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政教一致を謳う統一教会は台湾で政党結成【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2022/07/29 10:34
配信元:FISCO
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。
統一教会は「政治と宗教は一つにならなければならない」と主張しているようだが、日本では自民党に食い込むことはあっても政党結成にまでは至っていない。しかし台湾では既に政党を結成。取材したところ、「日本には公明党があるではないか」と反論された。
◆統一教会の台湾における布教活動
香港メディアの一つである「超越新聞網」は7月13日、<安倍刺殺は、恐るべき韓国の邪教を表面化させた!>(※2)というタイトルで、日本だけでなく、韓国や台湾などにおける統一教会の布教活動に関して詳細に論じている。
台湾における統一教会の布教に関しては、統一教会自身による報道があるが、ここでは「超越新聞網」の報道を参考にして紹介したい。
その報道には、おおむね以下のように書いてある。
——1967年、(アメリカの)CIA(中央情報局)の要請により、文鮮明は日本人女性の福田修子(韓国系の鄭仁淑)を台湾に派遣し、1971年に合法的な宗教団体として登録した。それを知った蒋介石は激怒して、すぐにそれを禁止した。蒋介石の厳しい弾圧の下、統一教会は地下活動を行い、李登輝政権が登場するまで、「家庭教会」の形で持ちこたえようとした。1993年に李登輝の招待により、文鮮明夫妻は台北を訪問して「立法院」でスピーチをしたため、(邪教の)信者は一気に5万人に膨れ上がった。2011年に「統一教台湾総会」に改名し、「純愛運動」とか「理想の家庭創建運動」など21の支部が台湾で組織された(引用ここまで)。
引用文の中にある「CIA」との関係に関して、同じく「超越新聞網」は「文鮮明が1950年代初期に韓国で世界基督教統一神霊協会(略称:統一教)を設立して活動していた時期、CIAは文鮮明を情報提供者として扱い、文鮮明はCIAの保護下に置かれていた」と説明している。1955年7月13日にソウルの警察側が文鮮明を「集団姦淫罪」で逮捕したのだが、同年10月4日、CIAの干渉により文鮮明は無罪放免となったという。
韓国はアメリカの準植民地であるため、CIAは統一教会を反共主義の最前線として位置づけ、1957年にも韓国当局が文鮮明の農村における布教を(淫乱な)邪教が農村の生産性に影響を与えるとして拘禁すると、再びCIAが干渉してきて釈放した。その恩義に報いるために、文鮮明は1958年に(アメリカのもう一つの準植民地である)日本を訪問させ、布教に努めさせたのだと「超越新聞網」は書いている。
さらにアメリカが力を及ぼしている台湾にも統一教会を派遣させたのが、冒頭の引用文に書いた「1967年」のことだと、「超越新聞網」は位置付けている。
◆統一教会自身による台湾における活動の紹介
2011年9月14日、統一教会は、世界平和家庭連合のニュースとして<台湾の統一教会が優秀宗教団体特別賞を受賞>(※3)というタイトルで台湾での活動を報道している。
それによれば、台湾には1万5000もの宗教団体があり、その中から毎年、台湾政府の内政部(総務省に相当)が「優秀宗教団体」を表彰しているが、中華民国の建国100周年記念行事として、過去に優秀宗教団体賞を受賞した261の団体の中から、過去15年間で12回以上、または10回連続で優秀賞を受賞した宗教団体4団体に特別賞が与えられたとのこと。台湾統一教会は2001年より10年連続で表彰された実績を認められ、その4団体の一つに選ばれ、特別賞を受賞したという。
最近の活動は、統一教会自身が披露した動画(※4)などに、華々しく載っている。
たとえば2020年8月10日には<父の日に模範的父親が表彰されただけでなく、結婚生活60年目の夫婦も結婚式の服装をして祝福された>(※5)という動画があり、「集団結婚」だけでなく、すでに結婚している老夫婦にも布教を浸透させているためか、やはり「結婚」を媒介として布教する様がうかがえる。
◆台湾で結成された統一教会の政党「天宙和平統一家庭黨」
このような社会環境の中、統一教会は2014年7月20日に、「天宙和平統一家庭党」なる政党を設立している。
創黨(※6)理念には、「社会は宗教、政治、経済という3つの力で構成されている」とあり、「宗教と政治が調和」してこそ、国家は正しい統治ができという趣旨のことが書いてある。
興味深いのは、「今日の政治は、政治的に支配権を得るために宗教家を利用する」が、宗教の神聖な意志を無視しているので、宗教家自身が政治に直接関わらなければならないという趣旨のことが書いてあることだ。
つまり、日本の政権与党・自民党との関係を深めている背景には、やがて政権を取るというか、政治に入り込んでいこうとする意図が見て取れる。
おまけに「天宙和平統一家庭黨」の「綱領」(※7)を見ると、以下のようなことが書いてある。
・統一教会が世界を神に導かれた一つの国家(One Family under God)に持っていくこと。
・まずは段階的に台湾を統一教会が創った天一国(天宇和平統一国)にする。
・世界各国に天一国を建設し、アメリカが独立時に13州をまとめてアメリカ合衆国としたように、統一教会が指導する連邦国家を世界に創り上げること。(以上)
日本は今、その過渡的段階として利用されているということだろうか。
◆台湾の知人を取材:日本には創価学会があり公明党が政治参加しているではないか!
宗教に強い関心を持っている台湾の友人に電話して取材した。
「台湾には統一教会の政党があるようですね?」
と軽く聞いたつもりだが、彼女は強い剣幕で反駁してきた。
「そうですよ!日本にだって公明党があって、しかも政権与党にさえなってるじゃないですか?日本の憲法では政教分離の原則があっても創価学会が公明党を作ることを認め、おまけに政権与党の自民党と組んで連立与党を作ることさえ認めていますよね!その日本から、統一教会に関して何か言われる覚えはないわけですよ。統一教会はそのうち、世界中の国で政党を作って天一国により全人類を統治するつもりですから」と、まるで「そのつもりでいてください」と言わんばかりの、思いもかけない回答が戻ってきた。
彼女は統一教会の信者だったのかもしれないので、あわててお礼を言って電話を切った。
その後、台湾における創価学会がどうなっているのかを調べてみたところ、「台湾創価学会」(※8)というホームページがあり、基本紹介(※9)には、創価学会は1962年に台湾に上陸し、1990年に正式に宗教法人として台湾で認められたとある。そして、やはり統一教会同様、台湾の「行政院賞」や、22回連続で内政部が発布している「全國性社会団体公益貢献賞」など、数多くの賞を受賞していることが書いてある。2017年と2021年には「芸術教育貢献賞」を受賞し、台湾政府の文化部からは「文馨賞」も受賞しているようだ。
ただ、創価学会は「親中」なので、台湾で政党を作るなら、国民党寄りになるのかもしれない。
日本国憲法にある「政教分離の原則」に対する解釈を、改めて思い知らされた次第だ。
写真: つのだよしお/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://beyondnews852.com/20220713/110451/
(※3)https://www.ucjp.org/archives/9742
(※4)https://ffwpu.org.tw/report-media
(※5)https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=Kyf2dKZnllI
(※6)https://taiwanfamilyparty.wordpress.com/about/
(※7)http://upufamilyparty.blogspot.com/
(※8)https://www.twsgi.org.tw/
(※9)https://www.twsgi.org.tw/intro.php?level1_id=2&level2_id=3
<FA>
統一教会は「政治と宗教は一つにならなければならない」と主張しているようだが、日本では自民党に食い込むことはあっても政党結成にまでは至っていない。しかし台湾では既に政党を結成。取材したところ、「日本には公明党があるではないか」と反論された。
◆統一教会の台湾における布教活動
香港メディアの一つである「超越新聞網」は7月13日、<安倍刺殺は、恐るべき韓国の邪教を表面化させた!>(※2)というタイトルで、日本だけでなく、韓国や台湾などにおける統一教会の布教活動に関して詳細に論じている。
台湾における統一教会の布教に関しては、統一教会自身による報道があるが、ここでは「超越新聞網」の報道を参考にして紹介したい。
その報道には、おおむね以下のように書いてある。
——1967年、(アメリカの)CIA(中央情報局)の要請により、文鮮明は日本人女性の福田修子(韓国系の鄭仁淑)を台湾に派遣し、1971年に合法的な宗教団体として登録した。それを知った蒋介石は激怒して、すぐにそれを禁止した。蒋介石の厳しい弾圧の下、統一教会は地下活動を行い、李登輝政権が登場するまで、「家庭教会」の形で持ちこたえようとした。1993年に李登輝の招待により、文鮮明夫妻は台北を訪問して「立法院」でスピーチをしたため、(邪教の)信者は一気に5万人に膨れ上がった。2011年に「統一教台湾総会」に改名し、「純愛運動」とか「理想の家庭創建運動」など21の支部が台湾で組織された(引用ここまで)。
引用文の中にある「CIA」との関係に関して、同じく「超越新聞網」は「文鮮明が1950年代初期に韓国で世界基督教統一神霊協会(略称:統一教)を設立して活動していた時期、CIAは文鮮明を情報提供者として扱い、文鮮明はCIAの保護下に置かれていた」と説明している。1955年7月13日にソウルの警察側が文鮮明を「集団姦淫罪」で逮捕したのだが、同年10月4日、CIAの干渉により文鮮明は無罪放免となったという。
韓国はアメリカの準植民地であるため、CIAは統一教会を反共主義の最前線として位置づけ、1957年にも韓国当局が文鮮明の農村における布教を(淫乱な)邪教が農村の生産性に影響を与えるとして拘禁すると、再びCIAが干渉してきて釈放した。その恩義に報いるために、文鮮明は1958年に(アメリカのもう一つの準植民地である)日本を訪問させ、布教に努めさせたのだと「超越新聞網」は書いている。
さらにアメリカが力を及ぼしている台湾にも統一教会を派遣させたのが、冒頭の引用文に書いた「1967年」のことだと、「超越新聞網」は位置付けている。
◆統一教会自身による台湾における活動の紹介
2011年9月14日、統一教会は、世界平和家庭連合のニュースとして<台湾の統一教会が優秀宗教団体特別賞を受賞>(※3)というタイトルで台湾での活動を報道している。
それによれば、台湾には1万5000もの宗教団体があり、その中から毎年、台湾政府の内政部(総務省に相当)が「優秀宗教団体」を表彰しているが、中華民国の建国100周年記念行事として、過去に優秀宗教団体賞を受賞した261の団体の中から、過去15年間で12回以上、または10回連続で優秀賞を受賞した宗教団体4団体に特別賞が与えられたとのこと。台湾統一教会は2001年より10年連続で表彰された実績を認められ、その4団体の一つに選ばれ、特別賞を受賞したという。
最近の活動は、統一教会自身が披露した動画(※4)などに、華々しく載っている。
たとえば2020年8月10日には<父の日に模範的父親が表彰されただけでなく、結婚生活60年目の夫婦も結婚式の服装をして祝福された>(※5)という動画があり、「集団結婚」だけでなく、すでに結婚している老夫婦にも布教を浸透させているためか、やはり「結婚」を媒介として布教する様がうかがえる。
◆台湾で結成された統一教会の政党「天宙和平統一家庭黨」
このような社会環境の中、統一教会は2014年7月20日に、「天宙和平統一家庭党」なる政党を設立している。
創黨(※6)理念には、「社会は宗教、政治、経済という3つの力で構成されている」とあり、「宗教と政治が調和」してこそ、国家は正しい統治ができという趣旨のことが書いてある。
興味深いのは、「今日の政治は、政治的に支配権を得るために宗教家を利用する」が、宗教の神聖な意志を無視しているので、宗教家自身が政治に直接関わらなければならないという趣旨のことが書いてあることだ。
つまり、日本の政権与党・自民党との関係を深めている背景には、やがて政権を取るというか、政治に入り込んでいこうとする意図が見て取れる。
おまけに「天宙和平統一家庭黨」の「綱領」(※7)を見ると、以下のようなことが書いてある。
・統一教会が世界を神に導かれた一つの国家(One Family under God)に持っていくこと。
・まずは段階的に台湾を統一教会が創った天一国(天宇和平統一国)にする。
・世界各国に天一国を建設し、アメリカが独立時に13州をまとめてアメリカ合衆国としたように、統一教会が指導する連邦国家を世界に創り上げること。(以上)
日本は今、その過渡的段階として利用されているということだろうか。
◆台湾の知人を取材:日本には創価学会があり公明党が政治参加しているではないか!
