ランチタイムコメント

日経平均は3日ぶり反落、明るい兆しを示唆する材料もちらほら・・・

配信日時:2022/05/24 12:05 配信元:FISCO
 日経平均は3日ぶり反落。138.19円安の26863.33円(出来高概算5億5290万株)で前場の取引を終えている。

 23日の米株式市場でNYダウは618.34ドル高と大幅続伸。バイデン米大統領が国内での景気後退の可能性を巡り楽観的な見解を示したほか、対中制裁の緩和を示唆したため、景気への悲観的な見通しが緩和。さらに、銀行大手JPモルガンのダイモン最高経営責任者(CEO)が投資家向け説明会で経済や業績について明るい見解を示したことも好感された。ナスダック総合指数は+1.59%と4日ぶり反発。日経平均は3.91円高からスタートも寄り付きを高値にすぐに失速。前日の東京時間における時間外取引のナスダック100先物の大幅上昇を通じて米株高は既に織り込み済みだったほか、昨日とは対照的に今朝からはナスダック100先物が大きく下落していることが重しとなった。26809.95円(191.57円安)まで下げ幅を広げたが、その後はやや持ち直した。

 個別では、レーザーテック<6920>やソフトバンクG<9984>、リクルートHD<6098>、ZHD<4689>、三井ハイテック<6966>などのハイテク・グロース(成長)株の一角が大きく下落。前日に大幅高となっていたギフティ<4449>やマネーフォワード<3994>などの中小型グロース株も大幅安。5月既存店売上高の結果がネガティブ視された西松屋チェ
<7545>、しまむら<8227>は揃って大幅に下落。岸田首相が防衛予算を大幅に増額すると表明したことで三菱重<7011>やIHI<7013>は朝方高く始まったがその後伸び悩んだ。
一方、郵船<9101>や商船三井<9104>の海運大手が連日で大幅に上昇。米金融大手の業績上方修正を刺激材料に三菱UFJ<8306>が堅調。三菱商事<8058>や丸紅<8002>、住友鉱
<5713>など資源関連株が大きく上昇し、国内証券が目標株価を引き上げたDMG森精機<6141>も大幅高となった。

 セクターではサービス、パルプ・紙、陸運などが下落率上位に並んでいる一方、海運、空運、非鉄金属などが上昇率上位に並んでいる。東証プライムの値下がり銘柄は全体の83%、対して値上がり銘柄は14%となっている。

 本日の東京市場では時間外取引のナスダック100先物の動きを背景に、前日とは対照的な動きとなっている。前日にナスダック100先物の上昇を通じてある程度は織り込み済みだったとはいえ、昨日、米主要株価3指数が揃って大幅に反発し、金融大手の軒並み高のほか、アップルやキャタピラーといったハイテクから景気敏感の主力株でも強い動きが見られたことを踏まえると、本日の日経平均や東証株価指数(TOPIX)の反落は弱い動きという印象を拭えない。日経平均は27000円台乗せを定着させることができず、一進一退が続いている。

 5月に入ってからの株式市場の下落で、米株市場では月末にかけて年金基金のリバランス(資産配分の調整)目的の買いが入るとの観測が出ている。しかし、5月に入ってからの東京市場は米株市場と比較して相対的に底堅く推移してきた分、月末にかけての需給要因主体でのリバウンドも、相対的に弱いものとなる可能性があろう。今日の東京市場の動きなどを見ていると、そうした印象がくすぶる。

 物色動向についても昨日とは対照的だ。前日大幅な上昇が目立っていた中小型グロース株の多くが大きく売りに押されている一方、昨日冴えなかった資源関連株が今日は総じて強い。前日も今日も連日で強い動きを見せているのは海運株くらいだ。たった一日という短期間で物色動向に反転が見られるようでは、相場に参加できるのは日計り主体のデイトレーダーや短期目線の小規模ヘッジファンドくらいに限られてしまうだろう。基調が明確になるまでは、方向感に乏しい、高いボラティリティー(変動率)の相場展開が続くことを覚悟しておいた方がよさそうだ。

 一方、前日の当欄「再びグロース株が脚光を浴びる時は来るか」で指摘した明るい兆しを補強する材料もまたいくつか散見された。前日述べた通りだが、米連邦準備制度理事会(FRB)によるかつてない程に積極的な金融引き締めが続くなか、まだまだ強気には転じにくいが、米10年物の国債利回りや期待インフレ率が足元で低下基調にあり、実質金利の推移も安定し始めてきたことで、株式相場の安定への期待も微かながら生まれてきていると思われる。

 こうした中、先週末20日、タカ派で有名なセントルイス連銀のブラード総裁が、条件付きはとはいえ、2023年以降からの再緩和の可能性に言及したほか、前日には、アトランタ連銀のボスティック総裁が、6、7月に0.5ptずつ政策金利を引き上げた後、9月には利上げをいったん停止する可能性を示唆した。前日の繰り返しにはなるが、これまでタカ派化まっしぐらで再緩和などもっての外といった姿勢を見せていたFRB高官らから、こうしたハト派への転換を示唆するよう発言が出始めてきたことは注目に値する。

 記録的なインフレが続くなかで早くもこうした発言が出てくることに対して、中央銀行への信頼度の低下などへと結びつけてネガティブに捉える向きもいるかもしれない。また、追加であと2、3カ月分の経済指標を確認しない限り、インフレや景気に対するコンセンサスも生まれないため、当面は高いボラティリティーが続くだろう。しかし、少なくとも今後の相場転換の一つの兆しとして、上述の高官発言のニュアンスの変化は頭の片隅に置いておくべきだろう。

 また、上海市での都市封鎖(ロックダウン)解除方針が伝わったことで景気の底打ち期待が高まってきている中国では、国務院会合での決定事項によると、今後、中国国内企業を対象に約1400億元(約2兆7200億円)の追加減税措置が実施されることが判明しており、中国の景況感回復が一層意識されやすい状況となっている。

 未だに底値到達の確度が高まらない弱気な相場が続いているが、上述のように、これまでの懸念材料を緩和してくれるような相場転換のきっかけとして捉えられる材料も出てきている。今はまだ焦って買い参戦する場面ではないが、少しずつ、そうした好機が近づいていると前向きに捉えていきたい。

 アジア市況が軟調で、ナスダック100先物が下げ幅を広げてきていることもあり、後場の日経平均も冴えない出足を強いられそうだ。一方、最近は前場に弱くても、午後に持ち直す傾向が見られている。日本の景況感の相対的な堅調さから、消去法的ながらも海外中長期勢の一部がカントリーアロケーション(国別の資産配分)の見直しを打診的に進めているとの指摘が一部で聞かれており、欧州・アジア圏のマクロ系投資家の発注が後場に重なっているのではとの分析がある。こうした見方もあるなか、後場の日経平均の底堅さに期待したい。
(仲村幸浩)
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