ランチタイムコメント
日経平均は反落、イベント通過後はあく抜け? 期待の裏に不安要素も
配信日時:2022/05/02 12:05
配信元:FISCO
日経平均は反落。143.30円安の26704.60円(出来高概算6億1861万株)で前場の取引を終えている。
東京市場が連休中の4月28、29日の米株式市場でNYダウは614.46ドル高、939.18ドル安と乱高下の展開。28日は1-3月期国内総生産(GDP)が予想外のマイナス成長に落ち込んだ一方、個人消費の強さやメタ・プラットフォームズの決算を受けた株高が相場を下支え。ただ、29日は連邦公開市場委員会(FOMC)を控えた警戒感や決算発表したアマゾンの株価急落が重しとなり、ハイテク株主導で大幅反落。ナスダック総合指数は+3.06%、-4.17%と乱高下の末に大きく下落。
FOMC前の連休の谷間で投資家が方向感を見定めかねるなか、週明けの東京市場も方向感に欠ける出足となり、日経平均は3.20円高とほぼ変わらずでスタート。先週末に1ドル=130円を突破し、20年ぶりの円安水準を付けたことが輸出企業の追い風となるなか、好決算銘柄への買いも寄与し、日経平均は取引開始直後に26964.59円(116.69円高)まで上昇する場面があった。ただ、イベント結果を見極めたいとの思惑もあり、間もなく失速すると、マイナス圏に転じ、その後はもみ合いとなった。
個別では、今期見通しが嫌気されたZHD<4689>、アンリツ<6754>、日本M&A<2127>が急落。先週末の米ハイテク株の下落を背景に東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ファナック<6954>、ダイキン<6367>などハイテク・グロース(成長)株が大幅安。
「ニンテンドースイッチ」の販売計画の報道を嫌気し任天堂<7974>も下落。一方、ガイダンスリスク解消や高配当利回りが再評価された商船三井<9104>を筆頭に郵船<9101>など海運大手が大幅に上昇。決算や自社株買いが好感された村田製<6981>、富士通<6702>、日立<6501>なども大幅高。好調な受注高が確認されたレーザーテック<6920>も逆行高。今期見通しが市場予想を大幅に上回ったアルプスアルパイン<6770>、日本特殊陶業<5334>はそれぞれ急伸。
セクターではその他製品、建設、精密機器などが下落率上位に並んだ一方、海運、空運、ガラス・土石製品などが上昇率上位となった。東証プライムの値下がり銘柄は全体の63%、対して値上がり銘柄は33%となっている。
連休明けの日経平均は朝方に100円超上昇する場面があった。先週末に4%超と大幅に下落したナスダックやフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の動きに比べてしっかりのスタートを切ったが、75日移動平均線近くで伸び悩むと、下向きの同線に上値を抑えられる形で失速。戻り待ちの売りの根強さを示唆する形となった。前引け時点での売買代金は1超5000億円強と、直近の水準に比べてやや膨らんでいる様子。連休の谷間とはいえ、イベント前の持ち高調整などもあり、取引参加者が限られているわけではないようだ。
東京市場が連休中に発表された注目の海外指標の結果はまちまちだった。米1-3月期GDP速報値が前期比年率換算で+1.4%と予想(+1.0%)に反してマイナス成長となったことには驚きを持って受け止める関係者が多かったようだが、マイナス計算する輸入項目が+17.7%だった影響が大きく、個人消費は+2.7%、設備投資も+9.2%と国内経済の状態を示す部門はいずれも堅調だった。歴史的な高インフレ下においても米GDPの約7割を占める個人消費に力強さが窺えたことは景気減速懸念を和らげ、安心材料だろう。
一方、連邦準備制度理事会(FRB)が注目している1-3月期の雇用コスト指数は前期比+1.4%と、予想(+1.1%)を上回り、四半期の伸びとしては統計上最大だったという。下方硬直性があり、一度上昇すると低下傾向に転じるのに時間がかかる賃金項目で根強いインフレ圧力が確認されたことは、今後のFRBの引き締めスタンスを強めかねず、警戒材料となる。
しかし、中長期的には上値切り下げトレンドの継続が予想されるものの、短期的には3-4日のFOMC通過後にはあく抜け感で相場は反発する可能性が高そうだ。年明けからの米金融政策の動向を振り返ってみると、FRBの市場との対話方法には規則性があるように見受けられる。今となっては根強いインフレ圧力を抑えるために、多少の資産価格の下落は致し方ないとも思っていそうだが、それでもFRBが株価急落など極端な動きに繋がるようなネガティブサプライズを引き起こすことは避けたいと考えていることに変わりはないだろう。