宗教に強い関心を持っている台湾の友人に電話して取材した。
「台湾には統一教会の政党があるようですね?」
と軽く聞いたつもりだが、彼女は強い剣幕で反駁してきた。
「そうですよ!日本にだって公明党があって、しかも政権与党にさえなってるじゃないですか?日本の憲法では政教分離の原則があっても創価学会が公明党を作ることを認め、おまけに政権与党の自民党と組んで連立与党を作ることさえ認めていますよね!その日本から、統一教会に関して何か言われる覚えはないわけですよ。統一教会はそのうち、世界中の国で政党を作って天一国により全人類を統治するつもりですから」と、まるで「そのつもりでいてください」と言わんばかりの、思いもかけない回答が戻ってきた。
彼女は統一教会の信者だったのかもしれないので、あわててお礼を言って電話を切った。
その後、台湾における創価学会がどうなっているのかを調べてみたところ、「台湾創価学会」(※8)というホームページがあり、基本紹介(※9)には、創価学会は1962年に台湾に上陸し、1990年に正式に宗教法人として台湾で認められたとある。そして、やはり統一教会同様、台湾の「行政院賞」や、22回連続で内政部が発布している「全國性社会団体公益貢献賞」など、数多くの賞を受賞していることが書いてある。2017年と2021年には「芸術教育貢献賞」を受賞し、台湾政府の文化部からは「文馨賞」も受賞しているようだ。
ただ、創価学会は「親中」なので、台湾で政党を作るなら、国民党寄りになるのかもしれない。
日本国憲法にある「政教分離の原則」に対する解釈を、改めて思い知らされた次第だ。
写真: つのだよしお/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://beyondnews852.com/20220713/110451/
(※3)https://www.ucjp.org/archives/9742
(※4)https://ffwpu.org.tw/report-media
(※5)https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=Kyf2dKZnllI
(※6)https://taiwanfamilyparty.wordpress.com/about/
(※7)http://upufamilyparty.blogspot.com/
(※8)https://www.twsgi.org.tw/
(※9)https://www.twsgi.org.tw/intro.php?level1_id=2&level2_id=3
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トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」(2)【中国問題グローバル研究所】
*16:45JST トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」 高市政権は未だバイデン政権の対中戦略の中(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆中国に歩み寄るトランプ政権:米中蜜月状態中国は韓国での米中首脳会談以降、レアアースに関しても不十分ながら米国に対して緩和策を実施し始めており(※2)、中国全体の10月のレアアース磁石の輸出は2ヵ月連続で減少しているが、米国の出荷だけは急増している(※3)。そこで11月26日、米通商代表部は「2025年11月29日に関税猶予期限切れ予定だった178件の中国製品に関して、有効期限を2026年11月10日まで延長することを決定した」(※4)と発表している。また同じ11月26日、米国商務長官ラトニックが「トランプがNVIDIAの最先端AIチップH200を中国に販売することを認めるか否かを、いま正に検討中だ」(※5)と表明している。2年前に発売されたH200は、前世代のH100よりも大きな高帯域幅ストレージを備え、高速なデータ処理を実現している。中国にとっては喉から手が出るほど欲しい最先端AIチップだ。NVIDIAにとって中国は世界一の巨大市場だが、一部の米議会議員は反対している。しかし、ラトニックは「全ての情報と方向性に関する決断はトランプ大統領が掌握している」と述べている。トランプはこの決断をするか否かの最終的な瞬間の中にいる。それを高市総理の「台湾有事に関する国会答弁」で邪魔されたくないと考えているだろう。それは研ぎ澄まさなければならない判断と決断にとって「雑音」となる。さらに驚くべきは11月22日に新華網が<11月18日から22日にかけて中国軍と米軍は海上軍事安全協議メカニズムの第二回作業部会年度会議をハワイで開催した>(※6)と報道したことだ。加えて11月25日、米メディアのCNBCはベッセント米財務長官が11月24日の米中首脳電話会談のあと取材に対して「来年は4月のトランプ訪中、その後は習近平の訪米、さらに11月深センでのAPECサミットおよび12月米ドラールでのG20があるので、習近平とトランプは来年4回も会うかもしれない」(※7)と発言し、米中の蜜月をアピールしている。このように米中は今、かつてないほどの「蜜月状況」にあることを見落としてはならない。そこにはトランプの命運がかかっている。◆高市政権は未だバイデン政権の対中戦略観の中にいるこういった現状に立っ日米中を眺めてみると、わが国で起きている「存立危機事態」論議自体が、トランプにとっては「存立危機状況」に相当するにちがいない。トランプはきっと、「親愛なる高市総理よ、あなたと私の友情は変わらないが、しかし頼むから習近平の神経を逆なでするような言動をしないでほしい」と切に願っていることだろう。「日中関係の悪化が、その兄弟姉妹国である私のビジネスを巻き込まないでほしい」という声が聞こえるようだ。そもそも今年8月15日、トランプは習近平が自分に対して「あなたが大統領である限り、台湾に対する武力侵攻はしない」と言ったと主張しているとCNNが報道している(※8)。10月20日にはトランプは、オーストラリア首相との会談後の記者会見で「中国は台湾侵攻を望んでいない」(※9)と発言している。高市発言後の11月20日のFox Newsの取材で、司会者がトランプに対して、高市発言に関する薛剣の発言をどう思うかと質問したが、トランプは「多くの同盟国もわれわれの友達ではない」(※10)と躱(かわ)し、直接の回答を避けた。つまり、高市総理が台湾有事に関して「存立危機事態」になり得る場合もあると発言したその前提として述べた「たとえば海上封鎖を解くために米軍が来援をする、それを防ぐために何らかの他の武力行使が行われる。こういった事態も想定される」という事態は、「現在のトランプ政権では基本的に起きない」ということだ。トランプ政権の現状においては「米軍の来援」ということは基本的に存在しない。バイデン政権の場合は、2014年6月11日の論考<台湾有事に関するバイデン&トランプの発言と中国大陸&台湾の反応>(※11)に書いたように、バイデンは台湾有事に関して5回も「米軍が出動する可能性がある」と発言している。つまり高市発言は、あくまでもバイデン政権における対中包囲網形成を前提とした発想である。おまけに台湾独立を必死になって煽ってきたのは第二のCIAと呼ばれているNED(全米民主主義基金)であることは拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で詳述したし、一部は論考でも書いてきた。それを主導してきたのはバイデン前大統領系列だ。ところがトランプは、そのNEDの活動を潰してしまっているのである(詳細は今年2月21日の論考<習近平驚喜か? トランプ&マスクによるUSAID解体は中国の大敵NED瓦解に等しい>)(※12)。高市政権はこの現実を認識しきれていない。未だバイデン政権時代のアメリカの思考回路の中に取り残されたママであることを危惧する。習近平はそこを狙い、徹底して高市政権を叩くことに余念がない。事実、11月23日の論考<中国の「高市非難風刺画」は「吉田茂・岸信介」非難風刺画と同じ――そこから見える中国の本気度>(※13)にある風刺画をよくご覧になっていただきたい。吉田茂や岸信介の風刺画の背後にはいつも米国がいるが、高市総理の風刺画には「米国の影は皆無」である。いま日中米の間で起きている事態の全てが、この風刺画に象徴されている。かかる事態が起きることを避けるために筆者は、たとえば10月23日の論考<高市総理に「日米首脳会談」までに認識してほしい、トランプ大統領の対中姿勢(対習近平愛?)>(※14)などを書いて、高市政権および日本国民を守るために必死になって警告を発し続けてきた。しかし残念ながら、その声は政権運営には反映されなかったようだ。高市政権がバイデン政権時代の思考回路から脱却し、国際社会の現実を認識して、トランプ政権の現状に即応した政権運営をしてくれることを期待したい。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※15)より転載しました。韓国における米中首脳会談後のトランプ大統領と習近平国家主席(習近平の耳元で「習近平愛」を囁くトランプ)(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.reuters.com/business/autos-transportation/china-starts-work-easing-rare-earth-export-rules-short-trump-hopes-sources-say-2025-11-07/(※3)https://www.reuters.com/world/asia-pacific/china-october-rare-earth-magnet-exports-fall-second-month-us-shipments-surge-2025-11-20/(※4)https://www.voachinese.com/a/ustr-extends-exclusions-from-china-section-301-tariffs-related-to-forced-technology-transfer-investigation-20251126/8087410.html(※5)https://www.voachinese.com/a/trump-weighs-allowing-nvidia-to-sell-advanced-ai-chips-to-china-20251125/8086060.html(※6)http://www.news.cn/world/20251122/01000030a9cb4e5685ee8de582397114/c.html(※7)https://www.cnbc.com/2025/11/25/cnbc-transcript-us-treasury-secretary-scott-bessent-speaks-with-cnbcs-squawk-box-today.html(※8)https://edition.cnn.com/2025/08/16/asia/trump-xi-taiwan-invasion-intl-hnk(※9)https://rollcall.com/factbase/trump/transcript/donald-trump-remarks-bilat-anthony-albanese-australia-october-20-2025/(※10)https://rollcall.com/factbase/trump/transcript/donald-trump-interview-laura-ingraham-fox-news-november-20-2025/(※11)https://grici.or.jp/5327(※12)https://grici.or.jp/6005(※13)https://grici.or.jp/6952(※14)https://grici.or.jp/6786(※15)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e599ad4676311db2551e02c7037588a76ec28568
