ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり反発、焦点は「利上げペース」より…
配信日時:2022/04/19 12:53
配信元:FISCO
日経平均は3日ぶり小幅反発。31.11円高の26830.82円(出来高概算4億1000万株)で前場の取引を終えている。
18日の米株式市場でNYダウは小幅に続落し、39ドル安となった。ウクライナ危機による需給ひっ迫の長期化観測に加え、リビアの政治デモによる産油停止の影響もあり、原油先物相場が4日続伸。セントルイス連銀のブラード総裁がインフレ抑制のため大幅な利上げが必要との見方を示し、長期金利も上昇が続いた。こうした動きが株式相場の重しとなる一方、金融株や半導体関連株などに買いが入り、主要株価指数は方向感に欠ける展開だった。本日の東京市場でもこれら銘柄に買いが先行したほか、円相場が1ドル=127円台まで下落したことも輸出関連株の買いを後押しし、日経平均は296円高からスタート。ただ、経済の先行きへの懸念も根強く、寄り付き直後をこの日の高値に失速すると、前場中ごろにはマイナスへ転じる場面もあった。
個別では、米半導体株高の流れを引き継いでレーザーテック<6920>が4%超の上昇。
電気自動車(EV)分野などでの期待が根強い三井ハイテク<6966>はリバウンドを意識した買いが入ったとみられ、やはり4%超上昇している。その他売買代金上位では郵船
<9101>、東エレク<8035>、川崎船<9107>などが堅調で、トヨタ自<7203>は小じっかり。自社株買いやアルペン<3028>による株式取得が材料視されたTSI HD<3608>
は急伸し、RPA<6572>などが東証プライム市場の上昇率上位に顔を出している。
一方、ソフトバンクG<9984>とファーストリテ<9983>が揃って2%超の下落。中国配車アプリの滴滴出行(ディディ)が米上場廃止へ臨時株主総会を開くと発表し、中国ハイテク株の下落がソフトバンクGの重しとなっているようだ。また、ネットプロHD<7383>などが東証プライム市場の下落率上位に顔を出している。
セクターでは、海運業、鉱業、非鉄金属などが上昇率上位。一方、サービス業、小売業、医薬品などが下落率上位だった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の61%、対して値下がり銘柄は34%となっている。
本日の日経平均は米半導体株高や円安進行が好感され、押し目買いが先行する形で300円近い上昇からスタートしたが、早々に失速する格好となった。27000円水準での上値の重さが意識されてくる可能性がある。物色動向は米市場と同様で、市況関連株や半導体関連株が買われる一方、サービス・小売などの消費関連株に売り。金融株が思いのほか伸び悩んでいるのは気掛かりだ。前引けの日経平均が+0.12%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.37%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆円あまり。前日は1日を通じ初の2兆円割れとなったが、本日も引き続き売買低調だ。
新興株ではマザーズ指数が-0.98%と4日続落。こちらも朝方買いが先行したが続かず、軟調な展開を強いられている。メルカリ<4385>などの主力株も全般軟調で、値を飛ばす銘柄は限られている。前日の東証グロース市場の売買代金は1176億円で、4月初めが2000億円規模だったのを踏まると、新興株の売買は急失速してきた感がある。
さて、18日の米市場では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI5月物)が1バレル=108.21ドル(+1.26ドル)と4日続伸。金先物相場(ニューヨーク商品取引所、COMEX6月物)も1トロイオンス=1986.4ドル(+11.5ドル)と反発した。10年物国債利回りが2.85%(+0.03pt)に上昇する一方、2年物は横ばいの2.45%となり、利回り曲線(イールドカーブ)は傾斜化(スティープニング)。先週後半に当欄で指摘したとおり、3月の米消費者物価指数(CPI)発表を通過し、短期的なリバーサル(相場の反転)を経て商品市況の反騰、長期の年限の金利上昇が顕著になってきた。
セントルイス連銀のブラード総裁は年内にも政策金利を3.5%前後に早急に引き上げる必要があると述べ、0.75ptの大幅利上げの可能性も示唆した。もっとも2年金利の反応を見る限り、金融市場も急速な利上げは相当程度織り込んでいるとの見方には妥当性があるように思われる。
しかし、焦点が「目先の利上げペース」でなく「インフレの持続性(ひいては将来的な金融政策の再転換の可能性)」に移っていると考えれば、先週後半からの一連の動きも整合的なものに見えてくる。ウクライナ危機による世界的な経済圏の分断がインフレの長期化を招くとの懸念は拭えない。「インフレは一時的」「米経済は堅調を維持」といった見方も根強く残り、株式相場を下支えしているが、金融市場全体の方向感は見誤るべきでないだろう。
また、日本では為替相場の円安進行が輸出企業の採算改善に寄与するとの期待も強いが、筆者としてはコロナ禍とウクライナ危機による新環境下で、従来型の経済・金融政策がインフレや円安を加速させているにも関わらず、その恩恵とコスト負担の不均衡が経済全体を下押ししかねないように思われる。実際、製造業全体として株価好調と言いづらいのはこうした懸念があるからではないだろうか。世界全体でも、世界銀行が18日、2022年の経済成長率見通しを従来の4.1%から3.2%に下方修正しており、先行き懸念は拭えない。