そうした考えを持つFRBは、これまでFOMCイベントがネガティブサプライズにならないよう、事前の高官発言などを通して市場に引き締め加速を織り込ませる一方、FOMC直前には会合結果がほとんど分かり切った状態を作り、実際にFOMCでは既知の内容以外の目新しい内容をあまり発表しないという方法を採用してきた。そして、イベント通過後から、また次回会合に向けた織り込みを、高官発言を通して行っていくという過程を繰り返してきている。今回もこれまでのパターンに倣えば、イベント通過後は短期的にはあく抜け感が台頭しそうだ。
上記を踏まえれば、イベント前の東京市場での最後の取引日にあたる今日は、短期的には買い場になると考えられる。しかし、今回は別の視点で気を付けるべきことがある。先週末の米株市場の急落を受けて、ナスダックは今年に入ってからの安値を更新。多くの機関投資家が運用指標とする代表的な株価指数S&P500も、終値ベースでは今年最安値を記録し、2月24日にザラ場で付けた最安値4114.65を窺う水準にまで下落してきている。
こうしたなか、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストらが株式市場からの資金の大量流出を警告している。同行ストラテジストチームによると、株式ファンドには2021年の初めから1兆1000億ドル(143兆円)の巨額資金が流入したが、エントリーポイントは平均で4274だったという。そのうえで、S&P500の4000割れは、米株式から大量の資金流出を誘発する「臨界点」になる可能性があると指摘した。
先週末にかけての米株価指数の乱高下の動きから窺えるように、足元の相場はオプション取引に係る需給要因などでボラティリティー(変動率)が非常に高い状態だ。
何らかのきっかけでS&P500がこの臨界点とされる4000を割り込むようなことがあると、売りが売りを呼ぶような非合理的な連鎖反応が起こる可能性もある。今回は、際どい水準にある株価指数が、イベント通過後の短期的なあく抜けといったこれまでのセオリーを覆す余地があることに留意したい。
他方、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハサウェイが4月30日に開催した株主総会では、同社が1-3月期に、四半期ベースでこれまでに例がないほどに大量に株式を購入したことが判明。バリュー投資を徹底する同社のこうした動きは、足元の株式市場がファンダメンタルズに照らして割安であることを示唆しており、心強くもある。ただ、同社が買い増したのは石油大手のシェブロンや石油・天然ガス会社のオキシデンタル・ペトロリアムなどエネルギー関連が大半だ。足元の不安定な相場においても買えるものはあるが、買えるものはかなり限られているようだ。
(仲村幸浩)
<AK>
東京市場が連休中の4月28、29日の米株式市場でNYダウは614.46ドル高、939.18ドル安と乱高下の展開。28日は1-3月期国内総生産(GDP)が予想外のマイナス成長に落ち込んだ一方、個人消費の強さやメタ・プラットフォームズの決算を受けた株高が相場を下支え。ただ、29日は連邦公開市場委員会(FOMC)を控えた警戒感や決算発表したアマゾンの株価急落が重しとなり、ハイテク株主導で大幅反落。ナスダック総合指数は+3.06%、-4.17%と乱高下の末に大きく下落。
FOMC前の連休の谷間で投資家が方向感を見定めかねるなか、週明けの東京市場も方向感に欠ける出足となり、日経平均は3.20円高とほぼ変わらずでスタート。先週末に1ドル=130円を突破し、20年ぶりの円安水準を付けたことが輸出企業の追い風となるなか、好決算銘柄への買いも寄与し、日経平均は取引開始直後に26964.59円(116.69円高)まで上昇する場面があった。ただ、イベント結果を見極めたいとの思惑もあり、間もなく失速すると、マイナス圏に転じ、その後はもみ合いとなった。
個別では、今期見通しが嫌気されたZHD<4689>、アンリツ<6754>、日本M&A<2127>が急落。先週末の米ハイテク株の下落を背景に東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ファナック<6954>、ダイキン<6367>などハイテク・グロース(成長)株が大幅安。
「ニンテンドースイッチ」の販売計画の報道を嫌気し任天堂<7974>も下落。一方、ガイダンスリスク解消や高配当利回りが再評価された商船三井<9104>を筆頭に郵船<9101>など海運大手が大幅に上昇。決算や自社株買いが好感された村田製<6981>、富士通<6702>、日立<6501>なども大幅高。好調な受注高が確認されたレーザーテック<6920>も逆行高。今期見通しが市場予想を大幅に上回ったアルプスアルパイン<6770>、日本特殊陶業<5334>はそれぞれ急伸。
セクターではその他製品、建設、精密機器などが下落率上位に並んだ一方、海運、空運、ガラス・土石製品などが上昇率上位となった。東証プライムの値下がり銘柄は全体の63%、対して値上がり銘柄は33%となっている。