<CS>
2025/11/28 16:45
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トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」(1)【中国問題グローバル研究所】
*16:42JST トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。11月24日夜、トランプ大統領が習近平国家主席に電話をして会談した。トランプはトランプ2.0では「習近平愛」を今のところ続けている。バイデン政権の政策を全て覆したいトランプは、バイデン元大統領の対中包囲網的強硬策を撤廃し、どこまでも(今のところ)「習近平愛」に満ちている。11月5日の論考<トランプが「中国を倒すのではなく協力することでアメリカは強くなる」と発言! これで戦争が避けられる!>(※2)でご紹介した米中の笑顔外交の延長線上で、トランプは習近平とギリギリの貿易交渉を続けており、習近平のご機嫌を損ねないようにすることが優先している。11月25日にトランプが高市総理にも電話してきたことに関して、ウォールストリート・ジャーナルが<トランプは高市に台湾巡り中国を刺激しないよう助言した>(※3)とブルームバーグが日本語で報道しているが、日本政府は否定。その真偽は別として、少なくともトランプが対中貿易を優先していることだけは事実だ。今年7月末、「習近平の嫌がることはやりたくないから」という理由で、台湾の頼清徳総統がニューヨークに立ち寄ることも拒否しているほどである(詳細は7月31日の論考<台湾総統のニューヨーク立ち寄りを拒否したトランプ政権の顛末 「米中台」三角関係を読み解く>)(※4)。高市政権は、アメリカの対中政策に関する「大転換」への認識が不十分で、未だにバイデン政権時代の対中強硬策の中に取り残されたママなのかもしれない。高市総理の11月7日における台湾有事に関する国会答弁は、その意識の欠如の表われではないかと解釈することができる。台湾有事になっても米軍が支援に来るという前提が崩れれば、存立危機事態も成立しない。したたかなトランプは、習近平に「台湾問題安泰」という「餌」を見せつけて習近平から有利な条件を引き出そうとしている。一方の習近平は米中蜜月に自信を持ち、滅多にないこのチャンスを利用して、徹底して日本を叩く決意で動いている。◆11月24日夜の習近平・トランプ電話会談に関する中国の発表11月24日、中国政府の通信社である新華社電子版新華網は、<習近平とトランプの電話会談>(※5)に関して、おおむね以下のように報道している。・習近平は、先月韓国釜山で会議を成功裏に開催し、多くの重要な合意に達したことを指摘した。これらは中米関係の巨大な船の着実な進展に方向性を合わせ、推進力を与え、世界にも前向きなメッセージを送った。・習近平は台湾問題に関する中国の原則的立場を明確にし、台湾の中国への帰還が戦後の国際秩序の重要な一部であると強調した。また中国とアメリカはファシズムと軍国主義と共に戦ってきたが、今こそ第二次世界大戦の勝利の成果を守るために共に取り組むべきだと述べた。・トランプは習近平主席を偉大な指導者だと表明した。また「釜山での習近平主席との会談は非常に愉快だったし、二国間関係に関するあなたの見解に全面的に同意する。両国は釜山会談で達成された重要な合意を、今まさに全面的に実行しようとしている。中国は第二次世界大戦の勝利に重要な役割を果たし、アメリカは台湾問題が中国にとって重要であることを理解している」と述べた。(新華網からの引用は以上)◆米中電話会談に関してトランプがTruthで述べた感想その夜トランプは自分のSNSであるTruth(※6)で、おおむね以下のような感想を述べている。・習近平主席と非常に良い電話会談を行った。・ウクライナ/ロシア問題、フェンタニル、大豆をはじめとする農産物など、多くの問題について話し合った。私たちは偉大な農民のために、良好かつ非常に重要な合意をまとめることができた。・われわれの中国との関係は極めて強固だ!・習近平主席は4月に私を北京に招待し、私はこれを承諾しました。その招待に応じ、来年内に習近平主席をアメリカに国賓として招くことも決まった。・われわれは頻繁にコミュニケーションを取ることが重要であることで一致したが、それを楽しみにしている。(Truthからの引用は以上)◆トランプは対中貿易で政治生命をかけた交渉に没頭している最中トランプのTruthに書いている通り、11月25日、VOA中文は<米・農務長官は、米中大豆購入協定がまもなく最終決定されると述べた>(※7)という見出しで、米中が今まさに大豆の具体的な協議をしている最中である状況を報道している。それによれば、農務長官ブルック・ローリンズは11月24日、米政府が今後2週間以内に(米国内の)農家支援と中国による米国産大豆調達に関する合意を発表すると述べ、北京は「今週か来週」に購入計画を最終決定する可能性があると述べたとのこと。中国は先週158万4,000トンの米国産大豆を購入したが、10月末の米中首脳会談以来、中国のアメリカ産大豆総購入量は200万トンから300万トンに達する可能性があると米側は見積もっているようだ。農務省のデータによると、中国の国有穀物購入者である中糧集団(COFCO)は、10月下旬以降、米国産大豆を100万トン以上注文している。しかし、ホワイトハウスの年間購入目標である1200万トンを大きく下回っている。トランプ関税を回避するため、中国は大豆購入を既にアメリカから南米へとシフトしてしまっているからだ。そこを何とかしようと、トランプは必死だ。だから習近平にわざわざ電話して、新華網の発表にあるように「アメリカは台湾問題が中国にとって重要であることを理解している」と表明して、なんとか習近平のご機嫌を取ろうと試みている最中なのである。その台湾問題を、同盟国である日本が「突っついては困る」というのがトランプの本音だろう。関税政策が正しくなかったとか、票田である農家の不満が蓄積し、中間選挙で共和党が負けるかもしれない。この農業問題を解決させて、トランプ関税は正しかったと米国民に納得させ、農家の票田を獲得しなければならない。トランプの政治生命に関わる重大な分岐点なのである。だからトランプは高市総理にも電話したものと解釈される。電話ではどういう表現を用いたかは別として、「どうか、対中ビジネスの邪魔をしないでくれ…」というのがトランプの本音だろう。「トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」 高市政権は未だバイデン政権の対中戦略の中(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※8)より転載しました。韓国における米中首脳会談後のトランプ大統領と習近平国家主席(習近平の耳元で「習近平愛」を囁くトランプ)(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/6854(※3)https://news.yahoo.co.jp/articles/9d7e5a22b3863cbba6abe809fe595f34db66e4e1(※4)https://grici.or.jp/6526(※5)http://www.news.cn/politics/leaders/20251124/9c9191096e0547a9a3f26e903fc6995e/c.html(※6)https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/115605897178712132(※7)https://www.voachinese.com/a/us-agriculture-secretary-says-us-china-soybean-purchase-agreement-imminent-20251124/8085760.html(※8)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e599ad4676311db2551e02c7037588a76ec28568
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2025/11/28 16:42
GRICI
高市発言に習近平はなぜここまで激怒するのか? 日本は台湾問題を口実にせず防衛力に戦略を(2)【中国問題グローバル研究所】
*10:24JST 高市発言に習近平はなぜここまで激怒するのか? 日本は台湾問題を口実にせず防衛力に戦略を(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆習近平はなぜ、ここまで激怒しているのか?それにしても、今般の中国の反応はあまりにヒステリックで尋常ではない。習近平はなぜここまで激怒しているのかを考察する必要がある。一つには、習近平は国家主席として在位中に、何としても「台湾統一」という「中華民族の悲願」を成し遂げたいと思っているからだ。これまで国家主席の座は「任期5年、最大2期まで」と決まっていた。それを、中華人民共和国憲法を改正してまで国家主席の任期制限を撤廃したのは、在位中に「台湾統一」を成し遂げたいからに他ならない。その邪魔をした高市発言に対する怒りがあるのだろう。そうでなくとも、11月1日の論考<日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑>(※2)に書いたように、高市自民党総裁誕生により、中国が愛している「公明党」が政権与党から追い出された(と習近平は思っている)。だから高市総理誕生に際して、(日本の歴代総理誕生で初めて)祝電を送らなかった。それでも総理としての所信表明演説で日中間の「戦略的互恵関係」に触れるなどしたので、「まあ、仕方ないからAPECでの日中首脳会談に応じてやるか…」という「善意」を、習近平としては高市総理に示したつもりだ。ところがAPEC期間中、台湾代表と会うことだけなら許容範囲内だが、高市総理はそのツーショットをXで公開してしまった。これは日本の歴代総理で誰もやらなかった抑制的ラインである。そのラインを超えて習近平の顔に泥を塗った。このことは、トランプの対習近平の姿勢との比較において11月5日の論考<トランプが「中国を倒すのではなく協力することでアメリカは強くなる」と発言! これで戦争が避けられる!>(※3)の【図表6:APECにおける日・台代表との会談と中国からの抗議の有無】で説明した。この時点で習近平の堪忍袋の緒は切れていたのである。そこに加えて、習近平の国家命運をかけた「台湾統一」問題に関して高市発言があったので、習近平としては自分の人生をかけた目標を、あの「高石早苗が邪魔をするのか!」と、激怒したのだろうと思う。◆日本は台湾問題に口実を求めずに、堂々と日本の防衛力を強化すべき冒頭に書いたように、第二次世界大戦で敗戦国となった「日独伊」3ヵ国のうち、現在、自国を防衛するための軍隊を持っていないのは日本だけである。ドイツの場合は、第二次世界大戦直後は、いかなる軍隊も持つことが禁止されていたが、冷戦を機に1955年に再軍備を開始しており、同年、NATOに加盟して、堂々と軍隊を持つに至っている。イタリアの場合は、1943年に自ら敗戦を宣告し連合国側に付いたので、戦後もそのまま軍隊を保つことができた。初期は規模を制限していたが、冷戦により規模の制限を徐々に撤廃していった。イタリア共和国憲法第11条で、「戦争行為」自体は制限している(「イタリア共和国は他国市民の自由を抑圧する為の戦争行為、または国家紛争を調停する為の戦争行為を行ってはならない」と謳っている)。