食料品、値上げ始まると加速するリスクに要注意=日銀展望全文
[東京 2日 ロイター] - 日銀は2日、4月の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)全文を公表し、足元の物価高をけん引しているエネルギー関連や食料品の価格が物価指数に与える影響を分析。食料品は値上げが始まると加速しやすいなどと指摘した。ただ、資源高が進んだ2007年―08年と比較して、現局面ではコロナ禍で積み上がった「強制貯蓄」などがあり、コロナの影響剥落で実体経済は回復を続けるとの見通しを示した。
日銀は4月27―28日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を賛成多数で決定。展望リポートでは、エネルギー価格の大幅上昇を反映して2022年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の政策委員見通しの中央値が前回1月の前年度比プラス1.1%からプラス1.9%に大幅に引き上げられた。
展望リポートでは、原材料コストの上昇について、エネルギーや食料品を中心に消費者物価に転嫁されていくと指摘。特にロシアのウクライナ侵攻後は「エネルギー、食料品、非鉄金属といった輸入原材料のコストが一段と大きく上昇しているほか、食料品については、最終需要段階での転嫁ペースも速まりつつあるようにうかがわれる」とした。
また、ウクライナ危機での穀物価格高騰で「食料品のコスト上昇圧力は当面高水準が続く可能性が高く、ラグを伴いつつ消費者段階に転嫁されていく」と分析。「いったん値上げ局面に入ると、価格上昇が加速しやすいという特徴がある点に留意が必要だ」とも指摘した。
円の対ドル相場については、日米間の金融政策の方向性の違いが意識されていることに加え、輸入企業のドル買いの動きなどもあって「ドル高・円安方向の動きとなっている」と指摘。ただ、前回の展望リポートで示され、黒田東彦総裁の「円安は日本経済に全体としてプラス」との発言の根拠となった、為替の変動が日本経済に与える影響の分析は掲載されなかった。
(和田崇彦)