ランチタイムコメント
日経平均は大幅に6日続伸、「円安は買い」「ハイテク買い」の持続性は?
配信日時:2022/03/22 12:17
配信元:FISCO
日経平均は大幅に6日続伸。415.45円高の27242.88円(出来高概算7億6000万株)で前場の取引を終えている。
東京市場は21日、春分の日で休場だった。この間、米株式市場ではNYダウが18日に274ドル高、21日に201ドル安となった。18日は金融派生商品(デリバティブ)の清算が重なる「クアドルプル・ウィッチング」で、これに絡んだ買いが入る場面もあった。
ただ、ウクライナ情勢を巡る警戒感がくすぶるうえ、パウエル連邦準備理事会(FRB)
議長がインフレ抑制のため大幅な利上げも辞さない姿勢を示し、金利上昇とともに売りが出た。一方、為替市場では日米の金利差拡大が意識されて円相場が下落。連休明けの日経平均は円安を支援材料に263円高からスタートした。さらに、朝方には2016年以来6年ぶりに1ドル=120円台まで円安が進む場面があり、日経平均もこれにつれて強含み、前場中ごろを過ぎると一時27284.47円(457.04円高)まで上昇した。
個別では、米金利上昇で三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>といった金融株が買われている。連休中にNY原油先物相場が3日続伸したことを受け、INPEX<1605>が9%を超える上昇となっているほか、三菱商事<8058>などの商社株も上昇が目立つ。その他売買代金上位ではソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、トヨタ自<7203>などが堅調で、川崎船<9107>は小じっかり。前期業績の修正や増配を発表したアダストリア<2685>は急伸し、アグレ都市D<3467>が東証1部上昇率トップとなっている。一方、郵船<9101>やレーザーテック<6920>はさえない。中小型株では前週末に急伸したレノバ<9519>が利益確定売り優勢。中古車価格の下落を受けてIDOM<7599>やネクステージ<3186>に売りが広がり、ギフティ<4449>などとともに東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、鉱業、保険業、卸売業などが上昇率上位で、その他も全般堅調。一方、空運業、海運業、金属製品の3業種が下落した。東証1部の値上がり銘柄、値下がり銘柄とも全体の48%となっている。
NYダウは18日、21日と合わせて70ドルあまりの上昇にとどまったが、連休明けの日経平均は大幅に6日続伸し、400円を超える上昇で前場を折り返した。27000円台を回復し、取引時間中としては2月17日以来の高値を付けている。日足チャートを見ると、先週後半に25日移動平均線を上抜けてからも騰勢は衰えず、27000円台半ばに位置する75日移動平均線に迫りつつある。
個別・業種別では金融株や市況関連株の上昇が目立つが、米金利上昇にも関わらず値がさグロース(成長)株もまずまずしっかりといった印象。しかし、中小型グロース株は軟調で、東証1部下落率上位に多くランクインしている。東証1部全体としては値上がり銘柄数と値下がり銘柄数が拮抗しており、主力大型株が株価指数を押し上げていることがわかる。前引けの日経平均が+1.55%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.24%。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円超で、先週末18日と比べるとやや膨らんでいる。
新興市場ではマザーズ指数が-1.40%と4日ぶり反落。中小型グロース株安の流れから、メルカリ<4385>などの主力IT株が軟調だ。もっとも値動きの軽い小型株が買いを集め、エッジテクノロジ<4268>やサイエンスアーツ<4412>が大幅高。マザーズ指数も売り一巡後は下げ渋る場面が見られる。
さて、一時1ドル=120円台まで円安が進むとともに、日経平均やTOPIXは主力大型株主導で大きく上昇する格好となっている。パウエルFRB議長がインフレ抑制のため大幅な利上げも辞さない姿勢を示す一方、黒田東彦日銀総裁は18日の金融政策決定会合後の記者会見で「金融を引き締める必要もないし適切でもない」などと述べ、緩和を続ける方針を強調。金融政策の方向性の違いが改めて鮮明となり、円安に拍車がかかったのも頷けるだろう。
もっとも、18日に発表された2月の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合指数で前年同月比0.6%上昇と、日本でもインフレ圧力が強まってきている。原油価格も再び上昇してきており、「交易条件の悪化」懸念が広がるなかで「円安は買い」がいつまで続くだろうか。
また米株についても、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数が18日+2.05%、21日-0.40%と引き続き堅調に推移している点に目が行きがちだが、米金利の上昇基調が続いていることを見逃してはならない。21日の10年物国債利回りは2.29%(前週末比+0.14pt)に上昇し、一時2.32%と2年10カ月ぶりの高水準を付けた。金融政策の影響を受けやすい2年物も2.11%(同+0.17pt)に上昇した。
好環境とは言いづらいなかでハイテク株の騰勢がなかなか衰えないのは、積み上がっていた売り持ちの解消が続いているためとの見方が多い。米金融大手モルガン・スタンレーのストラテジストがこうした米株の反発を「たちの悪いあや戻し」などと述べ、売りを推奨していると海外メディアが報じているが、確かに金利上昇の逆風を考慮すれば騰勢一服後に警戒せざるを得ない。
日本株も「円安を好感」という以上に、「目先の売り圧力の低下」や「新年度に向けた資金流入」といった株式需給の改善が相場を押し上げている可能性があるというのは度々当欄で述べているとおりだ。投資家それぞれの投資スタンスや期間、リスク許容度に応じて取り組む必要があるということを再度強調しておきたい。