それに比べて、わが日本国はどうなのか?冒頭に書いたように、戦後GHQの統治下で制定された日本国憲法は、アメリカの要求により「軍隊を持ってはならない」ことになっている。日本には今、防衛力の強化に関して(総理が国会答弁で言うか否かは別として)、念頭には台湾有事があり得るから防衛力を強化しなければならないと主張している人が多い。しかし台湾の独立はアメリカの第二のCIAと呼ばれているNED(全米民主主義基金)が煽った結果である要素が大きい。もちろん国共内戦から76年が経ち、台湾で生まれて新しい世代が増えてきたので台湾の人々の中には国共内戦の結果であるということを知らない新しい世代が生まれ台湾アイデンティティが定着しつつあることも確かだ。しかし中華民国時代、台湾を含めて台湾は「中華民国」という中国の領土であった。そのことは歴然とした事実だ。国連で「一つの中国」を認め、日中共同声明がある以上、日本の防衛力強化に台湾有事を結びつけるのは筋合いが違う。どうしても防衛力を強化したいというのであれば、台湾問題などを口実にするという姑息な手段を使わずに、堂々と軍事力を強化する道を模索した方が筋が通っている。ヒトラーがソ連やヨーロッパ諸国を侵略しても、いま現在軍隊を持つことが許されているのに、日本は中国を侵略したのだから軍隊を持ってはいけないとは、中国は言えない。そのような論理は成立しないからだ。日本はサンフランシスコ平和条約によって独立国家になった。ここでもし中国が抗議を始めたら、国際社会全体で中国に対抗すべき事態になる。日本が軍隊を持ってはならないと制限したのはアメリカだ。しかし、くり返そう。日本は独立国家だ!アメリカの意図に沿って制定された日本国憲法を改正するというのが、最も正直な道であり、正道ではないのだろうか。日本国民のその選択に対して、中国には何も言う資格はない。なお、それでも「いま日本に何ができるのか」、「日本はいかなるカードを持っているのか」という喫緊の課題がある。それに関しては別途、他の論考で公開したい。追記:日本が台湾有事を口実にしている限り、どこかで不意の事態が生じ、逆に戦争に突入しやすい。本稿はその戦争を避ける目的で書いたものである。その意図が伝わるようにタイトルも一部書き換えた。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※4)より転載しました。習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/6937(※3)https://grici.or.jp/6854(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/40aec9b3e178b4e12608ee4c1584305415f6e95c
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2025/11/25 10:24
GRICI
高市発言に習近平はなぜここまで激怒するのか? 日本は台湾問題を口実にせず防衛力に戦略を(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:23JST 高市発言に習近平はなぜここまで激怒するのか? 日本は台湾問題を口実にせず防衛力に戦略を(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。11月7日における高市総理の国会答弁に対して習近平が烈火の如く怒っている。そのために中国が次々にくり出す日本叩きカードに関しては広く報道されているし不愉快なので、ここでは触れない。本稿では、「習近平がなぜそこまで激怒しているのか」を考察し、もし日本がどうしても防衛力を強化したいのなら「日本は台湾問題を口実にせずに日本独自の防衛力を強化すべきなのではないか」という論を張りたい。第二次世界大戦で敗戦国となった「日独伊」3ヵ国のうち、自国の軍隊を持っていないのは日本だけだ。それこそが逆に異様なのであって、この異様な日本の国防状況をもたらしているのは、戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の統治下(実際はアメリカの占領・統治下)で日本国憲法が作られたからに他ならない。台湾問題を口実にして安保法制を論じること自体、筋違いだ。もっと堂々と正道を歩むべきではないのだろうか。◆習近平は高市発言の、どの部分に怒っているのか?高市総理は11月7日の衆議院予算委員会における立憲民主党の岡田委員の存立危機事態に関する質問に対して、「たとえば海上封鎖を解くために米軍が来援をする、それを防ぐために何らかの他の武力行使が行われる。こういった事態も想定される」と前置きした上で、中国の台湾統一に言及し、「たとえば台湾を統一、完全に中国北京政府の支配下に置くようなことの為にどのような手段を使うか、それは単なるシーレーンの封鎖であるかもしれないし、武力行使であるかもしれないし…」と答弁し、「それがやはり戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これは、どう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます」と続けた。中国はこれに対して激しく反応し、留まるところを知らない。習近平が激怒しているのは、言うまでもなく、高市答弁のA:台湾を統一、完全に中国北京政府の支配下に置くようなことの為にどのような手段を使うか。B.それがやはり戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これは、どう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます」に対してだ。Aに関しては、「中国にとって、台湾はあくまでも中華民国時代における国共内戦の延長戦上にあり、他国に指図される覚えはない」という大原則がある。特に1972年の国交正常化における日中共同声明(※2)で、日本国は中国(中華人民共和国)に対して二、日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。三、中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。と誓い、署名捺印している。したがって、発言Aからして、すでに内政干渉だと中国は受け止めている。筆者自身、国共内戦中の1947年から48年にかけて中共軍による長春包囲作戦によって包囲網の中で家族を餓死で失い、国共両軍の空間地帯であった「チャーズ」に閉じ込められ」餓死体の上で野宿させられた経験を持っている。その原体験から見れば、台湾は「長春包囲作戦」で敗退した蒋介石率いる国民党軍の終着駅であって、国共内戦はまだ終わっていない。朝鮮戦争勃発により中断されたまま、こんにちに至っている。日本は1945年8月の敗戦により関東軍司令部の関係者は一般の日本人を見捨てて日本に引き揚げ、1946年には在中国の一般の日本人も、特定の日本人技術者以外は基本的に日本に引き揚げることができたので、現在の日本政府も、中国人が持っている「台湾は国共内戦の終着駅」という大きな事実を認識することができないようになってしまっていると思う。日本政府は、まずこの絶対的事実を深く認識した方がいいのではないだろうか。それは日本の一般庶民の生活を守るための「戦略」として必須だと思われる。Bに関しては、中国は台湾を統一するときに「武力攻撃」をするというのは現時点では考えにくく、「長期的大規模軍事演習」を、台湾を囲む形で行なうと考えられる。2週間ほど「軍事演習」をすれば、台湾はエネルギー源が枯渇して白旗を挙げる可能性が高い。そのことは拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で書いたし、2024年5月26日の論考<アメリカがやっと気づいた「中国は戦争をしなくても台湾統一ができる」という脅威>(※3)でも書き、また2024年10月18日の<中国、台湾包囲軍事演習 シグナルの一つは「アジア版NATO」への警告か?>(※4)でも少し触れている。それなのに、高市総理が「それがやはり戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば」と答弁しているのは、高市総理を応援している者の一人として残念に思う。軍事演習で飛ぶ「砲弾」は「武力行使」ではない。日本も日米軍事演習などに参加し、その際に近代的な最先端の「砲弾」を使用するだろう。それは「武力行使」ではない。中国は「武力行使」と非難されないようにするために「軍事演習」という手段を使うという戦略を描いている。なぜなら万一にも統一されたときに、武力攻撃などをしたら台湾の人々が中共政府に従うわけがないし、半導体産業の最先端TSMCを「傷を付けずに中国が頂く」ということもできなくなるからだ。国際社会では「軍事演習」に対しては、いかなる他国も干渉できないのが通例だ。高市総理周辺は、中国のこの戦略に関して高市総理に情報提供をしていないとすれば不勉強で、これでは高市総理を守ることができない。もっとも高市総理が「戦艦」という、第二次世界大戦後、今では世界のどの国も使ってない軍艦の艦種を、これまでも何度も使って「存立危機事態」を説明しているところを見ると、防衛相も外務省も「奉仕できない」形で高市総理の独断で「国家の代表である総理として」国会答弁をした可能性がある。それが日本の庶民生活に甚大な影響をもたらすに至ったのは、高市内閣全体の責任かもしれない。◆なぜ中国は日本だけをターゲットにするのか?中国はバイデン元大統領が5回も「中国が台湾を武力攻撃したら米軍は台湾を支援する(not=米軍を派遣する)と豪語していたのに、そのたびにアメリカに対して激しい抗議活動を展開していたかと言うと、そうではない。なぜか?それは第二次世界大戦で、アメリカは中国を侵略した国ではないので、アメリカに対して「中華民族の屈辱」を味わったとは思っていないからだ。何なら習近平は9月3日の「抗日戦争勝利80周年記念」で、アメリカを「反ファシスト戦争の仲間」として讃えたほどだ。日本だけをターゲットにするのは、第二次世界大戦で日本が中国を侵略したからだ。もちろん中国共産党軍を率いていた毛沢東は日中戦争中、日本軍と結託して中国人民を裏切っていた。そのことは2024年8月16日の論考<中国共産党には日本に「歴史問題を反省せよ」という資格はない 中国人民は別>(※5)で書いたし、拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』で詳述した。しかし、中国人民、一般庶民の感情としては侵略されたときに受けた数多くの心の傷跡があり、少しでも火を点ければ燃え盛り始める。それも江沢民が「反日教育」を始める前までは日本に憧れる中国人が多かったが、火を点けてしまったので逆戻りは出来ない。この終戦と逆行して燃え始めた「民族の怒り」を習近平政権も受け継ぐしかないのである。そうでなければ中国を統治することができない。だから高市発言のように「着火点」的役割をする事態が発生すれば、いつでも燃え上がる態勢でいなければならないのが、現在の中国だ。「高市発言に習近平はなぜここまで激怒するのか? 日本は台湾問題を口実にせず防衛力に戦略を(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※6)より転載しました。習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_seimei.html(※3)https://grici.or.jp/5278(※4)https://grici.or.jp/5692(※5)https://grici.or.jp/5541(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/40aec9b3e178b4e12608ee4c1584305415f6e95c