連休明けの日経平均は朝方に100円超上昇する場面があった。先週末に4%超と大幅に下落したナスダックやフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の動きに比べてしっかりのスタートを切ったが、75日移動平均線近くで伸び悩むと、下向きの同線に上値を抑えられる形で失速。戻り待ちの売りの根強さを示唆する形となった。前引け時点での売買代金は1超5000億円強と、直近の水準に比べてやや膨らんでいる様子。連休の谷間とはいえ、イベント前の持ち高調整などもあり、取引参加者が限られているわけではないようだ。
東京市場が連休中に発表された注目の海外指標の結果はまちまちだった。米1-3月期GDP速報値が前期比年率換算で+1.4%と予想(+1.0%)に反してマイナス成長となったことには驚きを持って受け止める関係者が多かったようだが、マイナス計算する輸入項目が+17.7%だった影響が大きく、個人消費は+2.7%、設備投資も+9.2%と国内経済の状態を示す部門はいずれも堅調だった。歴史的な高インフレ下においても米GDPの約7割を占める個人消費に力強さが窺えたことは景気減速懸念を和らげ、安心材料だろう。
一方、連邦準備制度理事会(FRB)が注目している1-3月期の雇用コスト指数は前期比+1.4%と、予想(+1.1%)を上回り、四半期の伸びとしては統計上最大だったという。下方硬直性があり、一度上昇すると低下傾向に転じるのに時間がかかる賃金項目で根強いインフレ圧力が確認されたことは、今後のFRBの引き締めスタンスを強めかねず、警戒材料となる。
しかし、中長期的には上値切り下げトレンドの継続が予想されるものの、短期的には3-4日のFOMC通過後にはあく抜け感で相場は反発する可能性が高そうだ。年明けからの米金融政策の動向を振り返ってみると、FRBの市場との対話方法には規則性があるように見受けられる。今となっては根強いインフレ圧力を抑えるために、多少の資産価格の下落は致し方ないとも思っていそうだが、それでもFRBが株価急落など極端な動きに繋がるようなネガティブサプライズを引き起こすことは避けたいと考えていることに変わりはないだろう。
そうした考えを持つFRBは、これまでFOMCイベントがネガティブサプライズにならないよう、事前の高官発言などを通して市場に引き締め加速を織り込ませる一方、FOMC直前には会合結果がほとんど分かり切った状態を作り、実際にFOMCでは既知の内容以外の目新しい内容をあまり発表しないという方法を採用してきた。そして、イベント通過後から、また次回会合に向けた織り込みを、高官発言を通して行っていくという過程を繰り返してきている。今回もこれまでのパターンに倣えば、イベント通過後は短期的にはあく抜け感が台頭しそうだ。
上記を踏まえれば、イベント前の東京市場での最後の取引日にあたる今日は、短期的には買い場になると考えられる。しかし、今回は別の視点で気を付けるべきことがある。先週末の米株市場の急落を受けて、ナスダックは今年に入ってからの安値を更新。多くの機関投資家が運用指標とする代表的な株価指数S&P500も、終値ベースでは今年最安値を記録し、2月24日にザラ場で付けた最安値4114.65を窺う水準にまで下落してきている。
こうしたなか、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストらが株式市場からの資金の大量流出を警告している。同行ストラテジストチームによると、株式ファンドには2021年の初めから1兆1000億ドル(143兆円)の巨額資金が流入したが、エントリーポイントは平均で4274だったという。そのうえで、S&P500の4000割れは、米株式から大量の資金流出を誘発する「臨界点」になる可能性があると指摘した。
先週末にかけての米株価指数の乱高下の動きから窺えるように、足元の相場はオプション取引に係る需給要因などでボラティリティー(変動率)が非常に高い状態だ。
何らかのきっかけでS&P500がこの臨界点とされる4000を割り込むようなことがあると、売りが売りを呼ぶような非合理的な連鎖反応が起こる可能性もある。今回は、際どい水準にある株価指数が、イベント通過後の短期的なあく抜けといったこれまでのセオリーを覆す余地があることに留意したい。
他方、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハサウェイが4月30日に開催した株主総会では、同社が1-3月期に、四半期ベースでこれまでに例がないほどに大量に株式を購入したことが判明。バリュー投資を徹底する同社のこうした動きは、足元の株式市場がファンダメンタルズに照らして割安であることを示唆しており、心強くもある。ただ、同社が買い増したのは石油大手のシェブロンや石油・天然ガス会社のオキシデンタル・ペトロリアムなどエネルギー関連が大半だ。足元の不安定な相場においても買えるものはあるが、買えるものはかなり限られているようだ。
(仲村幸浩)
<AK>
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