引き続きインフレ下で経済が堅調を維持できるかどうか、見方が定まったようには思われない。株式相場は方向感に乏しい展開とならざるを得ないだろう。
(小林大純)
<AK>
18日の米株式市場でNYダウは小幅に続落し、39ドル安となった。ウクライナ危機による需給ひっ迫の長期化観測に加え、リビアの政治デモによる産油停止の影響もあり、原油先物相場が4日続伸。セントルイス連銀のブラード総裁がインフレ抑制のため大幅な利上げが必要との見方を示し、長期金利も上昇が続いた。こうした動きが株式相場の重しとなる一方、金融株や半導体関連株などに買いが入り、主要株価指数は方向感に欠ける展開だった。本日の東京市場でもこれら銘柄に買いが先行したほか、円相場が1ドル=127円台まで下落したことも輸出関連株の買いを後押しし、日経平均は296円高からスタート。ただ、経済の先行きへの懸念も根強く、寄り付き直後をこの日の高値に失速すると、前場中ごろにはマイナスへ転じる場面もあった。
個別では、米半導体株高の流れを引き継いでレーザーテック<6920>が4%超の上昇。
電気自動車(EV)分野などでの期待が根強い三井ハイテク<6966>はリバウンドを意識した買いが入ったとみられ、やはり4%超上昇している。その他売買代金上位では郵船
<9101>、東エレク<8035>、川崎船<9107>などが堅調で、トヨタ自<7203>は小じっかり。自社株買いやアルペン<3028>による株式取得が材料視されたTSI HD<3608>
は急伸し、RPA<6572>などが東証プライム市場の上昇率上位に顔を出している。
一方、ソフトバンクG<9984>とファーストリテ<9983>が揃って2%超の下落。中国配車アプリの滴滴出行(ディディ)が米上場廃止へ臨時株主総会を開くと発表し、中国ハイテク株の下落がソフトバンクGの重しとなっているようだ。また、ネットプロHD<7383>などが東証プライム市場の下落率上位に顔を出している。
セクターでは、海運業、鉱業、非鉄金属などが上昇率上位。一方、サービス業、小売業、医薬品などが下落率上位だった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の61%、対して値下がり銘柄は34%となっている。
本日の日経平均は米半導体株高や円安進行が好感され、押し目買いが先行する形で300円近い上昇からスタートしたが、早々に失速する格好となった。27000円水準での上値の重さが意識されてくる可能性がある。物色動向は米市場と同様で、市況関連株や半導体関連株が買われる一方、サービス・小売などの消費関連株に売り。金融株が思いのほか伸び悩んでいるのは気掛かりだ。前引けの日経平均が+0.12%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.37%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆円あまり。前日は1日を通じ初の2兆円割れとなったが、本日も引き続き売買低調だ。
新興株ではマザーズ指数が-0.98%と4日続落。こちらも朝方買いが先行したが続かず、軟調な展開を強いられている。メルカリ<4385>などの主力株も全般軟調で、値を飛ばす銘柄は限られている。前日の東証グロース市場の売買代金は1176億円で、4月初めが2000億円規模だったのを踏まると、新興株の売買は急失速してきた感がある。
さて、18日の米市場では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI5月物)が1バレル=108.21ドル(+1.26ドル)と4日続伸。金先物相場(ニューヨーク商品取引所、COMEX6月物)も1トロイオンス=1986.4ドル(+11.5ドル)と反発した。10年物国債利回りが2.85%(+0.03pt)に上昇する一方、2年物は横ばいの2.45%となり、利回り曲線(イールドカーブ)は傾斜化(スティープニング)。先週後半に当欄で指摘したとおり、3月の米消費者物価指数(CPI)発表を通過し、短期的なリバーサル(相場の反転)を経て商品市況の反騰、長期の年限の金利上昇が顕著になってきた。
セントルイス連銀のブラード総裁は年内にも政策金利を3.5%前後に早急に引き上げる必要があると述べ、0.75ptの大幅利上げの可能性も示唆した。もっとも2年金利の反応を見る限り、金融市場も急速な利上げは相当程度織り込んでいるとの見方には妥当性があるように思われる。
しかし、焦点が「目先の利上げペース」でなく「インフレの持続性(ひいては将来的な金融政策の再転換の可能性)」に移っていると考えれば、先週後半からの一連の動きも整合的なものに見えてくる。ウクライナ危機による世界的な経済圏の分断がインフレの長期化を招くとの懸念は拭えない。「インフレは一時的」「米経済は堅調を維持」といった見方も根強く残り、株式相場を下支えしているが、金融市場全体の方向感は見誤るべきでないだろう。
また、日本では為替相場の円安進行が輸出企業の採算改善に寄与するとの期待も強いが、筆者としてはコロナ禍とウクライナ危機による新環境下で、従来型の経済・金融政策がインフレや円安を加速させているにも関わらず、その恩恵とコスト負担の不均衡が経済全体を下押ししかねないように思われる。実際、製造業全体として株価好調と言いづらいのはこうした懸念があるからではないだろうか。世界全体でも、世界銀行が18日、2022年の経済成長率見通しを従来の4.1%から3.2%に下方修正しており、先行き懸念は拭えない。
引き続きインフレ下で経済が堅調を維持できるかどうか、見方が定まったようには思われない。株式相場は方向感に乏しい展開とならざるを得ないだろう。
(小林大純)
<AK>
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