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2025/11/25 10:23
GRICI
日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(2)【中国問題グローバル研究所】
*11:06JST 日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆日中両国発表内容の比較と問題点●祝意に関してまず「総理就任の祝意」に関してだが、会談冒頭の各国記者向けの対談は各国がその動画を持っているはずだ。日本の民間放送には要約ではなく、話された全てを公開した動画があるが、同時通訳者の日本語が全く事実と乖離しているので使えない。そこで同時通訳のない英語圏の会談冒頭動画(※2)を詳細に観察してみたが、習近平国家主席は、ただの一言たりとも「祝意」など述べていない。冒頭でどう言ったのかを書くと以下のようになる。――高市首相とは初めてお会いします。(首相)就任後、あなたは「中国と日本は重要な隣国で、建設的で安定的な対話関係を構築し、両国の戦略的互恵関係を全面的に推進する必要がある」と表明しました。これはあなたと新内閣が中日関係を重視していることを体現しています。私もまた、「意思疎通を維持し、中日関係の正しい発展を共に推進していくこと」に同意します。(引用以上)本稿冒頭にも書いたように、中国は「高市総裁は公明党が与党連立から離脱せざるを得ないところに追い込んだ」と解釈しているし、祝電も打っていない。したがって「祝意」を表するというのは考えにくい。外務省の「1」にある「祝意が表明されました」という言葉には疑問がある。●台湾問題に関して中国側は常に細かな対話内容は書かずに、中国の首脳が何を言ったかだけを書き(言ってない言葉は書かない)、相手側首脳が何を言ったかは、基本的に「4対1」程度の重みで「中国にとって都合のいい所だけを抜き出して書く」(言っていない言葉は書かない)というのが長年の慣例だ。この視点から見ると、台湾問題に関して、中国側発表にある「日本は1972年の日中共同声明における立場を堅持する」という言葉を、高市総理が言っていないというのは考えにくい。しかし日本側発表「3」の中にはそれがない。日中首脳会談後の高市総理の記者会見(※3)を見ると、そこには「台湾に関して、先方から少しお話がございましたので、やはりこの地域の安定、そして安全というものは、やはり両岸関係が良好であることが非常に重要であるということは申し上げました」とある。ここにも「日本は1972年の日中共同声明における立場を堅持する」という言葉はない。この点は明確にしてほしいと思う。これによって今後の日中双方の動向とその考察が変わってくるからだ。●レアアースの輸出制限に関して日本側発表の「3」に、「高市総理大臣から中国によるレアアース関連の輸出管理措置に強い懸念を表明した」とある。中国がレアアースの輸出制限を今年10月9日になって新たに言い出したのは、10月27日の論考<トランプはなぜ対中100%関税を延期したのか? その謎解きに迫る>(※4)および10月30日の論考<米中首脳会談 予測通り障壁は「50%ルール変更」だった!>(※5)に書いたように、あくまでも9月29日にアメリカのラトニック商務長官が「50%ルール変更」を宣告したからだ。NHKを含め日本メディアは、どうしてもこの現実を報道しようとしないので、結局、高市総理にもまちがったインプットをしてしまい、責任は重大だ。このようなことを日本メディアが継続すれば、日本は世界の動向を読み取れなくなり高市政権にもマイナスの影響を与える。警告したい。◆結論結論的に言えるのは、中国側は「高市総裁が率いる自民党が、公明党を離脱せざるを得ない状況に追い込んだ」として不愉快に思っているが、高市総理が総理就任の所信表明演説で「戦略的互恵関係」に触れながら対中安倍路線を踏襲することが分かったので、実は「安堵」していることが見て取れる。2012年9月に、自民党総裁選に当たって、筆者はそのときの総裁選立候補者である「安倍晋三、石破茂、林芳正、石原伸晃」(町村氏は病欠)の4氏とテレビ会談をしたことがある。そのときは民主党政権から自民党政権へと移行させようといううねりがあった時期でもあったので、テレビ出演寸前の待機時間に思い切って中国の老幹部に電話をしてどう思うかを聞いた。すると老幹部は「そりゃあ、自民党が良いに決まっているでしょう。民主党ではだめですよ、あの尖閣問題を見てください」と即答した。これをスタジオで自民党総裁選立候補者4人にぶつけたところ、全員が身を乗り出して「お―!」と声を上げ、特に安倍元総理は「もう一度言ってください!」と意気込んだことがある。いま思うに、中国側には「自民なら公明が付いているから安心」という思惑があったのではないかと解釈される。今般はその公明が抜けたので、習近平国家主席は高市総理には就任の祝電も送らなかった。しかし所信表明演説で安倍元総理が提唱した「戦略的互恵関係」に言及したので、「対中安倍路線を歩むのなら歓迎するが、しかし公明党を連立から追い出した自民党執行部体制は許さない」ということから、「罰」を与えるために日中首脳会談開催を、開催寸前まで決定しなかったということかと結論付けることができる。それにしても、高市総理はその難関をよく耐えた。期待したい。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※6)より転載しました。写真:中華人民共和国外交部のウェブサイトから転載(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.youtube.com/watch?v=FAmnA5pH7J8(※3)https://www.kantei.go.jp/jp/104/statement/2025/1031kaiken.html(※4)https://grici.or.jp/6816(※5)https://grici.or.jp/6835(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c45f947fc3636925c9e2a97583ea3752497f00e1
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2025/11/04 11:06
GRICI
日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(1)【中国問題グローバル研究所】
*11:03JST 日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。日本が、日中首脳会談を韓国で行なうべく「調整している」というニュースを流し始めたのは10月29日から(※2)だったと思う。しかし中国は「そのようなことは承知していない」(※3)として、無視し続けた。「調整中」ではなく「行われる」という情報が日本のネットに現れたのは10月31日会談当日の14時になってからだ(※4)。実際に会談が行われたのは10月31日17時05分からなので、会談の3時間前まで高市総理は不安定な中に置かれたことになる。そのストレスたるや、尋常ではなかっただろう。よく耐えたと思う。これは何を意味しているかというと、10月11日の論考<自公決裂!組織票欲しさに二大宗教団体を利用した自民党のツケ 遂に中国の支配から抜け多党制に移行か>(※5)に書いたように、中国が熱心に支持していた公明党が与党連立から抜けたことを中国は喜んでないということを示唆する。事実、連立を解消するか否かの論議の真っ最中だった10月6日に、公明党の斉藤代表は国会内で中国の呉江浩駐日大使と面会している(※6)。おそらく自公連立から離脱しないように斉藤代表を説得したのだろうと推測される。その結果、中国から見れば、公明党が自公連立から離脱せざるを得ないところに公明党を追い込んだのは高市総裁だということになっているのだろう。だから習近平国家主席は、これまでは日本に新しい首相が誕生するたびに祝電を送っていたのに、「憎っくき高市総理」には、総理就任の祝電を送らなかったものと考えることができる。したがって高市総理をじらせて、一種の「罰」を与えたのだろう。「いいか、対中強硬策などやるなよ」ということを思い知らせようとしたものと解釈される。さて、それでは実際には、どのような会話が成されたのだろうか。◆中国側発表10月31日19:23に中共中央管轄下の中央テレビ局CCTVは<習近平日本首相と会談>(※7)という見出しで、CCTV以外の新聞記者を一切入れない会談の内容を報道した。他国の新聞記者はいないので、会談冒頭の記者向けの対談以降の本格的な会談風景を観ようと思ったら、これを観るしかないので、興味のある方はリンク先をクリックしていただきたい。同日22:00になって、ようやく中国外交部の文字による会談内容の発表(※8)があった。習近平の口から出た実際の言葉なので、「習近平が何を考えているか」を深く考察する取っ掛かりになるだけでなく、この内容を日本の外務省の発表と比較したいので、以下、省略せずに全て記したい。( )内は筆者加筆。***現地時間10月31日午後、国家主席・習近平は韓国慶州でアジア太平洋経済協力機構(APEC)第32回首脳非公式会議に出席している期間中、(日本の)要請に応じて日本の首相・高市早苗と会談した。習近平は次のように指摘した。中日両国は一衣帯水であり、互いに重要な近隣国である。中日関係の長期的な健全かつ安定した発展を促進することは、両国国民と国際社会の一般的な期待に合致する。中国側は日本側とともに、中日四つの政治文書で確立された原則と方向に沿い、両国間関係の政治的基礎を維持し、戦略的互恵関係を推進し、新時代の要請に適った建設的で安定した中日関係の構築に尽力する用意がある。習近平は強調した。現在の中日関係には機会と挑戦が併存している。日本の新内閣が正しい対中認識を樹立し、両国の先人の政治家や各界人士が中日関係の発展のために注いできた心血と努力を大切にし、中日平和・友好・協力の大方向を堅持することを望む。一、 重要なコンセンサスを厳守すること。「戦略的互恵関係の全面的推進」、「互いに協力パートナーであり、相互に脅威とならない」、「歴史を鑑とし、未来に向かう」といった政治的コンセンサスを実行に移す。歴史、台湾などの重大な原則問題について中日四つの政治文書が行った明確な規定を厳守し履行し、中日関係の基礎が損なわれず、揺らがないようにする。「村山談話」は日本の侵略の歴史を深く反省し被害国に謝罪したものであり、この精神は発揚に値する。二、 協力ウィンウィンを堅持すること。中国共産党第二十期四中全会は「十五五(第十五回五ヵ年計画)」における中国発展の青写真を描いた。中日協力には広大な空間がある。中国と日本はハイエンド製造、デジタル経済、グリーン発展、財政金融、医療と高齢者介護、第三国市場などの分野で協力を強化し、多角的貿易体制と産業チェーン・サプライチェーンの安定的かつ円滑な維持を共に図ることができる。三、人的交流を促進すること。政府、政党、立法機構などのコミュニケーションを継続し、人文および地方交流を深化・拡大し、国民感情を改善する。四、多国間協力を強化すること。善隣友好、平等互利、内政不干渉の原則を堅持し、真の多国間主義を実践し、アジア太平洋共同体の構築を推進する。五、相違を適切に制御すること。大局に着目し、相違点を残しつつ共通点を求め、共通点を集めて相違を解消することで、対立や相違が両国関係を規定してしまうことのないようにすること。高市早苗は次のように述べた。中国は日本の重要な隣国であり、日中両国は地域と世界の平和と繁栄に重大な責任を負っている。日本側は中国側とハイレベル交流を維持し、各レベルの交流を緊密化し、コミュニケーションを強化し、理解を増進し、協力を促進し、両国の戦略的互恵関係を着実に推進し、建設的で安定した日中関係を構築することを望んでいる。