注目トピックス 日本株
三栄コーポ Research Memo(1):2022年3月期通期は、増収減益。原材料価格や物流コストの上昇等が収益圧迫
配信日時:2022/07/11 16:11
配信元:FISCO
■要約
三栄コーポレーション<8119>は75年以上の歴史を持ち、高付加価値品を主に取り扱う多機能な商社である。生活用品全般を扱い、製造・輸出入・卸・小売までのサプライチェーンを幅広く手掛ける。海外には17ヶ所の拠点、国内直営小売店62店舗を持つ。欧州の差別化されたブランドの日本導入や、良品計画<7453>に代表されるこだわりある商品のOEM供給など、付加価値の高い商品を取り扱う点で個性が明確である。ビジネスモデル面ではOEM事業が売上高の約7割、ブランド事業が約3割である。事業セグメント別では家具家庭用品事業(2022年3月期通期売上比61.8%)、服飾雑貨事業(同22.8%)、家電事業(同10.8%)の3事業が柱となっている。
1. 2022年3月期通期の連結業績(実績)
2022年3月期通期の連結業績は、売上高が33,976百万円(前期比2.8%増)、営業損失が912百万円(前期は709百万円の損失)、経常損失が657百万円(同446百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が945百万円(同717百万円の損失)となった。売上高に関しては、家具家庭用品事業セグメントが増収をけん引した。海外経済活動の一早い回復や国内における巣ごもり需要を背景にOEM事業が好調に推移したことや同社が注力する家具・インテリアのネットショップ「MINT(ミント)」の伸長などが要因である。一方で、外出関連商品(旅行・美容など)は苦戦し、明暗が分かれた。売上総利益は、原材料価格や物流コストの上昇等により減少した。販管費は様々な合理化策が奏功し減少したものの、結果として経常損失が前期比210百万円膨らみ657百万円となった。仮に2022年3月期の売上高に対して前期と同水準の売上高総利益率(27.2%)だったと仮定すると、売上総利益は約10億円多かったと試算でき、原価上昇のインパクトが大きかったことがわかる。
2. 2023年3月期の連結業績(予想)
2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比6.0%増の36,000百万円、営業損失が700百万円(前期から212百万円改善)、経常損失が600百万円(前期から57百万円改善)、親会社株主に帰属する当期純損失が700百万円(前期から245百万円改善)と、業績の一定の回復を予想している。売上高に関しては緩やかな回復予想となった。主力の家具家庭用品事業セグメントでは、インテリアEC事業が伸長するものの、OEM事業で巣ごもり需要の反動減の影響により全体として若干の減収を予想する。服飾雑貨事業セグメントでは、ブランド事業の業務改革が進むことにより増収を見込む。営業利益面では、2023年3月期を抜本的な体質改善の年度と位置付け、全社的な事業のたな卸やコスト構造の見直しなどに取り組む計画である。原材料価格の高騰、物流費の上昇、急激な円安等は、いずれも輸入を主体とする同社にとってはマイナスの影響がある。ただし、原価高騰に関しては、販売価格への転嫁が可能な取引もある。また円安に関しては、為替の影響を受けない取引(海外拠点で製造し海外に販売する等)や為替予約などのリスク回避策なども活用しており、その影響は一定の軽減が可能である。弊社では、内部要因に関しては、筋肉質な体質への改善が着実に進捗しており、業績へのプラスのインパクトは確実性が高いと考えている。外部要因に関しては、不透明感は高いものの、外出・旅行の自粛傾向、ロシア・ウクライナ紛争、中国でのロックダウンなどのマイナス要因の多くは既に計画に織り込み済みであり、環境が好転すればアップサイドの影響が期待できる。例えば、国内の外出・旅行需要は6月時点で回復の兆しがあり、同社が得意とするトラベル・理美容商材にとっては好影響があるだろう。
3. 成長戦略