(小林大純)
<AK>
東京市場は21日、春分の日で休場だった。この間、米株式市場ではNYダウが18日に274ドル高、21日に201ドル安となった。18日は金融派生商品(デリバティブ)の清算が重なる「クアドルプル・ウィッチング」で、これに絡んだ買いが入る場面もあった。
ただ、ウクライナ情勢を巡る警戒感がくすぶるうえ、パウエル連邦準備理事会(FRB)
議長がインフレ抑制のため大幅な利上げも辞さない姿勢を示し、金利上昇とともに売りが出た。一方、為替市場では日米の金利差拡大が意識されて円相場が下落。連休明けの日経平均は円安を支援材料に263円高からスタートした。さらに、朝方には2016年以来6年ぶりに1ドル=120円台まで円安が進む場面があり、日経平均もこれにつれて強含み、前場中ごろを過ぎると一時27284.47円(457.04円高)まで上昇した。
個別では、米金利上昇で三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>といった金融株が買われている。連休中にNY原油先物相場が3日続伸したことを受け、INPEX<1605>が9%を超える上昇となっているほか、三菱商事<8058>などの商社株も上昇が目立つ。その他売買代金上位ではソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、トヨタ自<7203>などが堅調で、川崎船<9107>は小じっかり。前期業績の修正や増配を発表したアダストリア<2685>は急伸し、アグレ都市D<3467>が東証1部上昇率トップとなっている。一方、郵船<9101>やレーザーテック<6920>はさえない。中小型株では前週末に急伸したレノバ<9519>が利益確定売り優勢。中古車価格の下落を受けてIDOM<7599>やネクステージ<3186>に売りが広がり、ギフティ<4449>などとともに東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、鉱業、保険業、卸売業などが上昇率上位で、その他も全般堅調。一方、空運業、海運業、金属製品の3業種が下落した。東証1部の値上がり銘柄、値下がり銘柄とも全体の48%となっている。
NYダウは18日、21日と合わせて70ドルあまりの上昇にとどまったが、連休明けの日経平均は大幅に6日続伸し、400円を超える上昇で前場を折り返した。27000円台を回復し、取引時間中としては2月17日以来の高値を付けている。日足チャートを見ると、先週後半に25日移動平均線を上抜けてからも騰勢は衰えず、27000円台半ばに位置する75日移動平均線に迫りつつある。
個別・業種別では金融株や市況関連株の上昇が目立つが、米金利上昇にも関わらず値がさグロース(成長)株もまずまずしっかりといった印象。しかし、中小型グロース株は軟調で、東証1部下落率上位に多くランクインしている。東証1部全体としては値上がり銘柄数と値下がり銘柄数が拮抗しており、主力大型株が株価指数を押し上げていることがわかる。前引けの日経平均が+1.55%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.24%。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円超で、先週末18日と比べるとやや膨らんでいる。
新興市場ではマザーズ指数が-1.40%と4日ぶり反落。中小型グロース株安の流れから、メルカリ<4385>などの主力IT株が軟調だ。もっとも値動きの軽い小型株が買いを集め、エッジテクノロジ<4268>やサイエンスアーツ<4412>が大幅高。マザーズ指数も売り一巡後は下げ渋る場面が見られる。
さて、一時1ドル=120円台まで円安が進むとともに、日経平均やTOPIXは主力大型株主導で大きく上昇する格好となっている。パウエルFRB議長がインフレ抑制のため大幅な利上げも辞さない姿勢を示す一方、黒田東彦日銀総裁は18日の金融政策決定会合後の記者会見で「金融を引き締める必要もないし適切でもない」などと述べ、緩和を続ける方針を強調。金融政策の方向性の違いが改めて鮮明となり、円安に拍車がかかったのも頷けるだろう。
もっとも、18日に発表された2月の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合指数で前年同月比0.6%上昇と、日本でもインフレ圧力が強まってきている。原油価格も再び上昇してきており、「交易条件の悪化」懸念が広がるなかで「円安は買い」がいつまで続くだろうか。
また米株についても、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数が18日+2.05%、21日-0.40%と引き続き堅調に推移している点に目が行きがちだが、米金利の上昇基調が続いていることを見逃してはならない。21日の10年物国債利回りは2.29%(前週末比+0.14pt)に上昇し、一時2.32%と2年10カ月ぶりの高水準を付けた。金融政策の影響を受けやすい2年物も2.11%(同+0.17pt)に上昇した。
好環境とは言いづらいなかでハイテク株の騰勢がなかなか衰えないのは、積み上がっていた売り持ちの解消が続いているためとの見方が多い。米金融大手モルガン・スタンレーのストラテジストがこうした米株の反発を「たちの悪いあや戻し」などと述べ、売りを推奨していると海外メディアが報じているが、確かに金利上昇の逆風を考慮すれば騰勢一服後に警戒せざるを得ない。
日本株も「円安を好感」という以上に、「目先の売り圧力の低下」や「新年度に向けた資金流入」といった株式需給の改善が相場を押し上げている可能性があるというのは度々当欄で述べているとおりだ。投資家それぞれの投資スタンスや期間、リスク許容度に応じて取り組む必要があるということを再度強調しておきたい。
(小林大純)
<AK>
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