台湾問題については、日本は1972年の日中共同声明における立場を堅持する。(以上)◆日本側発表日本の外務省は10月31日(時間は明記されていない)、日中首脳会談|外務省(※9)を以下のように発表している。日本語なのでリンク先をご覧になればお分かりいただけるわけだが、視覚的に比較できるよう、これも全て列挙する。+++現地時間10月31日17時05分(日本時間同刻)、APEC首脳会議に出席するため韓国を訪問中の高市早苗内閣総理大臣は、習近平中国国家主席と約30分間(同時通訳)、首脳会談を行ったところ、概要は以下のとおりです。1. 習主席から高市総理大臣就任に対する祝意が表明されました。両首脳は、「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、「建設的かつ安定的な関係」を構築するという日中関係の大きな方向性を改めて確認しました。その上で、高市総理大臣から習主席に対し、地域と国際社会の平和と繁栄という重責を果たしていく重要性について働きかけました。高市総理大臣から、安全保障や経済安全保障など懸案や課題があるからこそ、それらを減らし、理解と協力を増やし、具体的な成果を出していくとともに、首脳間で、戦略的互恵関係を進める意思を確認する重要性を指摘しました。両首脳は、首脳間での対話、そして日中間の幅広い分野での重層的な意思疎通を行う重要性を確認しました。2. 両首脳は、日本産水産物の輸入再開を前向きに受け止め、引き続き昨年9月に両政府で発表した「日中間の共有された認識」をきちんと実施していくことを確認し、高市総理大臣から、日本産水産物の輸入の円滑化を求めました。高市総理大臣から、日本産牛肉の輸入再開と10都県産の農水産物など残された輸入規制撤廃の早期実現に向けて、関連協議の促進を求めました。また、両首脳は、第三国市場協力、グリーン経済、医療・介護・ヘルスケア等の分野において、具体的な協力の進展を図っていくこと、グローバルな課題で協力していくことで一致しました。高市総理大臣から、大阪・関西万博での中国館の金賞受賞に対し祝意を示しました。3. 高市総理大臣から、尖閣周辺海域を含む東シナ海での中国によるエスカレーションや海洋調査活動、我が国周辺の中国軍の活動の活発化につき、深刻な懸念を伝え、中国側の対応を求めました。両首脳は、防衛当局間の実効性のある危機管理と意思疎通の確保の重要性について一致しました。高市総理大臣から中国によるレアアース関連の輸出管理措置に強い懸念を表明し、両首脳は、日中輸出管理対話を始め、当局間の意思疎通を強化していくことを確認しました。高市総理大臣から、中国での邦人襲撃事件や邦人拘束が発生する中で、中国滞在に不安を感じている日本国民のため、安全確保を求めるとともに、拘束中の邦人の早期釈放を求めました。高市総理大臣から、台湾海峡の平和と安定の我が国を含む国際社会にとっての重要性を強調しました。また、南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区等の状況に対する深刻な懸念を表明しました。4. 両首脳は、拉致問題を含む北朝鮮情勢等についても意見交換を行いました。(以上)「日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※10)より転載しました。写真:中華人民共和国外交部のウェブサイトから転載(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.jiji.com/jc/article?k=2025102900922&g=pol(※3)https://www.mfa.gov.cn/web/fyrbt_673021/202510/t20251029_11743157.shtml(※4)https://www.47news.jp/13388137.html(※5)https://grici.or.jp/6742(※6)https://www.yomiuri.co.jp/politics/20251007-OYT1T50236/(※7)https://tv.cctv.com/2025/10/31/VIDEc1QNjiTvnJlMImcLZOht251031.shtml(※8)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202510/t20251031_11745194.shtml(※9)https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/c_m1/cn/pageit_000001_02536.html(※10)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c45f947fc3636925c9e2a97583ea3752497f00e1
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2025/11/04 11:03
GRICI
トランプはなぜ対中100%関税を延期したのか? その謎解きに迫る【中国問題グローバル研究所】
*10:11JST トランプはなぜ対中100%関税を延期したのか? その謎解きに迫る【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。アメリカのベッセント財務長官は10月26日、マレーシアで中国の何立峰副総理(経済政策担当)らと行った米中閣僚会議の後「中国製品に対する100%の追加関税は回避され、中国のレアアース輸出規制が1年延期されることになる」と述べた。その背景には何があったのだろうか?アメリカが譲歩したのか、それとも中国が譲歩したのか?そのヒントは実は、10月23日の論考<高市総理に「日米首脳会談」までに認識してほしい、トランプ大統領の対中姿勢(対習近平愛?)>(※2)に書いた事実にある。その論考では、「10月10日にトランプ大統領がTruthで11月1日から対中関税を100%に引き上げると書きながら、12日にはすぐさまその考えを引っ込めてしまった」と書いた。トランプは、なぜすぐに引っ込めたのか?26日の米中閣僚会議後の発表を受けて、中国のネットには「勝利だ―!」、「遂に中国が勝ったのだ―!」という声が満ちている。何が起きているのか、その謎解きに迫りたい。それによりトランプ政権がより明確に見えてくると期待する。◆中国はなぜ10月9日にレアアース輸出制限を発表したのか?話は9月29日にさかのぼる。アメリカ商務省の産業安全保障局(BIS=Bureau of Industry and Security)は9月29日、<上場事業体の関連会社を対象に事業体リストを拡大>(※3)という見出しで、「制限リストの重大な抜け穴を塞ぎ、輸出管理体制全体を強化する新しい規則」を発表した。そこでは「新しい規則では、エンティティリストまたは軍事最終使用者(MEU)リストに掲載されている1つ以上の事業体によって、少なくとも 50% 所有されている事業体は、それ自体が自動的にエンティティリストの制限の対象となる」と書いてある。何のことだか、わかるようで、ややこしい。そこで、噛み砕いて、自分にもわかり易い言葉で表現すると【これまでアメリカは中国の軍事最終利用者に対するエンティティリストを発表し指定していたが、それでは抜け穴があるので、「エンティティリストに含まれる企業が、50%以上の株を持っている他の企業」に対しても、同じ扱いをするというルール変更を行う】ということである。それまでは、中国企業と商売をする時に、従来のエンティティリストを見て、その企業が含まれているか否かを確認すれば良かったのだが(それとても、中国は非常に不満であったが)、この「50%ルール変更」以降は、相手の企業の株主、さらにその株主の株主などをたどって、細かく調べなければならないことになる。そうなると、商売をするときに調査しなければならない作業が一気に膨大に増加する。その結果、調査するに時間がかかり、かつ調査が不十分なリスクが常にあるので、中国企業向けのサプライチェーンが一時的に中断するという事態が発生した。日本では10月1日から中国の建国記念日である「国慶節」大型連休による観光客の報道が花盛りで、このようなニュースには誰も目を向けていなかっただろうが、中国政府側では大変なことになっていた。関連企業から「こんなこと、やってられるか――!」というクレームが来るし、中国政府としても「話が違うだろう!なぜ約束を破ったのか!」と激怒し、それなら「目には目を、歯には歯を」で、アメリカの致命傷である「レアアースを輸出制限してやるわ――!」ということに、相成ったわけだ。◆なぜトランプは「対中関税100%にする!」と言いながらすぐ引っ込めたのかこれこそが最もおもしろい謎解きで、カギは「50%ルール変更」を発表したのが「商務省である」ということに回答が潜んでいる。実は商務省BISには「激しい反中」のランドン・ハイド(Landon Heid)氏という人物がいて、今年年2月に商務省の輸出管理担当次官補として指名された(※4)。ところが9月になると、指名が取り消されている(※5)。すなわち、更迭だ。というのは、この「50%ルール導入」はハイド氏が強烈に主張してきたからだ。そのハイドを更迭したという事実は、トランプは「50%ルール導入」には反対なのだという、何よりの証拠と受け止めていいだろう。しかしラトニック商務長官はハイドに影響されたのか(このプロセスを書くと長すぎるので省略するが)、「50%ルール導入」を採用し、おそらくトランプには「サラッと」報告したものと思う。トランプがキチンとは認識する前に「イエス」を取り付け、9月29日に公表したのではないかと思うのである(一部の香港メディアにも、そのような報道が見られる)。筆者自身は、10月1日にアメリカ政府を閉鎖したりしていたので、トランプはそれどころではなく、十分に頭が回らなかったのかもしれないと考えている。しかしラトニックはトランプの承諾を得たものとして9月29日に「50%ルール変更」を発表した。すると中国が激しく反応し、「それなら、アメリカが最も困ることをやってやる!」としてレアアースおよびその関連技術の輸出制限を10月9日に公開。これはトランプに大きな衝撃を与えたはずだ。ほぼ反射的に10月10日に「そんなことをするのなら、中国には100%の関税をかけてやる!」とTruthに書いた。しかし、なぜ中国が「突然」、レアアースの輸出制限などをしたのかをじっくり調べてみると、ラトニックが、トランプがハイドを更迭してまで反対していた「50%ルール導入」を発表していたことを明確に認識した。そこで10月12日にあわててTruthに再び投稿して、「100%対中関税を引っ込めるようなニュアンスのこと」を書いた(Truthの投稿内容などのリンク先は冒頭に挙げた論考に書いてあるので、興味のある方は、そちらをご参照いただきたい)。こういう流れではないかと推測されるのである。◆その証拠にラトニックは6月以降の米中閣僚級会談には出ていないそのような論理はただ単なる推測ではないか、というご意見も出てくるだろう。筆者もそう思う。そこでもう一歩進めて調べてみたところ、ラトニックは6月までの米中閣僚級会談にはベッセント財務長官やグリア通商代表部代表と出ていたが、それ以降の会談には出ていない。というのは今年7月、ニューヨーク・ダウなどのあのダウ・ジョーンズのウェブサイトに、BIS50%ルール:企業にとっての影響 Dow Jones(※6)という形で評論が載り、「50%ルールの導入」が、どれだけ多くの弊害をもたらすかに関して議論していたからだ。株に敏感なトランプのこと。こういったアドバイスは素早くキャッチしていたにちがいない。だから、それ以降、米中閣僚級会議にはラトニックを参加させないようにしたのだろう。もちろん、今般のマレーシアにおける会談にもラトニックは参加していない。