同社では、新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)及び原価高などの外部環境に対応し業績を回復させるために、地に足の着いた“守り”と“攻め”の施策を徹底的に行うことを計画している。2023年3月期の業績回復策としては、「不採算事業の見直し・構造改革を早急に完了し(守り)、そのうえで業績回復のドライバーとなる施策の見極め・深堀りを実施(攻め)」を方針とした。“守り”に関しては、既にコロナ禍以前より、服飾雑貨事業セグメントの主力ブランドでの構造改革には着手しており、実態としては成果が顕在化する年となる。家電事業セグメントにおいては、製造から小売りまでのサプライチェーンの垂直統合による合理化に本格的に取り組む。次の成長ドライバー(攻め)に関しては、1)EC事業のさらなる深化、2)OEM事業の強化(海外拠点強化による海外市場開拓の推進を含む新規開拓)、3)ブランド事業の強化(新規ブランド開拓によるラインナップ拡充)、4)SDGsビジネスの推進が挙げられる。
4. 株主還元策
同社では、株主に対する適切な利益還元を経営の重要課題の1つと位置付けている。配当に関しては、企業理念である「随縁の思想」の下、同社と縁を紡ぐ株主が安心して株式を長期保有できるよう、可能な限り継続的に実施するとしている。2022年3月期の配当金は、中間配当10円、期末配当10円とし、年間配当20円とした。コロナ禍で大きな損失が続くが、一定の配当は維持する。2023年3月期においても、年間配当20円(中間10円、期末10円)を継続する見込みである。
■Key Points
・2022年3月期通期は、外出関連商材の需要回復遅れるも巣ごもり需要関連商材がけん引し増収。原材料価格や物流コストの上昇等が収益圧迫し減益
・在庫の圧縮や有利子負債の返済が進捗。自己資本比率は48%超。過去からの資本蓄積により財務の健全性を維持
・2023年3月期は売上高6.0%増の360億円、営業損失7億円を予想。厳しい外部環境(コロナ禍継続、原価高等)を織り込んだ計画のため、環境が早期好転すれば業績の上振れ期待
・不採算事業の見直し・構造改革の仕上げの年。EC事業の深化、海外拠点の強化推進、SDGsビジネスの推進などが次の成長ドライバー
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
<EY>
三栄コーポレーション<8119>は75年以上の歴史を持ち、高付加価値品を主に取り扱う多機能な商社である。生活用品全般を扱い、製造・輸出入・卸・小売までのサプライチェーンを幅広く手掛ける。海外には17ヶ所の拠点、国内直営小売店62店舗を持つ。欧州の差別化されたブランドの日本導入や、良品計画<7453>に代表されるこだわりある商品のOEM供給など、付加価値の高い商品を取り扱う点で個性が明確である。ビジネスモデル面ではOEM事業が売上高の約7割、ブランド事業が約3割である。事業セグメント別では家具家庭用品事業(2022年3月期通期売上比61.8%)、服飾雑貨事業(同22.8%)、家電事業(同10.8%)の3事業が柱となっている。
1. 2022年3月期通期の連結業績(実績)
2022年3月期通期の連結業績は、売上高が33,976百万円(前期比2.8%増)、営業損失が912百万円(前期は709百万円の損失)、経常損失が657百万円(同446百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が945百万円(同717百万円の損失)となった。売上高に関しては、家具家庭用品事業セグメントが増収をけん引した。海外経済活動の一早い回復や国内における巣ごもり需要を背景にOEM事業が好調に推移したことや同社が注力する家具・インテリアのネットショップ「MINT(ミント)」の伸長などが要因である。一方で、外出関連商品(旅行・美容など)は苦戦し、明暗が分かれた。売上総利益は、原材料価格や物流コストの上昇等により減少した。販管費は様々な合理化策が奏功し減少したものの、結果として経常損失が前期比210百万円膨らみ657百万円となった。仮に2022年3月期の売上高に対して前期と同水準の売上高総利益率(27.2%)だったと仮定すると、売上総利益は約10億円多かったと試算でき、原価上昇のインパクトが大きかったことがわかる。
2. 2023年3月期の連結業績(予想)
