英経済政策と市場混乱、伊新政権に格好の他山の石=ユーロ圏当局者
[ワシントン 14日 ロイター] - ワシントンで開かれた国際通貨基金(IMF)総会の期間中、ユーロ圏当局者らからはトラス英政権が先月に打ち出した大型減税などの計画に対する市場の明確な拒否反応をもってして、イタリア次期政権や他の欧州連合(EU)諸国への強烈な警告となる可能性が高いとの発言が聞かれた。
欧州委員会のイタリア出身のジェンティローニ委員(経済担当)は記者会見で、同国は名指ししないながらも「われわれが(EUを離脱した)英国に与えられる教訓はないが、恐らくわれわれが(英国から)学ぶべき教訓はある」と発言。「実際に起きてしまったことからは状況がいかに危険か、われわれとしても財政政策と金融政策の組み合わせでいかに慎重になるべきかが示されている」と述べた。
別のユーロ圏高官は「英国の事例は市場がいかに急激にどれほど攻撃的になり得るかを示している。これに鑑みてイタリアは政策を慎重にし続けることになる可能性が高い」とした。「イタリア政府が英国で起きていることを注意深く見守っているのは間違いないと思う」とも語った。
もう1人のユーロ圏高官は「英国での金融混乱の実例のおかげで、EU側で国際規模の金融混乱が起きる確率は減るということだ」と述べた。
EUは各国ともエネルギー高騰から家計や企業を守る必要と、記録的なインフレに対応したり持続可能な財政を継続したりする必要との板挟みになり、あるいは対応で引き裂かれたりしているが、特にイタリアは他のEU諸国にとって長らく懸念する存在。公的債務の対国内総生産(GDP)比が150%にも上り、経済成長も鈍いためだ。イタリアでいつか債務危機が起き、それがユーロ圏を脅かし得ると一部で懸念されている。
そうしたイタリアで先月、総選挙で右派勢力が勝利。同陣営は財政赤字拡大路線を公約し、年金・福祉手当引き上げや自営業者向け一律課税などを財源を示さずに約束していた。