◆導かれる回答こういった流れを考えると、詳細は発表されていないが、おそらくトランプは「50%ルール変更」を取り下げさせたのではないかと思われる。それを取り下げるなら、中国としても新たなレアアース輸出制限をする必要もなくなるので、中国側がレアアース輸出制限を取り下げた。そうであるなら、トランプとしても、対中100%関税を言い出す必要はない。その結果、今般のベッセントの発表へとつながったものと推測される。中国のネットにおける「勝利宣言」のような膨大な書き込みは、きっと「50%ルール変更」を取り下げさせてやった、という歓喜の声かもしれない。そこで最後にひとこと。高市政権は、ぜひともこのラトニックの、というか商務省BISの言動には留意した方がいいのではないかとも思う。特に明日の高市総理とトランプ大統領との会談に当たり、この辺を心得ておくのも、無駄にはならないかもしれないと思う次第だ。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。トランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/6786(※3)https://www.bis.gov/press-release/department-commerce-expands-entity-list-cover-affiliates-listed-entities(※4)https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/02/nominations-sent-to-the-senate/(※5)https://exportcompliancedaily.com/news/2025/09/12/US-Withdraws-Nominee-to-Lead-BIS-Export-Administration-2509110007(※6)https://www.dowjones.com/ja/business-intelligence/blog/bis50%e3%83%ab%e3%83%bc%e3%83%ab%ef%bc%9a%e4%bc%81%e6%a5%ad%e3%81%ab%e3%81%a8%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%ae%e5%bd%b1%e9%9f%bf/(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/38d293c65cfcdfe5c1663b7148c08b3f84f0e61d
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2025/10/28 10:11
GRICI
靖国参拝で公明党に譲歩した高市総裁 結局は中国のコントロール下になり続ける道を選んだ自民党【中国問題グローバル研究所】
*10:14JST 靖国参拝で公明党に譲歩した高市総裁 結局は中国のコントロール下になり続ける道を選んだ自民党【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。自民党の高市早苗総裁が今年の靖国神社秋季例大祭中の参拝を見送ることが、公明党との連立に関する会談後に判明した。公明党の斉藤鉄夫代表は10月7日、高市氏との会談で、中国、ロシア、北朝鮮が連携を強めるなど日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなる中「靖国参拝が外交問題になるべきではない」と伝えたという。うまく言いくるめたものだ。うまいと思う。同様に「うまく公明党を使っている」という意味では、「中国も実にうまい」と思う。その巨大な長期的戦略の下で、日本は対米追随だけでなく対中追随もひたすら続けていることに、自民党は本当に気づいていないのだろうか?◆なぜ公明党は中国でこんなに高く評価されているのか? 自民党をコントロールする「中国と公明党の連携メカニズム」2021年10月27日の論考<日本を中国従属へと導く自公連立――中国は「公明党は最も親中で日本共産党は反中」と位置付け>(※2)で、2017年 3月30日に中国共産党の機関紙「人民日報」電子版「人民網」に掲載された1本の論考を紹介した。論考のタイトルは<公明党は長年にわたり「対中友好」を堅持し、日中関係の発展を推進してきた>(※3)である。クリック先の下の方に現れるので、下の方までスクロールしてみていただきたい。タイトルをもう少しかみ砕いて書くと「いかに公明党は親中であるか、いかにして日本政府を親中に導いているか」ということになる。この論考は、中国政府のシンクタンクである中国社会科学院の日本研究所が発行している『日本学刊』という学術誌(2017年第二期)に寄稿されたもので、作者は日本の創価大学教授で中国の復旦大学日本研究センター研究員でもある汪鴻祥氏だ。筆者は2004年まで同じく中国社会科学院社会学研究所の客員教授を務めていたが、日本研究所は、まるで創価学会の巣窟かと思われるほど創価学会関係者が多く、中国における宗教は弾圧しているのに、日本の宗教は「公明党」に限り絶賛していたことに、非常な違和感を覚えた経験がある。その違和感は、この汪氏の論考により、ものの見事に消えていった。同じ内容をくり返して申し訳ないが、是非とも高市氏および新しく決まったばかりの自民党役員に読んでいただきたいので、ここに再度掲載する。汪氏は論考で以下のように述べている。1.1968年9月8日、創価学会第11回学生部会総会において、公明党の創始者である池田大作は講演し、日中関係の問題を解決するために、「(1)中華人民共和国の正式な承認と日中国交の正常化、(2)中国の国連での合法的な座席の回復、(3)日中の経済・文化交流の発展」という3つの明確な提案を行った。2.1971年初頭、公明党は、台湾問題は中国の内政問題であるという認識を示し、国務院外交部日本課の王暁雲課長は、中国卓球代表団の副団長として訪日し、公明党の竹入義和会長と会談した。 これが公明党と中国との正式な交流の始まりである。3.会談後、竹入は「中華人民共和国を中国の唯一の合法的政府と認め、台湾からの米軍撤退と中国の国連への回復を主張し、さらに日台条約(日華条約)は破棄すべきという声明を発表した。4.中日国交正常化のため、公明党の代表団は1971年6月に初めて訪中し、周恩来首相が会見した。5.1972年7月7日、田中内閣が発足した。 1972年7月25日、公明党代表団は3度目の訪中を行い、周恩来首相と日中国交正常化に関わる重要事項について3回の会談を行った。 1972年9月、田中角栄首相が訪中し、毛沢東主席、周恩来首相と会談し、29日には日中国交正常化の共同声明を発表した。6.このように日中国交正常化を実現させて真の功労者は公明党である。7.こんにち、公明党が政権与党の一翼を担うことには非常に大きな意義がある。なぜなら自民党を対中友好に導いていくことが可能だからだ。8.公明党は常に中国と緊密に連絡を取り合い、自民党の一部の保守系政治家に対して、日中関係の正しい方向から外れた言動を慎むように圧力をかけてきた。この功績は大きい。9.今後も日中関係において、公明党が日本の政党を対中友好に導いていくという役割は計り知れなく大きい。(以上)このうち、「なぜ公明党が中国で高く評価されているか」は「1~6」に書かれており、どのようにして自民党をコントロールしているかは「7,8,9」に明記されている。なぜ公明党は「1」のような党是を決議したかと言うと、ここには書かれてないが、実は結党当時は、日本のどの政党にも「親中と反中」がいて、方向性が二分しているために勢いが削がれていた。そこで池田大作氏は「どちらか一方向に徹底した党を創って成長していこう」と考え、「徹底した親中の方向」を選んだというのだから、相当の傑物であると評価していいだろう。◆「偉大なる毛沢東の戦略」は日本を徹底して利用したそして、国共内戦を勝ち抜いて新中国(中華人民共和国)を建国した毛沢東はまた、その遥か上を行く傑物であった。なんと言っても拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に書いたように、最大の政敵・蒋介石(国民党)を打倒するのに際して、日本の「中国侵略」を最大限に利用したのだから。これ以上に頭のいい傑物は滅多に出現しない。日本(当時の「大日本帝国」)が戦っていた相手は「中華民国」で、その「中華民国」を率いていたのは国民党の党首であった蒋介石だ。あの広大な大地で天下を取るためなら、どんなことでもやってきた中国。そこには5000年の歴史がある。毛沢東が日本軍を利用したからと言って、何の悪いことがあるだろう。天下を取るために、頭を使っただけのこと。蒋介石は真っ正直だから、この頭の回転、戦略において「大陸的ではなかった」と言えるかもしれない。彼は日本に留学して日本的思考を持っていた。毛沢東の戦略の壮大さは、天下を取るために日本軍を利用しただけでは終わらない。なんと、公明党を使って、日本を陥落させ(=日中友好条約を結んで中国との国交を成立させ)、その流れの中で国連加盟を果たさせたのである。すなわち、中国という天下を取るために日本軍を利用し、国連加盟という「世界の舞台」への登場に、やはり日本の公明党を利用しつくした。その過程は前掲の「1~6」をご覧になれば明らかだろう。そして今、「毛沢東の亡霊」が高市早苗総裁に、「公明党に譲歩する」という道を選択させたのだ。自民党はこの呪縛から抜け出すことができない!◆自公連立は「一丁目一番地」と断言する高市総裁 連立しなかったら「高市総理」になれない危険性が高市氏に対する岩盤支持層には、「公明党との連立なんか、さっさと解消してしまえ!」と主張したい人も多いだろう。しかしもし公明党が連立を解消したら、過半数が取れないので、首班指名選挙(内閣総理大臣指名選挙)で必ずしも高市総裁が総理大臣に選ばれるとは限らない。現段階で衆議院の議席数は「自民党+無所属の会:196」、「公明党:24」、「立憲民主党:147」、「日本維新の会:35」、「国民民主党・無所属クラブ:27」・・・となっている。衆議院の議席数は465だから過半数は233議席になり、自公が連立しても「合計:220」にしかならないが、上位2名で決選投票を行って上位者を総理に指名する。首班指名では衆参両院における選挙が行われる。両院の指名が一致していなければ衆議院における決定が優先されるので衆議院の場合で考えると、公明党との連立を解消しても、他の党、たとえば国民民主党と組めば、首班指名でクリヤーできるかもしれないという可能性がないわけではない。しかし国民民主党はもともと民主党から派生したものなので、背後には連合がおり、自民党との連立を許さない。連立すれば連合の労働組合からの組織票を失って、国民民主党は議席を減らすことになる。公明党は自民党との連立を維持するか否かに関して「靖国参拝などの歴史認識問題」、「外国人排斥問題」、「政治と金(自民党の裏金議員)問題」および「連立拡大(特に日本維新の会との連立)問題)などを条件として挙げているが、「靖国参拝問題」は冒頭に書いたように、高市氏が「秋の例大祭には参加しない」として譲歩したが、裏金問題に関してはすでに(高市氏が言うところの「傷もの」である)萩生田光一氏を幹事長代行に任命していることから、折り合いは難しくなっている。連立の合意が成立しなければ、首班指名選挙で「高市早苗」とは書かないと、公明党は言っている。その場合はひょっとしたら「高市総理」が生まれない可能性もゼロではない。このように、中国が日本政府に潜ませているカードのような公明党は、「保守的な自民党」を生存させない役割を果たしていると言っていいだろう。遡(さかのぼ)れば、毛沢東の戦略が日本を呪縛しているという恐るべきスケールの大きな現実に、日本は気が付いた方が良いのではないだろうか。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※4)より転載しました。自民党の高市早苗新総裁(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/2724(※3)https://world.people.com.cn/n1/2017/0330/c1002-29179878.html(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c5407d4ccaa6642335cf3cff8099effa6b799045
