧は全国政治協商会議主席になると予測し、その詳細を『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(※4)に書いたが、予測通りの結果になったのを知り、ひとまずホッとしている。

◆14億人の中で唯一、習近平を叱責できる男
学者としての王滬寧を政治の世界に引きずり込もうとしたのは江沢民の大番頭であった曽慶紅だ。1995年になると江沢民は曽慶紅の勧めにより王滬寧を中央に呼び、「中央政策研究室政治組」の組長に任命し、「三つの代表」論の論理的根拠を執筆させた。胡錦涛政権になっても王滬寧は中央に留まって中央政策研究室主任(2002年~12年)、中央書記処主任(2007年~12年)などを歴任し、胡錦涛の「科学的発展観」の原稿も執筆した。

いうならば、中国の「紅い皇帝」の知恵袋。

しかし胡錦涛時代、習近平がまだ国家副主席だったときに、習近平に対して「あなたは何もわかってない!不用意にしゃべらないでくれ!」と面と向かって言ったことがある。

この「不用意にしゃべらないでくれ!」という日本語の中国語原文は「不要乱説!」だ。これはかなり失礼な言い方である。「メチャクチャなことを言うな!」あるいは「デタラメを言うな!」と訳した方が適切かもしれない。

激怒した習近平は「やめた!」と切れてしまった。

つまり、次期中共中央総書記、次期国家主席など、国家のトップになるのを「やめた!」という意味だ。

もし習近平が国家のトップに立たないとなると、第18回党大会は成立しない。今後の中国共産党一党支配体制が崩れる可能性がある。

周りは慌てて習近平の説得に当たった。特に曽慶紅が説得して、ようやく元のさやに納まった。

曽慶紅は習近平が清華大学卒業後に国務院弁公庁および中央軍事委員会弁公庁において、副総理および中央軍事委員会常務委員をしていた耿ヒョウ(こう・ひょう)の秘書をかけ持ちで務めていたときに習近平と親しくなっている。習近平はその当時、曽慶紅のことを「慶紅兄さん」と呼んで慕っていた。だから、習近平は曽慶紅の言うことは聞く。

このたび王滬寧は新チャイナ・セブンの一人として残ったが、おそらくその中で習近平に対して「上から目線で、遠慮せずに、ピシャリとものが言える」のは王滬寧一人ではないだろうか。全中国14億人の中で、習近平を抑制することのできる唯一の人物が王滬寧だと言っても過言ではない。

それでも習近平は、江沢民や胡錦涛と同様に彼の英知を欲しがった。

結果、王滬寧は三代の「紅い皇帝」に仕える知恵袋となっているわけだ。

◆知られざる王滬寧の「4人の妻たちの物語」
しかし、人間の性格はわからないものである。

女性が王滬寧を好きになるのか、それとも王滬寧が「女好き」なのか分からないが、王滬寧は4回も結婚・離婚をくり返し、中には妻がいるのに大学での教え子と「情を交わす」ようになり離婚に至ったケースもある。要は「不倫」だ。

拙著『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(※5)のp.63-66には「王滬寧の妻たちの物語」を特集して、エッセイ風にまとめているので、興味のある方はぜひ覗いてみていただきたい。

政治界における王滬寧は、その目の奥に、「怪しげな」と言ってもいいほどの「情報」を潜ませている。この目つきはゾッとするほどに冷たく、だから中南海でも王滬寧をよく言う人はあまりいない。

中国には「二ナイ(女へんに乃。妻以外の愛人)村」というのが江沢民政権や胡錦涛政権にはあったほど、「好色な官僚」は掃いて捨てるほどいる。

しかし王滬寧は、その手の、文字にしたくもないほどの嫌悪すべき連中とは無縁のような存在でいながら、妻をつぎつぎに取り換えているという現実に、何とも複雑な気持ちになるのを禁じ得ない。

写真: ロイター/アフロ

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)http://www.news.cn/2023-01/18/c_1129294900.htm
(※3)http://www.news.cn/2023-01/18/c_1129294903.htm
(※4)https://www.amazon.co.jp/dp/4569853900/
(※5)https://www.amazon.co.jp/dp/4569853900/


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