2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比6.0%増の36,000百万円、営業損失が700百万円(前期から212百万円改善)、経常損失が600百万円(前期から57百万円改善)、親会社株主に帰属する当期純損失が700百万円(前期から245百万円改善)と、業績の一定の回復を予想している。売上高に関しては緩やかな回復予想となった。主力の家具家庭用品事業セグメントでは、インテリアEC事業が伸長するものの、OEM事業で巣ごもり需要の反動減の影響により全体として若干の減収を予想する。服飾雑貨事業セグメントでは、ブランド事業の業務改革が進むことにより増収を見込む。営業利益面では、2023年3月期を抜本的な体質改善の年度と位置付け、全社的な事業のたな卸やコスト構造の見直しなどに取り組む計画である。原材料価格の高騰、物流費の上昇、急激な円安等は、いずれも輸入を主体とする同社にとってはマイナスの影響がある。ただし、原価高騰に関しては、販売価格への転嫁が可能な取引もある。また円安に関しては、為替の影響を受けない取引(海外拠点で製造し海外に販売する等)や為替予約などのリスク回避策なども活用しており、その影響は一定の軽減が可能である。弊社では、内部要因に関しては、筋肉質な体質への改善が着実に進捗しており、業績へのプラスのインパクトは確実性が高いと考えている。外部要因に関しては、不透明感は高いものの、外出・旅行の自粛傾向、ロシア・ウクライナ紛争、中国でのロックダウンなどのマイナス要因の多くは既に計画に織り込み済みであり、環境が好転すればアップサイドの影響が期待できる。例えば、国内の外出・旅行需要は6月時点で回復の兆しがあり、同社が得意とするトラベル・理美容商材にとっては好影響があるだろう。
3. 成長戦略
同社では、新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)及び原価高などの外部環境に対応し業績を回復させるために、地に足の着いた“守り”と“攻め”の施策を徹底的に行うことを計画している。2023年3月期の業績回復策としては、「不採算事業の見直し・構造改革を早急に完了し(守り)、そのうえで業績回復のドライバーとなる施策の見極め・深堀りを実施(攻め)」を方針とした。“守り”に関しては、既にコロナ禍以前より、服飾雑貨事業セグメントの主力ブランドでの構造改革には着手しており、実態としては成果が顕在化する年となる。家電事業セグメントにおいては、製造から小売りまでのサプライチェーンの垂直統合による合理化に本格的に取り組む。次の成長ドライバー(攻め)に関しては、1)EC事業のさらなる深化、2)OEM事業の強化(海外拠点強化による海外市場開拓の推進を含む新規開拓)、3)ブランド事業の強化(新規ブランド開拓によるラインナップ拡充)、4)SDGsビジネスの推進が挙げられる。
4. 株主還元策
同社では、株主に対する適切な利益還元を経営の重要課題の1つと位置付けている。配当に関しては、企業理念である「随縁の思想」の下、同社と縁を紡ぐ株主が安心して株式を長期保有できるよう、可能な限り継続的に実施するとしている。2022年3月期の配当金は、中間配当10円、期末配当10円とし、年間配当20円とした。コロナ禍で大きな損失が続くが、一定の配当は維持する。2023年3月期においても、年間配当20円(中間10円、期末10円)を継続する見込みである。
■Key Points
・2022年3月期通期は、外出関連商材の需要回復遅れるも巣ごもり需要関連商材がけん引し増収。原材料価格や物流コストの上昇等が収益圧迫し減益
・在庫の圧縮や有利子負債の返済が進捗。自己資本比率は48%超。過去からの資本蓄積により財務の健全性を維持
・2023年3月期は売上高6.0%増の360億円、営業損失7億円を予想。厳しい外部環境(コロナ禍継続、原価高等)を織り込んだ計画のため、環境が早期好転すれば業績の上振れ期待
・不採算事業の見直し・構造改革の仕上げの年。EC事業の深化、海外拠点の強化推進、SDGsビジネスの推進などが次の成長ドライバー
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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