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2025/10/09 10:14
GRICI
「古~い自民党」を見せつけた総裁選 総理の靖国神社参拝なら自公連立は解消か?【中国問題グローバル研究所】
*16:28JST 「古~い自民党」を見せつけた総裁選 総理の靖国神社参拝なら自公連立は解消か?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。自民党の総裁選なのに、必死になって国民に呼びかける5人の立候補者たちの姿は、主張がどうであれ、「われこそは」という必死さが美しかった。中国の選挙と違って、民主主義は良いものだと実感させられた。しかし選挙当日の終盤、決選投票に入ったとき、結局のところ麻生派閥がものを言い、昔ながらの「ボス」の一声で議員票が一気に動いた姿に深い失望を覚える。「古い自民党」から「解党的な出直し」をするのではなかったのか。もちろん、期待されていた小泉氏の決選投票前でのスピーチはお粗末だったことは否めない。「解党的出直し」どころか「党内融和」を強調するばかりで、政策さえ口にしなかった。これではダメだと思ったので、高市氏に票が流れたのは理解できないわけではない。しかし総裁選の直前になって地方党員票が高市氏に有利だと分かった瞬間、「決戦投票になったら獲得票の多い方に投票しろ」という麻生氏の号令が決定打になったのを否定することはできないだろう。案の定、「麻生氏へのお礼」に、どうやら高市新総裁は、幹事長に麻生派の鈴木俊一総務会長(72)を充て、副総裁には麻生氏(85)を検討しているようだ。これが本当なら、もう「古~~い自民党」を、そのまんま絵に描いたようではないか。その一方では、公明党は「高市総裁」が「高市総理」になったときに靖国神社を参拝するならば「連立を組むのは困難」という意思表示をしている。2021年10月7日の論考<「公明党から国交大臣」に喜ぶ中国――「尖閣問題は安泰」と>(※2)に書いたように、中国では海外の政党として最も信頼しているのが公明党だ。中国は公明党を「楔(くさび)」のように使って、日本政府をコントロールしてきた。◆「解党的出直し」とはほど遠い自民党総裁選もちろん高市早苗氏が総裁に当選したのは悪いことではない。「鉄の女」サッチャーを目指すというド根性は見上げたものだし、地方党員を重視してきた努力も評価すべきだろう。自民党結党以来の女性総裁の出現で、総理になれば日本で初めて女性総理が生まれることになり、その意義は大きいかもしれない。しかし、結局のところは麻生氏に頼り、最後は「ボス」の計略通りに議員が動いて当選したという時点で、せっかくのこれまでの努力の「美しさ」は消え去ってしまった。何のことはない、党内の勢力抗争であり「コップの中の嵐」に過ぎず、勝ち馬に乗るか乗らないかの策略が党内を駆け巡っただけだ。自民党の中には右も左もいて、左のボスが党内親中派の筆頭格・二階俊博氏だったが、二階氏の引退に伴いその系列は林芳正氏に受け継がれながら、林氏は今のところ「親中」を封印している。その意味では右のボスである麻生太郎氏にとっては、最後の「我が世の春」にちがいない。高市当選で、その手腕を遺憾なく発揮して、さぞご満悦のことだろう。こんなに右も左もいるのなら、「解党的出直し」などと偽善的なことを言わずに、解党すればいいと思うほどだ。解党しないのは、一塊でいる方が権力維持が容易になるからだろう。「党内で政権交代」することにより「自民党の政権」を維持している。◆総裁選に入る前に靖国参拝に関してクギを刺していた公明党前回、2024年9月における自民党総裁選で、9月9日に出馬を表明した高市氏は「首相に就任した場合でも靖国神社を参拝することに変わりはない」という趣旨の発言をしていた(※3)。それもあってか、今年9月7日、石破総理の辞任表明を受けて、公明党の斉藤代表は次の総裁について、「私達の理念に合った方でないと連立政権を組むわけにはいかない」と述べている(※4)。総理になった場合の想定を考えてのことだろう。すると今般の総裁選で高市氏は、なんと、「靖国神社参拝」を完全に封印してしまったのだ。当選後の記者会見でも靖国参拝問題を問われ、「適時適切に」と言葉を濁した。それでいて「自公連立は基本」と言っているのだから、「総理になったら靖国参拝はしません」と言っているようなものだ。ところが、記者会見後に公明党代表にご挨拶に行ったところ、先述したように「理念が合わないと連立は困難」という回答を得たわけだ。中国関係の問題だけで言うなら、「総理になっても靖国神社参拝をするようなら、連立を組むわけにはいきません」と言ったことになる。2024年の総裁選では「総理になっても参拝する」と誓っていた高市氏。それ故のファンも多いはずだ。だというのに、公明党の制限を受けたがゆえにファンとの約束事を破るとなったら、高市政権には、支持者の信頼を持続することができるのか否かというジレンマが待ち受けている。◆自公連立後の小泉政権と安倍政権における総理の靖国参拝ウィキペディアで申し訳ないが、<靖国神社問題>(※5)の情報に基づけば、小泉氏の場合は総理就任後の「2001年8月13日、2002年4月21日、2003年1月14日、2004年1月1日、2005年10月17日、2006年8月15日」に参拝しており、安倍氏の場合は総理就任後の「2013年12月26日」に参拝している。もちろん公明党は猛烈に反対した。しかし小泉氏が最初に参拝したのは2001年。1999年に公明党と連立を組み始めてから日が浅い。連立してようやく政権与党として浮上しているのに、公明党としても政党存亡を秤にかけた場合、「靖国参拝をやめないのなら、連立を解消します!」とは言えなかったものと推測される。その心理を読み取ってか、小泉氏は参拝をし続けた。すると2005年に中国で「反日デモ」が爆発した。反日デモがすぐには起きなかったのは、2001年9月11日にアメリカで同時多発テロ事件が起きて、それどころではなくなってしまったからだ。小泉氏は同年10月に中韓両国を訪問することさえしている。2002年にはAPEC首脳会議に参加して江沢民と会談したりなどもしている。それでも小泉氏の靖国参拝はやまず、03年も04年も参拝を継続した。その結果、2005年に遂に反日大暴動が起きたのである。安倍氏の場合は複雑だ。第一次安倍政権発足直後の2006年10月に中韓両国を訪問し、関係修復に努めている。しかし2012年12月の第二次安倍政権発足後、13年12月に靖国神社を参拝している。これに先立ち、習近平が国家主席になる1ヵ月ほど前の2013年1月25日には、公明党の山口那津男代表が安倍氏の書信を携えて、習近平(中共中央総書記)と会っている(※6)。習近平はこのとき「山口氏の訪中を非常に重視しており、公明党が引き続き日中関係の発展を促進する上で建設的な役割を果たすことを期待している」と述べている。山口氏は「公明党は日本の連立与党の一つとして、日中友好の伝統を継承・継承し(中略)日中関係の改善と発展に積極的に努力する」と述べ、安倍氏の自筆書簡を習近平氏に手渡した。 安倍氏は書簡の中で、「日中関係は最も重要な二国間関係の一つであり、両国はアジア太平洋地域と世界の平和と発展に対する責任を共有している」と述べながら、その年の12月26日には靖国参拝をしているのだ。それでも大きな事件に発展しなかったのは自民党内の「左のボス」二階氏がいたからだ。これに関しては2019年4月26日のコラム<中国に懐柔された二階幹事長――「一帯一路」に呑みこまれる日本>(※7)をご覧いただきたい。特にそのタイトル画像をご覧いただければ、もう何も語る必要はないだろう。◆石破政権になっても、公明党の北京詣では続いていた今年4月28日、上海にある「解放日報」系ウェブサイト「上観新聞」は<日本の与党幹部が2週間以内に3回も中国を訪問 なぜ「異例」と言われるのか?>(※8)という見出しで、「異様さ」を報道している。「2週間で3回訪中」の内訳は以下のようになっている。・4月22日~24日:斉藤鉄夫・公明党代表訪中団・4月27日〜29日:森山自民党幹事長率いる日中友好議員連盟訪中・4月28日~30日:山口那津男・公明党常任顧問一行訪中このように公明党の中国への「熱い思い」が、中国から見てさえ「異様」と映るほどなのである。その公明党が、自民党内「最右端」である高市総裁が、同じく「最右端のボス」である麻生氏のバックアップの下で自民党と連携していくことは困難ではないかと推測される。しかし逆に、高市氏が自公連立を重んじて、これまでの自分の主義主張を「総理になったのだから」という理由で封印するとすれば、右寄りだったファンたちは高市氏に騙されたと思って、高市氏への信頼を失っていくだろう。高市氏は、どちらの方向への決断を選ぶのか?公明党がいなくなっても、他の政党と連立を組むから構わないと決断したとしても、その政党が、さすがに総理大臣が靖国神社を参拝することを容認するとは限らない。トランプ関税の重圧の下、最大貿易相手国である中国との関係を重視しないと日本国民の経済向上を図れないという側面が圧し掛かるとすれば、公明党に妥協するしかなくなる。いずれにしても、もし総理に選ばれた場合の高市政権には大きなジレンマが待ち受けている。この視点に立ち、今後の高市氏の選択を観察していきたい。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。自民党総裁の椅子に座る高市早苗新総裁(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/2684(※3)https://www.sankei.com/article/20240909-3KDEHWF7RBOAVATIVTZMFG3DNY/(※4)https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2155644?display=1(※5)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%96%E5%9B%BD%E7%A5%9E%E7%A4%BE%E5%95%8F%E9%A1%8C#%E6%AD%B4%E4%BB%A3%E9%A6%96%E7%9B%B8%E3%81%AE%E9%9D%96%E5%9B%BD%E7%A5%9E%E7%A4%BE%E5%8F%82%E6%8B%9D%EF%BC%88%E5%9B%9E%E6%95%B0%EF%BC%89(※6)https://www.fmprc.gov.cn/web/gjhdq_676201/gj_676203/yz_676205/1206_676836/xgxw_676842/201301/t20130125_7992265.shtml(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c9a30738840d34dc9fd8757723767759a68f5118(※8)https://www.jfdaily.com/wx/detail.do?id=901704(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5fd223051ca00c2226b3caa3f7f0c2ab93bc6833
<CS>
2025/10/06 16:28
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